5月1日~10日

5月10日(4名)
小口泰與
朝涼や雨後の利根川清き水★★★
謙信の植えたる苗木雲の峰★★★
麦秋や長きすそ野の鳥の声★★★★
廣田洋一
高層の団地を包めり夏霞★★★
堰落ちる水音聞こえ夏霞★★★★
風吹けど富士は見えざる夏霞★★★
桑本栄太郎
午後からの雨の予報や紫蘭咲く★★★
風清しなんじゃもんじゃの花咲きぬ★★★★
なんじゃもんじゃの花は、糸のような白い花びらが絡まるように咲く。風は花を自在に抜ける。「風清し」を思うことである。(高橋正子)
夕餉には眠くなりたる走り梅雨★★★
多田有花
公園に母子遊びしマーガレット★★★★
朝日さす庭に群れ咲き花あやめ★★★
新緑へ吹く風もまた新しく★★★
5月9日(4名)
小口泰與
朝涼や雨後の利根川滔滔と★★★★
謙信の植えたる苗木雲の峰★★★
麦秋や長きすそ野の鳥の声★★★
廣田洋一
飛魚や翅を収めて売られけり★★★★
飛魚は、胸鰭が強大で海面を滑走したり、飛び上がって飛ぶ。時には十数メートル飛ぶこともある。夏の海では、雄姿と言えよう。胸鰭である翅を収め、鎮めて売られている。強さも哀れさも。(高橋正子)
飛魚や飛ぶ姿にて揚げられぬ★★★
駅出でて一口すする一夜酒★★★
桑本栄太郎
母が児とボール蹴り居り若葉風★★★★
花槐路線のバスの来たりけり★★★
会う人の目と目の合いぬ夏マスク★★★
多田有花
夏山の上に真青な空がある★★★★
薔薇囲む母入院せし病院★★★
近く寄り薔薇の香りに包まれる★★★
5月8日(4名)
廣田洋一
ちょんちょんと光りて揺れる桜の実★★★
新しき土手の白さや桜の実★★★
実桜や小鳥の声の絶え間なし★★★★
小口泰與
麦の秋信濃名物おやきかな★★★
鍬みがく水の汚れや夏の暮★★★★
一日の畑仕事を終えた夏の暮れ。土で汚れた鍬を洗うと、水は泥をながして鍬をぴかぴかにしてくれる。夏の暮だからこそ水もうれしく、泥水さえもすがすがしく思える。(高橋正子)
夕映えのビアガーデンも燈されず★★★
多田有花
柿若葉つややかに陽をかえしけり★★★
全天の雲吹き払い青嵐★★★★
物干しの竿の鳴りたる青嵐★★★

桑本栄太郎

実を垂らし花の残りぬ莢豌豆★★★
会う人と目と目の会いぬ夏マスク★★★
蚯蚓出で干乾び居りぬ舗道かな★★★
5月7日(4名)
小口泰與
夏めくや和紙に墨痕淋漓なる★★★
麦秋や土器の一片顔を出し★★★
夏めくや湖畔に画布を持ち出しぬ★★★★
廣田洋一
去年の実の残りしままや花蜜柑★★★
はらはらと散り急ぎたる花蜜柑★★★★
振り返り確かめたるや揚羽蝶★★★
多田有花
夕餉には彩り明るきちらし寿司★★★
糊効きし白衣身に着け夏浅し★★★★
夏浅しころは、糊の効いた白衣に袖を通すと、日常がさっぱりと切り替わる。仕事に向かう快い緊張が生まれる。新型コロナウィスルの肺炎の感染拡大で、医療関係の方は多忙や緊張をしいられると思うが、このように明るく仕事をこなされているのだ。(高橋正子)
聖五月ウェブ配信の講義終え★★★

桑本栄太郎

風薫る母が相手のボール蹴り(原句)
風薫る母を相手のボール蹴り★★★★(正子添削)
「母を相手」のほうが子どもが主役となっていきいきとするのではないでしょうか。
学校のチャイム虚ろや新樹冷ゆ★★★
5月6日(4名)
小口泰與
初夏の山一望や鳶の笛★★★
青空の浅間卯月の雲を生み★★★
あけぼのの雨後の大樹や聖五月★★★
廣田洋一
傾けし日傘を友と分け合ひし★★★★
目の前にさっと開きし白日傘★★★
日陰より出で来る人の日傘かな★★★
多田有花
夏来る沖へとボートまっしぐら★★★★
海臨む工場群に夏始まる★★★★
臨海工場群は、いつもとかわらなくそこにあるが、夏が始まると、工場群は、直射日光を受け、光を反射させ、白くきらめく。夏が始まる強さがそこに見られる。(高橋正子)
立夏なりテトラポットに釣り師立つ★★★
桑本栄太郎
こつ然と塀より出でぬ黒揚羽★★★
葉の裏のみどり透き居り花楓★★★
ひな芥子やその一画の風強し★★★★
ひな芥子畑。ひな芥子は風を受けやすくどれもひらひら揺れているが、一画だけ風の強いところがあって、ひどく揺れている。その一画にあわれ心を動かされる。(高橋正子)
5月5日(4名)
小口泰與
若草や利根の流れの艶やかに★★★★
利根川のほとりに盛んに燃える若草。若草の勢いに利根川の流れが、艶やかに見える。水のやわらかさ、春の日に光る波。みんな艶やかだ。(高橋正子)
つくづくと眺むる赤城麦の秋★★★
赤飯をお裾分けねと子供の日★★★
廣田洋一
和やかにエール交換風薫る★★★
薫風の撫でるに任せ散歩道★★★★
グランドに人気無き日々風薫る★★★
桑本栄太郎
休校の学校花壇や春の園★★★
スカイプのオンラインとや子供の日★★★
暮れかぬる団地の庭に一輪車★★★
多田有花
夏立ちぬ海への道を走りゆく★★★★
夏来るLNG船停泊中★★★
夏に入る沖をSUP(サップ)がひとりゆく★★★
5月4日(4名)
廣田洋一
雨空に草の葉そよぎ春暮るる★★★★
散歩中友と出会ひて春暮るる★★★
一言もニュースにならぬみどりの日★★★
小口泰與
眼間の大の字蝌蚪のひもに似て★★★
チューリップ一朶の雲を弾きけり★★★★
新聞に包まる鯉や子どもの日★★★
多田有花
永き日や雨天なれども明るくて★★★★
黄金週間部屋でエクササイズ★★★
夏隣る食後のプレーンヨーグルト★★★

