6月7日-10日

6月10日

●小口泰與
噴水や風の中なる落ち処★★★
噴煙の西にたふるる薄暑かな★★★
渓流の妙なる瀬音夏わらび★★★★

●桑本栄太郎
ほどけ来て風をいざなう小判草★★★★
梅雨闇の街道西へ曲がりけり★★★
まだらなる影かみどりか夏の嶺★★★

●小西 宏
山桑やまだ濡れている朝の道★★★★
「山桑」は、季語では山帽子のこと。梅雨にはいってもまだ咲いている山帽子があるが、まだ雨に濡れている朝の道に白い山桑の花を見つけると、湿りのある中にもすがすがしさを思う。(高橋正子)

梅雨の夜の静かに飯を食う音よ★★★
杏子熟れ転がってくる坂の街★★★

●高橋信之
紫陽花の静かな色が団地の朝★★★
梅雨晴れの朝の散歩を楽しみに★★★
菖蒲田の花のちらほら咲き始む★★★★

●高橋正子
ゆうすげに月まだ淡くありにけり★★★
睡蓮の花いろいろに水を出る★★★
ほうたるの火が飛ぶ風が吹き起こり★★★★

6月9日

●小口泰與
雨粒を含みしばらをきりにけり★★★★
雨のかかった薔薇の花は重くなっている。剪りとるときにその意外な重さを感じたことであろう。その気持ちが「きりにけり」の詠嘆となっている。(高橋正子)

全身に雨たばしりて薔薇を剪る★★★
雨蛙草にたわむれ吹かれおり★★★

●桑本栄太郎
軽トラックの行商ひらく梅雨晴間★★★
飛び乗れば汗の噴き出る家路かな★★★
父と子のサッカー遊びや沙羅の花★★★★

●高橋正子
睡蓮を揺らす水音とぎれずに★★★★
雲行かす山ゆり朱の蕊を立て★★★
夏椿葉かげ葉かげの白い花★★★

6月8日

●小口泰與
一夜にて城壁築く蟻の国★★★★
じわじわと田に水進む夏ひばり★★★
野良猫をたばかる甕の目高かな★★★

●桑本栄太郎
うす色の男日傘の家路かな★★★
万緑の山並み仰ぐ天王山★★★
吹く風の素通り出来ず金糸梅★★★★

●小西 宏
梅雨入りの音絶え間なく軒伝う★★★
洗われし木々の緑や梅雨晴間★★★
雨止めばザリガニ探る子供たち★★★★

●多田有花
田植え終えし田植機を洗い清む★★★★
田植えが終われば、活躍した田植機の泥をきれいさっぱり洗い流す。これですっかり田植えが終わったという安堵となる。(高橋正子)

早苗田の揺れる水面に苗小さく★★★
墓石に積もれる竹落葉を掃く★★★

●高橋秀之
新しい水に金魚は動き出す★★★★
水を換えると不思議と金魚は生き生きと動く。透明な水に金魚がひらひら泳ぐのが涼しそうだ。(高橋正子)

ベランダが所狭しと梅雨晴間★★★
出目金が尾びれ広げて大水槽★★★

6月7日

●小口泰與
郭公や赤城の裾野たのもしく★★★★
郭公が切れ目をもって鳴く。その声が赤城山の裾野に響くと裾野がたのもしく思える。郭公が来て鳴く夏は弾むような季節だ。(高橋正子)

木漏れ日を水面に映し九輪草★★★
おうとつの山のしるきや甲虫★★★

●佃 康水
黄熟の匂い立たせて梅漬ける★★★★
梅干しに漬ける梅は青梅ではなく、黄色く熟れてやわらくなった梅を用いる。青梅が黄熟する間に放つ梅の甘くかぐわしい匂いは、「梅仕事」を楽しくしてくれる。(高橋正子)

降る雨にに白さ際立つ半夏生★★★
田の隅に今を勢う余り苗★★★

●桑本栄太郎
未央柳蕊の煌めき雨あがる★★★
雨音に飛び跳ね起きる午睡かな★★★
豌豆をむけば弾めり床の音★★★★

●高橋秀之
濡れ帰るそれもありかな六月の雨★★★
雨上がりの日差しを浴びて緑濃く★★★
雨の中を唸るエンジン耕運機★★★★

●高橋信之
卯の花のつぼみもありぬつぼみも白★★★★
咲けば白をあふれさせる卯の花。まだ咲かない蕾も、よく見れば白い。卯の花は白をもって意を通す。(高橋正子)

丘に咲き風吹く中の立葵★★★
郁子咲くを森の高きに写し撮る★★★


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