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◆今日の秀句/高橋正子選◆
7月9日
★今日の夏風さわやかに文机/下地鉄
夏となってしばらく立つ。今日の夏は、文机に座ると風がさわやかに通りに抜ける。かろやかな句。(高橋正子)
7月10日
★森に沿い初蝉すでに大合唱/河野啓一
初蝉の声を聞いたかと思うと、すでに大合唱。夏を謳歌しはじめている。元気な蝉たちである。(高橋正子)
7月11日
★朝涼に洗いし筆を並べおり/多田有花
朝の涼しさに洗った絵筆であろう、並べて置く。きれいな水を含んだ筆が涼しそうだ。(高橋正子)
7月12日
★星まつり色ちりばむるビルとなり/川名ますみ
星まつりの夜、ビルにはいろんな色の灯が点る。五色の短冊を思い浮かべるようなきれいなビルの灯である。(高橋正子)
7月13日
★子らに買うバナナを袋いっぱいに/高橋秀之
袋の詰められたバナナの黄色に元気がある。子供たちへの格好の土産となったバナナであるが、夏にあって楽しい。(高橋正子)
7月14日
★夏ひばり全き碧き赤城かな/小口泰與
「夏ひばり」と「全き蒼き赤城」の二物がせめぎ合う緊張感がよい。夏の赤城山のすばらしい蒼さが想像できる。(高橋正子)
7月15日
★山口の山に山つぐ夏の嶺/桑本栄太郎
瀬戸内に沿い新幹線で走っているとなだらかな山が多く続く。山に山がつながって、夏の嶺となっている。涼しい景色だ。(高橋正子)
●投句箱7月6日~7月15日●
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●投句箱7月2日~7月5日●
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7月8日(月)
●小口泰與
野放図に杏実らせ鳥の声★★★
朝日射す縹の赤城青りんご★★★
遠雷に遠まなざしのチワワかな★★★
●佃 康水
大き夢七夕電車載せ走る★★★★
七夕の日の電車。電車に乗っている子どもも、大人もみんな夢や願をもっている。みんなの夢や願が詰まった七夕の電車が大きく膨らむ。(高橋正子)
昼灯しゴーヤ日除けの理髪店★★★
蛍灯に見立てし和菓子目の前へ★★★
●迫田和代
島の空大きく横切る天の川★★★★
島の空に、島よりもはるかに大きくかかる天の川。天の川の果ては海の向こうに。島の空が快く涼しい。(高橋正子)
傍らに静かに咲ける月見草★★★
七夕の願い山ほど竹撓る★★★
●桑本栄太郎
学び舎の赤き煉瓦や炎暑来る★★★
山の背の峰雲育て天王山★★★
梅雨明けと聞けば四条のコンチキチン★★★
●多田有花
炎昼にリヤカーをひく男あり★★★
梅雨明けの部屋開け放ち風入れる★★★
青空へ風は吹きぬけのうぜん花★★★
●河野啓一
朝顔の紫紺の色を筆につけ★★★★
紫紺の朝顔を描こうとして、その色の絵の具を筆に含ませた。水彩画や墨彩画であろう。筆に含んだ紫紺の色が生き生きとして、涼しそうだ。(高橋正子)
烏賊釣りの船に揺られて若狭湾★★★
打ち水をすれば空にも風流る★★★
●小西 宏
梅雨明けて白輝けるビルの列★★★
蜻蛉生まれ白雲高く羽ばたける★★★
軽鳧の子の水面かすめて初飛行★★★
●小川和子
雷一声街を響かせ土砂降りに★★★
ひたひたと泉水河骨に充てり★★★
蓮池を覆う蓮の葉日を透かす★★★
7月7日(日)
●小口泰與
畦道や高さ際だつ立葵★★★
火の山の心音たしか夏木立★★★
ありありと朝の赤城や青ぶどう★★★
●小西 宏
金蚊の仰向いて脚生きんとす★★★★
金蚊が何かにぶち当たってひっくり返った。起き上がろうとしてか、必死に脚を動かしている。作者はその様子を「生きんとす」と捉えた。金蚊の命を直視しているのがよい。(高橋正子)
蝉鳴かぬ日にも網持ち子ら走る★★★
笹竹を手折り短冊五つほど★★★
●河野啓一
銀漢に願い届けよ笹飾る★★★
短冊の揺れて蜻蛉の飛ぶごとく★★★
天の川流れの先は那智の滝★★★
●多田有花
草原の輝きはるか小暑なる★★★
買い物の籠にそれぞれ笹飾り★★★
梅雨明けの近づく空を見上げおり★★★
●黒谷光子
畠より帰りて昼餉冷素麺★★★
冷素麺二筋三筋の色交じる★★★
硝子器に盛れば涼しき夕餉かな★★★
●桑本栄太郎
菜園の朝や数多の麦藁帽★★★★
朝まだ涼しいうちに菜園に出て作業をする人たちが大勢いる。夏野菜の収穫や水やりに、みんな麦藁帽子を冠っている。朝の菜園の涼しさを共有できる。(高橋正子)
炎天や室に入れば暗闇に★★★
街道の山滴りし家並みかな★★★
●下地鉄
蝉しぐれ締めの一声しっかりと★★★
暁闇のしじまを破る蝉しぐれ★★★
