●添削2月④●

[2月24日~28日]

▼2/28

●桑本 栄太郎
春めきて襟足すっきり髪を切る★★★★
春宵となりしねぐらへ群れ鴉★★
夕日落つ嶺の茜や二月尽★★★

●小西 宏
早春のさくら木々立つまるい空★★★★
やわらかに竹の音する春うらら★★★
肌なでるかぜ陽光よ梅蕾★★★

●河野 啓一
池の面のきらきら揺れて二月尽★★★
芽柳に触れつつ行く日池巡る★★★
寒き日の吾旅なりき二月尽★★★

●井上 治代
採りたてのほうれん草の甘さかな★★★
水温む小川で鍬を洗いおり★★★
サラダにとレタス切る音春めきぬ★★★

●黒谷 光子
春の月まどかに上がり松の上★★★
時おりは背筋伸ばして青き踏む★★★
入相の鐘の余韻や二月尽く★★★

●多田 有花
蔓を刈る人のありけり春日和★★★
東屋に梅を眺めつ笛吹く人★★★
暖かと言い合いそのまま別れけり★★★

●祝 恵子
ぬかるみの道を通りて梅まつり★★★
花三椏曲がれば水車まわす水★★★★
二人してよもやま話竹の秋★★★

●小口 泰與
山風をたばねて赤城冴返る★★★
たんぽぽや風の中なる山上湖★★★
青麦の同じ方へと波打てり★★★

●高橋 秀之
沖待ちの船を隠すは春霞★★★
穏やかに寄りつき引いて春の波★★★
海峡を染める大空春夕焼け★★★

▼2/27

●川名ますみ
鉢の梅やさしき影を絨毯に★★★
一輪のことりと落ちて梅に音★★★
花のいろ芽のいろ揺らし春ショール★★★

●河野 啓一
流氷の岸辺に寄せてオホーツク★★★
薄氷解けたる池の魚の影★★★
ヒヤシンス雨上がりたる街の明るさに★★★

●小西 宏
蹴る足に水したたらせ鴨の春★★★
陽の谷(やつ)に入りて知りけり梅一樹★★★
丘高き畑に雲浮き梅の影★★★

●古田 敬二
濡れた目で遠くに菜の花見てる牛★★★
春昼やホルスタインの背の黒光★★★
はくれんの蕾や天にざわめけり★★★★
はくれんの蕾や天にざわめける(正子添削)
はくれんの数多の蕾が膨らんできた。空の中でざわめいている感じだ。静かなものも、花の季節は落ち着かない。(高橋正子)

●桑本 栄太郎
天窓の春日こぼれし広場かな★★★
ごみ袋持ちて散歩や春きざす★★★
紅梅の丸くふくらみつぼみけり★★★

●多田 有花
紅白梅そろい咲きたる谷となる★★★★
紅梅も白梅も咲き揃う谷が、のどかで明るい。特に「谷」という地形が詩情を生んでいる。(高橋正子)

雨上がり日の差す谷に初音して★★★
ドライブウェイ下りつつ停め梅見かな★★★

●黒谷 光子
生垣の根方蕾める黄水仙★★★
春の靄山の麓の村覆う★★★
※俳句では「春の靄」のことを「霞」といい、「秋の靄」のことを「霧」と言います。(高橋正子)

盆梅に賑わう街へ小買物★★★

●小口 泰與
朝日射す田水や芹を摘む人よ★★★
遠嶺の彫の定かや凍返る★★★
落椿堰にとどまる日暮かな★★★

▼2/26

●小西 宏
ベランダの春や雀の水くぐる★★★★
ベランダの小さな水鉢であろうか、雀が水をくぐる。その所作は眺めて楽しいものだが、そこに春を感じ取ったのは、俳句の目。(高橋正子)

