3月11日(月)

●小口泰與
雨粒のつたう光彩花きぶし★★★
鯉こくや佐久を分けたる雪解川★★★
温き手と朱唇にふれしおぼろかな
季語「おぼろ」の解釈が不可能です。この句の「おぼろ」が自然現象の「おぼろ」か、作者の意識の「おぼろ」であるか、定かでないからです。曖昧な句のご投句はご遠慮ください。(高橋信之)

●河野啓一
日のうらら空の青さに春思う★★★
留守居して句作三昧庭椿★★★
鳥帰るこの青空を何処まで★★★

●多田有花
春の霜東日本震災忌★★★
つんつんと梅奔放に金のしべ★★★
青空や降り注ぐ陽と囀りと★★★★

●桑本栄太郎
ほんのりと赤き嶺の端春入日★★★
自転車のみな横たわり春の風★★★★
乗って来た自転車か、横倒しにされて銀輪が光る。集団で川土手にでも遊びにきたのであろうか。春の風がそよそよと吹く麗らかな日のことである。(高橋正子)

木々の枝と葉影揺れ居り春ともし★★★

※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。

●投句箱③/3月8日~10日●

●ご案内
①1日3句まで投句可能。
②一般の方は、3週間は無料で、その後有料です。
③花冠会員・同人は無料です。
④講師:高橋信之(愛媛大学名誉教授)・高橋正子(花冠主宰)

※3月8日からの句は、こちらの投句箱③の<コメント欄>にご投句ください。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。

3月10日(日)

●小口泰與
上州の四囲の山々雪解かな★★★
雨粒の梅の蕾を包みけり★★★
代も替わり雛菓子かわりケーキかな★★★

●下地鉄
耳鼻院のキッズ園となる春の風邪★★★
潮風に丁子の花の日暮かな★★★
囀りの音をのこして美空かな★★★★

●藤田洋子
水一つ提げて囀りの山に入る★★★★
囀りの木々の名札のそれぞれに★★★
音立てて洗う蜆の黒き艶★★★

●桑本栄太郎
<京都四条河原町界隈>
沈丁の香に沿い流る高瀬川★★★
眠るごと京の町家のよなぐもり★★★
残ること決めてくつろぐ春の鴨★★★

※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。

3月9日(土)

●河野啓一
庭桃を惜しまず剪りて雛祭り★★★★
庭に桃の花が咲き、喜び、嬉しく思っている。大切な庭の桃の花ではあるが、雛祭りとなれば、惜しまず剪って飾る。雛のため、小さいころの愛嬢のためにでもあろう。(高橋正子)

花菜活け日差し明るき子供部屋★★★
囀りの飛び交う丘を透かし見る★★★

●迫田和代
里の駅一本の道草萌ゆる★★★
一つだけ和紙からはみ出る雛あられ★★★
丘に咲く水仙の香に惹かれ★★★

●小口泰與
大木の根方の雪の解けにけり★★★
まんまるの雪解の根方青き空★★★
榛名富士いただき春の利根河原★★★

●桑本栄太郎
青空のあお極め居り野梅かな★★★
木々の枝と葉の煌けり春日照る★★★
山里も嶺も煙るや黄沙降る★★★

●多田有花
咲き初めし椿に蕾たっぷりと★★★
下萌に防火点検消防士★★★
観梅の人と語りし真昼かな★★★

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3月8日(金)

●河野啓一
駅前の大樹もそよぐ春の風★★★★
春の午後図鑑開くや鳥の名を★★★
庭先を孕み雀の歩きゆく★★★

●古田敬二
初黄蝶の踊れば踊るわが心★★★
初黄蝶二人を巡り踊りけり★★★
春風の竹の中から聞こえけり★★★

●小口泰與
白梅のつぼみの数の雫かな★★★
白梅や朝な夕なの風厳し★★★
山風とともに冷気や名草の芽★★★

●下地鉄
梟の声遠きリズムの春霞★★★
蕗の薹汽笛にゆれる浜辺かな★★★
百本の水菜束ねて一握り★★★★
水菜は長く伸びた細い茎をもつ菜である。今は生でサラダにも利用される。百本ほどを束ねて一握りになったが、百本、一握りが一人分であろうか。何気ないようだが、味わいがある。(高橋正子)

●多田有花
妻恋の雉幾たびも鳴きおりぬ★★★
春の陽を返すソーラーパネルかな★★★
尾根をゆく身に吹き来るは春の風★★★

3月7日(木)

●小口泰與
まんさくや鈍色の雲ひろごれり★★★★
寒さの残る、鈍色の雲のひろがり。その下に、まんさくが黄色いリボン状の花びらをくるくる巻くように咲く。味わいのあるコントラストである。(高橋正子)