桑本栄太郎

休校の学校花壇や春の園★★★
修司忌のマッチ擦る間の風みどり★★★★
寺山修司の「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」の本歌どりの句。実際には、作者が作句時点でマッチを擦ったわけではないだろうが、いつか、経験があったのだろう。「風みどり」が効いている。(高橋正子)
行事みな中止となりぬくらべ馬★★★
5月3日(4名)
小口泰與
水切りの飛礫とならず夏隣★★★
牡丹の芽円らとなりて小夜時雨★★★
畦の土呟いており春の雨★★★★
廣田洋一
機械にて種子を打ち込む八十八夜★★★
均したる畑に入る八十八夜かな★★★★
八十八夜は立春から数えて88日目。蔬菜類の苗が育ち、この日以降は霜が降りないとされる。何か植え付けるために均された畑であろう。明るい清潔感がある。(高橋正子)
  
休業の要請続く憲法記念日★★★
多田有花
夏隣る頂の風心地よし★★★★
ひらどつつじ街路に溢れんばかりなり★★★
はなみずき並木をジョギングウォーキング★★★

桑本栄太郎

地に落つる鴉の羽根や春暮るる★★★
水面の飛燕しきりや雨催い★★★★
著莪の花人目を忍び塀に添う★★★
5月2日(4名)
小口泰與
春耕や恙なき日の握り飯★★★★
田を耕し、昼飯は握り飯。健康に働いて食べる握り飯の旨さ。さっぱりとした生活が詠まれて快い。(高橋正子)
池の面や燕の影のつと消えし★★★
蒲公英やついにはじけし大太鼓★★★
廣田洋一
花過ぎの時に逆らい八重桜★★★★
あてもなくぶらぶら散歩春日和★★★
茶を汲みて一息入れる春日和★★★
多田有花
永き日の公園にボール蹴る少年★★★
春深しことに明るき山の色★★★★
つばめ飛ぶ車の脇をすり抜けて★★★

桑本栄太郎

竹皮を脱ぐや天へとまつしぐら★★★★
筍がすくすくと伸び、竹の皮を落とす。一晩に2メートルばかりも伸びる竹の
勢いには見上げて圧倒される。「まつしぐら」が竹の気分を表していていい。
(高橋正子)
春茱萸のすいっと枝垂れや池公園★★★
竹林の木漏れ日浴びて山つつじ★★★
5月1日(4名)
廣田洋一
高々とクレーン伸びて五月来る★★★
わけもなく明るい気分五月かな★★★
ひるがへりまたひるがへりつばめ二羽★★★★
小口泰與
次次にあぎとう鯉や落椿★★★
老鶯の飛び交う数や園ゆたか★★★★
つくづくし奇岩巨石の妙義山★★★
多田有花
隣り合い晩春の町を見下ろせり
上五に置く言葉は印象が強くなります。「隣り合い」が強いので、テーマである晩春の町が弱くなっています。
晩春の町を見下す隣り合い★★★★(正子添削)
春昼にゆっくり伸ばす大殿筋★★★
はなみずき並木明るき街路に出る★★★

桑本栄太郎

浮き雲の窓の彼方や五月来る★★★★
五月という声をきくだけで、気持ちが明るくかろやかになるのは、私たちの五月の経験から。窓の彼方の浮き雲に目をやると、その軽さ自由さに明るさを五月の楽しさを思う。(高橋正子)
すかんぽの赤き穂が伸ぶ垣根かな★★★
ひつそりと風の木蔭に山つつじ★★★


コメント

  1. Unknown
    2020年5月2日 16:40

    Unknown
    正子先生
    「隣り合い晩春の町を見下ろせり」を添削いただきありがとうございます。
    ご指摘のとおり、「隣り合い」は強く句の焦点がぼけました。
    季語を活かす言葉の並びを考えていきたいと思います。

  2. 多田有花
    2020年5月2日 16:41

    失礼いたしました
    先ほどのコメントは多田有花です。