5月31日(4名)
●谷口博望(満天星)
さくらんぼ幼き頃は甘かりし★★★
額の花額縁替えて名を変えて★★★
道行かば零れ散りけり花卯木★★★★
●小口泰與
ぐいぐいと田川の流れ夏燕★★★
初夏や川瀬にまじる鳥の声★★★
雲の峰山家の壁の弓と槍★★★★
●桑本栄太郎
木洩れ日の水面に映ゆる木下闇★★★★
鞍馬山夏の霞の遠嶺かな★★★
紫陽花や孫のみやげにトイザラス★★★
●多田有花
スタジアムの彼方に五月の夕陽落つ★★★★
ぱらぱらと降りだす雨や不如帰★★★
火星の大きく光りし五月尽★★★
5月30日(4名)
●谷口博望(満天星)
薔薇の名や少女アンネの美しき★★★
水琴の聞こえてきたり夏座敷★★★★
木の上に卵ありけり森青蛙★★★
●小口泰與
聖五月つぎむぎ変る湖の空★★★
雨後の朝畷の蚯蚓砂まみれ★★★
遠山の棚引く雲よ若葉風★★★★
●河野啓一
アジサイの溢るるばかり蕾かな★★★★
介護士は新人なるや今年竹★★★
小さきバラ見上げ道行く人もあり★★★
●桑本栄太郎
十薬の木蔭なれども凜と白★★★
せせらぎに沿いて風来る額の花★★★★
せせらぎは、また風の通り道。せせらぎに沿って額の花が咲けば、額の花が風に揺れる。湿りがちな季節、せせらぎの音と風の涼しさが快い。(高橋正子)
勇歌碑祇園白川青葉闇★★★
5月29日(3名)
●谷口博望(満天星)
あめんぼの水面(みなも)の沈む重さかな★★★★
あめんぼの浮いている水面を見れば、わずかに凹んでいる。あめんぼの重さの分だけの沈みに、小さなあめんぼの重さが知れるというもの。(高橋正子)
揺らめける原爆ドーム夏きざす★★★
菩提樹の花と苞葉てのひらに★★★
●小口泰與
糸とんぼ日を弾きたる水の空★★★
麦の秋大曲りせる小海線★★★★
畳なわる雲や卯月の雨後の朝★★★
●桑本栄太郎
南天の白きつぼみや五月闇★★★★
黒き実のつぶれ舗道に青嵐★★★
懸け上がる雨雲嶺に走り梅雨★★★
5月28日(7名)
●谷口博望(満天星)
オバマ来し平和公園薄暑かな★★★★
オスプレー飛んで広島薄暑かな★★★
マテバシイの花匂いけり聖五月★★★
●小口泰與
聞こえくる就業のベルや夏燕★★★★
鉄線の蘂の群れ立つ風の朝★★★
そうそうと岩噛む波よ夏蕨★★★
●古田敬二
老鶯の瀬音に混じる紀伊の川★★★★
老鶯や万葉人の越えし谷★★★
旅に出る春潮のぼる木曽川(きそ)を超え★★★
●桑本栄太郎
田道ゆく吾の独りや草いきれ★★★★
蔓ばらの高き垣根や幼保園★★★
金枝梅バスの出てゆくターミナル★★★
●河野啓一
夏潮の寄せる入り江の真珠貝★★★★
百合の花白く咲き出る気配して★★★
野菅草黄色く開く雨もよい★★★
●佃 康水
鉢またも増えて隣家の目高かな★★★
翡翠色潰さず盛りて豆の飯★★★★
豆飯の緑は、「翡翠色」というほどきれいだ。その色を保って炊き上げるのも難しく、きれいに炊き上がったときは、大変うれしいものだ。まん丸い翡翠色をつぶさないように、茶碗に装う。目をも楽しませる豆飯は、季節感あふれる食だ。(高橋正子)
被爆地に立つオバマ氏へ新樹光★★★
●上島祥子
満開の薔薇残されて空き家跡★★★★
夏落葉門扉固く閉ざす家★★★
鉄門に沿いて満開ヒメジョウン★★★
5月27日(6名)
●谷口博望(満天星)
ヒロシマの鎮魂の歌花ユッカ★★★★
もこもこと照葉林や青葉風★★★
雨に濡る花南天に主なく★★★
●河野啓一
走り梅雨天気図眺め雲眺め★★★
向日葵の苗ひょろ長く植え付けぬ★★★
街の田の田水引きあり早苗待つ★★★★