紺碧の赤城や利根の雪解水★★★
かわたれの瀬音ごうごう雉の声★★★

●多田有花
初蝶や陽に翅広げ止まりおり★★★
地にありて瞬く群青いぬふぐり★★★
ゆったりと山路を歩く暖かし★★★

●桑本栄太郎
ひと時の矜持なりしか野梅咲く★★★
霞立つ輪郭のみやビルの街★★★
光るのものすべて輝き春きざす★★★

●黒谷光子
春耕の土くろぐろと光り合う★★★
窓越しの春光を背に聴講す★★★
我が庭も隣りの庭も黄水仙★★★

●河野啓一
燦然と朝日を反しクロッカス★★★
子ら寄りて春の小川のほとりかな★★★
花芽色刷いて桜樹遠霞★★★

●小西 宏
鶯の初音小さき窪の空★★★
笹薮に何か音するる暖かさ★★★
犬お出かけ春のセーター腰に振り★★★

3月6日(水)


●小口泰與
朝の陽の雲に映えけり梅の花★★★
木の間より日矢いつぱいのクロッカス★★★
夕映えや朱の交じりいる猫柳★★★

●小川和子
畦を占む草あおあおと紫雲英咲く★★★
三月の息吹みなぎる桜の枝★★★
毛氈に座し紅梅を振り仰ぐ★★★

●多田有花
啓蟄の山一息に巡りけり★★★
豪快に地球の上でぶらんこを★★★
ラジコンカー春の広場を旋回す★★★

●下地鉄 
リハビリに一念発起龍の玉★★★
わが影にくつろぐ今日の春日かな★★★★
「わが影にくつろぐ」が楽しい。わが影の映る春の日は、ほんとうにのどかな気持ちになる。(高橋正子)

潮風にうたれてつよし芝桜 ★★★

●河野啓一
啓蟄を過ぎてようやく街に出る★★★
杖つきて吾も出たきや虫のごと★★★
紅梅の満開なるを知らざりし★★★

●桑本栄太郎
春塵のままに市バスの車窓かな★★★
古家と云えど風情や梅屋敷★★★
春日さすバスの車窓の空の青★★★

3月5日(火)

●小口泰與
目配せで枝のうぐいす知らせけり★★
春浅しビルの狭間の風迅し★★★
つんつんと土を割りをるチューリップ★★★

●河野啓一
孫娘顔見せるとや春うらら★★★
麗らかに鳥声を聞く散歩道★★★
豊漁の船帰り来る春の海★★★

●小川和子
靴裏に下萌の岸やわらかし★★★
河面射す日の眩しさよ春の岸★★★

春耕のまだ始まらぬ田の広き★★★★
裏作やあるいは冬の間手入れをしないでいた田畑は、だだっ広く思える。しかし、耕しが始まるころになると、田畑も息づいてくる。その広さを感じとったのがよい。

●佃 康水
母と子の手波を添えて雛流す★★★
切り鋏音を弾ませ菰外し★★★
啓蟄や錆付く鋏磨き込む★★★

●桑本栄太郎
朝日さす在所の嶺の霞みけり★★★
さくさくと終えて家路や納税期★★★
お~い雲よ吾も連れゆけ春きざす★★★★

●黒谷光子
啓蟄の菰巻解かる城の松★★★
菰巻を解かれ蘇鉄の奔放に★★★
プリムラの鉢届けらる誕生日★★★

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●添削3月①●

[3月1日~4日]

▼3/4

●河野啓一
鳥声もひときわ高く三月に★★★★
「ひときわ高く」に春が来うれしさがよく出ている。鳥の声もはつらつとして生命感があるのが嬉しい。(高橋正子)

旧友の訃報も遠し春浅し★★★
受験子をを囲碁の相手に誘いけり★★★

●佃 康水    
広島県大竹市雛流し3句
晴れ着の児袂持たれて雛送る★★★
見返るが如く向き変え流し雛★★★
小さき手で折敷に添える雛あられ★★★

●迫田和代
丁寧にきちんと並べる古い雛★★★
はんなりと淡く柔らか雛あられ★★★
蔵の中広くて可愛い吊るし雛★★★

●小口 泰與
たらの芽や支流溢れてごうごうと★★★
花林糖かりっと噛むやうららけし★★★
春風や一糸乱れぬ庭の木々★★★

●黒谷光子
冴え返る伊吹おろしに真向かいて★★★
雪残る湖北を囲む山並に★★★
残雪の伊吹連なる山々★★★

●多田有花
カーテンを開ければ春暁むらさきに★★★
黙々と春の山ゆく楽しさよ★★★
高枝を鳴き交わしつつ四十雀★★★

●桑本栄太郎
ひし形の雛寿司弁当買いにけり★★★
一片の雲無き朝や冴返る★★★★
葦焼きの再開なりし宇治河原★★★

●川名ますみ
水仙の低きに咲くを見つけたり★★★★
この句の生命は「低きに咲く」にある。低いところは、木の下か、道の下か、幾分の湿りもあるだろう。そういったところに咲く水仙には、日向の水仙よりも陰影を帯びた魅力がある。(高橋正子)

