5月20日(4名)
多田有花
山路ゆく遠く近くにほととぎす★★★
薫風の河川敷にて草野球★★★
ほととぎす葉擦れの音に鳴き続く★★★★
山の中に入って聞くほととぎすは、また格別。その声に野性味が聞かれる。心地よい風が葉を揺らし、ほととぎすの一声ごとに、緑が深くなるように思える。(高橋正子)
廣田洋一
どくだみやイメージ合わぬ白十字★★★
どくだみや辺り清める白十字★★★★
庭の隅十薬の花際立てり★★★
小口泰與
瀬頭に白き波立ちほととぎす★★★★
生垣を突き抜き道へ今年竹★★★
大岩へ居座る河鵜夕日影★★★
桑本栄太郎
大橋のはるか比叡や若葉山★★★★
軒高き花見小路や五月晴★★★
隠しても色に出で居り花卯木★★★
5月19日(3名)
小口泰與
かの時の夢の切れ目や昼寝覚★★★
秋櫻子の名づけし渓の河鹿かな★★★
石楠花や赤城の空の青あおと★★★★
廣田洋一
貧しくも楽しき夕餉麦の飯★★★★
麦飯が普段の食事だったのは、戦後いつまでだったのだろうか。まだ大家族で、みんなが貧しく、戦争が終わったという明るさと希望があった。「貧しくも楽しき夕餉」に子供のころを思い出した。(高橋正子)
麦飯や五穀を混ぜて炊きにけり★★★
昔貧乏今は贅沢麦の飯★★★
桑本栄太郎
鳴り止めば忽ち雨に夜の雷★★★
金雀枝やこの頃とんと雨降らず★★★
<大山開山1300年祭>
奉納の太刀の社に山びらき★★★★
5月18日(5名)
古田敬二
水草の陰からメダカみごもれり★★★
サヤエンドウ朝の陽に透く薄緑★★★★
エンドウ摘む遠くに雨の降る風に★★★
小口泰與
噴水にやわらかき水硬き水★★★★
噴水の水を眺めている。勢いあって噴きあがる水。砕けるように落ちる水。高く、あるいは低く、遠く、近く、という具合に様々な姿を見せる噴水の水だ。わやらかき水、硬い水とも言えよう。涼しそうな、生き生きとした噴水の水が詠まれた。(高橋正子)
会議室網戸の風の通りぬけ★★★
サヌカイトの風鈴の音に目覚めけり★★★
多田有花
稜線に紋黄揚羽の先立ちて★★★★
白きもの多し山野の夏の花★★★
金雀枝やここは急坂急カーブ★★★
桑本栄太郎
卯の花やとんとこの頃雨降らず★★★
あめんぼのそそと歩むや川上へ★★★★
足跡の光りきらめくなめくぢら★★★
廣田洋一
上半身裸で励む体操かな★★★
裸にて腕にタオルの残業かな★★★
六尺の白さまぶしき裸祭★★★★
5月17日(4名)
小口泰與
せせらぎや森の中より夏灯★★★★
一句の末尾に置いた「夏灯(なつともし)」がいい。季題がまさに季題となって、佳句となった。俳句のおける「季」の重要性を確認する佳句となった。(高橋信之)
山風の通りぬけたる夏座敷★★★
紅鱒の放流ありて竿の列★★★
多田有花
快晴の一日賜り芍薬に★★★
青羊歯やアンテナのごと直角に★★★
窓開ける日々の始まり不如帰★★★★
廣田洋一
長き草刈られし後に鳩の群★★★
出勤前ちょこちょこと草むしりけり★★★
朝早く庭の手入れや涼しけれ★★★★
桑本栄太郎
夏雨や回送電車の飛沫連れ★★★★
寝て醒めていまだ明るき新樹光★★★
木苺や想い出すのは秘密基地★★★
5月16日(4名)
小口泰與
釜ひとつ筍飯の空っぽに★★★
尾瀬の気を含む水なり冷奴★★★★
甘酒や雲の翳りの山を越ゆ★★★★
廣田洋一
桜の実青赤黒と成りてをり★★★★
中7の「青赤黒」は、日常語的な表現だが、そのことが却って「桜の実」を捉えるに成功した。日頃の精進が良いのだ。(高橋信之)
桜の実一足よける女子高生★★★
桜の実石段黒く染めにけり★★★
桑本栄太郎
あまき香の誘う散歩やすいかずら★★★
天辺の雨に鎮まり山法師★★★★
病葉やうつむき歩む散歩道★★★
古田敬二
ギョギョシギョギョシ葭切歳時記どこで見た★★★★
芍薬の優しく触れ合い咲き乱る★★★
芍薬や薄紅(くれない)に散りて尚★★★
5月15日(4名)
小口泰與
榛名湖へ道ひと筋や時鳥★★★★
夏帽子ルアーと共に湖へ飛ぶ★★★
アカシアや川面明るく風そよと★★★
廣田洋一
ゆっくりと蕾をほぐし皐月かな★★★
青き空華やぎ咲けるさつきかな★★★★
日常的な言葉を使って、よく見かける風景をくっきり鮮やかに詠んだ。この当たり前の景色をにを切り込んで読むのは難しいが佳句となった。(高橋正子)
紅白のさつきや庭を明かるうす★★★
古田敬二