街中に、開発されずに、まだ田んぼがまだ残っているところがある。田水が引いてあって、空を映して、静かに田植えを待つばかり。都会のオアシスのような田んぼだ。(高橋正子)
●小口泰與
葉桜や髭を剃らずに山に入る★★★
花水木ジャズの漏れくる丸木小屋★★★★
花うばら幼き頃の通学路★★★
●多田有花
森ゆけば紋黄揚羽がついてくる★★★★
森の緑に美しい翅が際立つ紋黄揚羽蝶。その蝶が慕うように後をついてくる嬉しさ。人も蝶も同じ次元になれる森の自然の快さが素晴らしい。(高橋正子)
えごの花空の青さを際立たせ★★★
卯の花に昼のサイレン昼の鐘★★★
●廣田洋一
燕の子すいと餌捕るビオトープ★★★★
燕の子巣に戻さんと手袋す★★★
大口がトレードマークの燕の子★★★
●桑本栄太郎
ボール蹴る少年独り花ざくろ★★★
学校のチャイム鳴り居り筒あじさい★★★
幼子の靴のきゅきゅと緑陰に★★★★
5月26日(6名)
●谷口博望 (満天星)
目高見に癒しの水路ビオトープ★★★
ギラギラと桃色光る松葉菊★★★★
道行けば人恋うような立葵★★★
●小口泰與
柿若葉白妙の犬生まれたり★★★★
界隈は新樹の湖や雲一朶★★★
倒木の苔むす沼や若楓★★★
●川名ますみ
紫陽花の咲きそむる青つぼむ青★★★
揺れながら姫檜扇は平行に★★★
山羊の仔の産まれ青葉の触れ合いぬ★★★★
句が表現するところは、「山羊の仔が生まれたので、青葉の枝と枝が、嬉しくて、喜び合っている。」だ。生まれたばかりの、真っ白い山羊の仔のかわいらしさがメルヘンとして詠まれている。「山羊の仔の生まれぬ青葉触れ合いて」とすれば、また別の句意になる。(高橋正子)
●廣田洋一
揺れ続き崩壊したる夏野かな★★★
寝転がり草の香浴びる夏の原★★★★
草の葉の色とりどりに夏野かな★★★
●河野啓一
伊勢志摩の英虞の真珠や波静か★★★
夏潮を満たす入り江の賢島★★★★
伊勢志摩の真珠筏や夏の潮★★★
●桑本栄太郎
堰水の光り怒涛や走り梅雨★★★
卯月野の水田静もる在所かな★★★★
チケットの旅の手配や南風吹く★★★
5月25日(4名)
●満天星
神の島遥かなるかな夏霞★★★★
枇杷は黄にテニスコートの球の音★★★
青鷺が飛べば小さき被爆川★★★
●小口泰與
帆船の長き航跡白白と★★★
青嵐あえかな地震に目覚めける★★★
早漬の野菜や山は夏浅し★★★★
●桑本栄太郎
<四条大橋の上>
緑さす比叡の峰や眼前に★★★★
大橋を渡る四条や街薄暑★★★
南座の大屋根聳ゆ薄暑光★★★
●河野啓一
孫娘訪ね来れる花水木★★★★
「孫娘」と「花水木」との取り合わせとなったが、そこに命を見た。やや大げさではあるが、日常的なものとしての「命」で、嬉しい「命」である。(高橋信之)
山藤の岩登りかな上へ伸び★★★
万緑を走り抜け車はみどり色★★★
5月24日(6名)
●古田敬二
<長野県平谷村御柱祭り>
トンネルを抜ければ信濃の若葉山★★★★
御柱祭り矢作源流水豊か★★★
苗の丈映して信濃の苗田かな★★★
●谷口博望(満天星)
人知れず泰山木の花咲きぬ★★★
晩鐘や楝の花の木の下で★★★★
楝の花はごく薄い紫で、そして中心が濃い紫。大きく広がる葉蔭に咲く花は、優しいがさみし気。そんな花の感じが夕べの鐘の音と響きあっている。(高橋正子)
街灯下ぎんなんの実の緑映ゆ★★★
●小口泰與
中天は疾風なるか桐の花★★★★
夏は来ぬ牧場ロール点点と★★★
新緑の雨に鳥声定かなり★★★
●廣田洋一
青鷺や羽根を広げて日光浴★★★★
青鷺や道行く車眺めおり★★★
青鷺の水辺に立ちてみじろがず★★★