陽だまりの窪地に梅のつぼみ愛ず★★★
森奥より囀り漏れる明るい日★★★

●桑本 栄太郎
生駒嶺の彼方に遠く春の雪★★★
高槻の畝間に水の風光る★★★
丘上の一木のみや梅白し★★★

●河野 啓一
パン屑をつつく雀ら春浅し★★★
春セーター誕生祝いの嬉しさに★★★
褒められし春帽子嫁の見立てかな★★★

●多田 有花
春めくや初めて求む油彩額★★★
森に差す陽に三月の近きかな★★★
春の陽や夕べは雨になる気配★★★

●小川 和子
持ち物を芽木に掛け子らボール蹴る★★★
ふらここの児の背を大き掌の押せり★★★
ふらここのチェーンに日射煌けり★★★

●古田 敬二
白梅の五弁に雄蕊の影薄く★★★
春野菜優しく袋を膨らます★★★
手折るには程よき長さ菜花摘む★★★

●小口 泰與
夕映えの沼や梅の香ひろごれり★★★
春浅し満天の星美しや★★★
雪の間の丘の傾斜や座禅草★★★

▼2/25

●古田 敬二
咲きかけの白梅花弁に丸みあり★★★
風花やふるさと遠く思いけり★★★
蝌蚪の紐待つ山の池光けり★★★

●藤田 洋子
下萌に自転車を立て岸の風★★★★
きらめいて川は二月の空映す★★★
川うすく濁りて午後の二月光★★★

●小西 宏
春の夜の外の面厳しき風の音★★★
笹竹の朝日に震う春の冷え★★★
早春の風遮れば陽の満てる★★★

●桑本 栄太郎
春日さす天窓明るきオフィスかな★★★
春雪の橋を往く間にふぶきけり★★★
梅が香の空にふくらみ紅かざす★★★

●多田 有花
空色の絵具数本買いし春★★★★
納税を済ませ早春の街へ★★★
伊予柑食ぶ果汁に指を濡らしつつ★★★

●小川 和子
春浅き芝生へ子らの声翔ける★★★
バラ園の枝に赤味の差す新芽★★★
ひいふうみい白梅数えるほどひらく★★★

●小口 泰與
蓬摘む榛名富士より雲一朶★★★
山風を身に溢れさせ蓬摘む★★★
葉を浮かせ渦まく瀞やうららなり★★★

▼2/24

●桑本 栄太郎
大阪府三島郡とや梅の花★★★
天王山春の夕日に染まりけり★★★
西を向く民家の土塀や春夕焼★★★

●多田 有花
春光やがたんごとんと列車音★★★
車きれいに洗われて春の陽に★★★
梅三分咲き真っ黒な犬がゆく★★★

●河野 啓一
苗作り乙女椿の挿し穂採る★★★
夕霞み生駒山麓まで昏し★★★
梅一樹紅色淡く香を放ち★★★

●小口 泰與
釣竿の手元飛びかう虻二匹★★★
熊蜂の貌に手足に花粉かな★★★
飛び交いて花粉を被ずく小花蜂★★★

●添削2月③●

[2月17日~23日]

▼2/23

●藤田裕子
夕闇をほっと灯せり紅椿★★★
紅椿陽に向き蕊の金色に★★★
秒針音余寒の部屋を刻みおり★★★

●桑本 栄太郎
登校の列の影為し凍返る★★★★
遅霜の屋根に連なる駐車場★★★
芽柳の仄かに青み土手の風★★★

●多田 有花
ジョギングの人紅梅の坂のぼる★★★
ある山はその影にあり春の雲★★★
頂に吹く風確かに春の風★★★

●古田 敬二
春耕やそこだけ地球は柔らかし★★★
地に落ちるまでの長さよ春の雪★★★
たちまちに地に姿消す春の雪★★★

●迫田 和代
陽を浴びて庭石の傍蕗の薹★★★
瀬戸内の汐切り泳ぐ細魚かな★★★
隅っこに汚れた雪の明るい田★★★

●小口 泰與
山風に逆らいつつも揚雲雀★★★
野良猫や雉の鋭声の高らかに★★★
榛名嶺の彫の豊かや揚雲雀★★★★
日ごと強くなってゆく春の日に榛名山の山襞が陰影深くなる。雲雀が空高く揚がり、意気揚々の様。春の日差しに充ちた句。(高橋正子)

▼2/22

●桑本 栄太郎
<神戸港>
クレーンの船に荷降ろす春の潮★★★
春潮や水面輝きふくらみぬ★★★★
瀬戸内海の春潮は、水面がゆったりと膨らんで寄せてくる感じがするのは事実。このやわらかな膨らみに日の輝きが加わると「春潮」も実にゆたかな潮となる。(高橋正子)

春潮の船の起重機神戸港★★★

●佃 康水
夫婦して一樹撮り合う梅赤し★★★ 
草萌えの土手へ子犬の息弾む★★★ 
水底に青き藻の透け春の川★★★

●小西 宏
駅に立てば遠き甍の梅霞★★★
春の雲浮かんで丸き昼の月★★★
黒犬がピンクの服で春歩く★★★

●多田 有花
春の曙遠ざかる救急車の音★★★
かさこそと二月の森の白腹は★★★
事故現場供えられたる内裏雛★★★

●黒谷 光子
春の川村の真中を光りつつ★★★★
のどかなで平和な村。村の真ん中を緩やかに光りながら流れる春の川は、皆の生活の中に愛される川。「村の真中」であるのがいい。(高橋正子)