伐ることをためらう芍薬満開に★★★
風光る母校の四角い時計塔★★★★
手水鉢の丸い学校メダカ群れ★★★
桑本栄太郎
淀川の水面ざわめきさみだるる★★★
柿咲いて地表に落つや本降りに★★★★
実桜の熟れず落ちたり雨のあと★★★
5月14日(4名)
小口泰與
蟻の列乱さず進む山雨かな★★★
夏霧にバスもろ共や九十九折★★★
明時の赤城は青嶺鳥の声★★★★
廣田洋一
後になり先になりして燕の子★★★
一羽だけ翻りたり燕の子★★★
古き家の庭を染めたるラベンダー★★★★
多田有花
稜線を離れ田植の村に下り★★★★
山の稜線を伝って来たが、稜線を離れて下ると、田植えをしている村に出た。田植えの最中に出会うのも
面白いことだ。田植えに出会うことは本当に少なくなった。昭和時代の田植えが懐かしい。(高橋正子)
子のころの呼び名で話す薄暑かな★★★
手土産はフルーツ入りのゼリーとす★★★
桑本栄太郎
特急のホームチェーンや若葉寒む★★★
夕日さすビルの西日や大阪駅★★★
赤き穂の土手に夕日や夏きざす(原句)
夏きざす夕日の土手の赤き穂に★★★★(正子添削)
5月13日(4名)
小口泰與
薫風や山より雨の上がりける★★★★
山古志の緋鯉あぎとう棚田かな★★★
時鳥雨後の湖水のあきらかに★★★
多田有花
日本海見える山へと谷空木★★★
見上げればいつも新緑山の道★★★
筍と背比べして山下りる★★★★
廣田洋一
跳ね過ぎて紐に絡まる鯉幟★★★
雨浴びて色鮮やかな鯉幟★★★
鯉幟緋鯉一匹加わりぬ★★★★
桑本栄太郎
坂道を下るブレーキ若葉寒む★★★
豌豆の蔓黄ばみ来る日差しかな★★★
青空に葉色透き居り若葉光(原句)
青空に葉色透きたる若葉かな★★★★(正子)
若葉が青空に広がり、日の光を透かして明るく見えるところがあって、その若葉の色が特に美しい。そういう若葉を愛でた句。(高橋正子)
5月12日(4名)
小口泰與
雲の峰水田駆け行く小犬かな★★★★
ほめられて新茶産地明かしける★★★
彫り深き赤城の朝や夏浅し★★★
廣田洋一
雛罌粟や二輪挿したる玻璃花瓶★★★★
こくこくと何に頷く虞美人草★★★
一本で人を惹きつけ虞美人草★★★
桑本栄太郎
竹皮を脱ぐや若気の過去を捨て★★★
緑陰に足を投げ出すベビーカー
「ベビーカーが足を投げ出す」の意味になっています。
緑陰に足を投げ出しベビーカーの子★★★★(正子添削例)
西日受くビルの茜や大阪駅★★★
多田有花
音高く豊かに水の田に入りぬ★★★★
山からの清水に洗う早苗籠★★★★
山から清水が流れ入る田。早苗を植え終わり、苗籠を清水で洗う。心が静かに洗われる句だ。(高橋正子)
植えられし田の水を打つ山の風★★★
5月11日(4名)
小口泰與
時鳥声をふるまい飛びにけり★★★
鳴き交す鳥の数多や夕立あと★★★
あえかなる虞美人草や雨ざんざ★★★★
多田有花
山寺を包みもくもく椎の花★★★
夏鶯鳴くほど静か山の寺★★★★
サッカーボール若葉の高さに蹴り上げる★★★★
サッカーボールが蹴りあがって若葉の高さまであがった。思わぬ高さにわあーという喚声が聞こえそうだ。「若葉の高さ」は、季節の清々しさを思わせてくれる。(高橋正子)
廣田洋一
軒下の甘き風揺れパイナップル(原句)
「甘き風」が曖昧です。
軒下に甘き香立たすパイナップル★★★★(正子添削)
缶の底一切れ残るパイナップル★★★
黄金の輪甘き汁出すパイナップル★★★
桑本栄太郎
友送り偲ぶ句会や花は葉に★★★
夏迎え空に小さき放れ雲★★★★
夏が来て、空に小さい雲が大きい雲を離れてぽかっと浮かぶ。小さい雲はこれから遊びに行くのか。夏空の楽しさ、雲の軽さ、ひいては作者の心の軽さが窺える句。(高橋正子)
小判草荒れ地の庭に溢れけり★★★
コメント
御礼
高橋正子先生
いつも懇切にご指導頂き有難うございます。
5月11日の「パイナップル」の句を添削頂き有難うございます。景がよく見える様になりました。
「香立たす」を「香立てる」としてはいけませんか?
この方が言葉として素直と思いますが。
廣田洋一さんへ
「香立てる」で結構です。問題はありません。
「香(を)立たす」は、パイナップルに意志があって、香りを立たせている感じで、俳句では、このような表現は普通に使われます。なぜかと言うと、「物(自然)と自分と一体になる」が思想としての俳句の基本にあるからです。