7月10日(4名)
小口泰與
目路はるか谷川岳へ夏の蝶★★★★
夏山シーズンを迎えた谷川岳へはるか目をやると、蝶が力強く飛んでいく。高く力強く飛ぶ蝶をモチーフに広大な自然が詠まれている。(髙橋正子)
忽然と襲いし睡魔日日草★★★
大沼の魚はねて居り百日紅★★★
大沼の魚はねて居り百日紅★★★
廣田洋一
干見世に探る漱石三部作★★★
銃身をしっかり伸ばす夜店の灯★★★★
箱釣りや上手く掬ひて拍手湧く★★★
銃身をしっかり伸ばす夜店の灯★★★★
箱釣りや上手く掬ひて拍手湧く★★★
桑本栄太郎
雷鳴と雨足つづく一夜かな★★★
目覚むれば首筋流る汗のすじ★★★
堀割の鯉の集うや鴎外忌★★★
目覚むれば首筋流る汗のすじ★★★
堀割の鯉の集うや鴎外忌★★★
多田有花
ほととぎす何に急かれて鳴き続く★★★
豆苗は夏の光の来る方へ★★★
折り取りて蚊取線香消火する★★★
豆苗は夏の光の来る方へ★★★
折り取りて蚊取線香消火する★★★
7月9日(5名)
小口泰與
翡翠の同じ枝へと飛来せり★★★
三年の目高の動き発発と★★★
雲の峰田畑に動くもの見えぬ★★★
三年の目高の動き発発と★★★
雲の峰田畑に動くもの見えぬ★★★
廣田洋一
朝顔や葉の広がりてカーテンに★★★
束の間の静かな流れ夏の川★★★
土手の石垣白く乾きて夏の川★★★
束の間の静かな流れ夏の川★★★
土手の石垣白く乾きて夏の川★★★
多田有花
夏朝日昇り来るなか若燕★★★
天空はわがふるさとよ夏燕★★★
軒先に巣立ち燕の群れ飛びぬ★★★★
天空はわがふるさとよ夏燕★★★
軒先に巣立ち燕の群れ飛びぬ★★★★
巣立ったばかりの燕が、遠くへ飛ぶのをためらって、軒先を群れ飛んでいる。若い燕たちの溌剌と元気な動きに魅かれる。(髙橋正子)
弓削和人
梅雨あがり海は平や果てしなく★★★
揚羽蝶祠を舞いて飛びゆけり★★★
炎帝や露は蒸気し空へ舞い★★★
梅雨あがり海は平や果てしなく★★★
揚羽蝶祠を舞いて飛びゆけり★★★
炎帝や露は蒸気し空へ舞い★★★
桑本栄太郎
にわか雨の降れど乾くや木下闇★★★
雷鳴と雨音聞きつ午睡かな★★★
午後よりは雷鳴つづき夜となりぬ★★★
雷鳴と雨音聞きつ午睡かな★★★
午後よりは雷鳴つづき夜となりぬ★★★
7月8日(5名)
小口泰與
夏期講座居眠り誘う鳩の声★★★
湖畔には国旗かがげし熱帯夜(原句)
湖畔には国旗かがげし熱帯夜(原句)
湖畔には国旗かかげり/熱帯夜(正子添削)
水槽の子目高忽と反転す★★★
水槽の子目高忽と反転す★★★
廣田洋一
薔薇園の細かな手入れ庭師達★★★
薔薇咲きて波止場に泊まる遊覧船★★★★
炎天下建物白き港町★★★★
薔薇咲きて波止場に泊まる遊覧船★★★★
炎天下建物白き港町★★★★
炎天下は強い光を受け、街が反射して白っぽく見えることがある。この句は、実際白い建物が多い港町。洒落た港町の風景が夏らしい。(髙橋正子)
多田有花
たっぷりの生姜紅茶を小暑なり★★★
講義しておれば突然の雷雨★★★
夏休みバイトの話で盛り上がる★★★
講義しておれば突然の雷雨★★★
夏休みバイトの話で盛り上がる★★★
弓削和人
雨露や流れ流され夏の海★★★
蝉時雨さつき並木の通い路(原句)
雨露や流れ流され夏の海★★★
蝉時雨さつき並木の通い路(原句)
蝉時雨さっき並木の通い路に(正子添削)
梅雨明けや大海原へ釣りの糸★★★
梅雨明けや大海原へ釣りの糸★★★
桑本栄太郎
萎れても気品溢るる合歓の花★★★
ワクチンの四回目打つ日の盛り★★★
雨降れば雨宿りせし木下闇★★★
ワクチンの四回目打つ日の盛り★★★
雨降れば雨宿りせし木下闇★★★
7月7日(5名)
廣田洋一
調べもの次から次へ明易し★★★
明日は又デートの予定明易し★★★
