●小口泰與
風荒き郷にほぐれし牡丹の芽★★★
種袋振るや鳥達高く鳴く★★★
野ざらしの猫車あり鳥帰る★★★★
猫車はもう使われなくなったのか、野ざらしにされている。野畑には、若草が萌え出ているだろう。空高く鳥が帰ってゆく。さびしさの中にも、野は春の明るさを秘めている。(高橋正子)
●黒谷光子
購いて流しに小鮎跳ねさせる★★★★
獲れたばかりの小鮎を買う。流しに置くとまだぴんぴん跳ねる。山椒の葉や実と飴煮されるのだろうか。湖のほとりの暮らしが鄙びていながら風雅。(高橋正子)
飴色に煮ても小鮎の耀ける★★★
小鮎煮て明日の客へのもてなしに★★★
●多田有花
左右より来て春の川合流す★★★
九十九折れ木の芽の山の麓まで★★★
春筍鶴嘴を手に掘りにゆく★★★
●河野啓一
人の波牡丹桜のその下に★★★
重そうな色して牡丹桜かな★★★
散り初めと云えど嬉しき八重桜★★★
●桑本栄太郎
静もれる路地の狭庭や花蘇芳★★★
生垣の赤き芽吹きや古民家の★★★
乙訓の嶺から里へ花菜風★★★
●小西 宏
麗しきもの移りゆく春愁★★★
花蘂敷く道濃く淡く蝶の影★★★
薄日差す紫重し藤の棚★★★
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