6月17日-20日

6月20日

●小口泰與
五月雨や赤城の裾野たゆみなし★★★
水替えの目高を桶に通り雨★★★
山道をた走る水や雨蛙★★★★

●桑本栄太郎
蕊ふるえ未央柳の散り初めり★★★
緋の色の石榴の花に朝日かな★★★★
柘榴の花は、紅一点と詠まれただけに、万緑のなかで際立った色だ。それに朝日があたると、緋色ともなって、透き通るような鮮やか色だ。それを詠んだ。(高橋正子)

竹林の闇を風抜け朝涼し★★★

●高橋信之
早咲きの夾竹桃が学校に★★★★
キウイ棚しんとして風吹かぬ朝★★★
紅かんぞう少し離れた草叢に★★★

6月19日

●小口泰與
たのみなき草の生ゆるや青田波★★★
夕顔や浅間に夕日溜めており★★★★
道絶えし杣道の辺に連理草★★★

●桑本栄太郎
夏萩の白きこぼれや朝の路地★★★★
朱色濃き石榴の花に朝日かな★★★
泰山木の花に朽ち色出でにけり★★★

●小西 宏
夕暮に西空大き生ビール
【添削】夕暮の西空大き生ビール★★★★
暑かった日のおわりに飲む生ビールの美味しさは得難い。夕暮れの西の空もまだ明るくひろびろと広がって、解放感と明日へのささやかな希望を感じさせる。(高橋正子)

崖道の小暗に白き草清水★★★
尖る岩に小蟹潜める潮だまり★★★

●古田敬二
苗田静か吉野の山を逆さまに★★★★
【添削】植田静か吉野の山を逆さまに★★★★
「苗田」は、稲の苗を育てる田のことで、季節は春。稲の苗を植えたばかりの田は「植田」という。季節は夏。この句の情景は、吉野の山が逆さまに田面に映っているので、苗田ではなく植田が適切と思う。「吉野の山」がよく効いている。(高橋正子)

方丈の屋根から激し昼の梅雨★★★
白川の流れに触れて柳揺れ★★★

6月18日

●小口泰與
茄子苗や雨の力を溜むるなり★★★★
鮎釣りの辺をたもとおる釣人よ★★★
新築の家も映せし植田かな★★★

●河野啓一
道の駅新玉葱のあちこちに★★★★
島並を行けば広々夏の瀬戸★★★
松生うる浜の入日や詩碑ありて★★★

●祝恵子
道曲がれば西国街道梅雨曇り★★★
せせらぎへ矢印を指す祭り旗★★★
メダカ売る女学生の絵が可愛い★★★★(信之添削)

●多田有花
昼食を終えれば眠し梅雨曇★★★
灰色の守宮静かに壁の隅★★★
曇り空透かして蜘蛛の巣を張りぬ★★★★

●桑本栄太郎
蕊ふるえ未央柳や夕風に★★★
のうぜんの花の夕日に染まりけり★★★★
向日葵の早も標となりしかな★★★

6月17日

●小口泰與
上州の雷をたまわる過客かな★★★
たまゆらの瀬音を聞きし時鳥★★★★
玉の緒の薬にすがる大暑かな★★★

●小川和子
忽と来て縞の涼しき梅雨の蝶★★★
鈴懸の照る葉陰る葉みな青葉★★★
せせらぎに児ら飛沫上ぐ梅雨晴間★★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋界隈>
沙羅の花落ちて決まりし建仁寺★★★★
茫洋とはるか鞍馬や夏の嶺★★★
鴨川の風の触れゆく川床座敷★★★

●多田有花
すべて田は植わりて空の色映す★★★★
どの田も植え終わり、田面の水は早苗を映し、空の色をあざやかに映している。日本画にもあるような光景だ。(高橋正子)

山路来てドリンクゼリーを流しこむ★★★
湯あがりの目に真白きは鴨足草★★★

●高橋秀之
風鈴の音が重なる商店街★★★★
商店街のあちこちの店先に風鈴を吊るして売っているのだろう。それらの風鈴の音が重なって、商店街に涼を醸している。(高橋正子)

大皿に四角が浮かぶ冷奴★★★
夏蝶の影が風呂場のすりガラス★★★

●小西 宏
蛍消え木の間の空に星見ゆる★★★★
蛍が飛ぶのは夕方。六時ごろから飛びはじめ八時か九時には消えている。蛍と交代するかのように木の間から星が一つ二つと見える。どちらも小さな、輝くものの明かり。(高橋正子)

子はすぐに大きくなりぬ花空木★★★
三浦より富士ある処梅雨の海★★★


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