4月21日~30日

4月30日(4名)
小口泰與
たんぽぽや日は中天をつかさどる★★★★
束の間に桜蕊降る鯉の池★★★
一病に仕う八十路や勿忘草★★★
廣田洋一
ひっそりと暮らすも良きや紫木蓮★★★
公園でテニスの親子夏近し★★★
にぎはひの消えたる街や夏近し★★★★
新型コロナウィルスの感染拡大を避けて、非常事態宣言がされているため、街はにぎわいとは遠い。しかし、にぎわいの消えた街は、日差しが輝いて夏が近いことは間違いない。(高橋正子)
多田有花
頂から播磨灘は大霞して★★★
山路ゆくいずこも囀り絶え間なし★★★★
老い易きものは少年羊歯萌ゆる★★★

桑本栄太郎

姫女苑のうすき紅さす入日かな★★★★
コロナ禍の明けて暮れたり四月尽★★★
荷風忌の灯点もす頃や宵の闇★★★
4月29日(5名)
小口泰與
むくむくの小犬の手ざわり雪柳★★★
おだまきや洗い立てたる割烹着★★★★
おだまきの紫と洗い立てた真っ白な割烹着の取り合わせに清潔感が漂う。もちろん、割烹着を付けた人あって成り立つ句。(高橋正子)
春雷や今朝の赤城の佇まい★★★
廣田洋一
ドロップ缶一つ出て来し昭和の日★★★
忘れ得ぬ引揚船や昭和の日★★★★
先見えず閉じこもりたる昭和の日★★★
多田有花
静かなる黄金週間始まりぬ★★★
春昼や母送りたる手術室★★★★
手術に向かう母を送り出すいささかの不安と、大丈夫という安心の気持ちとが微妙に交差している。春昼とはそんな微妙な気持ちを包んでくれる時であるように思える。(高橋正子)
よき日和霞桜の咲くころは★★★

古田けいじ

青空へ透き通らせてコシアブラ★★★
初蛙鳴く山の田の老夫婦★★★★
人語消え鳥語聞こえる森静か★★★
桑本栄太郎
想い出の写真セピアに昭和の日★★★★
ガキ大将の偲び泣きをり昭和の日★★★
黄金週間自粛の家に家事手伝い★★★
4月28日(4名)
小口泰與
忘れ霜犬の定命如何にせん★★★
榛名湖へ日をちりばむや落椿★★★
水源を司る里木の芽時★★★★
廣田洋一
労ひの声をかけつつ剪定す★★★
剪定や風無き空の晴上り★★★★
風のない空は真っ青に晴れ上がり、剪定の鋏音も軽るく響いて、剪定された木々はもちろん、空もさっぱりとなる。とてもいい気持だ。(高橋正子)
積もりたる花の塵掃く媼かな★★★
多田有花
ほのぼのと霞桜の花見かな★★★
野遊びの父はベンチに寝転びぬ★★★
青き踏む老いも幼もうきうきと★★★★