●桑本栄太郎
<遠い田植時の追憶>
鼻づらのいやいや進む田搔牛★★★
投げ入れる玉苗しかと水を食む★★★★
定規持ち後ろうしろへ田植人★★★
●河野啓一
丘の辺の緑を跨ぎ揚羽蝶★★★
樟若葉さわさわ揺れて陽は沈む★★★★
万緑の千里の森や陽は西に★★★
5月23日(6名)
●谷口博望(満天星)
黄鶲の烏恐れぬ高音かな★★★
桜桃の百顆に来りむく一群★★★
睡蓮の花開きけり池の雲★★★★(正子添削)
●小口泰與
一本の道や問わねど道教え★★★
蜘蛛の囲や投網打ちたる雨後の朝★★★★
畷出づ砂にまみれし蚯蚓なり★★★
●廣田洋一
雨匂い紫陽花の萼広がりぬ★★★
七変化白き花まず咲きにけり★★★★
世の変化映して変わる七変化★★★
●河野啓一
薫風や旧き友垣訪ね来て★★★
杖便りふと片蔭に入りけり★★★
滝の音遠く箕面の山深し★★★★
●桑本栄太郎
紅の実の葉蔭に宿す桜の実
桜の実葉蔭に宿る紅の実よ★★★(正子添削)
※「の」の使いかたにご注意ください。
甘き香の一日暮れゆくすいかずら
甘き香に一日くれゆくすいかずら★★★★(正子添削)
うつむきて風に儚き小判草★★★
●古田敬二
蝸牛踏まれるなよと草へ投げ★★★
苜蓿の香りの原を大股に★★★★
苜蓿は、クローバー(白詰草)のことである。苜蓿の匂いを嗅ぐと、野の広やかさが実感できる。行く春を惜しみつつ、苜蓿の野原を大股で歩いた。(高橋正子)
雨上がる青空目指し今年竹★★★
5月22日(4名)
●谷口博望 (満天星)
道行かば楝の花の匂いけり★★★★
老鶯や余生まだまだ衰えず★★★
慰霊碑を訪う人ありてさくらんぼ★★★
●小口泰與
郭公や牧草ロール整然と★★★★
苔むせし倒木の影四十雀★★★
戸より夕餉の支度両隣★★★
●廣田洋一
線路際色華やかに立葵★★★
青空に色を加える立葵★★★★
立葵一つ登りて一つ咲く★★★
●桑本栄太郎
薫風や音楽室のコーラスに★★★★
「音楽室のコーラス」に少年少女たちの完璧とは言えないハーモニーの温かさ、清らかさを感じる。薫風の快さをコーラスの少年少女も喜んでいるだろう。(高橋正子)
陸橋の眼下に見ゆや橡の花★★★
プロペラのうすき紅なり若楓★★★
5月21日(5名)
●満天星(谷口博望)
見たくても近寄りがたき蜥蜴かな★★★
節理てふ太古を這ふや青蜥蜴★★★
ベンチより空見上げれば風薫る★★★★
●小口泰與
噴煙の雲になりけり桐の花★★★
一本の道や初雷眼間に★★★★
雲の峰二生を経るぞ我が髪膚★★★
●廣田洋一
幼子や手の平に乗り泳ぎける★★★★
夏場所やまたも消えたか横綱の芽★★★
夏場所や息合わぬこと増えにけり★★★
●河野啓一
夏風邪の治りスッキリ鳥の声★★★
粘土捏ね夏の遊びは子に帰る★★★
大滝に揺れる箕面の若楓★★★★
箕面の大滝は、日本百名滝に数えられて、後藤夜半の「瀧の上に水現れて落ちにけり」はこの箕面の滝を詠んだもの。新緑の季節、滝の前では、若楓が滝の水が落ちるとき起こす風に揺れている。マイナスイオンに満たされて、清浄なさわやかさに心身が満たされる。(高橋正子)
●桑本栄太郎
睡蓮の柵を越えたり今朝の池★★★★
万緑やトトロの森を行く日とも★★★
緑陰の肺の奥までみどりかな★★★
コメント
御礼
高橋信之先生、正子先生
5月21日の投句「箕面の若楓」を今日の秀句におとりくだされ、その上正子先生の素晴らしいご句評も賜りまして誠に有難うございました。
今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。