堰越える春水光りつ奏でつつ★★★
一村を潤し何処へ春の川★★★

●小口 泰與
さえずりや喉をうるおす五色飴★★★
雪の間の畝に鳶の急降下★★★
春嵐餌を争う鴉かな★★★

●河野 啓一
枯れ枝に三々五々と春の鳥★★★
黄水仙つぼみは上を花伏し目★★★
春雪の消えし箕面の山であり★★★

▼2/21

●古田 敬二
菜花摘む昼餉のパスタに足るほどに★★★★
一人か二人の昼餉であろう。少しあれば足りる菜花である。茹でられて色鮮やかな菜花は春の彩りとして楽しめる。「足るほど」の慎ましさがいい。(高橋正子)

春蘭を見れば楽しき日となりぬ★★★
芽吹き待つ木立の向こう人の声★★★

●小西 宏
浅春の夜の沈沈と肩に触るる★★★
早春の帽子に眠る乳母車★★★
春の風やがて収まり鳥の声★★★

●高橋 秀之
大空の星の輝き春浅し★★★
春の月周りに輝く星数多★★★
歩き行く夜の帰宅路春寒し★★★

●桑本 栄太郎
春きざすポイント五倍の商店街★★★
カーテンの外は日溜まり春きざす★★★
青空につづく茜や春の宵★★★

●佃 康水
広島元安川とその周辺
橋桁へ淡き藻草や水温む★★★
囀りや川へ伸びゆく太き枝★★★
学徒碑へ枝飛び交いて囀れり★★★  

●祝 恵子
二ン月や桜盛られし美容室★★★
雲雀鳴く芝養生の土手傾斜★★★
ただ今芝の養生中の土手。芝はまだらに芽生えつつあるのか。土手の傾斜に空から囀りをこぼす雲雀。風はまだ冷たいが、気持ちはのびやか。(高橋正子)

霞む山川舟音させ波を連れ★★★

●多田 有花
梅開く遠目に紅く見ゆるほど★★★
陽の中で見る遠山の春の雪★★★
淡雪がふわりふわりと針葉樹★★★

●黒谷 光子
降るほどに積もらぬことも春の雪★★★
春雪を見るに時おり寄る窓辺★★★
雪の多い湖北。春の雪が積もるか積もらないか。降りざまを時に窓辺に寄って見る。はらはらと降る雪も、颯々と降る雪も、雪の降る様をついつい見てみたくなるのも俳句の心というものか。(高橋正子)

春雪の続く予報や豆を煮る★★★

●小口 泰與
梅林のつづく堤や家遠し★★★
数隻の舟を舫いし風光る★★★
榛名嶺の霞被きぬ里は晴★★★

▼2/20

●小西 宏
淡雪の深みに浮かぶ梅の苑★★★
休耕の畑の白さや春の雪★★★
里山の崖なだらかに斑雪★★★

●桑本 栄太郎
買物の妻を待つ間や春眠し★★★
柔らかに嶺の連なり春の宵★★★
枝先の茜に影や春の宵★★★

●黒谷 光子
うっすらと木々の装い春の雪★★★
小督読む平家の講座春の雪★★★
春雪の夜を飛機の音くぐもれる★★★

●多田 有花
遠山のくっきりと見え冴返る★★★★
山向こう摂津丹波の冴返る★★★
傾ける日に梅が枝を差し伸べて★★★

●河野 啓一
早朝の梅林小鳥と青空と★★★
梅林につぼみ膨らみ天守閣★★★
白と黄に咲いてさざめく庭水仙★★★

●古田 敬二
薄氷を翳せば光零れけり★★★
梅開くひいふうみいよう数えけり★★★
開花待つ春蘭蕾丈揃え★★★

●迫田 和代
菜の花を橋を渡って摘み帰る★★★★
菜の花は、橋を渡った向こう岸に咲いている。普段自宅の窓から見えている菜の花かもしれない。摘みとった菜の花は身近に活けて楽しまれたことであろう。(高橋正子)

