●小口泰與
うぐいすの音色つむぐや偕楽園★★★
露天湯の春光ゆるる大あくび★★
春暖炉竹百幹のうねりかな★★★
●多田有花
春耕の音高らかに野に響く★★★★
春耕は、鍬を振るう耕しもあるが、この句は、耕運機。野に高らかにエンジンの音を響かせ、田を耕してゆく。耕運機にも生き生きとした働きがある。(高橋正子)
心地よき疲れの後の朝寝かな★★★
夕暮れの光に染まり梅林★★★
●河野啓一
土匂う花苗植えてふんわりと★★★
お手前のみどりの香たち春の午後★★★
桜便り東と西より来るらし★★★
●桑本栄太郎
春愁や夢の中まで仕事せる★★★
妻留守のラーメン啜る春の風邪★★★
春一日ラジオ聴きつつ眠りけり★★★
●小川和子
枝先まで小花連ねて雪やなぎ★★★
丘陵へ日は麗かに影を差す★★★
丘陵の四方へ春の香かすかなり★★
●小西 宏
雨吸って黒き球場芝萌える★★★
池の泥掻いて昼餉の雪柳★★★
夕暮れの逆光淡し梅の苑★★★
●川名ますみ
初ざくら写してポケットにしまう★★★★
「しまう」がいい。写し撮った初ざくらをうれしく、また大切に思う気持ちが一読伝わってくる。瀟洒な句だ。(高橋正子)
ケイタイに一輪だけの初ざくら★★★
歩き出す撮ったさくらをポケットに★★★
コメント
好きな句
初ざくら写してポケットにしまう/川名ますみ
今年初めて桜の開花に出合った。早速ケータイで撮影し、大事にポケットにしまう。ケータイをポケットにしまうことが桜花をしまうことにかかっている。また、一見字足らずのような独特のリズムが効果的で印象に残りました。
お礼
信之先生、正子先生、日々のご指導に感謝申し上げます。
啓一さま、「初ざくら」の句に嬉しいコメントを頂戴しましてありがとうございます。
東京では、早くも一輪二輪ほどの桜がひらいていました。いつも忙しそうな人々が、ふと立ち止まり、携帯電話のカメラを掲げて過ぎる様子、印象的でした。
お礼
正子先生、「初ざくら写してポケットにしまう」の句へご講評を頂きまして、ありがとうございます。年明け早々から、桜を仰いでは、花芽が大きくなった、色づいてきた、と待ち望んでおりました。初ざくら、嬉しゅうございます。