潮騒に更けゆく夏の浜辺かな★★★
●高橋秀之
初蝉や並んで歩む親子連れ★★★
風呂上り日焼け背中に薬塗る★★★
日焼けしてそれでもサッカーボール蹴る★★★
7月6日(土)
●小口泰與
きわやかや事に日の出の蓮の花★★★
ねじ花や花にそよぎし低き風★★★
魚止めの滝や朝日を賜わりし★★★
●桑本栄太郎
朽ち居ても香り確かむ夏つばき★★★
眩しさの木洩れ日降りぬ梅雨の晴れ★★★
涼風の立つや忽ち又雨に★★★
●河野啓一
蓮の花競い合うなか朝の風★★★
花南天地に散り敷いて天の星★★★
割り箸でつまむ毛虫よ蝶かもしれず★★★
●多田有花
【原句】夏霧を載せて流れし朝の川
【正子添削】夏霧を載せて流れる朝の川★★★★
夏霧を載せたままに川が流れていく朝の静かでゆったりとした景色がよい。原句の「流れし」の「し」は回想の助動詞「き」の連体形。この句は現在形がよい。(高橋正子)
あの角もこの角ものうぜん花揺れ★★★
梅雨茸一夜に数を増やしおり★★★
●佃 康水
白南風や下船の一歩立ち尽くす★★★★
梅雨が明けて吹く南の風を白南風というが、下船したとたん、足元の不安定さに、大きく吹く白南風に立ち尽くしてしまった。「立ち尽くす」は、また、陽の強さに目が眩んだせいでもあろう。(高橋正子)
広島江田島 茶道の師を訪う
翼張る青鷺の空大きかり★★★
江田島 乗馬場
エンジン音響かせ馬場へ水撒かる★★★
●小西 宏
空に向け伸びす合歓咲く昼下がり★★★
軽鳧の子の羽膨らませ飛ぶ用意★★★
梅雨明けて蝉のそろそろ鳴き初むる★★★
●下地鉄
街の灯のぽつりぽつりと夏暮れる★★★
夏雲や残照やわき海の色★★★
朝凪の浜辺に独り孤老かな★★★
●高橋秀之
夕立に家族そろって雨宿り★★★
夕立を弾く木の葉の瑞々し★★★
一瞬の大雨夕立かばん濡れ★★★
◆今日の秀句/高橋正子選◆
7月5日
★吹き抜けをつらぬくほどに七夕竹/川名ますみ
吹き抜けをつらぬくほどの七夕竹の高さ。竹の高さそのままの青々とし七夕飾りに揺れる様子には感激。(高橋正子)
7月3日
★緑濃き風に吹かれて書道展/小西 宏
緑濃き風が吹き抜け、心地よい会場の書道展。緑濃き風に、墨色もいきいきと浮き上がってくる。(高橋正子)
7月2日
★捕まえて虫籠の少年にやる飛蝗/古田敬二
虫籠を持った少年は、まだなんの虫もとっていないのか、農作業中の作者は飛び出た飛蝗を捕まえて少年に渡した。虫を得た少年の喜びと作者の優しさが読める。(高橋正子)
7月1日/2句
★あるだけの夕餉は採りたて夏野菜/祝恵子
「あるだけの夕餉」は、いい生活だ。「採りたて夏野菜」は、家庭菜園だろうか。身近なところで栽培された新鮮な食材は、美味しい。これもいい生活なのだ。(高橋信之)
★あけぼのの靄の中より新樹光/小口泰與
季語「新樹光」で一句を終えた。終わりを明るく終えたのである。上五の「あけぼの」がいい。中七の「靄の中より」がいい。(高橋信之)
6月29日/2句
★山に向き青田をよぎる道のあり/迫田和代
眺めていると、山に向かって伸びる道があり、それが青田をよぎっている。青田と一本の白い道が絵画のような印象だ。(高橋正子)
★不揃いの三つを篭に初なすび/黒谷光子
初どりの野菜はことに嬉しい。形の不揃いは気にしない。丹精した甲斐があったというもの。これからの収穫がなお楽しみ。(高橋正子)
6月28日
★観音の慈眼へひらく沙羅の花/佃 康水
「観音の慈眼」に「沙羅の花」を取り合わせると、「沙羅双樹(フタバガキ科)」を思って、宗教的になる読み手もあろうが、この句には作者の素直な観察があって読後快い。句のリズムもやさしい。日本での庭木の「沙羅」は、ツバキ科の「沙羅双樹」であり、俳句の季語にある「沙羅の花」も「夏椿の花」のことで、フタバガキ科ではなく、ツバキ科の「沙羅双樹」の花である。(高橋信之)
6月26日
★それぞれの高さに風を花菖蒲/多田有花
花菖蒲は、遠目にはそろって見えるが、それぞれに高さが違う。その一花一花が風をまとって、それぞれが吹かれる様は風情がある。(高橋正子)
6月25日
★鉢ものを見廻る吾や朝涼し/桑本栄太郎
あれこれと植えた鉢物。夏は朝も早く明け、涼しい時間が楽しめる。鉢物を一つひとつ見て回るのも楽しみのひとつ。(高橋正子)
6月24日
★ゆっくりと自転車を漕ぐ青田道/河野啓一
上5の「ゆっくりと」がいい。都会では「青田」を見る機会がないが、少し歩いて郊外に出れば、「青田」に出会うことがある。「青田」の上には広々とした大空あり、いい出会い、いい繋がりの中に出る。すべてが「ゆっくりと」と動き、その中での人間の心も「ゆっくりと」なる。嬉しい句だ。(高橋信之)