春雨に人の差し出す傘大き★★★
運転手大きな傘を春雨へ★★★

▼3/3

●古田 敬二
はくれんの光を纏う蕾かな★★★
出勤の子へ春の陽の高くなる★★★
咲きかけの蕾や畔のイヌフグリ★★★

●多田有花
春寒の森に響きしチェーンソー★★★
まずわが家指差す春の頂で★★★
播磨富士七合目まで春の雪★★★

●高橋秀之
春風にすっきり近し生駒山★★★
店内に幾度も流れる雛まつり★★★
友の雛飾りいくつもネット見る★★★

●桑本栄太郎
冴返るとは云え陽射しの輝きぬ★★★

鷹揚に目鼻の容や土ひひな★★★★
土雛の素朴さの魅力である。鷹揚な目鼻の容に、親しみとあたたかさを感じる。(高橋正子)

眼差しの遠き追憶古ひひな★★★

●小西 宏
自転車を漕ぐまで育ち雛祭★★★
春緋鯉ゆれ陽の満てる街の川★★★
孫帰り雛壇に菓子あった場所★★★

●河野 啓一
娘の声に想い出したる雛祭り★★★
ラディッシュの葉を喰う鳥よ春浅し★★★
春潮の寄せて播磨は須磨の浦★★★

●小口 泰與
蝋梅のほろほろ散るや雨の中★★★
春の日やばらの新芽のあえかなる★★★
榛名湖の耀う波や風光る★★★

▼3/2

●高橋 秀之
雨の夜明けて大気は冴え返る★★★
早朝の雨の滴や梅一輪★★★
春寒し白む夜空と街路灯★★★

●河野 啓一
箕面より下りきて春の小川かな★★★
つくし摘む土手の下草すべすべと★★★
ひな祭り散らし寿司かなデイの昼★★★

●桑本 栄太郎
白そろい紅の綻ぶ丘の梅★★★
梅白し午後から雨の気配かな★★★
丘上の吾の独りや梅の園★★★

●小西 宏
池底を亀這って泥春めけり★★★
梅蕾はじけて一つ花の白★★★
雲の間に青空淡し梅の花★★★

●多田 有花
朝の窓描きおりなば雉の声★★★★
描いていると、朝の窓から雉の声が聞こえた。まだまだ寒いと思っていながらも野山の雉の声を聞くとまさに春を感じる。(高橋正子)

春北風に檜の木立軋みあう★★★
白梅に次々目白渡り来る★★★

●古田 敬二
夕餉には咲きかけ菜花をお浸しに★★★★
菜花がよく出回るようになった。蕾のものが一番よいというが、少し咲きかけて黄色い花の色が見えるのお総菜なら美味しく楽しめる。心安らかな夕餉。(高橋正子)

芋植える準備の畝の平行線★★★
薄氷を揺らす触れ合う音かすか★★★

●迫田 和代
春になり鳥の囀り軽やかに★★★
低く咲く足もとにパッと春の花★★★
梅が咲き蕾のむこう青い空★★★

●小口 泰與
うすうすと梅の蕾のほぐれしか★★★
滔々の利根や奥利根春の鳥★★★
山風や大内宿の風車★★★

▼3/1

●高橋 秀之
左胸に花を挿したる卒業生★★★★
卒業生の左胸を飾る花。卒業を祝う花を一人一人が付けてもらって、誇らしく卒業してゆく。皆の祝意の籠った花だ。(高橋正子)

涙あと残し電車に卒業生★★★
大小の浅蜊取り出す一つずつ★★★

●藤田裕子
和紙とりて雛のやさしき目と逢いぬ★★★★
雛を取り出して飾るとき、お顔を覆っていた和紙の薄紙を取り外すと、雛のやさしい目と逢った。しばし、お顔を眺めたであろうが、雛を飾る嬉しさもこんなところにあるのかもしれない。(高橋正子)

軸の雛桃色淡く寄り添える★★★
春一番伊予路弾ませ到来す★★★

●桑本 栄太郎
剪定の枝先匂い春めける★★★★
春になると、空気が暖かくなるせいか匂いが立ちやすくなる。剪定した枝先からも木の良い香りが立って、春めいた思いになる。(高橋正子)

刻々と雨の気配や暖かし★★★
三月や噛む音哀しく義歯入れる★★★

●佃 康水
川底に光りあまねき水草生う★★★★
水草生い流れのままに靡きけり★★★
船笛の鳴り交う瀬戸や大霞★★★

●小西 宏
かろやかに小川せせらぎいぬふぐり★★★
竹の葉に空見上げれば春の光★★★
うっすらとして白梅の芽の緑★★★

●多田 有花
春日傘横断歩道を渡りゆく★★★
春荒れに身体傾け少年は★★★
三月やパステルカラーのラグを買う★★★

●河野 啓一
賑やかに一筋春の小川かな★★★
雨上がり芽出し愉しきチューリップ★★★
白梅のようやく咲きし庭の隅★★★

●小口 泰與
芥菜や山風強き里の朝★★★
青ぬたや信濃の里へ墓参り★★★
あけぼのの磁器の冷たき春火鉢★★★

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