空仰ぎ前と違った春の空★★★
並木道春芽膨らみみどり増し★★★

●小口 泰與
春の風木道天へ続きけり★★★
春なれや利根の川風変わりいて★★★
ほつほつとばらの新芽のいでにけり★★★

▼2/19

●佃 康水
新パソコン来てより苦戦山笑う★★★
前撮りの花嫁白梅(うめ)へ歩み寄る★★★
虎杖の芽吹き野川の水豊か★★★

●黒谷 光子
ことことと玻璃戸の鳴りて春浅し★★★
大枝を剪り壺に挿す紅椿★★★
壺に挿す紅き椿の蕾がち★★★

●桑本 栄太郎
芽吹く枝の赤く艶めく今朝の雨★★★
枝先の朱色滲みし雨水かな★★★
階段の川と流るる春の雨★★★

●古田 敬二
指先に痛み走れり余寒かな★★★
咲きかけの花弁震える余寒かな★★★
両端のとんがる月や冴え返る★★★

●河野 啓一
芯黒く白磁に溢れ金盞花★★★

明るくて黄水仙生きる喜びに★★★★
黄水仙は、白い水仙に遅れて早春に咲きだす。その鮮やかな黄色い色が元気をくれて、生きる喜びになっている。素晴らしいことだ。(高橋正子)

すさまじき隕石春の衝撃波★★★

●多田 有花
春雪を戴く六甲山仰ぐ★★★
雨あがり春北風鳴らす明けの窓★★★
街の音消して降り来る春の雪★★★

●小口 泰與
山風の柔くなりたり厩出し★★★
雪の間の初々しきや蕗の薹★★★
榛名嶺の空に春星あふれ出で★★★

▼2/18

●高橋 秀之
春時雨霞む沖には貨物船★★★
早春の雨に包まれ遠き山★★★
夕暮れて梅の蕾に雨が落つ★★★

●桑本 栄太郎
西山の春の驟雨にけぶりけり★★★
丘に沿い傾ぐ竹笹春の雨★★★
坂道の瀬波となりぬ春驟雨★★★

●多田 有花
軽鴨や集いて春眠楽しめり★★★
春寒に新駅ビルの立ち上がる★★★
早春の大阪湾に船数多★★★

●河野 啓一
賑わいて人工ゲレンデ春の雪★★★
春霖の温かき風運び来る★★★
梅の香を閉じ込めるごと朝の雨★★★

●祝 恵子
春の雪まつ毛にふわりまたふわり★★★
のどかなるお宮参りや鈴のなる★★★
竹を風さわさわ音させ春来たる★★★★
春風が竹をそよがす音が「さわさわ」である。竹の葉が触れあいそよぐ、「やわらかさ」の感覚が春をうまく表している。(高橋正子)

●小口 泰與
石投げて湖狭くせる日永かな★★★
渓流の瀞に日影や春の雲★★★
春霞ほこと湧きけり湖の奥★★★

▼2/17

●高橋 秀之
大空に薄く下弦の春の月★★★
紅梅のひとつふたつと枝の先★★★
対岸に船の灯火冴え返る★★★

●川名ますみ
しだれ梅なれど空指す一輪に★★★
浅春の客人を待ち煮染め炊く★★★
おにしめに莢隠元のみどりの香★★★

●小西 宏
春のかげ曇天近く漂える★★★
柔らかに桃色ひろげ梅蕾★★★
どんぐりの殻割れ土に白い角★★★

●桑本 栄太郎
春北風の四条大橋日差しけり★★★
珈琲館へ連れの舞子の春めける★★★
堰堤に沿い鴨川の春北風★★★

●藤田裕子
椿祭りの今朝春雪の手に消ゆる★★★
梅ひらく米寿の母の笑み零れ★★★
猫柳光り膨らむ川べりを★★★

●黒谷 光子
芽柳の枝垂れゆたかに池の辺に★★★
春雪の舞う神宮の朱の鳥居★★★
能楽堂出て浅春の風の中★★★★
能を鑑賞して外に出れば、春まだ浅い風が吹く。肌寒い風に能の余韻はほっこりと心を占めている。(高橋正子)

●河野 啓一
冴え返る給湯管も用なさず★★★
早春の海見下ろして六甲山★★★
春浅し鳥影も見ず野の池に★★★

●小口 泰與
春光やあわき色あい変り玉★★★★
永き日や日矢を浴びたる牧の牛★★★
一分の診療を待つ日永かな★★★

●添削2月②●

[2月10日~16日]

