7月17日(4名)
●谷口博望
黒南風や巨大タンカー島間(しまあい)に★★★★
草芙蓉お多福面の踊りたる★★★
蟇鳴くやアメリカよりも国連ぞ★★★
●小口泰與
田の上を今反転の夏つばめ★★★★
夏つばめが反転する田は、青田。その青田の上を風を切って飛ぶつばめが力強く、颯爽としている。蒸し暑さも忘れそうだ。(高橋正子)
峰雲や川を征する長き竿★★★
束の間のこの世に生まる蝉時雨★★★
●広田洋一
赤白黄松葉ボタンの賑わへり★★★
コツコツと毎日開く松葉ボタン★★★
松葉ボタン暑さにめげず花白し★★★★
●川名ますみ
椎落葉硬き響きを風に交ぜ★★★
青嵐カーラジオから魔笛鳴る★★★★
青嵐凌ぎし鉢植を起こす★★★
7月16日(5名)
●谷口博望
蝉の穴日を見るまでの幾年ぞ★★★
蝉の穴登りつめたる枝の先★★★
緑陰に海の匂いと潮騒と★★★★
●小口泰與
夕暮の鳥語激しき端居かな★★★
梔子の雨にも錆びず香るかな★★★
里山も舗装されたり田水沸く★★★★
●多田有花
静けさの中夏台風を待つ★★★
夏の雲輝き流る台風前★★★★
夏の雲が輝き流れている。そのことは通常のことなのだが、「輝き流る」を意識したのは、輝きがいつもに増していたからだろう。台風前の雲の輝きに、台風前の平常と緊張の入り混じった感情が読める。(高橋正子)
夏茜姿を消しぬ嵐前★★★
●広田洋一
外出に傘と扇子を手放さず★★★★
外出に傘を扇子を携えり(正子添削)※俳句は「今」を詠む。
試験場やたらにあおぐ扇子かな★★★
試験場あおぎづめなる扇子かな(正子添削)
口元を隠す扇の半開き★★★
●桑本栄太郎
白き筋しごき芒の草矢かな★★★★
教会のとんがり屋根や夏の峰★★★
部活子の上気の顔や日の盛り★★★
7月15日(5名)
●谷口博望
遠目にも微笑みかけて草芙蓉★★★
夜のカンナフラッシュの中艶めかし★★★★
睡蓮や天から菩薩降り給ふ★★★
※アメリカ芙蓉=草芙蓉
●小口泰與
単線の汽笛聞こゆる端居かな★★★★
噴煙の流るる先のとまとかな★★★
日照草九十九折なる溶岩の道★★★
●多田有花
梅雨明けと思いし今朝の青空よ★★★★
ガジェットを充電夏の台風待つ★★★
万緑をぐいぐい自転車漕ぎ上がる★★★
●桑本栄太郎
駅中の祇園囃子や河原町★★★
カップルの靴脱ぎ涼むせせらぎに★★★★
百日紅もやもや出づる塀の外★★★
●上島祥子
夏草の刈られて真白二の鳥居★★★
目が合えば大きく跳ねる青田の蛙★★★★(信之添削)
青田のそばを通っていると、不意に蛙が現れて、目があった。蛙はうれしくなったんだろうか、大きくぴょんと跳ねた。ちょっとユーモラスな句。(高橋正子)
猫の背に野性の静けさ四十雀★★★
7月14日(5名)
●小口泰與
記憶より小さき沼や時鳥★★★
朝に採り夕べにとりし杏かな★★★
夏座敷はや板の間へ行く小犬★★★★
●谷口博望
藤の実の崖からぶらり花のあと★★★
赤レンガ蘇鉄の雄蕊男らし★★★★
鈴生りの玄関先にミニトマト★★★
●多田有花
葉を鳴らす涼風のなか森歩く★★★★
夏の陽に白く輝き白鷺城★★★
明日蝉となる幼虫が地を這いぬ★★★
●桑本栄太郎
夜鷹鳴く団地の朝の目覚かな★★★
朝涼や腹の掛ものたぐり居り★★★
腹巻のずれを直すや朝涼し★★★★
●高橋秀之
梅雨晴れ間洗濯物の並ぶ家★★★
夕暮れて西瓜をもらいに実家へと★★★★
実家に西瓜をもらいにゆくというのがいい。大きな西瓜はみんなで分け合って食べるところがいい。夕涼みに家族で西瓜を食べるあかるい家庭が想像できる。(高橋正子)
夏空に輝く光は一番星★★★
広田洋一
風に舞ひ人を呼びをる曼珠沙華
赤き爪空に伸ばせし曼珠沙華
失恋に沈む日癒す曼珠沙華
「曼珠沙華」は秋の季語です。秋の季節にご投句ください。
7月13日(7名)
●小口泰與
捩花や芝へ三羽の雀どち★★★★
滝しぶき巌の凹凸呼吸せり★★★
大欅雹降る中の喘ぎかな★★★
●谷口博望
走馬灯海辺の少年佇みて★★★★
宙吊りの太き胡瓜や爺いづこ★★★
金糸梅ガバと音して鯉の来る★★★
●多田有花
涼風の通りしところへ机置く★★★★
涼風の通れるところへ机置く(正子添削)
「通りし」の「し」は過去の助動詞です。意味として不自然。
朝のうちなどは、涼風がよく通り抜ける。そこへ机を置いて仕事をすれば仕事が気持ちよくできることは必至。クーラーに頼る時代に、自然の涼風の恵みはありがたい。(高橋正子)
窓揺らす梅雨台風の先触れが★★★
独唱が合唱団に蝉の声★★★
●広田洋一
梅雨前線留まる上にまた台風★★★
台風一過落葉渦巻く道の端★★★★
昨日は北今日は南に地震起きる★★★
昨日北今日は南に夏の地震(正子添削)
もとの句には季語がありません。
●桑本栄太郎
馬の背に幼子乗るや蝉の声★★★
鷺舞うや遙かかなたの青田風★★★★
