８月３１日（４名）
小口泰與
落人の田に群をなす赤蜻蛉★★★
めはじきやまま事遊び出来ぬ日日★★★
底紅やかっては蔵の連なりし★★★★
めはじきやまま事遊び出来ぬ日日★★★
底紅やかっては蔵の連なりし★★★★
廣田洋一
川べりの土手を染めたる芙蓉かな★★★
芙蓉閉づ帰りましょうと曲流れ★★★★
芙蓉閉づ帰りましょうと曲流れ★★★★
濃く薄く入り乱れたる葛の花★★★
多田有花
雲ひとつなき秋空が明けてゆく★★★
路地たどりゆけばここにも酔芙蓉★★★
桜紅葉元治の銘の石鳥居★★★★
路地たどりゆけばここにも酔芙蓉★★★
桜紅葉元治の銘の石鳥居★★★★
元治（げんじ）の年号は文久と慶應に挟まれた一年だけ。孝明天皇の時の年号で1864 年2月20日～1865年4月7日。その年は池田屋事件、など、幕末の事件がいろいろあった年。その年に建った石鳥居を桜紅葉がかざり、歴史の一幕を見ているようだ。（高橋正子）
桑本栄太郎
戦争とコロナと辞任八月果つ★★★
稲光なれど音なく雨降らず★★★★
雨降らず風の出でたり秋涼し★★★
稲光なれど音なく雨降らず★★★★
雨降らず風の出でたり秋涼し★★★
８月３０日（４名）
廣田洋一
蔓草の枯れ果てにけり秋日照（原句）
からからと蔓草枯れて秋日照★★★★（正子添削）
「枯れ果てた」様子が知りたいです。
秋日照色付き初めし桜の葉★★★
芙容咲く病に押され辞める人★★★
芙容咲く病に押され辞める人★★★
小口泰與
信濃名物佃煮の蝗かな★★★
あふれたる峡田棚田の赤とんぼ★★★★
鬼やんま雲乱れよる妙義山★★★
あふれたる峡田棚田の赤とんぼ★★★★
鬼やんま雲乱れよる妙義山★★★
多田有花
カンナ咲く踏切に電車さしかかる★★★
白壁に拳ほどなる栗の毬★★★★
仙人草川の堤の散歩道★★★
白壁に拳ほどなる栗の毬★★★★
仙人草川の堤の散歩道★★★
桑本栄太郎
京なれやちくりん良しと法師蝉（原句）
京なれやちくりんに鳴く法師蝉★★★★（正子添削）
ベランダの鉢に水遣る秋の夕★★★
月代やビルに燈ともる茜空（原句）
月代やビルの窓々燈がともる★★★★（正子添削）
「月代」は、月の出る前に東の空が白んで見えることを言う。そのころちょうどビルには燈がともるころとなり、淡い情感が漂う。（高橋正子）
８月２９日（５名）
小口泰與
鉦叩赤城の風に飲まれけり★★★
鬼やんま鬼押し出しの風に乗り★★★
馬追や碓氷峠の風の中★★★
鬼やんま鬼押し出しの風に乗り★★★
馬追や碓氷峠の風の中★★★
廣田洋一
帰宅促す曲の流れて酔芙蓉★★★
大根蒔く河川工事の音高し★★★
大根蒔く河川工事の音高し★★★
深々と切りたる畝や大根蒔く★★★★
大根を蒔く時期は、暑さが残る中、９月の声を聞くか聞かないころ。土をよく耕し、大根が深く育つよう畝を高くして種を蒔く。「深々と切りたる」なので、畝の落とす影もよく肥えた土の色も目に見えるようだ。（高橋正子）
多田有花
ぶらんこを漕ぐ足先に秋の空★★★★
壁際に木賊並べている新居★★★
秋空に流れる雲を見ていたり★★★
壁際に木賊並べている新居★★★
秋空に流れる雲を見ていたり★★★
桑本栄太郎
夜半忌の能勢の山なる初もみじ★★★
雷音の先行したる嶺の雲★★★★
秋風や怨嗟の声の永田町★★★
雷音の先行したる嶺の雲★★★★
秋風や怨嗟の声の永田町★★★
古田敬二
鍬休め遠く微かにちちろ啼く（原句）
鍬休めば遠く微かにちちろ啼く★★★★（正子添削）
歯科医院へ急ぐ地下鉄秋暑し★★★
マスク付けどの眼も美人秋暑し★★★
マスク付けどの眼も美人秋暑し★★★
８月２８日（４名）
小口泰與
ちちろ鳴く軽トラックの荷台かな★★★★
