7月11日-20日

7月20日

●河野啓一
一面の青田のなかをモノレール★★★★
真緑の青田を上をモノレールが走っている。田んぼの上を走るモノレールも今では、すっかり田園に調和しているようだ。(高橋正子)

庭隅に待ち望みたる浜木綿が★★★
朝顔の露に濡れたる一番花★★★

●小口泰與
凌霄花や山の国原もやの中★★★
青桐や浅間仰ぎて深呼吸★★★★
あけぼのや終の栖の薔薇の園★★★

●桑本栄太郎
 浅草・ジャズライブハウス
五十周年記念ジャズ聴く日の盛り★★★★
ジャズに酔いしれた青春の日が懐かしく蘇ってくる。「日の盛り」に哀愁さえ感じられる。(高橋正子)

手をたたき足ふみ鳴らすジャズの汗★★★
真夏日やラッパ吠えおりジャズの昼★★★

●黒谷光子
帯姿涼しき人や能楽堂★★★★
能楽鑑賞に集う人々には、和服姿の人も多い。夏帯をきりっと締めた姿は、目には涼しさを呼ぶ。
(高橋正子)

万緑の中登り来て庵二棟★★★
冷房車能の余韻に浸りつつ★★★

7月19日

●迫田和代
ホームにはホームの心虹の橋★★★
日の入りの空水美し花菖蒲★★★
青田中つらぬく道あり海近く★★★★
道が一本つらぬいている青田が心象風景のように 思える。海が近いことで青田の緑がさらに鮮やかに明るくなっている。(高橋正子)

●小口泰與
竹そよぎ角ぐむばらの朝かな★★★★
羅や常なき雲の浅間山★★★
蛇まれに蛙常なる草いきれ★★★

●桑本栄太郎
 浅草到着
浅草へ着くや溽暑の街中へ★★★
日盛りの鳶装束のいなせかな★★★
頂きの夏雲まとうスカイツリー★★★★

●小西 宏
我が胸も高まる孫の夏休み★★★
梅雨明けを待ち素潜りのフィン擦る★★★
雷去りし丘に花火の遠光り★★★★

●佃 康水  
 広島・平和公園
緑陰の窪に砂浴ぶ雀どち★★★★
緑陰のちょっとした窪を見つけて砂浴びをする雀たちが、かわいらしく、涼しそうな風景だ。(高橋正子)

噴水の飛沫に雀羽ばたけり★★★
よろけつつ大き荷を曳く蟻強し★★★

7月18日

●小口泰與
縁台に大の字に寝て二重虹★★★★
縁台に大の字に寝れば、空には二重虹がかかって、これほど心地爽快なことはない。(高橋正子)

綿菅や浅間の雲の常なけれ★★★
眼間につと這い出づる蝮かな★★★

●桑本栄太郎
 東京駅着旧句友と再会
夏旅の友と待ち合う”銀の鈴”★★★
ジョッキ持てビールで乾杯夏の昼★★★★
相聞句お披露目したり夏の昼★★★

●多田有花
甘夏の果汁四方に飛ばし食ぶ★★★★
甘夏は、汗ばむ季節が美味しい。果汁がたっぷりあればなおのこと。四方に果汁が飛び散って、それが甘夏らしいところ。(高橋正子)

電柱の付け替え工事梅雨晴間★★★
短夜に動画次々再生す★★★

●小西 宏
涼風(すずかぜ)に小鳥の寝言朝まだき★★★
樹下の道蝉の音重くなりゆける★★★★
白黒の猫うつくしき端居かな★★★

7月17日

●祝恵子
畑よりスイカ抱く人現れる★★★★
スイカを抱いて畑から出てきた人がいることへの驚き。懐かしい光景だったかもしれない。熟れ具合を確かめ、大事に抱いて出てきた。団欒に冷やして食べらるのだろう。(高橋正子)