逝きし子の遊ぶ姿や走馬灯★★★★
明日は又デートの予定明易し★★★
逝きし子の遊ぶ姿や走馬灯★★★★
小口泰與
郭公や全山靄に飲まれける★★★
緋目高や水槽の草姦しき★★★
耕運機の土落し行く夏雲雀(原句)
緋目高や水槽の草姦しき★★★
耕運機の土落し行く夏雲雀(原句)
夏雲雀土落とし行く耕運機★★★★(正子添削)
野に夏雲雀が揚がり、耕した畑の土を耕運機が落として行く。耕運機の落とした土が新しい。みんな生き生きとしている。(髙橋正子)
多田有花
初蝉をああと思いて聞きにけり★★★★
牽牛織女安心の快晴なり★★★
洗濯にはよけれ小暑の青空は★★★
牽牛織女安心の快晴なり★★★
洗濯にはよけれ小暑の青空は★★★
桑本栄太郎
早朝蝉の声聞き目覚めけり★★★★
蒼ざめた四葩開くや病院に★★★
炎昼の遠嶺となりぬ京の山★★★
蒼ざめた四葩開くや病院に★★★
炎昼の遠嶺となりぬ京の山★★★
7月6日(5名)
小口泰與
発条の玩具の動き夏雲雀★★★
逃げ足の速き子目高中天へ★★★★
逃げ足の速き子目高中天へ★★★★
水の中にも中天があると見た発想が涼しい。子目高が元気に動き、何かの音には、水底から水の中ほどへ素早く逃げる活発さは見ていて飽きない。(たかっ橋正子)
夏霧の沼を遮断や鳥の声★★★
夏霧の沼を遮断や鳥の声★★★
廣田洋一
雨の色日の色吸ひて七変化★★★
浜茄子や異国館に群咲きぬ★★★
逝きし子の遊ぶ姿や走馬灯★★★★
浜茄子や異国館に群咲きぬ★★★
逝きし子の遊ぶ姿や走馬灯★★★★
多田有花
<須磨離宮公園三句>
淡路島淡し仲夏の須磨離宮★★★
噴水の到達点を見つめおり★★★(原句)
淡路島淡し仲夏の須磨離宮★★★
噴水の到達点を見つめおり★★★(原句)
「見つめおり」が気になります。なかなか言葉が思いつかないですが、いろいろ試してみるのもいいかと思います。(髙橋正子)
噴水の到達点より落つるのみ(正子添削①)
噴水の到達点より空となり(正子添削②)
紫陽花の道を辿りて出口まで★★★
桑本栄太郎
期日前投票済みぬ朝涼し★★★
旧交を温め会いぬ朝涼し★★★
嶺の端の茜雲とや宵涼し★★★★
旧交を温め会いぬ朝涼し★★★
嶺の端の茜雲とや宵涼し★★★★
弓削和人
夜長の灯硝子戸へゆく夏の虫(原句)
夜長の灯硝子戸へゆく夏の虫(原句)
「夜長」は秋の季語です。「夏の虫」と季が重なりますので、避けます。
灯ともれる硝子戸へ来て夏の虫★★★★(正子添削)
梅雨入りの水輪を避けぬ停留所★★★
年半ば七月をはや過ぎにけり★★★
年半ば七月をはや過ぎにけり★★★
7月5日(5名)
小口泰與
紫陽花を抱え立ち読み日照雨かな★★★
子目高の大回転や居間明り★★★
写真家の翡翠を狙い遠き道★★★
子目高の大回転や居間明り★★★
写真家の翡翠を狙い遠き道★★★
廣田洋一
浜茄子や海風そよぐ丘の上★★★
朝顔の予期せぬ色に咲きにけり★★★
青空に赤き光や夾竹桃★★★
朝顔の予期せぬ色に咲きにけり★★★
青空に赤き光や夾竹桃★★★
弓削和人
炎昼や店の看板文字薄らぎ★★★
雷鳴の空一閃や鳩立ちぬ
炎昼や店の看板文字薄らぎ★★★
雷鳴の空一閃や鳩立ちぬ
「立ちぬ」は、飛びたつことですか。
籔を去り大路に座する蟇★★★
籔を去り大路に座する蟇★★★
桑本栄太郎
初蝉の一瞬のみや沙汰止みに★★★
いやいやの音の軋むや扇風機★★★
寝そべれば蠅虎の跳び逃げる★★★
いやいやの音の軋むや扇風機★★★
寝そべれば蠅虎の跳び逃げる★★★
多田有花
<須磨離宮公園三句>
薔薇咲くや水落つ音の頭上より★★★★
薔薇咲くや水落つ音の頭上より★★★★
須磨離宮公園は「須磨離宮」という古風な名前を持ちながら、薔薇と噴水があでやかな公園。頭上高く揚がる噴水か、あるいは壁泉の落ちる水か、水の涼しさと迫力を感じる。(髙橋正子)
