8月11日~20日


8月20日(4名)

多田有花
秋の暮ねぐらに戻る烏ども★★★

感嘆符秋涼はいつも突然に(原句)
秋涼はいつも突然感嘆符★★★★(正子添削)

回ったり止まったり秋の扇風機★★★

小口泰與
朝顔の青の揃いし雨の中★★★★
雨の中に咲く朝顔もしっとりとして情趣がある。みごと雨にそろった朝顔の青。暑さから息を吹き返したように生き生きとしている。(高椅正子)

めはじきや今もどっしり寺の松★★★
老犬のあくび数多や犬子草★★★

桑本栄太郎
初秋の遺跡の丘や妻木晩田(むぎばんだ)★★★★
案山子立つ遥か眼下や高速道★★★
かなかなや母の里なる峡の村★★★★

廣田洋一
吊橋を渡れる風の爽やかに★★★★
せせらぎの音と頂く秋の鮎★★★
早々と紅葉初めにし高雄かな★★★

8月19日(4名)

小口泰與
山羊の子の産まれ立ちたる葛の花★★★★
姨捨は棚田の里や秋蛙★★★
ひぐらしや明治時代の置時計★★★

廣田洋一
棚経の僧を迎へる三世代★★★
枝豆を貰ふ日向の匂ひごと★★★★
近所の方に枝豆をもらったのだろう。とって間もなくて、日向の温みや匂いがのこっている。うれしいいただきものだ。(高橋正子)

蒸し焼きの枝豆つまみ限りもなし★★★

多田有花
午後の陽が庇をくぐる秋初め★★★★
「庇をくぐる」は、鋭い観察で言い得て妙。気づいているかもしれない陽の傾きだが、言葉にして表現するとよくわかる。確実に太陽高度は真夏より低くなっている。初秋なのだ。(高橋正子)

半分に切って西瓜を冷しけり★★★
茹でられて青鮮やかなオクラかな★★★

桑本栄太郎
<台風の故郷直撃>
門庭につむじ風立ち野分来る★★★★
運休の是非なきことも台風裡★★★
避難所は保健センター台風来る★★★
ちょうどお盆に台風が直撃で、お見舞い申し上げます。たいへんでしたですね。

8月18日(4名)

多田有花
初秋やおもたき髪を切りにけり★★★

朝焼けを見上げる新涼の中で(原句)
新涼の中に朝焼け見上げけり★★★★(正子添削)

蝉死して風に転がる秋の夕★★★

小口泰與
大沼小沼(おのこの)の清らな水や秋初め★★★
水澄むや熊除け鈴と歩みける★★★★
山を歩くとき、熊除けの鈴をつけてゆかねばならない山がある。尾瀬でもそうだったが、池塘や沼の水などが澄む季節、熊除けの鈴の音がちりんちりんと響く。(高橋正子)

溶岩原を行くや数多の虫の声★★★

廣田洋一
流灯に沿ひて歩ける人一人★★★★
灯籠を流し、流灯となって流れて行くも、別れがたいのだろう、流灯にそって歩く一人がいる。その寂しい一人に目が行った。(高橋正子)

ふくよかにくびれし桃を選りけり★★★
桃食めば舌を包みし甘さかな★★★

桑本栄太郎
<盆帰省のふるさと>
ハイウェイの遥か眼下や稲穂波★★★
群青の海に白きや野分浪★★★
真青なる台風一過の峡の空★★★★

8月17日(4名)

多田有花
盆過の風に驚く朝かな★★★
秋燕となりたり帰る日も近く★★★
校庭に残暑の日差しのみ溢れ★★★★
夏休みの校庭は、だれも居ない。広い校庭には残暑の黄ばんだ日差しがあふれている。「日差しのみ溢れ」が自然の寂しさを思わせる。(高橋正子)

廣田洋一
棚経の僧バイクにて来たりけり★★★

子供らもかしこみ座る棚経かな(原句)
棚経に子らもかしこみ座りけり★★★(正子添削)

灯籠流し順番待ちの姉妹かな(原句)
灯籠流し順番待てる姉妹かな★★★★(正子添削)
灯籠流し。流し始めるところは広くない。順番を待って手にした灯籠を水に置いて流す。佇む姉妹がかわいくも楚々としている。祖父や祖母が亡くなって間もないのだろうか。(高橋正子)

小口泰與
火の山へ攻め込みたるや泡立ち草★★★
浅間嶺へ連なる星や秋はじめ★★★
初秋や生まれし子犬白まだら★★★★

桑本栄太郎
<ふるさとへ盆帰省>
群青の水平線や盆の海★★★★
大山の頂き雲に台風来る★★★★
稜線の紺色なすや秋の嶺★★★

8月16日(3名)

多田有花
嵐来るしばし残暑を落ち着かせ★★★★
終戦の日暮れて風雨の強まりぬ★★★
台風の余りの風が残る朝★★★

廣田洋一
車椅子手をしなわせて踊りけり★★★
城下町鳴子を振りて踊りけり★★★
赤児抱き手のしなやかに踊りたる(原句)
赤児抱き手をしなやかに踊りたる★★★★(正子添削)

小口泰與
青空の赤城ねっこし蕎麦の花★★★★
青空にそびえる赤城山のその麓に一面の蕎麦の花が咲く。そんな景色に初秋のなつかしさが思われる。(高橋正子)

草の秀や羽音爆破の群雀★★★
噴煙の千曲へ流る荻の声★★★

8月15日(4名)