軽トラックは、いろいろ生活に密接に使われる。農作業用にも使われたりするので、収穫した野菜や、農機具などについて荷台に上ったのかもしれない。こんなところでと思う荷台に聞くこおろぎの声に親しさが湧く。（高橋正子）
機織や校庭に出づ昼休み★★★
邯鄲やシャター街の古里の街★★★
邯鄲やシャター街の古里の街★★★
廣田洋一
名を知らぬ秋の小花に佇みぬ★★★
中州をば覆わんばかり秋の草★★★
群ごとに色を違へる秋の草★★★
中州をば覆わんばかり秋の草★★★
群ごとに色を違へる秋の草★★★
多田有花
朝顔をプールの柵にこども園★★★
熟れ初めし無花果の木のそば通る（原句）
熟れ初めし無花果の木のそば通る（原句）
熟れ染めし無花果の木の匂いかな★★★★（正子添削）
無花果が熟れる頃は、「秋暑し」を実感するころ。熟れ始めた無花果の傍を通ると、無花果独特の葉の匂いがする。残る暑さのなかに嗅ぐ匂いに確かに「秋が来ている。（高橋正子）
自転車で稲田の向こうをゆく人よ★★★
自転車で稲田の向こうをゆく人よ★★★
桑本栄太郎
議事堂の空に辞任の秋の雷★★★
雨止みて部屋に残りぬ溽暑かな★★★
午後からの室内灯火や秋曇り★★★
雨止みて部屋に残りぬ溽暑かな★★★
午後からの室内灯火や秋曇り★★★
８月２７日（４名）
小口泰與
蟷螂の迷い出でたる厨かな★★★
夕さりのつくつく法師いざ去らば★★★
鈴虫や着飾り集うレストラン★★★★
夕さりのつくつく法師いざ去らば★★★
鈴虫や着飾り集うレストラン★★★★
多田有花
朝鮮朝顔咲く八月の団地★★★
鶏頭が神父の墓に供えられ★★★
虫の音や夜明けのバターコーヒーに★★★
鶏頭が神父の墓に供えられ★★★
虫の音や夜明けのバターコーヒーに★★★
廣田洋一
溝萩や明るき庭の百姓家★★★
川風に溝萩揺れる休み畑★★★
白萩の風吹き抜ける手水かな★★★★
川風に溝萩揺れる休み畑★★★
白萩の風吹き抜ける手水かな★★★★
白萩と手水の取り合わせが爽やか。白萩を吹いた風が手水の水を揺らす。白萩が、一つ二つ水にこぼれているかもしれない。白萩の清らかさがよく詠まれている。（高橋正子）
桑本栄太郎
秋愁や後期高齢今朝迎う★★★
蔓とつる絡みあいたり葛茂る★★★
秋蝉の峰の彼方の入日かな★★★★
蔓とつる絡みあいたり葛茂る★★★
秋蝉の峰の彼方の入日かな★★★★
８月２６日（４名）
小口泰與
松虫や畑のあわいに山の風★★★★
松虫は都市部は聞かれなくなったが、自然ゆかたなところでは、声が楽しめるようだ。畑の作物の間を山からの風が吹いて、その風に乗るように松虫の声が聞こえる。チンチロリンと鳴く声は、山の風にこそ聞けである。（高橋正子）
朝顔や三山の空雲も無し★★★★
はたはたや田川集いて利根川へ★★★
はたはたや田川集いて利根川へ★★★
廣田洋一
自粛せる日毎色濃く無花果かな★★★★
新型コロナウィスルの感染拡大がいつ収束するともわからないこの頃、自粛生活を余儀なくされている。その間にも秋の実りを知らせてくれる無花果が熟れ始めた。たらちねの母を思わせる実にやさしさをもらう。（高橋正子）
縁先のぶらぶら揺れる糸瓜かな★★★
豚肉と共に炒めし糸瓜かな★★★
縁先のぶらぶら揺れる糸瓜かな★★★
豚肉と共に炒めし糸瓜かな★★★
多田有花
八月の朝の川面を泳ぐ影★★★
蛇口よりぬるま湯の出る残暑★★★
白粉花鉄路に沿いて咲きにけり★★★★
白粉花鉄路に沿いて咲きにけり★★★★
桑本栄太郎
秋蝉のフィナーレならん競いけり★★★
目覚むれば入日茜や法師蝉★★★
星合の夜の待たるる入日かな★★★★
目覚むれば入日茜や法師蝉★★★
星合の夜の待たるる入日かな★★★★
８月２５日（５名）
小口泰與
あけぼのの覚満淵の秋野かな★★★
おにぎりを頬張り秋の瀬音かな★★★★
運慶の彫し筋肉稲の殿★★★
おにぎりを頬張り秋の瀬音かな★★★★
運慶の彫し筋肉稲の殿★★★
