7月21日~7月31日

7月31日(4名)

多田有花
四十度超え高熱の酷暑かな★★★
雨傘を日傘に見立て駅までを★★★
夏休みの映画館には子らの声★★★

廣田洋一
子と二人冷酒酌みたる夕餉かな★★★
乾杯のあとの一口冷し酒★★★
太き葉に色濃き花や松葉牡丹★★★

桑本栄太郎
炎熱の故郷へつづく九号線★★★★
夕暮れの紅を競いぬさるすべり★★★
風呂洗いそのまま浴びぬシャワーかな★★★

小口泰與
釣人の竿にすいっと蜻蛉かな★★★
翡翠の偵察飛行沼一周★★★
玉ウキの風に流さる夏の沼★★★

7月30日(5名)

小口泰與
翡翠の鋭き視線山上湖★★★
青葦や高らかな蝦蟇の声★★★
一筋の雲を映すや夏の沼★★★

桑本栄太郎
夏萩の小径を抜けて散歩かな★★★
朝涼の空を切り裂きジェット雲★★★
姉妹行く有馬の湯へと谷崎忌★★★★

廣田洋一
津波来る肝が冷えたる夏の朝★★★
白波や川をさかのぼる夏の朝★★★
白鷺や静かにたたずむ川の中★★★

多田有花)
恐ろしきほどの快晴夏の朝★★★
風いまだ陸風蝉声始まりぬ★★★
いつの間に姿増えたり夏つばめ★★★★

上島祥子
卒寿越す隠居路掃く朝曇★★★
夜の更けて麦茶ボトルに二リットル★★★
夏の蜂蜜を集める影弾む★★★★

7月29日(4名)

小口泰與
滝のぼる魚の数多や峠道★★★
篁へ朝日差しけり蝦蟇の声★★★
麻服の皺数多なり見合い席★★★

廣田洋一
兄弟の家族を連れて帰省かな★★★
白鷺のぱっと飛び立つ水田べり★★★
さくらんぼ真っ赤に光るアメリカ産★★★

桑本栄太郎
一木の重たそうなり蝉しぐれ(原句)

一木の重たげにあり蝉しぐれ(正子添削)

朝涼や犬の散歩のつどう辻★★★
鳴かぬ蝉捕りてべそ掻く子供かな★★★

多田有花
わが部屋を包みて繁し蝉しぐれ★★★
涼しさは風にありけるゆらぎかな★★★
扇風機の孤軍奮闘凪の部屋★★★

7月28日(4名)

小口泰與
翡翠の巣をご存じの御婆かな★★★
釣上げし鮎の腸美味にして★★★
園児らの九九を諳んず夏期講習★★★

廣田洋一
砂浜に寝椅子を並べ爆暑かな★★★
歩きつつ氷菓しゃぶれる親子かな★★★
天然のかき氷食ぶ昼下がり★★★

多田有花
灼熱のひと日の暮れて夕三日月★★★
晴れし朝磯鵯の窓辺に来る★★★★
干し物の回転続く夏の風★★★

土橋みよ
 孫海洋観測2句
星涼し風の唸れる観測船(原句)「星涼し」には心理的な感覚があります。「風が唸る」ときに、「星涼し」と思えるのかどうか、判断しかねますが、状況をお知らせくだされば、と思います。(髙橋正子)

星涼し船上で聞く波の音

お知らせありがとうございます。こちらの俳句は、「星涼し」の季語が「船上に聞く波の音」とよくあって共感できます。「音」をどのように聞いたか、その音を聞いてどのような心境であったかが大事です。聞こえる音の感じ方に齟齬があったかもしれませんね。(髙橋正子)

夏潮や船底に響く波の音★★★★
黄緑の馬酔木の青葉枝の先★★★

7月27日(5名)

廣田洋一
故郷の山を仰ぎて帰省かな★★★★
炎天に燃え立つ如く百日紅★★★
水中花季節の花に替えにけり★★★

多田有花
白蓮や極楽の香を放ちけり★★★
音のみの花火や山の向こうより★★★★
境内に一本咲くや小鬼百合★★★

桑本栄太郎
木洩れ日の一点明るき木下闇★★★★
落ち蝉の白き腹見せあおのけに★★★
川ベリを歩む散歩や草いきれ★★★

小口泰與
翡翠や沼の巨石のまぎれ無し★★★
空さまの深きに舞うは海月かな★★★
蝦蟇の声西も東も砕くなり★★★

上島祥子
グランドの物音絶えて夏休み★★★
信号機独り占めする日陰かな★★★
青天へ峰雲湧き立つ鈴鹿嶺★★★★

7月26日(4名)