彫像の静止や流れる水の前★★★
花々に囲まれ噴水の高し★★★
花々に囲まれ噴水の高し★★★
7月4日(5名)
弓削和人
雷鳴す黙する街に耳を澄まし★★★
雷鳴や遠くの犬の吠えにけり★★★
雷の鳴るやすなわち街小さし★★★★
雷鳴す黙する街に耳を澄まし★★★
雷鳴や遠くの犬の吠えにけり★★★
雷の鳴るやすなわち街小さし★★★★
小口泰與
黒点の如くに落つる夏雲雀(原句)
黒点として思われたのでしたら、ストレートに「黒点」とするのが、詩的だと思います。俳句では、「如し」はなるべく使わない方がよいです。(髙橋正子)
黒点となって落ちたり夏雲雀★★★★(正子添削)
夏空高く舞い上がった雲雀が、急降下するとき、黒点に見えた。生命体としての雲雀の落ちる勢いが点にまでなる。ここが面白い。(髙橋正子)
夕さりの書肆の紫陽花雨の中★★★
熊ん蜂花粉に塗れ草の中★★★
熊ん蜂花粉に塗れ草の中★★★
廣田洋一
草取りや庭の黒土甦る★★★
草取りや舗装の目地の草も取り★★★
汗のシャツ背中につきて離れざる★★★
多田有花
<須磨離宮公園三句>
登り来て青葉の彼方友ヶ島★★★
いま静かやがて噴水噴き出しぬ(原句)
登り来て青葉の彼方友ヶ島★★★
いま静かやがて噴水噴き出しぬ(原句)
「噴き出しぬ」でもいいですが、「噴き上がる」にして、動きがよりよく出るようにしてはどうでしょうか。(髙橋正子)
いま静かやがて噴水噴き上がる★★★★(正子添削)
皇族の名を持つ薔薇の数多咲く★★★
桑本栄太郎
はんざきのように眠りぬ溽暑の夜★★★
雨脚の音に目覚むや戻り梅雨★★★
燐寸擦る手の濡れにけり修司の忌★★★
雨脚の音に目覚むや戻り梅雨★★★
燐寸擦る手の濡れにけり修司の忌★★★
7月3日(5名)
小口泰與
置鉤の糸の張りたり梅雨鯰★★★
捩花へ使徒の如くに跪き★★★
空蝉や数ならぬ身と思い染む★★★
置鉤の糸の張りたり梅雨鯰★★★
捩花へ使徒の如くに跪き★★★
空蝉や数ならぬ身と思い染む★★★
弓削和人
空梅雨の畠へ農夫は水を遣り★★★
夏の蔓川瀬へ下りて浸りつつ★★★
ペチュニアの踏切り開くを人と待ち
空梅雨の畠へ農夫は水を遣り★★★
夏の蔓川瀬へ下りて浸りつつ★★★
ペチュニアの踏切り開くを人と待ち
「ペチュニアの踏切り」とは、どんな意味ですか。
廣田洋一
予約せる京都の旅や7月の風★★★
口元のきりりと鮎の売られけり★★★★
プール出で吾身を包む重力かな★★★
多田有花
コントラバス置いて涼しき定食屋★★★
鯵塩焼き柿の青葉に載りて来る★★★★
鯵は夏の季語。鯵は年中食卓に上るとは言え、塩焼きにした時の香ばしさと色など、夏らしいと言える。柿の青葉に載せられるとは、季節らしい取り合せで
涼しく、食指が動きそう。(髙橋正子)
<須磨離宮公園>
オリジナルローズ咲かせし須磨離宮★★★
<須磨離宮公園>
オリジナルローズ咲かせし須磨離宮★★★
桑本栄太郎
朝よりの雨の頻りに戻り梅雨★★★
風立つや雨となりたる朝涼し★★★
人間の業の深さよ楸邨忌★★★
朝よりの雨の頻りに戻り梅雨★★★
風立つや雨となりたる朝涼し★★★
人間の業の深さよ楸邨忌★★★
7月2日(4名)
小口泰與
雀らの塒の軒や柿の花★★★
産土は風早なりし落し文(原句)
雀らの塒の軒や柿の花★★★
産土は風早なりし落し文(原句)
「なりし」の「し」は「過去の助動詞「き」の連体形で、「風早なりし」が「落し文」を修飾しています。(髙橋正子)
産土は風早なりぬ落し文★★★★(正子添削)
大利根の流れ畏き香魚かな★★★
廣田洋一
古き家に咲きこぼれたり棕櫚の花★★★
重たげな房を垂らして棕櫚の花★★★
古本の夜店懐かし神保町★★★★
