8月21日~31日


8月31日(3名)

小口泰與
あさがおや焼き饅頭の味噌の出来★★★
上州の小泉稲荷秋桜★★★
今朝赤城くっきり見ゆや秋茜★★★★

廣田洋一
竿持ちて鮭の群待つ浦日和★★★★
鮭切身塩味薄く焼きにけり★★★
鮭上る思ひ詰めたる背波立て★★★

桑本栄太郎
土の香に目覚む朝や秋驟雨★★★
哀しみの数多過ぎ居り八月尽★★★

雷雨去りたちまち風の虫の闇(原句)
雷雨去りたちまち風ある虫の闇★★★★(正子添削例)
「闇」に掛かるのが「風の」「虫の」と「の」が多用されて、調べはきれいなのですが、句がくっきりしなく、観念的になっています。そのところを工夫が必要と思います。
雷雨の間は、ひっそりとしていた虫も雷雨が去ると、真暗闇に風が吹き、虫が盛んに鳴き出す。自然の現象に敏感な秋の虫である。(高橋正子)

8月30日(4名)

小口泰與
紺碧の暁の赤城や秋あかね★★★
露草や老いの手助け猫車★★★★
蒼天に雲ひと刷けや花芙蓉★★★

多田有花
身の内の何かほぐれし新涼に(原句)
「ほぐれし」の「し」は「き」の連体形なので、「新涼に」かかります。それで、この句意の場合は、「し」は不自然な感じがします。
身の内の何かほぐれり新涼に★★★★(正子添削)
暑さが続くと、暑さに身構える、暑さに耐えるような気持が働くが、新涼となると、体の中のなにか、ほぐれる、体が和らぐような気持になる。新涼の爽やかさ。(高橋正子)

前山に日ごと増しつつ秋の色★★★
秋の夜の火星見上げて床に就く★★★

廣田洋一
秋空に浮かぶ車両のリニアかな★★★
やや薄く色づく稲田曇り空★★★★
道端の垂れし稲穂に触れてみる★★★

桑本栄太郎
長き夜や真夜の団地に救急車★★★
干上がりてさざれや秋の旱川★★★
赤とんぼ連れて田道の入日かな★★★★

8月29日(3名)

小口泰與
水槽を洗い終わりて涼新た★★★★
金魚や目高を飼っていれば、水槽の水を替えたり、洗ったり、手がいるが、洗って、新しい水をいれると、さっぱりと気持ちよい。目にも涼しい。「涼新た」である。(高橋正子)

もれも無く鳩の翔るや秋の朝★★★
榛名富士映る水面や赤とんぼ★★★

廣田洋一
黒葡萄一皮剥けば赤き汁★★★
一人一房巨峰のおやつ奢りけり★★★
また新種試食してみる白葡萄★★★

桑本栄太郎
うそ寒や肩を竦めて目覚め居り★★★
夜半忌の底紅積もる垣根かな★★★
ベランダの鉢に聞き居りきりぎりす★★★

8月28日(4名)

小口泰與
秋澄むや赤城離るる暁の雲★★★
山間の利根の支流や秋の雲★★★★
台風やいまだ河川の整わず★★★

廣田洋一
ピカピカと帰宅促す稲光★★★
絶え間なく駅舎の上の稲光★★★★
稲光追ひかけ来たる豪雨かな★★★

桑本栄太郎
きちきちの飛び出し誘う田道かな★★★★
溝そばの花や小川の楽を聞き★★★
音のみの鳴りて終いや秋の雷★★★

多田有花
秋の雷音激しくて雨少し★★★
町並みからオレンジ色の月が出て★★★
稜線の木々月光に影を成す★★★★
月光が静かに作り出す稜線の木々のシルエット。影絵のような美しさ。(高橋正子)

8月27日(4名)

多田有花
秋の蛇蛇行の形に固まりぬ★★★
蝉の声消えて静かな秋の朝★★★

蜘蛛の巣の枝に光りし残暑かな(原句)
蜘蛛の巣の枝に光れる残暑かな★★★(正子添削)
「光りし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で「光った」の意味。「光れる」は、「光っている」の意味。(高橋正子)

小口泰與
靴紐を結び直せり秋の山★★★★
蜩や山今だ日を寄せ付けず
「今だ」は、「未だ」のこと?