桔梗開く空気吐き出す広げだす★★★
湿り畑には長靴干されあり★★★

●古田敬二
籠に盛るトマトの紅茄子の紺★★★
鈴鹿から涼しき風の届きけり★★★
ここからはひんやり涼しい森に入る★★★★

●小口泰與
素麺の逃れし樽のひえびえと★★★
つつましく雨に打たれし茄子かな★★★
白めだか水面にすいと集い来し★★★★

●桑本栄太郎
 新幹線車窓より
万緑やトトロの出そうな森の闇★★★
白鷺の一群れ青き水田に★★★
稜線に鉄塔並び雲の峰★★★★

●小西 宏
草取の朝の匂いに興じけり★★★★
日中の暑さを避けての朝の草取。どんどん捗り、青臭い草の匂いがそのたび立ち上る。その匂いに「興じけり」は、都会人。(高橋正子)

風渉り蝉の静かに鳴く朝よ★★★
瀬戸内の寿司振る舞われ句を申す★★★

7月16日

●高橋秀之
夜明けから青き色する夏の空★★★★
夏の空は、夜明けからしっかりと青い色となっている。日中の強烈な青空へと準備万端整っているかのようだ。(高橋正子)

耳元へ目覚まし代わり蚊の羽音★★★
淡路から大空へ伸びる夏の虹★★★

●小口泰與
はたた神あらぬ隅へと犬の居し★★★
木道の続く限りの綿菅ぞ★★★★
竹筒を逃れし冷やし素麺よ★★★

●河野啓一
新生姜水洗いされ笊のなか★★★★
新生姜が出回る季節になった。笊には洗ったばかりの新生姜がいきいきとある。甘酢漬けにして保存しでき、さわやかな味が楽しめる。(高橋正子)

緑陰に朝餉や雀チュンチュンと★★★
星月夜木々はさらさら風にゆれ★★★

●多田有花
いま山を離れるところ梅雨の月★★★★
一夜にて梅雨の茸の育ちけり★★★
白蓮の開き初めにし今朝の池★★★

●桑本栄太郎
 近江平野野洲
乾上りて石の流れや夏の川★★★
 浜名湖
浮き舟の舫い繋がれ夏の湖★★★
 富士吉田市
夏空へ煙突あまたや富士吉田★★★★

●佃 康水
万灯を海に拡げて管弦祭★★★
太鼓打ち始まる茅の輪くぐりかな★★★
梧桐の大き葉の上花溢る★★★★

●小西 宏
一歩ずつ酷暑の坂に影を踏む★★★
カナブンの網戸に憩う甲の色★★★
己が顔叩いて暫し蚊の静寂★★★★

●古田敬二
涼風や白詰草のゆれるほど★★★
高台に来れば涼風音たてて★★★
見つめれば白詰草に紅仄か★★★★

7月15日

●小口泰與
座敷たちまち来たる休肝日★★★
近寄ると水面にすいと目高かな★★★★
夕闇や簾を伝う雨滂沱★★★

●桑本栄太郎
<上京の新幹線車窓より>
夏草の真中にありぬ岐阜羽島★★★
夏川の鉄橋つづけり大井川★★★

そびえ立つ青嶺青嶺の熱海かな★★★★
熱海というと海に目が向くが、青嶺も続くのである。その新鮮さも旅の目を楽しませてくれる。(高橋正子)

7月14日

●小口泰與
萱草の花や野川のごうごうと★★★★
静けさに梅の実落つる音したり★★★
はたた神雨脚太くなりにけり★★★

●桑本栄太郎
 車窓の近江平野
青田晴れはるか遠くに近江富士★★★★
空が晴れて、青田は緑が遠くまで輝き、その果てに近江富士が見える。こうした景色が楽しめるのも日本の旅のよさ。こういう景色を失いたくないものだ。(高橋正子)

無尽とも近江平野の青田波★★★
 新幹線・京都駅待合室
坊んさんのスマフォしている夏の駅★★★

●小西 宏
梅雨明けの蜻蛉(とんぼう)高く翅の青★★★★
梅雨明けを喜ぶものは、人だけではないのだろう。蜻蛉が梅雨明けの空を高く、ゆうゆうと喜び飛んでいる。よく見れば、翅は空の青が透けて青いのだ。梅雨明けの嬉しさ読める句だ。(高橋正子)