多田有花
ベゴニアの咲く公園でひとやすみ★★★
昼食は葦簀巡らす食堂で(原句)
「食堂で」の「で」で終わるが、気になります。
昼食は葦簀巡らす食堂に★★★★(正子添削)
いさき塩焼き直前で品切れに★★★
桑本栄太郎
一鉢の月下美人を室に愛ず★★★
箱一杯盛りて届きぬ夏野菜★★★★
万物繁茂の夏、夏野菜もいろいろの種類が、たくさんとれたのでだろう。箱一杯に盛って届けられた。彩りよく、みずみずしい夏野菜に元気がもらえそう。(髙橋正子)
ふるさとは嶺の彼方や西日落つ★★★
7月1日(5名)
小口泰與
ステテコや白焼鰻頬張りて★★★
郭公や靄の小沼を揺り起こし★★★★
風鈴や足腰とみに弱りける★★★
ステテコや白焼鰻頬張りて★★★
郭公や靄の小沼を揺り起こし★★★★
風鈴や足腰とみに弱りける★★★
廣田洋一
朝顔や道行く人を楽しませ★★★
朝顔の蔓の行方を手引きして★★★
浜茄子や銅鑼の音残し船の行く★★★★
朝顔の蔓の行方を手引きして★★★
浜茄子や銅鑼の音残し船の行く★★★★
桑本栄太郎
暁闇の夜気の窓より朝涼し★★★
七月と思えば今朝の暑さかな★★★
嶺の端の今暮れかかる大西日★★★★
嶺の端が暮れかかって暗くなっていくのに反して、空には西日があかあかと暑そうに空を染めている。京都の夏の日暮れを詠んでいる思わされる。(髙橋正子)
多田有花
<橿原神宮二句>
花菖蒲日差しわずかにのぞき初め★★★
<橿原神宮二句>
花菖蒲日差しわずかにのぞき初め★★★
日傘の人遠くに池の広々と(原句)
「切れるところ」がよくないので、意味が分かりにくいです。
日傘の人を遠くに/池の広々と★★★★(正子添削)
<大阪大丸ヒロコーヒー店>
熱き珈琲六月の旅終わりけり★★★
熱き珈琲六月の旅終わりけり★★★
弓削和人
初蝉の何処で鳴くや夕の暮(原句)
「夕の暮」が問題です。ここを直せば★4つです。
初蝉の何処で鳴くや日が暮れる(正子添削)
初蝉が夕蝉となって、初蝉を聞いたうれしさと、日暮れの淋しさや不安感、定かでない蝉の居場所、これらがないまぜになった感情がそのまま詠まれている。(髙橋正子)
夏来る陽をかくしたる雲はなし★★★
コメント
Unknown
御礼
高橋正子先生
7月2日の投句「落し文」の句を添削して頂き有難う御座いました。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
お礼
正子先生
7月1日の句「日傘の人遠くに池の広々と」を
「日傘の人を遠くに池の広々と」と添削いただきありがとうございます。
確かに元の句は意味がとりにくいですね。
添削いただいた句で池の広がりが伝わります。
7月2日の句「昼食は葦簀巡らす食堂で」を
「昼食は葦簀巡らす食堂に」と添削いただきありがとうございます。
確かにご指導いただいた通り、「で」では説明的になってしまっています。
一文字の違いで句ががらっと変わるのがわかりました。
7月4日の句「いま静かやがて噴水噴き出しぬ」を
「いま静かやがて噴水噴き上がる」と添削いただきありがとうございます。
噴水の噴き上がってくるところを描きたかったので、
まさに目にした情景どおりになりました。
動きがはっきり感じられます。
御礼
高橋信之先生、正子先生
7月8日の投句「湖畔には国旗掲げし熱帯夜」を「湖畔には国旗掲けり熱帯夜」に添削して頂き有難う御座います。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。
句を直しました
正子先生
「噴水の到達点を見つめおり」を添削指導いただきありがとうございます。
自分なりに考え直してみました。
「噴水の虚空に決まる到達点」ではいかがでしょうか。