桑本栄太郎
田舎より昔のままのまくわ瓜★★★★
蝉からす鳴かぬ日盛り午後三時★★★
寒露忌やこのごろ玉子生まぬ鶏★★★

小口泰與
そちこちに鳥の鳴きけり夏の沼★★★
雲の峰奇岩巨石の聳ちて★★★
牧場の長き柵なり日照雨かな★★★

多田有花
淵に身を浮かべ少年泳ぎけり★★★★
夏真昼真空のごとき静寂に★★★
昼下がり遠くで夏鶯の鳴く★★★

土橋みよ
幼稚園の花壇いっぱい日々草★★★
若芽摘むアスパラ畑に夏が来て★★★★

 孫海洋観測
星涼し船上で聞く海の声★★★
「星涼し」は、臨場感が感じられてとても共感できますが、「海の声」が抽象的すぎるのが惜しいです。(髙橋正子)

7月25日(6名)

廣田洋一
三色の色鮮やかに冷やし中華★★★
砂場の子横に見ながら金魚草★★★
紫陽花の旅を終えたる薄茶色★★★

桑本栄太郎
街灯の明かりたよりに夜の蝉★★★
池めぐる朝の散歩やうしがえる★★★
河童忌の「蜘蛛の糸」読む木蔭かな★★★

小口泰與
今朝の空日は煌煌と夏の湖★★★
翡翠や翔けやすき淵に居りにける★★★
鳥を射よ草矢を渡す幅なりし★★★

多田有花
雀鳴きやがて熊蝉鳴く朝に★★★
夏空を防災ヘリが降りてくる★★★
万緑を映せる淵の静かなり★★★

土橋みよ
初物の梨瑞々しくて喉転がる(原句)
「転がる」の言葉にすこし、「違うかな」と言う感じがします。
初物の梨瑞々しくて喉すぎる(正子添削)

 孫富士登山競走出走二句
登山競走知らさるる夏の眠れぬ夜★★★
夏山を駆け登り白雲の上★★★★

上島祥子
夏雲の連峰高さ競う空(原句)
「夏雲の連峰」は雲の峰 のことですね。ややわかりにくさがあります。

雲の峰連なり高さを競う空(正子添削)

三辺を車が囲う青田かな★★★
塩飴や炎暑の坂を登りきり★★★

7月24日(5名)

多田有花
燃え尽きて破線の渦や蚊取線香★★★
奥山のさらに彼方に入道雲★★★★
川渡りくる夕風の涼しさよ★★★

廣田洋一
昼飯は冷素麵や独り暮らし★★★
カウンターに一人で座り冷し中華★★★
旧友とテーブル囲み生ビール★★★

桑本栄太郎
凌霄花の紅蓮となりぬ垣根かな★★★
朝焼けや公然と非を唱え居り★★★
川べりを歩み川面の夕焼けかな(原句)
川べりを歩めば川面夕焼ける(正子添削)

小口泰與)
翡翠の羽そぐ如く身づくろい★★★
七月や星の光のそこばくに★★★
夏の暁背向の山の鳥の声★★★

上島祥子
宙吊りの西瓜朝陽に縞立てり★★★

夏休み富士登頂の知らせ着く(原句)
夏休み富士登頂を知らさるる(正子添削)

百日紅梢の花は青空に★★★★

7月23日(5名)

小口泰與
翡翠やせせらぎ分かつ岩ひとつ★★★
口あけて親待つ燕あさぼらけ★★★
炎天や前世のような浅間山★★★★

桑本栄太郎
大輪の紅や白咲く蓮の池★★★
剣呑という大空や朝焼ける★★★
石垣のすき間に咲くやさるすべり★★★

多田有花
眼前に旋回続く夏つばめ★★★
夏すでに角を曲がりて去りゆけり★★★
窓よりの風に感じる秋接近★★★

廣田洋一
帰省子の先ず覗きたる井戸の中★★★
土用波夕焼空の晴れ渡り★★★★
紅蓮の開ききったる法の庭★★★

上島祥子
<市の七夕祭りの薬玉が飾られて>
朝風に軽き音生む吹き流し★★★★
夏川の堰の勢い流れ生み★★★★
水遊び喃語に答う姉の声★★★

7月22日(3名)

小口泰與
鳥声の盛んな沼や夏の朝★★★
方言は夕立のごと溢れけり★★★
せくぐまる翡翠狙い定めたる★★★

廣田洋一
水替えて泡を放てし水中花(原句)
水替えて泡を放てり水中花(正子添削①)
水替えて泡きらきらと水中花(正子添削②)

土用鰻特売場を独り占め★★★
外出でて身をすくめたる爆暑かな★★★

多田有花
ほろ苦き涼味やバスクチーズケーキ★★★
片陰の床几に座して人を待つ★★★

底紅を咲かせ酒蔵秋近し★★★
底紅は芙蓉の白花の底が紅色に染まっているものを差しますが、芙蓉は秋の季語なので、「秋近し」は一考です。(髙橋正子)