水槽の魚の動きや涼新た★★★

廣田洋一
生垣につかまり鳴くや秋の蝉★★★

蜩の声波打つ夕べかな(原句)
蜩の声の波打つ夕べかな★★★(正子添削)

平成の最後の秋や蝉の声★★★★

桑本栄太郎
干上がりて石のさざれや秋暑し★★★

乙訓は風の丘なり夕あきつ(原句)
乙訓の丘に風生れ夕あきつ★★★★(正子添削)
「風の丘」が甘いです。つまり、観念とか、言葉自体に傾いています。そうなると、句に現実感、リアリティが薄れます。
乙訓は「弟国」の意味がある奈良時代ごろからの歴史ある山城の国の要所。「山崎の戦(天王山の戦)」もあった。そういった丘に夕べ佇むと風がよく吹き、蜻蛉が行き来する。歴史に思いが及びもするだろう。(高橋正子)

送電塔の背ナに雲生れ秋の嶺★★★

8月26日(4名)

小口泰與
ラジオより流る和楽よ麗人草★★★
日を浴びてカーテンの色秋薊★★★
秋ばらの下刈り済ませ入日かな★★★

多田有花
盆の月下に火星を従えて★★★
朝霧の晴れてあらわる山の影★★★
つくつくぼうし今にぎやかに森の道★★★★

廣田洋一
朝顔のカーテン揺れて老夫婦★★★
朝顔や宿題用の写真撮り★★★

朝顔や咲きのぼりたる庇かな★★★★
朝顔がついに庇まで咲きのぼり、そこには朝日がよく当たり、明るく涼しげに見える。が、少しさびしさも。庇までのぼった朝顔は、そのまま季節の移り変わりの姿でもある。(高橋正子)

桑本栄太郎鉄塔の背ナは山の端秋の雲★★★
高槻のブルーシートや秋暑し★★★
酔芙蓉薫香いまだ色に出ず★★★

8月25日(5名)

古田敬二
池の面を明日には帰燕となる一群★★★★
九月が近づくと燕は南方へ帰るために集まる。集まってすぐ飛び立つわけではないらしく、池の面や川面
を飛んでいる。明日は帰るのだろう。この一群が帰ると日本の空は淋しくなる。

余談だが、最近では、「帰燕」の季題を出されて、燕の生態に沿って正しく詠んだ句は例えば、十句中四句くらいで、少ないそうだ。(高橋正子)

<印象派絵画展>
初秋の壁面大きくルノアール★★★
髪長くひとみは涼しルノアール★★★

多田有花
台風一過二羽の雀が電線に★★★★
台風の余りの風が山に吹く★★★
枯木ひとつ倒して台風の去りぬ★★★

小口泰與
漢薬を煎ず土瓶の残暑かな★★★
鶺鴒や彩雲利根川(とね)に留まれり★★★
赤城嶺へ雲ひと刷けや渡り鳥★★★★

廣田洋一
桃の香にひかれ売場に立ち寄りぬ★★★★
手に乗せし桃の香りを吸ひこめり★★★
水蜜桃最後に種をしゃぶりけり★★★

桑本栄太郎
青空の雲の途切れや野分過ぐ★★★
ゆさゆさと揺れて香りぬ稲穂かな★★★★
稲穂垂る街の田圃にモノレール★★★

8月24日(5名)

多田有花
嵐近づく秋蝉のなお盛ん★★★★
嵐来るなかを去り行く秋の蝶★★★
台風の目は三百キロの沖にあり★★★

小口泰與
台風の雲色色や山は蒼★★★★
台風が来る前であろう。風の影響を受けてかいろいろな雲があり、動きも様々。山は泰然として蒼い。山の蒼さが雲の様々を引き立て、大きな自然を感じさせてくれる。(高橋正子)

同胞の各各老いて天高し★★★
カンナ咲く村の真中の鍛冶屋かな★★★

廣田洋一
秋天へぐいぐい伸びる雑草魂★★★
秋天に白き航路や飛行雲★★★

秋天の流れる如き富士の峯(原句)
文語なら「流るる如き」となります。「峰」は尾根の突き出た部分を指します。

秋天に流るる如し富士稜線★★★★(添削)

桑本栄太郎
稲の香や乙訓郷に風生るる★★★★
風があれば、稲の香がよく香る。稲穂もさざめく。乙訓の里の実りの秋がよく詠まれている。(高橋正子)

柿畑の柿の実いよよ天を向く★★★
青き実の小枝襤褸や野分跡★★★

古田敬二
新涼や飛騨の川面の風の道★★★
カナカナが彼方にかすか夕暮れる★★★
初紅葉病院前のポプラから★★★★

8月23日(5名)