▼2/16

●黒谷 光子
苔むしし古寺の石垣春の雪★★★
墨塗らる門院の御影冴え返る★★★
泉水を臨み手かざす春火鉢★★

●佃 康水
残雪の光りへ杉の長き影★★★
ゆったりと四肢伸ぶ亀へ水温む★★★
新駅の普請の音へ春の雪★★★★

●小西 宏
ひと雨の土艶やかや梅の苑★★★
笹吹かれ青天深き春の寒★★★
春風の池かがやかせ寄せ来たる★★★

●河野 啓一
風花の舞うや朝日にきらきらと★★★
春寒し日差しの中に杖突きて★★★
けなげなる子持雀の太さかな★★★

●桑本 栄太郎
突風の嶺から里へ春の雪★★★
ワイパーに刷かれしずくや春の雪★★★
竹林の笹に春雪しづりけり★★★

●多田 有花
快晴の余寒の朝へ干し物を★★★★
春雪に姿隠して北の山★★★
早春やカリフォルニアの柘榴食ぶ★★★

●迫田 和代
我儘に朝湯を浴びる春の風邪★★
咲いて香り散って香れる梅日和★★★
春が来て窓からの音ゆったりと★★★

●小口 泰與
うららかに和紙に包まる和菓子かな★★★★(正子添削)
ほのかに透ける和紙に和菓子が包まれ、うららかな春そのもの。透けるものの美しさは、日本的な美であろう。(高橋正子)

空を見よ春のあけぼの赫に染め★★★
思うこと春朝焼けの紅の色★★★

▼2/15

●古田 敬二
土を掻けば団栗湿りて芽吹きけり★★★
梅林の一角先駆け咲く気配★★★
梅一輪咲き初む風の緩き日に★★★

●桑本 栄太郎
陽光のぱつと厨へ春きざす★★★
ワイパーの時折傾ぎ春しぐれ★★★
遅き日や雑木林の陽を背負い★★★

●多田 有花
春の雨春をすすめる雨の降る★★★
カラフルに並ぶ門先春雨傘★★★
雨の日の増えし播磨の春めきぬ★★★

●川名ますみ
川縁のしらうめ雨に耀きぬ★★★
白梅に川面に雨の降り注ぐ★★★
多摩川の流れて岸に梅真白★★★★
多摩川の流れと白梅の清潔さが、早春らしさを醸している。(高橋正子)

●河野 啓一
-熊本へ小旅行続-
高原の宿春空の広さかな★★★
春雨のつれづれ肥後の手毬唄★★★
春霖にけむる一望草千里★★★

●小口 泰與
摘草やきらら耀う水掬い★★★
春の日や金平糖の色さやか★★★
春暁や西に満月煌々と★★★

▼2/14

●小西 宏
木々の芽の日に日に太し明るさに★★★
薄っすらと蕾みどりに梅の苑★★★
土塊に緑まるまる蕗の薹★★★

●桑本 栄太郎
青空のうす雲ながれ丘の梅★★★
山茶花の地に花びらの囲みけり★★★
春北風や忽ち雨の降りきたる★★★

●多田 有花
春の眠り暁のころに目覚めけり★★★
春なれや播州平野を囲む山★★★
宅配で食材届く春の昼★★★

●古田 敬二
咲いたねと声掛け屈むいぬふぐり★★★
切り株に座して春の句を探す★★★
頬に優し樹間を縫って春の風★★★

●小口 泰與
利根川の流れ耀う春の朝★★★
うららなる漆細工の食器かな★★★
嬬恋の山や春星かぎりなし★★★★
嬬恋の名が、「春星かぎりなし」に効果的に働いている。嬬恋村の春星の夜が潤み情感豊か。(高橋正子)

▼2/13

●小西 宏
はち切れて白生まれんと梅蕾★★★
風吹くといえども野辺の麗らかや★★★
児の遊ぶ日差しに芝の青芽ぐむ★★★★
「青芽ぐむ」が、児の可愛らしさとよくマッチして芽ぐむ季節が楽しくなっている。(高橋正子)

●桑本 栄太郎
春北風にシャトル流るるバトミントン★★★
まんさくの空に綻び散らしけり★★★
竹林の千々に傾ぐや春北風★★★

●河野 啓一
阿蘇熊本へ一泊旅行
遠霞み窓覗き合うバスの旅★★★
春雨や九重連山阿蘇五岳★★★
花の頃また訪ねたき肥後の国★★★

●多田 有花
雨あがり空の青さの春めけり★★★
紅梅のしべにゆうべの雨しずく★★★
見上げれば青き空へと梅ひらく★★★

●迫田 和代
テーブルの白磁の花瓶菜の花を★★★
春の雨紫にけぶる道を行く★★★
春の海霞んだ沖から船の影★★★

●小口 泰與
早春の湖やわらかく耀へり★★★
蕗味噌をたっぷり腹へ魚焼く★★★
産土の赤城榛名と雪解かな★★★

▼2/12

●桑本 栄太郎
竹林の節々白く冴え返る★★★★
ほつほつとものの芽青む朝日かな★★★
蘂堅く風に香りて梅ひらく★★★

●古田 敬二
合格のベル鳴る春の陽の眩し★★★
忘れられし野良着に跳ねる春霰★★★
鳥多し春を探しに森に入る★★★

●佃 康水
(広島三原の達磨市・植木市)2月8~10日   
芽吹き山そびらに満の達磨売る★★★★  
植木市道へ蕾の枝張れる★★★
暮れ遅し魚網繕う船留まり★★★

