5月14日~16日

5月16日

●小口泰與
隠れ沼(ぬ)へしるべ辿りし時鳥★★★
桐の花しるき赤城の彫り深し★★★
牡丹散る清(すが)しき庭の風の道★★★★

●河野啓一
昼下がり揚羽が今日もやって来る★★★★
ヤタ鴉万緑の中ブラジルへ★★★
ヤタ鴉高く舞えよと柿若葉★★★

●桑本栄太郎
つまみ見るだけでは足らず桜の実★★★
竹皮を脱ぐやみどりの腰の丈★★★
ほろほろと雨降る茅花流しかな★★★★

●黒谷光子
夏の旅戒壇めぐりの真暗がり★★★
古刹へと登る石段緑濃き★★★
新緑の山あいを抜け美濃の旅★★★★

●多田有花
昼の陽を真白く返し手毬花★★★
はつ夏の満月雨あがりの空へ★★★★
筍を荷台に載せし軽トラック★★★

●小西 宏
朝の陽に滴る森よ時鳥★★★★
朝の陽が差す森はよく茂り、まだ濡れいている。輝いている。そこへ時鳥の声が聞こえる。麗しい初夏の森だ。(高橋正子)

水輝く五月の風の楓花★★★
三連の蝶舞い昇る花蜜柑★★★

5月15日

●小口泰與
掘り深き赤城や田畑夏浅し★★★★
笹音に振り向く吾や岩魚釣★★★
梅の実の路地一面を奪いけり★★★

●桑本栄太郎
若葉山つづく車窓の阪急線★★★★
槐咲く並木通りの風の闇★★★
黄菖蒲やルアーを手繰る池の畔★★★

●小西 宏
石楠花の身に影深し朝の雨★★★
雨の輪や子を失いし通し鴨★★★

梅の実のまだ小さきに紅を置く★★★★
梅の実がだんだんと太ってきた。まだ小さい実であるけれどほのかに紅色になっている箇所がある。小さいながら収穫ときの梅の様子を見せているのも驚き。(高橋正子)

●古田敬二
句会なる餡透き通るわらび餅★★★
森に座す若葉の陰に撫でられて★★★
紅秘めて薔薇は咲きかけ美しき★★★★

5月14日

●小口泰與
しるき斑を反転せしや山女釣★★★★
釣糸にからまる鰻へびの如★★★
夏蝉や乳を欲しいと泣く赤子★★★

●河野啓一
年毎に赤く咲き出すアマリリス★★★
カーネーションギフトはそっと土に埋め★★★

楠若葉並木一筋通学路★★★★
楠の若葉は盛り上がるように樹を覆う。その若葉が連なり重なる並木を通学する児童や生徒は健康的だ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
ひかえめと云う華やぎや花卯木★★★
医科大の樟の大樹や聖五月★★★★
茉莉花の雨の予報に匂いけり★★★

●黒谷光子
夏野菜二人がかりに植え終える★★★★
水を遣り紫紺あざやか茄子の苗★★★
風除けの上から覗く茄子の苗★★★

●小西 宏
風渉る緑に若き桜の実★★★★
クローバーの花咲き満てる広さかな★★★
金柑の花のぞき咲く竹垣に★★★


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