小口泰與
清らかな野川や鳥と鰯雲★★★★
鰯雲が空に広がり、鳥が囀る。野川は清らかに流れる。ふるさとは麗しきかな。(高橋正子)

カーテンの色変えにけり秋の蝉★★★
常連の客の占めたり月見豆★★★

多田有花
野分来る山肌駆ける雲の影★★★★
南海の嵐から来る秋暑かな★★★
青空に台風近づく風の音★★★

廣田洋一
人気取りお化け南瓜を持ち込みぬ★★★
出刃の背を何度も叩き南瓜割る★★★
南瓜煮る種を集める子等の居て★★★★

古田敬二
早風呂を済ませ二人の零余子飯★★★★
子どもたちも独立し、夫婦二人の暮らし。早風呂を済ませ、零余子飯の夕飯をいただく。清潔で、つましい、心豊かな暮らし。
アメリカの小説(題名は失念)に、老婦人が庭からレタスを採ってきて、きれいに洗い、丁寧にちぎって食事をする場面があったのを思い出した。アメリカは初めピューリタンが移住したから、そんな暮らしがあったのだろうと思ってみたりもした。(高橋正子)

二人して食む幸せの零余子飯★★★
大きめの零余子は零れるものと知る★★★

桑本栄太郎
突然の突風来たり野分来る★★★
雲奔り風の軋むや野分来る★★★
日もすがらテレビ報すや野分荒れ★★★★

8月22日(4名)

小口泰與
初秋や雲駆け上がる赤城山★★★★
石階へ湯の香漂う木槿かな★★★
湖へ差すつれなき朝日秋の風★★★

多田有花
山下りて熟れし早稲田の中帰る★★★★
山を下りると山とは違う景色は田んぼがあること。早稲田の中を帰るとき、平地の実り、平地の生活の温みを感じる。(高橋正子)

秋茄子の規格外れをいただきぬ★★★
むかし人通いし峠秋の風★★★

廣田洋一
露草や耳立てて聞く風の音★★★★
露草の青が空気を澄ませる。涼しい風が来そうだ。耳を立てて風の音を聞く。繊細な感覚。(高橋正子)

露草や朝の雫を光らせて★★★
露草の雨に打たれて怯まざる★★★

桑本栄太郎
赤とんぼ辻に集いて浮かび居り★★★★
小諸なる馬子唄峰に藤村忌★★★
干上がりし中州となりぬ秋旱★★★

8月21日(4名)

小口泰與
花芙蓉次つぎ山は雲を生み★★★★
雨後の朝日は邪険にも秋の風★★★
花芙蓉利根の白波日日変わり★★★

多田有花
稜線の傾斜を登る風は秋★★★
頂の昼食に来る秋の蝶★★★★
頂には、蝶や蜻蛉などが意外といるようだ。秋山の頂の爽やかな昼ご飯に蝶が訪ねてくる。下界の喧騒を離れて、たのしい頂のひとときである。(高橋正子)

秋の陽の香りあふれる頂に★★★

桑本栄太郎
発電のプロペラ高く秋暑し★★★
葉の空きし桜並木やうす紅葉★★★★
林火忌の蝉の声止む日照雨かな★★★

廣田洋一
アジア大会記録に迫る台風かな★★★

台風や目玉連ねて近づきぬ(原句)
台風の目や連なって近づけり★★★(正子添削)

台風来電車動くを祈りけり★★★★


コメント

  1. 廣田洋一
    2018年8月23日 11:49

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
    8月21日の「台風や目玉連ねて近づきぬ」を「台風の目や連なって近づけり」と添削して頂き有難う御座います。
    リズムが格段に良くなりました。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  2. 廣田洋一
    2018年8月25日 14:42

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導頂き有難うございます。
    8月24日の「秋天に流るる如し富士稜線」を添削頂き有難うございます。文語文法の過ちを治して頂き有難うございます。また、詠みたかった「稜線」に訂正頂き有難うございます。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  3. 廣田洋一
    2018年8月28日 12:35

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導頂き有難うございます。
    8月27日の投句「蜩の声波打つ夕べかな」を添削頂き有難うございます。
    きちんと中7になりました。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  4. 多田有花
    2018年8月29日 8:23

    お礼
    正子先生
    8月27日の投句
    「蜘蛛の巣の枝に光りし残暑かな」を
    「蜘蛛の巣の枝に光れる残暑かな」と
    添削いただきありがとうございます。
    こういうとき、文法の未熟さを知ります。