7月21日(5名)

小口泰與
炎天やわが身すこしく太りける★★★
須らく利根の川魚五月晴★★★
翡翠を見ずして鳥を語らずや★★★

多田有花
菰樽に迎えられたる夏真昼★★★
冷奴木匙を添えて突き出しに★★★
明石蛸鱧に穴子に夏料理★★★

廣田洋一
海の日や安全願い海開き★★★
土用波陽を返しつつうねり来る★★★★
プールにて歩行訓練続きおり★★★

桑本栄太郎
底紅の団地をめぐる赤き花★★★
幼木といえど艶やか合歓の花★★★
鳴き声のうねり一つに蝉しぐれ★★★

上島祥子
棕櫚大樹夏空葉より透かし見ぬ(原句)
「見ぬ」は口語になおすと「見ました」になります。主語は棕櫚大樹とするのが一般的な解釈なので、主語と述語の関係がすっきりしません。
棕櫚大樹葉より透かす夏の空(正子添削例)
十輪を数えて芙蓉咲き競い(原句)
「数えて」はこの句では、理屈っぽいので、芙蓉のイメージが弱くなっています。(髙橋正子)
十輪のはやも芙蓉の咲き競い(正子添削例)
夏雲に彩り映える夕日かな★★★

コメント

  1. 廣田洋一
    2025年7月24日 8:46

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    7月22日の水中花の句を添削して頂き、有難うございます。水替えて「泡きらきらと」の方が明るくて良いと思います。重ねて御礼申し上げます。

  2. 多田有花
    2025年7月24日 11:28

    お礼
    正子先生
    「底紅を咲かせ酒蔵秋近し」に添削をいただきありがとうございます。
    「朱夏の酒蔵底紅を咲かせおり」としました。
    底紅が咲いているのを見て、夏がもう末に近づいていることを感じました。
    朱夏は夏の季語ですが、イメージとしては初夏よりは盛夏、晩夏のころです。
    さらに「朱」という赤を連想する言葉が底紅の「紅」につながるとも思いました。

  3. 上島祥子
    2025年7月25日 21:43

    Unknown
    お礼
    正子先生
    7/24の俳句に星と添削のご指導有難うございました。

  4. 土橋みよ
    2025年7月26日 18:46

    お礼
    正子先生
    「初物の」の句を添削頂きありがとうございます。確かに「転がる」はおかしかったです。お示し頂いた二つの添削句は大変勉強になりました。また、孫の登山競走に関する二つの句に星の指導をありがとうございました。「登山競走」の句は詩になっていませんでした。気付かぬうちに自分の気持ちをそのまま書いてしまう習慣を改善したいと思います。

  5. 土橋みよ
    2025年7月28日 9:11

    お礼
    正子先生
    星の指導と「星涼し」の句へのコメントをありがとうございます。本人に実際の様子を聞いて改作を考えてみたいと思います。
    また、「初物の」の句にご親切なコメントをありがとうございました。大事にしたいと存じます。

  6. 土橋みよ
    2025年7月29日 10:54

    コメントへのお礼と返信
    7/28投句の「星涼し風の唸れる観測船」へのコメントをありがとうございます。満天の星の下で観測していると聞いておりましたので、最初、凪鳥などの声を聴いて星空を眺めながら観測の作業をしているだろうと推測し、7/26に「星涼し船上で聞く海の声」を投句致しました。しかし、「海の声」を具体的に描こうと実際の観測の動画を送ってもらったところ、強い風と波のぶつかる音しか聞こえず、大変な状況で作業していることを知りました。そこで、「海の声」を「風の唸れる」に直しました。この句に「星涼し」は合わなかったかもしれません。少なくとも優雅に星を眺めているわけではなく、荒々しい海の中で観測するとき、星も目に入ったということかなと思います。一方、本人は、「星涼し船上で聞く波の音」が自分の中のイメージと合い、船の上で感じる風と波はまさに自然そのものでとても気分が晴れるということなので、私には唸るように聞こえても、本人にとっては爽やかなのかもしれません。以上が、実際の状況です。

  7. 土橋みよ
    2025年7月30日 10:13

    お礼
    正子先生
    たくさんのアドバイスを頂き感謝しております。孫のことに関する俳句を作ってみたいと思っておりましたが、先生に共感して頂ける俳句が一つできて大変うれしいです。また、音を聞いた時の心境を考えて作るようにしたいと思います。

  8. 上島祥子
    2025年7月31日 20:02

    Unknown
    お礼
    正子先生
    7/30の句に星のご指導有難うございました。