●多田 有花
<鎌倉山行者道を歩く>
磨崖仏二月の日差しを正面に★★★★
春泥の獣の跡を踏んでゆく★★★★
<札幌ナンバーのライダーを目撃>
旅人は北の国から春淡し★★★

●川名ますみ
朝食の席にひかりと梅の香と★★★★
テーブルに朝陽の来たり梅が香も★★★
スプーンを置けば梅の香あたらしき★★★

●黒谷 光子
紅梅の枝を差し交す空は青★★★
紅梅の枝も蕾も紅の濃き★★★
薄氷のままに蹲踞黄昏るる★★★

●小口 泰與
うららかやボートの色の新たなり★★★
利根川の波荒ぶるや蕗の薹★★★
雪間より日の出の紅や春炬燵★★★

▼2/11

●古田 敬二
梅一輪見知らぬ人と愛でにけり★★★
逢いたくて来た道帰る梅一輪★★★

耕せし畑に踊る春霰★★★★
耕し終えた畑に、急に春の霰が降ってきて、土の凹凸に当たってか、跳ねて踊る。「踊る」霰の様子が見える。(高橋正子)

●桑本 栄太郎
天地(あめつち)の日差しうらうら建国日★★★
風止みてよりの陽射しや春の雲★★★
雲ながれ天に流るる春の星★★★

●多田 有花
<加西市鎌倉山登山>
石仏を辿り早春行者道★★★★
小さき山連なる先の海霞む★★★
風花や法起菩薩の頂に★★★

●小口 泰與
嬬恋の川の流れも春べかな★★★
春光や山麓の牧ひろびろと★★★
忽然と風音変わり凍返る★★★

▼2/10

●古田 敬二
どの枝も膨らむ蕾目覚めけり★★★
野良をゆくしなやかな黒恋の猫★★★
あぜ道の小さき星よイヌフグリ★★★

●小西 宏
竹林の青深く揺れ春の風★★★
浅き春ひよどりの声空に流る★★★
丹沢の春霞なる青き峰★★★

●桑本 栄太郎
横風の陽射しの中を春の雪★★★
朝日射し枝に花咲く春の雪★★★
ほつほつとほほに春雪夜の家路★★★

●多田 有花
川を生む山の重なり春初め★★★
啄木鳥の奏でし音に春動く★★★

汲まれたる桶それぞれの薄氷★★★★
木桶に汲まれた水であろう。どの桶にも桶の木肌を透かして薄く氷が張っている。一つの桶でなく、「それぞれ」の桶があってリズミカルな面白さがある。(高橋正子)

●河野 啓一
雲二つ結べる春の飛行機雲★★★
冴え返る長き歴史や建国日★★★
縁薄いバレンタインの贈りもの★★★

●小口 泰與
春めくや越後駄菓子のはっか糖★★★
名にし負う会津駄菓子やうららけし★★★
長閑さや飴の中から当りくじ★★★

●添削2月①●

[2月1日~9日]

▼2/9

●高橋 秀之
一皿に三尾並んで目刺かな★★★
春寒し友と集いの夜の宴★★★
春となって、友と集い楽しい夜の宴であるが、体のどこか寒い。うすら寒い春の夜、なんとはなしの人の悲哀がある。(高橋正子)