古田敬二
「こ」の一字「コロナ」に変換秋暑し★★★
猛烈な日差し茄子に水をやる★★★★
一時にはすでに深酔い酔芙蓉★★★
猛烈な日差し茄子に水をやる★★★★
一時にはすでに深酔い酔芙蓉★★★
廣田洋一
王位戦制しし棋聖秋扇★★★
白檀の香り残れる秋扇★★★★
墓詣義妹の墓も洗ひけり★★★
白檀の香り残れる秋扇★★★★
墓詣義妹の墓も洗ひけり★★★
多田有花
露草の青の清しく日の出待つ★★★★
露草は日の出前に咲き出して、昼頃に花は溶けるように消える。その咲いたばかりのすずやかな青い色で、露草の花は日の出を待っている。きよらかな青さが魅力。（高橋正子）
川を見る黄色きカンナに隣り合い★★★
店先に並ぶ小さき秋の薔薇★★★
店先に並ぶ小さき秋の薔薇★★★
桑本栄太郎
つぎつぎに名乗り出でたるつく法師★★★
ゑのころの風に埋もる売地かな★★★★
嶺の端の火照る日差しや秋入日★★★
ゑのころの風に埋もる売地かな★★★★
嶺の端の火照る日差しや秋入日★★★
８月２４日（５名）
小口泰與
鮞や渓流釣に没頭す★★★
子も真似て方言話す衣被★★★
野路の秋山羊三匹の川辺にて★★★★
子も真似て方言話す衣被★★★
野路の秋山羊三匹の川辺にて★★★★
廣田洋一
ジム通ひまだ手放さぬ秋日傘★★★
日の強きディズニーランドや秋日傘★★★★
秋日傘路面の熱は衰へず★★★
日の強きディズニーランドや秋日傘★★★★
秋日傘路面の熱は衰へず★★★
多田有花
午後の雨残暑を洗い流し過ぐ★★★
鳥脅し日ごとに増えて陽に輝く★★★★
鶏頭や二両の電車通り過ぎ★★★
鳥脅し日ごとに増えて陽に輝く★★★★
鶏頭や二両の電車通り過ぎ★★★
桑本栄太郎
目覚めたる寝床に聞くや威し銃★★★
湧き水の樋を伝うや添水鳴る★★★★
鳴き急ぎつっかえ居りぬ法師蝉★★★
湧き水の樋を伝うや添水鳴る★★★★
鳴き急ぎつっかえ居りぬ法師蝉★★★
古田敬二
昼目覚め壁の遺影と視線会う★★★
蜩を聞くことなくなる故郷遠し（原句）
蜩を聞くことなくなる故郷遠し（原句）
蜩を聞くことなくなり故郷遠し★★★★（正子添削）
みんみん蝉が鳴き弱ってくると蜩が鳴きはじめる。蜩の澄んだ声は、水がさざめくようでもある。故郷でよく聞いた蜩も都会暮らしでは聞くこともなくなった。故郷を遠く思うばかりである。（高橋正子）
十薬を煎じてコロナ遠ざける★★★
８月２３日（５名）
廣田洋一
朝日浴び少し伸びたる栗の毬★★★
幼子も在処を探す秋の蝉★★★★
鳴声のふと途切れたる秋の蝉★★★
幼子も在処を探す秋の蝉★★★★
鳴声のふと途切れたる秋の蝉★★★
小口泰與
朝なさな朝顔数う妻の顔★★★
秋澄むや石を巻き込む芝刈機★★★★
露草や長きすそ野へ雲を刷き★★★
秋澄むや石を巻き込む芝刈機★★★★
露草や長きすそ野へ雲を刷き★★★
多田有花
部屋抜ける秋めく風に吹かれおり★★★
咲く蓮に処暑の朝日の差し初めし★★★
咲く蓮に処暑の朝日の差し初めし★★★
葉も毬も栗の木はまだ青きまま★★★★
今栗の実は育ちの真っ最中。すこし黄ばんだものもあるが、葉の濃いみどりのなかに黄みどりの毬が目立つ。それら濃淡の緑は、「まだ青きまま」の木に夏の名残が見える。（高橋正子）
桑本栄太郎
コロナ禍の自粛疎きや秋暑し★★★
ついと前ついと前ゆく赤とんぼ★★★★
信濃路の雲の峰なる藤村忌★★★
ついと前ついと前ゆく赤とんぼ★★★★
信濃路の雲の峰なる藤村忌★★★
古田敬二
尺近き体長となる秋の鮎★★★
寸胴の秋鮎跳ねる籠の中★★★★
川底にきらり垢食む秋の鮎★★★
寸胴の秋鮎跳ねる籠の中★★★★
川底にきらり垢食む秋の鮎★★★
８月２２日（５名）
小口泰與
一村を治む背高泡立ち草★★★
噴煙の流るる先や蕎麦の花★★★
朝顔の朝日さえぎる窓辺かな★★★★
