[2月24日~28日]
▼2/28
●桑本 栄太郎
春めきて襟足すっきり髪を切る★★★★
春宵となりしねぐらへ群れ鴉★★
夕日落つ嶺の茜や二月尽★★★
●小西 宏
早春のさくら木々立つまるい空★★★★
やわらかに竹の音する春うらら★★★
肌なでるかぜ陽光よ梅蕾★★★
●河野 啓一
池の面のきらきら揺れて二月尽★★★
芽柳に触れつつ行く日池巡る★★★
寒き日の吾旅なりき二月尽★★★
●井上 治代
採りたてのほうれん草の甘さかな★★★
水温む小川で鍬を洗いおり★★★
サラダにとレタス切る音春めきぬ★★★
●黒谷 光子
春の月まどかに上がり松の上★★★
時おりは背筋伸ばして青き踏む★★★
入相の鐘の余韻や二月尽く★★★
●多田 有花
蔓を刈る人のありけり春日和★★★
東屋に梅を眺めつ笛吹く人★★★
暖かと言い合いそのまま別れけり★★★
●祝 恵子
ぬかるみの道を通りて梅まつり★★★
花三椏曲がれば水車まわす水★★★★
二人してよもやま話竹の秋★★★
●小口 泰與
山風をたばねて赤城冴返る★★★
たんぽぽや風の中なる山上湖★★★
青麦の同じ方へと波打てり★★★
●高橋 秀之
沖待ちの船を隠すは春霞★★★
穏やかに寄りつき引いて春の波★★★
海峡を染める大空春夕焼け★★★
▼2/27
●川名ますみ
鉢の梅やさしき影を絨毯に★★★
一輪のことりと落ちて梅に音★★★
花のいろ芽のいろ揺らし春ショール★★★
●河野 啓一
流氷の岸辺に寄せてオホーツク★★★
薄氷解けたる池の魚の影★★★
ヒヤシンス雨上がりたる街の明るさに★★★
●小西 宏
蹴る足に水したたらせ鴨の春★★★
陽の谷(やつ)に入りて知りけり梅一樹★★★
丘高き畑に雲浮き梅の影★★★
●古田 敬二
濡れた目で遠くに菜の花見てる牛★★★
春昼やホルスタインの背の黒光★★★
はくれんの蕾や天にざわめけり★★★★
はくれんの蕾や天にざわめける(正子添削)
はくれんの数多の蕾が膨らんできた。空の中でざわめいている感じだ。静かなものも、花の季節は落ち着かない。(高橋正子)
●桑本 栄太郎
天窓の春日こぼれし広場かな★★★
ごみ袋持ちて散歩や春きざす★★★
紅梅の丸くふくらみつぼみけり★★★
●多田 有花
紅白梅そろい咲きたる谷となる★★★★
紅梅も白梅も咲き揃う谷が、のどかで明るい。特に「谷」という地形が詩情を生んでいる。(高橋正子)
雨上がり日の差す谷に初音して★★★
ドライブウェイ下りつつ停め梅見かな★★★
●黒谷 光子
生垣の根方蕾める黄水仙★★★
春の靄山の麓の村覆う★★★
※俳句では「春の靄」のことを「霞」といい、「秋の靄」のことを「霧」と言います。(高橋正子)
盆梅に賑わう街へ小買物★★★
●小口 泰與
朝日射す田水や芹を摘む人よ★★★
遠嶺の彫の定かや凍返る★★★
落椿堰にとどまる日暮かな★★★
▼2/26
●小西 宏
ベランダの春や雀の水くぐる★★★★
ベランダの小さな水鉢であろうか、雀が水をくぐる。その所作は眺めて楽しいものだが、そこに春を感じ取ったのは、俳句の目。(高橋正子)
陽だまりの窪地に梅のつぼみ愛ず★★★
森奥より囀り漏れる明るい日★★★
●桑本 栄太郎
生駒嶺の彼方に遠く春の雪★★★
高槻の畝間に水の風光る★★★
丘上の一木のみや梅白し★★★
●河野 啓一
パン屑をつつく雀ら春浅し★★★
春セーター誕生祝いの嬉しさに★★★
褒められし春帽子嫁の見立てかな★★★
●多田 有花
春めくや初めて求む油彩額★★★
森に差す陽に三月の近きかな★★★
春の陽や夕べは雨になる気配★★★
●小川 和子
持ち物を芽木に掛け子らボール蹴る★★★
ふらここの児の背を大き掌の押せり★★★
ふらここのチェーンに日射煌けり★★★
●古田 敬二
白梅の五弁に雄蕊の影薄く★★★
春野菜優しく袋を膨らます★★★
手折るには程よき長さ菜花摘む★★★
●小口 泰與
夕映えの沼や梅の香ひろごれり★★★
春浅し満天の星美しや★★★
雪の間の丘の傾斜や座禅草★★★
▼2/25
●古田 敬二
咲きかけの白梅花弁に丸みあり★★★
風花やふるさと遠く思いけり★★★
蝌蚪の紐待つ山の池光けり★★★
●藤田 洋子
下萌に自転車を立て岸の風★★★★
きらめいて川は二月の空映す★★★
川うすく濁りて午後の二月光★★★
●小西 宏
春の夜の外の面厳しき風の音★★★
笹竹の朝日に震う春の冷え★★★
早春の風遮れば陽の満てる★★★
●桑本 栄太郎
春日さす天窓明るきオフィスかな★★★
春雪の橋を往く間にふぶきけり★★★
梅が香の空にふくらみ紅かざす★★★
●多田 有花
空色の絵具数本買いし春★★★★
納税を済ませ早春の街へ★★★
伊予柑食ぶ果汁に指を濡らしつつ★★★
●小川 和子
春浅き芝生へ子らの声翔ける★★★
バラ園の枝に赤味の差す新芽★★★
ひいふうみい白梅数えるほどひらく★★★
●小口 泰與
蓬摘む榛名富士より雲一朶★★★
山風を身に溢れさせ蓬摘む★★★
葉を浮かせ渦まく瀞やうららなり★★★
▼2/24
●桑本 栄太郎
大阪府三島郡とや梅の花★★★
天王山春の夕日に染まりけり★★★
西を向く民家の土塀や春夕焼★★★
●多田 有花
春光やがたんごとんと列車音★★★
車きれいに洗われて春の陽に★★★
梅三分咲き真っ黒な犬がゆく★★★
●河野 啓一
苗作り乙女椿の挿し穂採る★★★
夕霞み生駒山麓まで昏し★★★
梅一樹紅色淡く香を放ち★★★
●小口 泰與
釣竿の手元飛びかう虻二匹★★★
熊蜂の貌に手足に花粉かな★★★
飛び交いて花粉を被ずく小花蜂★★★