日の影の濃きバス停の立葵★★★
七月のカナカナひとつ空に透く★★★

●河野啓一
浜木綿のつぼみの白く顔を出し★★★
台風の去りてみどりの朝の風★★★★
草いきれ狭庭の隅はジャングルに★★★

●小川和子
芝掠め古墳の里の夏つばめ★★★
初蝉の途切れがちなる声流る★★★
蓮池に溢れて蓮の花優美★★★★

●古田敬二
元気かねと亡父来るごと咲く浜木綿★★★
茄子は紺トマトは紅に緑ピーマン★★★
カサブランカ花弁を夕日に透かせたつ★★★★

7月13日

●祝恵子
潮風の涼し花の丘通れば★★★★
花が咲き乱れる丘を通れば、涼しい潮風が吹いてくる。潮風の明るい健康的な涼しさがいい。(高橋正子)

水路の水深くなり植田潤う★★★
立葵井戸端会議の続きおり★★★

●小西 宏
森騒ぐ青葉嵐に魁けて★★★
梅雨の夜やトトロのそばに子の眠る★★★★
被災地画像
向日葵の出水の泥に残り咲く★★★

●小口泰與
わたすげや木道空へ続きおり★★★★
わたすげや木道空へ続きおり★★★★
今年は、わたすげが特に美しいとラジオで聞いたばかりなので、まさにこの句の景と思った。見渡す限りのわたすげに、木道は遥かは空へ続いている。 優しく、美しい。(高橋正子)

雪渓の一の倉沢禽一羽★★★
あぜ道に雨しずく満つ夏ひばり★★★

●多田有花
本を読むうちに昼寝に誘われる★★★
古民家の奥でいただく夏料理★★★★
山行の予定練りつつ葛饅頭★★★

●川名ますみ
葉生姜の淡き色より囓りけり★★★★
酢どりにした葉生姜は、一口噛めばすがすがしい香りと味わいが口に広がる。赤みの濃いところから次第に淡い色になっているが、淡い色のところからそっと囓ってみる。それがさわやかさを呼ぶ。(高橋正子)

硝子器にじゅんさいを掻く箸の先★★★
蓴菜を掻けばひかりぬ箸の先★★★

7月12日

●小口泰與
雨後の空紺を刷きたる夏の湖★★★
虎尾草や夕づく空へ牛の声★★★
次つぎに鮎のあがるや浅間晴★★★★

●高橋秀之
早朝の池に蓮見の来訪者★★★★
早朝、作者はジョギングか散歩で蓮池を訪ねたのだろう。そのとき、蓮見の来訪者が意外と大勢いるのに驚いた。蓮は早朝に開花するので、この開花の時間を狙っての蓮見客。(高橋正子)

正午には夜明けの曇りが夏空に★★★
梅雨晴れの満月ひときわ明るくて★★★

7月11日

●古田敬二
風の来て南蛮黍の葉擦れ音★★★★
とうもろこしを南蛮黍とも言う。南蛮黍は実が熟れてくるに従って、乾いた葉音がする。風が吹くとざわざわと初秋の気配を感じさせる。(高橋正子)

森行けば木漏れ日嬉し梅雨晴間★★★
新緑の木漏れ日道に○○と★★★

●小口泰與
夏山へ白雲湧くや雨後の朝★★★
夏ひばり三山もやに沈みける★★★
ねじ花の乱立せりや雀どち★★★★

●桑本栄太郎
ふるさとの海の香りや烏賊届く★★★★
潮の香に塩を振りつつ烏賊洗う★★★
歩こうかバスに乗ろうか梅雨晴間★★★

●多田有花
梅雨の嵐ほんの少しで過ぎにけり★★★
台風の去りて梅雨の夜の静か★★★
陽の香り残りしトマトを丸かぶり★★★★


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