小口泰與
畑隅の葉陰の中の西瓜かな★★★
火の山を目指し馬鈴薯掘りたるよ★★★★
句の情景は、馬鈴薯の畑の畝が火の山の裾まで続いている。その馬鈴薯の畝を掘り進むときは、火の山を目指して、ゆくことになる。広大な馬鈴薯畑と、火の山の対比が面白い。(高橋正子)

早稲の香や湖渡りくる風あらまほし★★★

多田有花
朝の町盆台風の来るを待つ★★★★
台風の近づく前に買出しへ★★★
雨やめばすぐに秋蝉鳴き始め★★★

廣田洋一
土砂降りの雨となりたる終戦の日★★★★
甦るラジオの声や終戦日★★★
読み返す抑留記録敗戦の日★★★

8月14日(4名)

川名ますみ
夏掛けを膝まで上げて読書せり★★★
小説をめくれば見ゆる夏の果★★★★
夏の間、涼しい部屋で小説を楽しんだが、小説もそろそろ終わりにさしかかる。同時に夏も終わるのだ。夏と別れ、小説の世界と別れ、初秋の現実へもどるとき。(高椅正子)

夏休み借りし小説じき終わる★★★

多田有花
山の日の山より下りて薬草湯★★★★
山の日は、8月11日。海の日に対してあとで制定されたが、私としては望んだことだ。山の日に山に登り薬草湯につかる。自然を楽しみに癒された一日である。(高椅正子)

八月の早朝にあり極楽は★★★
八重むくげを揺らす嵐の前触れが★★★

小口泰與
秋蘭や利根源流の清らなる★★★★
幅跳びの距離をのばすや鳳仙花★★★
衣食住妻にまかせし断腸花★★★

廣田洋一
台風に先立つ波のきらきらと★★★★
台風が近づいている海。台風の風が届いているのだろう。波がきらきら輝いている。それだけ見れば、台風とは思えないが、あまりにもきらきらとする波が、台風を匂わせている。台風の先触れを感じた句。(高橋正子)

島間を大河の如く秋の海★★★
秋天に白く聳ゆる橋の塔★★★★

8月13日(3名)

多田有花
秋の初風稜線の樹間より★★★
静かなる残暑の山を登りけり★★★
八月の日本海へと雲流る★★★★
山頂からの眺めだろうか。気象に詳しくないので、8月の風が日本海へと吹く場合が気象的にどうなのか知らないが、「八月」と「日本海」の取り合わせに魅力がある。初秋のかろやかさにある、しかしその中の寂しさを感じさせてくれる。(高橋正子)

小口泰與
蘭の香や渓流よりの風さやか★★★★
渓流にそって咲く蘭が良い香りを放っているのか、渓流に臨むところに置かれた鉢の蘭が匂うのか、情景が少しはっきりしないが、蘭の香りに渓流のさやかな風に心よりのくつろぎを感じさせてくれる句だ。(高橋正子)

朝顔や赤城のすそ野明らけし★★★
鬼灯を鳴らすや過去のよみがえる★★★

廣田洋一
笠の下白き歯見ゆる阿波踊り★★★
沢山の黒猫跳ねる阿波踊り★★★
ひらひらと団扇を捌く阿波踊り★★★

8月12日(4名)

多田有花
盆花がどっと並びしホームセンター★★★
掃苔に今日は一人で出かけてゆく★★★★
掃苔は、墓石の苔を取り除き掃除をすることであるが、俳句で「掃苔」と言えば、盂蘭盆前の墓掃除をさしている。例年は、誰か、例えば母とかと、墓掃除に出かけたのだろうが、今年は、一人で行かねばならなくなった。「出かけてゆく」に深い心情が汲み取れる。(高橋正子)

初秋の府県境の山に登る★★★

小口泰與
御巣鷹の空深海や野紺菊★★★
秋桑や土器の出でたる畦十路★★★
カンナ咲くかの日の夜行列車かな★★★

桑本栄太郎
孫帰る日の早くあり夏の果て★★★
子供等の土産は箱に蝉の殻★★★
黒雲のつぎつぎ集い野分来る★★★

廣田洋一
野分前高波白き桂浜★★★
波しぶき浴びつつ舐めるアイスクリン★★★
殿は幼子締めるよさこい踊り★★★

8月11日(3名)

廣田洋一
梨の皮切れずに剥けてほくそ笑む★★
梨の実の白きを並べ玻璃の皿★★★★
梨の実は水気が多くてその白さは透き通るよう。切り分けてガラスの皿に並べると、すずやかな姿形となる。(高橋正子)

洋梨の鎮座ましたる冷蔵庫★★★

小口泰與
子の積み木幾度崩れし青蜜柑★★★
かの時の名前刻みし椿の実★★★
枝に来る鳥の鳴き声秋珊瑚★★★

桑本栄太郎
盆帰省の準備間のなき孫来たる★★★
外つ人の裸族のような残暑かな★★★
初秋や入日のさまも哀しかり★★★


コメント

  1. 廣田洋一
    2019年8月18日 17:50

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    8月17日の「棚経」の句と「灯籠流し」の句を添削頂き誠に有難うございます。
    いずれの句もすっきり致しました。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  2. 多田有花
    2019年8月20日 7:41

    お礼
    正子先生
    8月18日の句「朝焼けを見上げる新涼の中で」を
    「新涼の中に朝焼け見上げけり」に添削いただき
    ありがとうございます。
    新涼に包まれている感覚がより明確に伝わってきます。

  3. 多田有花
    2019年8月21日 17:47

    お礼
    正子先生
    8月20日の句「感嘆符秋涼はいつも突然に」を
    「秋涼はいつも突然感嘆符」に
    添削いただきありがとうございます。
    句が素直でよどみないものになった気がします。