声もなく目を閉じ電車の受験生★★★

●佃 康水
はらからと再会約す梅の寺★★★
集いゆく車窓へ瀬戸の春霞★★★
海光へ熟れし八朔日を弾く★★★

●桑本 栄太郎
目覚むればうすき明かりや春障子★★★
街角のビルに風巻く余寒かな★★★
春雪と云えど遠嶺の陽射しけり★★★

●多田 有花
いつまでもたどり着けない春の夢★★★
青竹の切り口揃う余寒かな★★★
日当たりのよき斜面から梅開く★★★

●黒谷 光子
春雪に日裏日表くっきりと★★★
靴跡の先ず土を見せ春の雪★★★
春雪に日差し明るき厨窓★★★

●小口 泰與
山風に逆らいつつも麦を踏む★★★
雪の間のほうれん草へ朝日かな★★★
公魚やセシウム出でてどっちらけ★★

▼2/8

●古田 敬二
走り根の大地へ太く春立てり★★★★
春立ちて木立の影も濃くなりぬ★★★
ほつほつと白きもの見え梅林★★★

●小西 宏
白梅の蕾みどりに枝の直(なお)★★★
一木に梅咲いて風なお寒し★★★
浅春の風寒ければ大き富士★★★

●桑本 栄太郎
梅ひらくつぼみ眺めつ空仰ぐ★★★
枝ごとの艶めき芽吹く雪やなぎ★★★
春の雪傘をさす間に陽射しけり★★★

●藤田裕子
遠き日も透くことうれし葛湯掻く★★★
遠山に春雪かがやき街始動★★★
畑に群れ菜の花ひといろ黄の淡し★★★

●多田 有花
風花の彼方に海の光りけり★★★★
風花は晴れていながら舞う雪片のことであるが、風花の舞う日の天候をそのまま描写して、景色が鮮明である。このところの冷え込みに風花が舞う日となったが、海の明るさに「春遠からじ」と思える。(高橋正子)

まだ咲かぬ梅林歩く冴返る★★★
風やんで寒のもどりを残しゆく★★★

●河野 啓一
冬菜サラダ妻の自慢の自家栽培★★★
冴え返る陽のみ明るき朝の刻★★★
春浅き浜辺望めば海光る★★★

●迫田 和代
何となくいいことの予感春を待つ★★★
土を噛むごと野に咲くタンポポや★★★
瀬戸内の細魚の刺身ガラス器に★★★

●上島 祥子
スケート場常に前行く小学生★★★
ゆっくりとリンクを回る母娘かな★★★
スケーター踏み出す一歩に迷いなし★★★

●小口 泰與
あわあわと淡雪解けし棚田かな★★★
懐かしき会津駄菓子や春兆す★★★
利根川の流れ耀う春の朝★★★

▼2/7

●川名ますみ
療苑に伸び続けたる枯木立★★★
土近きよりひらき初む枝垂梅★★★
春来る大き役者のゆきし朝★★★

●桑本 栄太郎
春浅し梢つんつん青空に★★★
枝揺らし雨滴はらえり春の鳥★★★
うつすらと嶺に春雪雲去りぬ★★★

●小西 宏
雪解けの庭に皮靴並べ干す★★★
春風吹き池面はげしく輝けり★★★
鴉群れ乱れ吹き飛ぶ春の風★★★

●黒谷 光子
春寒の日差しの中を三輪車★★★

鐘の音に児ら寄ってくる春の夕★★★★
春の夕べ、まだ外で遊んでいた幼い子たちが鐘の音に不思議そうに、もの珍しげに寄ってくる。鐘を撞く人と幼い子のほのぼのとした世界が童画を見るようだ。(高橋正子)

春浅し両手に包む小さき手★★★

●多田 有花
白梅の一枝置きし昼の膳★★★
紅梅の南に向いてまず開く★★★
春光をきらきら返し池の水★★★

●河野 啓一
早春の光纏いて鳥は樹に★★★
丘に立ち港望めば春の潮★★★
春雨に濡れてきらきら庭の樹々★★★

●小口 泰與
山風に勢い勝る畦火かな★★★
ためらいて犬小屋みすう芝火かな★★★
今年また公魚釣の出来ぬかや★★★

▼2/6

●川名ますみ
朝澄みて枝垂れし先に梅一輪★★★
玻璃越しに梅の香どつと近寄れば★★★
近寄れば梅の香どつと玻璃を越え★★★

●高橋 秀之
水鳥の羽ばたきの音春空へ★★★★
冬の間も生きいきと暮らしていた水鳥が、北へ帰る日も近いのか、羽を広げ羽ばたきの音をさせる。春空へ向けて力強い羽ばたきである。(高橋正子)

春雨のライトに光る御堂筋★★★
大根の熱き味噌汁椀一杯★★★

●多田 有花
春の雨濡らす香住へ蟹食べに★★★
春早し大きな蟹に迎えられ★★★
春雨は沖よりあがり日本海★★★

●桑本 栄太郎
春迎へ光り耀く里の屋根★★★
鴨川の堰の耀き春迎ふ★★★
たちまちに春泥なりし今朝の雨★★★

●上島 祥子
暖かな夜明けの光厨窓★★★
飼い猫の膝に合わせて丸くなり★★★
スケートや吾子のようにままならず★★★

●河野 啓一
春雨や街の車も濡れながら★★★
雨もよい門辺に芽吹く黄水仙★★★
雨を得て芽も緩みくるチューリップ★★★

●黒谷 光子
春雪の予報に畑のもの囲う★★★
葱を煮て白根甘しを言い合えり★★★
春炬燵玻璃に日の差し雨上がる★★★

●井上 治代
山茶花の花びら数多散り敷きぬ★★★
霜焼けの耳たぶ少しあたたかし★★★

早も咲ける菜の花の丈低かりし★★★★
春も暦ばかりと思えるのに、早も菜の花が咲いて黄色い光を返している。先駆けの菜の花らしく「丈低かりし」であって、実在感がある花となっている。(高橋正子)