初蝉のいつしか止みて午後に日に★★★
●川名ますみ
嵐来む小さき鉢からひとつずつ★★★
歓声を上げ万緑のどこまでも★★★
匂うほど丘の青葉の湧きあがる★★★★
丘に湧き上がる青葉。その緑の勢いが「匂うほど」となった。青葉の輝く緑に英気をもらう。(高橋正子)
●高橋秀之
旅先で聞く初蝉は山の中★★★
夏の虹ローカル列車の車窓から★★★
虹の弧をローカル列車の車窓から(正子添削)
「虹」は夏の季語なので、わざわざ「夏の虹」としなくてよい。
七色の暖簾の文字はかき氷★★★★
夏は、冷たい食べ物や飲み物は、たのしみなもの。かき氷はその代表。かき氷屋の暖簾も楽しげに七色。かき氷を食べる人は誰も笑顔になる。(高橋正子)
7月12日(8名)
●迫田和代
郭公の声をたよりに道急ぐ★★★
歩を進め新緑新緑の森の中★★★
緑陰の涼やかな風にカモミール★★★★
●古田敬二
紀の川の靄の上なる紀伊山塊★★★
老鶯や水の香強き紀の川に★★★★
紀ノ川も上流の方か。水辺近くに寄ると、水の匂いが立ち上がる。老鶯の美しい声がのびやかに水を渡る。心洗われるところ。(高橋正子)
百十余石段登れば杜鵑★★★
●小口泰與
欠伸して信号を待つ茂りかな★★★
日暮しの雨に凌霄花こぼれなし★★★★
茄子の花婆の異見を聞かぬ孫★★★
●広田洋一
片陰を拾ひつ向かふ喫茶店★★★
片陰を拾ひつつ向かふ喫茶店(正子添削)
助詞「つ」の用法を辞書でご確認ください。
片陰を過ぎれば見ゆる連れの影★★★
老鶯や渡良瀬の谷渡りをり★★★★
●小川和子
カサブランカ咲かせ野にある百合ゆかし★★★
花の精潜むかに百合ひらかんと★★★
麦茶飲む児の息軽し湯浴みあと★★★★
●谷口博望
肝試し百物語聞いたあと★★★
氷菓舐めみんな裸の帰り道★★★★
少年期の思い出だろうか。クーラーもない時代、氷菓は子供たちには涼をもとめての大いなる楽しみ。日焼けした裸
でアイスキャンデーをなめながら帰ったのも楽しい思い出。(高橋正子)
釣忍夫婦の会話風が吹き★★★
●河野啓一
海開き南紀の浜の白い波★★★★
月見草臨海野外センターに★★★
半夏生写真マニアの友想う★★★
●桑本栄太郎
<鳥取帰省>
大山の樹海涼しく乗馬せり★★★★
大山のブナの樹海は西日本でも大きな樹海。樹海を馬で行く涼しさを楽しむ。優雅な気分だろうか。(高橋正子)
白鷺やはるか田圃の風来たる★★★
海からの風の仏間の昼寝かな★★★
7月11日(5名)
●多田有花
草刈機の音がどこかで梅雨曇★★★★
量り売りの米焼酎を徳利へ★★★
飲んでみるココナッツウォーターなるものを★★★
●谷口博望
TPP交渉難航
TPPは分かり合ふまでソーダ水★★★
木槿咲く下から上へ二つずつ★★★
天辺に向日葵一つ燦燦と★★★★
●小口泰與
ブティックのショウウインドの菖蒲かな★★★
頭(づ)の青き僧の念仏千日紅★★★
布袋草沼のすみずみ満ちにける★★★★
●桑本栄太郎
<鳥取帰省より>
夏つばめ旋回している村の路地★★★
大山の夏の霞や青き空★★★★
あじさいの色褪せ来たる日差しかな★★★
●河野啓一
初蝉やセーラー服の女の子★★★
すずやかに笹飾りしてデイの朝★★★★
デイケアに通う日は、仲間の人たちと触れ合う楽しみな日であろう。ケアセンターに到着一番、笹飾りが目に入った。朝のことだけに、笹飾りがさやさやと揺れ、目にすずやかなな印象である。(高橋正子)
雨止みて合歓の花咲く森陰に★★★
コメント
御礼
高橋正子先生
いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
今回は、助詞「つ」につきご指摘頂き有難う御座います。
中8になるのを避けるためだったのですが、やはりダメですね。拾ひつつ、を他の語に変えて中7を守ります。
御礼
高橋正子先生
地震の句を添削して頂き有難う御座います。
詠む内容に夢中になって季語を忘れたり、季重なりになったりします。今後気を付けます。
お礼
信之先生、正子先生、
「涼風の通れるところへ机置く」を7月13日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
添削いただき、納得いたしました。
言葉を不用意に使ってはいけないと感じました。
急に暑くなりましたが、風通しのいいところに机を持ってくれば、扇風機もいらないくらいで過ごせます。
曼珠沙華
高橋正子先生
曼珠沙華の句の件了解致しました。
御礼
高橋信之先生、正子先生
7月17日の秀句に「夏つばめ」の句をお選びいただき、その上、正子先生には素晴らしい句評を賜わり厚く御礼申し上げます。今後ともよろしくお願い申し上げます。
御礼
高橋正子先生
扇子の句を添削頂き有難う御座います。すっきりした句になりました。