桑本栄太郎

太き枝の縁側這いぬ花うばら★★★
花房の少し日蔭や虻の昼★★★★
虻が活発に翅を振るわせている世界。それは花房の少し日蔭となっている昼。春昼ののどかさが窺える。(高橋正子)
柿畑の柿の若葉に夕日かな★★★
4月27日(3名)
小口泰與
遊ぶ場も集う事も無し葱坊主★★★
利根の波千千に榛名の春の雲★★★
宴前にちと空酒や春祭★★★★
廣田洋一
水鳥の水脈光りける藤の花★★★★
藤の花房が風に揺れ、光をさざめかしている様子と、水鳥の引く水脈の光を同じ舞台にあげて楽しませてくれる句。美しい。(高橋正子)
藤棚や餌待つ鳩の群がれり★★★
増築の堤防高し落松葉★★★
桑本栄太郎
廃屋の母屋に添ひぬ花みづき★★★
べんがらの塀のつづくや躑躅燃ゆ★★★★
べんがらの色は独特で、べんがら塀が続く街並みは異国情緒さえ感じる。そんな街に躑躅が燃えて古き街も活力が湧いてくるようだ。(高橋正子)
ひな芥子の手弱女なりき風の畑★★★
4月26日(5名)
小口泰與
ほおじろや絵はがきに書く祝い文★★★
帯締めて踊りの稽古紫木蓮★★★
若柴や三匹の小犬生まれける★★★★
廣田洋一
流鶯の澄み渡る声響きけり★★★
庭の隅こんもり紅く桜草★★★
松の芯てんでに伸びを競ひをり(原句)
てんでんに伸びを競ひて松の芯★★★★(正子添削)
松の芯の伸び方は、長短取り混ぜて、方向もさまざま。伸びる勢いが目に見えるよう。松の形ある風格を崩すかのようなてんでんな元気いっぱいの伸び方に拍手を送りたい。(高橋正子)
多田有花
春しぐれ空半分は青きまま★★★
<姫路城ブルーライトアップ—医療従事者への感謝>
城青く染まりて立てり春の宵★★★
夜明けまず磯鵯の囀りに★★★★
夜明けに美しいものに出会うと、その日一日がいい日になる気持ちが湧く。磯鵯は、鵯と名前が付くが、ヒタキ科の鳥。羽根の色から青い鳥とも呼ばれ、今では市街地でも見られるそうだ。句に技巧はないが、耳に目に楽しさを覚える句だ。(高橋正子)

古田けいじ

木漏れ日の光さし来る春蘭へ★★★★
母さん今年も春蘭咲きました★★★
苧環の女子中学生へ立ち揺れり★★★
桑本栄太郎
玉房の散りて頻りや八重ざくら★★★
たんぽぽの傍に白髪の母も居て★★★
からし菜の中州占めたる河畔かな★★★
4月25日(5名)
小口泰與
山吹や千五百の稚魚の遡上せる★★★
目借時直には見えぬ深淵よ★★★
残照の篁そめて鳥交る★★★
廣田洋一
八重落花一つグラスに浮かべけり(原句)
八重落花が言葉として不自然ですので、添削しました。
落花八重グラスに一つ浮かべけり★★★★(正子添削)
蜘蛛糸や桜蕊捉へ吊るしたり★★★
日を浴びつゆっくり散歩落花浴び(原句)
日を浴びつ落花を浴びつ散歩かな★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
こども等の銀輪部隊や風光る★★★
新築のメゾン完成花みづき★★★
子すずめの地に落つような巣立ちかな★★★★
多田有花
山躑躅ここではそっと咲きにけり★★★
きりしまや真青な空に燃えたちぬ★★★
葉桜となりて大きく風を受け★★★★
葉桜となると、桜の木が一気に膨らみ、重量感を持つようになる。そうなれば、受ける風も大きい。たっぷりと風を受ける。葉桜と一体化した作者の気持ちが読んで快い。(高橋正子)

川名ますみ

並木路隣の花は伐られけり★★★
石楠花のめいっぱいなる花よ芽よ★★★★
葉桜を風だけが過ぐつややかに★★★★
葉桜を過ぎるものは今は風だけ。葉桜をつやつやとさせ、風もまたつややかに光っている。(高橋正子)
4月24日(6名)
川名ますみ
花の影人なき道にひろく伸ぶ★★★
すみずみを路面へ映す朝桜★★★★
朝桜がさわやかに、かろやかに詠まれている。自分の影を路にすみずみまで映しているのだ。(高橋正子)
石楠花を一枝隣の子にどうぞ★★★
多田有花
見上げれば白壁の家に躑躅燃ゆ★★★
春の山輝く山となりにけり★★★★
ザックには春筍のご飯入れ★★★

廣田洋一

葱坊主蜂に頭を撫でられし★★★
一列だけ取り残されし葱坊主★★★
休校の校舎静まり葱坊主★★★★
小口泰與
桃咲くや心たる日の古机★★★
青柳の風たおやかや厨ごと★★★★
若緑太柱背に端座せり★★★

桑本栄太郎

柿畑のみどり煌めく若葉光★★★
白壁の民家に添うや花水木★★★★
ぽつぽつと春のしぐれや丘を行く★★★
古田けいじ
芍薬の蕾に朝の雨が降る★★★
牡丹の咲いて一年つつがなし★★★★
葉桜やマンションの灯ともりだす★★★★
葉桜の向こうだろうか、マンションに暮らす人たちの灯りがともりだす。夕暮れ時の抒情的な風景があたたかい。(高橋正子)
4月23(4名)
多田有花
小綬鶏の呼びかけ盛んなる真昼★★★★
白がまず大きく咲いて花水木★★★
やもり手に乗せて遊びし春の午後★★★

小口泰與

源流の雪代山女賜りぬ★★★
たまゆらの日差しに映ゆる落椿★★★
水替えの魚を盥へ花すみれ★★★★
魚の水を替えてやるのに盥に移すと、傍には、すみれの花が咲いている。魚は金魚や目高のように小さい魚か。盥に移された魚もすみれもこのうららかさの中で、いきいきと可愛いのだ。(高橋雅子)
廣田洋一
白き花波打つ如く花水木★★★
古きビル瀟洒に見せ花水木★★★
街並みを白一色に花水木★★★★
街路樹や庭園樹として植えられる花水木は、すっかり日本の風景に定着した。白い花水木が咲くと、街並みを白っぽく、白一色にしてくれる。街を瀟洒にしてくれる。思い切って「白一色」といったのが詩情があってよい。(高橋正子)
桑本栄太郎
歩み行くほどに雨降る若葉寒む★★★★
コンクリの塀を被いぬ連翹黄★★★
蚕豆の天を向きたる小雨かな★★★

4月22日(4名)
小口泰與
山桜返る木魂のたのもしき★★★★
山桜は、山のあちこちに咲いていて、今山を美しく飾っていることと思う。その山に返る木魂は、全山の響きを返すように「たのもしい」。山桜や山の精がいるようだ。(高橋正子)
老猫のたばかりそこね朧月★★★
春雷のた走りそこね静まりぬ★★★
多田有花
粗大ごみ収集の音暮の春★★★
外に出るスプリングコートはおるべく★★★
窓開けて見上げしは春の山なりき★★★★

廣田洋一

紫の羽を遊ばせ花豌豆★★★
遠富士に負けじと白き花豌豆★★★★
木を囲み咲き乱れたる落椿★★★
桑本栄太郎
新樹めく光りの中やバス通り★★★★
藤垂るる棚に憩いぬ散歩かな★★★
ぱきぱきと竹林鳴らす春疾風★★★
4月21日(3名)
廣田洋一
庭の隅ぽつと明るく蒲公英かな★★★
蒲公英の一茎丸々絮となり★★★★
蒲公英の絮川を越えよと吹きにけり★★★
小口泰與
春雨や隠り沼より禽羽音★★★
三山のどの春雲も動きけり★★★★
名だたる山々。どの山も春雲を生んで、そこに生まれた春の雲は、少しずつ動きを変えて、どれもいきいきと動いている。雲の動きは見て飽きない。(高橋正子)
逞しき噴煙起つや山すみれ★★★
桑は本栄太郎
さくらしべ降るや歩道を赤く染め★★★
山吹の八重と云うなり風捉う★★★
筍のもう手に負えぬ雨後なりき★★★

コメント

  1. 廣田洋一
    2020年4月27日 10:35

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    4月25日の「八重落花一つグラスに浮かべけり」を「落花八重グラスに一つ浮かべけり」と添削して頂き有難うございました。「八重落花」は、これで良いかな、と思っていました。全体にリズムが良くなりました。
    また、「日を浴びつゆっくり散歩落花浴び」を「日を浴びつ落花を浴びつ散歩かな」と添削して頂き誠に有難うございます。「浴びつ」のリフレインが一層際立ちました。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  2. 廣田洋一
    2020年4月29日 11:05

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
    4月26日の「松の芯てんでに伸びを競ひをり」を「てんでんに伸びを競ひて松の芯」と添削して頂き誠に有難う御座います。報告調だった句が綺麗になりました。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。