●小口 泰與
赤城嶺の彫の深さや犬ふぐり★★★
片栗の花や越後の空のどか★★★
雪の間に巨大な影やクロッカス★★★

▼2/5

●河野 啓一
数えれば愛しきつぼみ庭椿★★★
春浅き庭の鳥声烏鷺囲む★★★
チューリップ芽生え可愛いや雨もよい★★★

●川名ますみ
どの枝も伸び続けたる枯木立★★★
山茶花の散つて明るき家路なり★★★

春隣窓辺のパセリ少し摘む★★★★
窓辺のパセリは、まだまだ小さく縮こまっているが、春の兆しを感じて少し育ってきているように思える。少しだけ摘んた。小さな収穫の喜びと春がそこまで着ている嬉しさが読みとれる。(高橋正子)

●桑本 栄太郎
立春の湾処に人の釣りの輪に★★★
川浪のきらきら耀き寒明ける★★★
嶺の背にぽつかり雲の春立てり★★★

●小西 宏
火の気なき炬燵に座り戦後史読む★★★
艶やかに木の芽ぬれおり温き雨★★★
ゆきやなぎ花芽みどりの霞なす★★★

●多田 有花
立春の塩味まんじゅう緑茶かな★★★
ストーブを点けたり消したり寒明ける★★★
頂に薄き日差しや春寒し★★★

●小口 泰與
榛名嶺に淡き夕映えミモザかな★★★
まんさくや浅間南面斑なり★★★★
浅間山の南面は雪が解け始めたところもあるのだろう、斑になっている。その山を背景に春を先駆けるまんさくが咲いている。色彩的にも美しい早春の景色である。(高橋正子)

下萌えの河原の寒き夕べかな★★★

▼2/2

●古田 敬二
一閃の光となりてメジロ来る★★★
指先に快音折り取るブロッコリー★★★
葉に霜を載せて咲きかけイヌフグリ★★★
霜がまだ葉に固く置いているのに、もうイヌフグリが咲きかけた。霜の置いた小さな葉と青い小さな花が健気にも可憐だ。(高橋正子)

●川名ますみ
人参の剥く皮の香を語りけり★★★
挨拶は梅のつぼみの膨らみに★★★
母の指す先に一輪梅咲けり★★★

●小西 宏
紅梅の蕾の雨に色浮かぶ★★★
空の色春めき淡き峰の影★★★
水仙の断崖に海ひかり一筋★★★

●桑本 栄太郎
枝先の雨滴艶めき春近し★★★
二ン月の哀しくなりぬ今朝の雨★★★
スケボーの技を競いぬ春隣り★★★

●多田 有花
金色に塗りしキャンバス冬終わる★★★
摩尼車静かに回り冬尽きぬ★★★
鍵失くしありがたきかな寒ぬくし★★★

●下地 鉄
窓にみる街の灯びはや睦月★★★  
ミモザ咲く空の青さに色を染め★★★      
春菊の香りも味の一つかな★★★

●小口 泰與
薄氷の風に割られて離れけり★★★
日溜りのあちらこちらに冬芽かな★★★
隼の風を味方や利根河原★★★

▼2/1

●小西 宏
沼涸れて緑明るき竹林★★★
枯れ果てて蒲の穂綿の吹き積もる★★★
冬木の芽小雨滴たる暖かさ★★★

●黒谷 光子
菰巻の大松池に影落とす★★★★
菰が巻かれた大松。池に落とすその影も堂々とゆるぎない。堂々としたものの、普遍的な良さ。(高橋正子)

餌を撒かれ素早き動き鴨の群★★★
鴨群れる中の一羽は瑠璃光る★★★

●多田 有花
蝋梅に誘われ坂を下りにけり★★★
涸池に二羽の家鴨が水を飲む★★★
菜の花のはや開きおる春隣★★★

●桑本 栄太郎
カーテンを開けて玻璃透き寒緩む★★★
丘上の朝日燦々ニン月に★★★
中庭に声弾む子等日脚伸ぶ★★★

●小口 泰與
碧天や雪煙り起つ浅間山★★★
柿の蔕数多のこりし枯木かな★★★
山風に瀬頭荒れし氷柱かな★★★