噴煙の流るる先や蕎麦の花★★★
朝顔の朝日さえぎる窓辺かな★★★★
多田有花
白粉花や河原の畑いつか消え★★★
表札の隣に朝顔を咲かせ★★★★
風通しの良さで残暑を乗り切りぬ★★★
表札の隣に朝顔を咲かせ★★★★
風通しの良さで残暑を乗り切りぬ★★★
廣田洋一
そろそろと姿を見せし柿の実かな★★★
枝豆の採られざるまま干乾びし★★★
枝豆の採られざるまま干乾びし★★★
コスモスや吹奏楽の音に揺れ★★★★
吹奏楽の練習の音が風に乗り戸外に響いてくる。コスモスは吹奏楽の溌剌とした快い音に合わせるかのように、風に揺れる。初秋の明るい季節が爽やかに詠まれている。（高橋正子）
桑本栄太郎
さるすべり実の多くなる秋の空★★★★
うつうつと眠気誘うや秋暑し★★★
黒雲のつどい忽ちいなびかり★★★
うつうつと眠気誘うや秋暑し★★★
黒雲のつどい忽ちいなびかり★★★
古田敬二
声もなし帰燕が二つ空に舞う★★★★
これから帰る燕。鳴くこともなく、日本の夏を惜しむように、二羽が空を舞っている。さびしくなるが、また来年の春を待とう。（高橋正子）
掘り起こす畝をコオロギ急ぎ足★★★★
枝豆を白き皿に盛る夕餉かな★★★
枝豆を白き皿に盛る夕餉かな★★★
８月２１日（５名）
小口泰與
三山の雲生まれける稲の花（原句）
三山に雲生まれけり稲の花★★★（正子添削）
床の間の水引の紅定かなり★★★
谷間へ山気満ちたり沢桔梗★★★★
谷間へ山気満ちたり沢桔梗★★★★
廣田洋一
ガレージの赤く染まりし秋夕焼（原句）
ガレージを赤く染めたり秋夕焼★★★★（正子添削）
切れを一ヶ所入れるのがいいと思います。
花火果て遠くに見ゆる富士の影★★★★
遠花火音は一拍遅れけり★★★
遠花火音は一拍遅れけり★★★
多田有花
いただきし秋茄子で作るラタトゥイユ★★★
白芙蓉咲く道山に向かう道★★★
白芙蓉咲く道山に向かう道★★★
まっすぐに鉄路の伸びる秋の朝★★★★
秋の朝は、ものがすっきりと見えるのがうれしい。鉄路がまっすぐに伸びているのも爽やかな気持ちにさせられる。余計な語がなく、表現も爽やか。（高橋正子）
桑本栄太郎
美しき声に目覚むや小鳥来る★★★
残暑とは言うに厳しき日差しかな★★★
お湿りと云うに足らずや喜雨となる★★★
残暑とは言うに厳しき日差しかな★★★
お湿りと云うに足らずや喜雨となる★★★
古田敬二
抜きし草たちまちしおれる残暑かな★★★
鮎一つはねて飛騨川夕ぐれる★★★★
早緑の枝豆にある塩白し★★★★
鮎一つはねて飛騨川夕ぐれる★★★★
早緑の枝豆にある塩白し★★★★
コメント
御礼
高橋正子先生
８月２１日の投句「稲の花」句を強い切に直して頂き、すっきりとした句になりました。有難う御座います。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
御礼
高橋正子先生
いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
8月21日の「ガレージの赤く染まりし秋夕焼」を「ガレージを赤く染めたり秋夕焼」と添削して頂き有難う御座います。
切れ字が入ったことにより、すっきりしました。今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます。
御礼
高橋正子先生
いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
8月30日の蔓草の枯れ果てにけり秋日照」を「からからと蔓草枯れて秋日照」と添削して頂き有難う御座います。
枯れた様子が良く見える句になりました。今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます。