5月24日
●迫田和代
新緑に囲まれている森の奥★★★
初夏になり」木陰もいいし風もいい★★★
流れゆく水音までも初夏の音★★★★
●小口泰與
隠れ沼(ぬ)に雨そそぎけり柿の花★★★
老鶯の山ふところに鳴きそそり★★★
昇り藤谷川岳の聳てり★★★★
●桑本栄太郎
ひつそりと葉蔭に青く柿の花★★★
さみどりの早もあじさいつぼみけり★★★★
青嵐の風落ち昏るる夕べかな★★★
●多田有花
晴れて今日裸足の季節始まりぬ★★★★
裸足が気持ちがよいのは少し暑さが加わった晴れた日。今日はちょうどそんな日なので、裸足ですごすことに。「晴れて」裸足の季節が始まるという当たり前のようだが、そこに意外性がある。(高橋正子)
少女らの自転車薫風を駆ける★★★
繰り返し森の奥よりほととぎす★★★
●黒谷光子
隣村へどの道行くも姫女苑★★★★
隣村へは、自転車に乗ったり、すぐ近ければ歩いてゆくこともあるのだろう。隣村へ行く道がいろいろあるが、どの道をとっても姫女苑が揺れている。やさしい花の咲くさわやかな道はうれしい。(高橋正子)
堂裏の射干知らぬ間に咲き終わり★★★
蕗を剥き暫く残る手の香り★★★
5月23日
●小口泰與
柿若葉野川の水のきらきらと★★★★
柿若葉が美しい色を見せるころ、陽は明るく輝き、野川はきらめきながら、そうそうとと流れる。日本のいい風景だ。(高橋正子)
白めだか身をそぐようにたまご産み★★★
雨後の朝そこはかと匂う牡丹かな★★★
●佃 康水
じゃがたらの花段畑に揺れ揃う★★★★
大蘇鉄朽ちし幹より青葉出づ★★★
夏めくや帆を張り替える浜漁師★★★
●河野啓一
万緑や友の便りの嬉しくて★★★
さわさわと鳴りて新樹は日を反し★★★★
池の面に遠き浮草夕まぐれ★★★
●桑本栄太郎
さらさらと白き葉裏や新樹冷ゆ★★★
すかんぽの穂に夕日さす丘の上★★★★
青嵐の風落ち昏るる夕べかな★★★
●多田有花
短夜や朝日が部屋の奥深く★★★
淡路島青葉若葉のその向こう★★★★
きな粉かけヨーグルトかけバナナ食ぶ★★★
●川名ますみ
青空に溶けることなき青葉の線★★★★
青は多くの色合いを含む。青空の青、葉や草の青など。青空と青葉とは、連なるような色だが、それが截然として空と青葉の間に線が引かれる。はやり、盛り上がるような青葉の勢いのせいであろう。(高橋正子)
青天と青葉きりりと画されし★★★
泰山木大きくそちこちに花★★★
5月22日
●小口泰與
朝日受けきわやかなりし柿若葉★★★
石楠花や鳥語人語とあふれおり★★★★
山雨来て野良猫急きし麦の波★★★
●小川和子
バギー押す子と連れ立てる薔薇の昼★★★★
バギーにみどり児を乗せて押していくわが子と連れだって薔薇の咲く昼の道を歩く。なにもかもが幸せに繋がる。(高橋正子)
バギーの児薫風の中眩しげに★★★
ふくいくと薔薇薫りくる聖五月★★★
●祝恵子
獅子の舞うそろそろ田水張らる頃★★★★
この句の獅子舞は、田植えの始まる前に豊作を願って舞う獅子舞だろう。その獅子舞がくると田水が張られ田植えの準備が始まる。わくわくした気持ちにもなる。故郷の田植えを思いだされたのだろう。(高橋正子)
とりどりの花はフエンスにばらは咲く★★★
鉢に添え木夏の野菜の育ちゆく★★★
●桑本栄太郎
実となりし楓若葉の緋色かな★★★
歩みゆく歩道いろどり青嵐★★★★
虫食いの葉裏にありぬ柿の花★★★
●多田有花
夏浅き光のあふれ森の道★★★
寺へいく道をきかれし薄暑かな★★★★
紬着て白日傘ゆく昼下がり★★★
●河野啓一
若葉風高窓開けて招き入れ★★★★
水玉を光らせ若葉照り映える★★★
アマリリス窓辺の風をひとり占め★★★
●小西 宏
初雷の去ればたちまち青い空★★★★
若葉より光漏れくる雨上がり★★★
雷雲の夕日に照るを見ておりぬ★★★
●黒谷光子
濃く薄く森は緑を競い合う★★★
揺れるともなく揺れ池に蓮浮葉★★★
初夏の池廻るそれぞれの歩幅★★★★(信之添削)
初夏の池は心地よい風が吹き、その池を連れだって巡るにも、思い思いに、それぞれの歩幅でめぐる。それぞれが池畔を楽しむ。初夏のさわやかさがあればこそ。(高橋正子)
●高橋秀之
真ん中の牡丹の花は大きくて★★★★
花びらに雨のしずくが白牡丹★★★
歩を進め止まって歩む牡丹園★★★
5月21日
●小口泰與
速やかに溶岩(ラバ)色蜥蜴溶岩を越ゆ★★★★
蜥蜴の動きは滑るように「速やかに」だ。溶岩に入れば溶岩の色になり溶岩を越える。動かねば見付けにくいが、その動きも速い。それをよく捉えた。(高橋正子)
有史より続く火の山麦の秋★★★
草肥や背戸の流れの急(せ)かれしよ★★★
●河野啓一
若楓谷間を埋めて箕面山★★★★
雨上がり水も滴る夏セーター★★★
更衣袖吹き抜ける風さやか★★★
●祝恵子
池の花アイリスの黄をしばし見る★★★
無人店引き返して買う夏の花★★★★
駅出れば催促賑やか子の燕★★★
●多田有花
高らかに森に響きしほととぎす★★★
波白く砕けて沖は初夏の青★★★★
五月の雨あがれば伸びし草の丈★★★
●桑本栄太郎
降り来れば筍流しと想いけり★★★
若楓ゆらぐ葉影の網目かな★★★
杭たどり風にあらがう糸とんぼ★★★★
●小西 宏
菜の色も海の香もあり冷やしソバ★★★★
冷やしソバに、畑の菜もあれば、海の香りのするものも載せてある。海の香りで一度に夏が来た。それを引き立てるのが菜の色だ。涼しさを誘う冷やしソバだ。(高橋正子)
日の影に野良猫眠るバラの花★★★
睡蓮に波少し寄せ鯉の鰭★★★
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