3月21日~31日


3月31日(6名)

●古田敬二
青空へ緑散りばめ楢芽吹く★★★
二人して百五十歳花の下★★★
タンポポの原へタンポポの絮を吹く★★★★

●小口泰與
雨後の朝雀隠れに日の差すや★★★
牡丹の芽あえかにほぐる明るさよ★★★
たんぽぽや小石転がす千曲川★★★★

●廣田洋一
(原句)春風の通り初め終え段葛
春風に通り初め終え段葛★★★(正子添削)
桜咲く友も献灯段葛★★★
雨の中腹ひるがえす燕かな★★★★

●谷口博望む(満天星)
桜散る観音像の掌に★★★★
二の丸の前撮ポーズ鳥雲に★★★
鳥の恋鯱踊る天守閣★★★

●桑本栄太郎
バス停の傍に春田や駅の前★★★
登り来て丘に立ち居り風光る★★★
(原句)登り来し春田春田の花菜かな
登り来て田ごとを埋める花菜かな★★★★(正子添削)

●川名ますみ
髪切って初めの風は花の風★★★★
髪を切って、最初に髪を吹いた風は、桜の花から吹いてきた風という。桜を吹く風はやわらかく、髪をふわっと吹いたことであろう。髪を切ってさわやかになった気持が女性らしい感性で明るく詠まれている。(高橋正子)

花冷えのうなじに櫛と鋏鳴る★★★
風来たるさくらを揺らし吾が髪へ★★★

3月30日(6名)

●廣田洋一
菜の花の蜜を吸いおる虻の昼★★★★
東風吹くや梅の小枝の紅みける★★★
桜東風職を変えると子の言いて★★★

●小口泰與
青麦や赤城の風の限りなし★★★
厩出し夕餉の箸の軽きかな★★★★
初花や蒼き靴はき駅を出づ★★★

●古田敬二
草原に胞子飛ばして土筆摘む★★★★
土筆摘む昼餉の一菜足るほどに★★★
白きものモンシロ木蓮雪柳★★★

●谷口博望(満天星)
桜咲く土手の夕暮翡翠飛ぶ★★★★
流木に春の翡翠や夕間暮れ★★★
橋の下覗けば春の翡翠かな★★★

●桑本栄太郎
東雲の生駒嶺霞みうねり居り★★★
少しずつ花曇り来る西の空★★★★
ぽつぽつと早も紅置く躑躅かな★★★

●多田有花
ここは雨彼方は晴れて春時雨★★★★
春時雨の降り方。ここは雨、彼方は晴れている不思議な世界に、此岸と彼岸を想像して見る思いだ。(田吾橋正子)

照る日あり曇る日もあり山桜★★★
幼くも枝垂桜のしだれたり

3月29日(6名)

●谷口博望(満天星)
流木に翡翠の止まる潮干川★★★
二度三度翡翠打ちたる水輪かな★★★★
はつきりと背も腹も見し翡翠かな★★★

●小口泰與
黒黒と和紙に墨痕風光る★★★★
餌台を取り合う尾長春嵐★★★
くさり樋伝いし地雨柳の芽★★★

●廣田洋一
花冷えの雹に耐えたる七分咲き★★★★
雹降りて桜並木を白く染む★★★
虻の音に足を止めたる花壇かな★★★

●桑本栄太郎
手をかざし天を望めり揚雲雀★★★
土堤草の青む淀川橋あまた★★★

(原句)初花や鈍行電車の停まる駅
初桜鈍行電車の停まる駅★★★★(正子添削)
鈍行電車は、一駅ごと、丁寧に停まっていく。たとえ短い停車でもどこかゆったりとしている。咲き始めた桜が駅にあれば幸も多い。(高橋正子)

3月28日(6名)

●小口泰與
ごうごうと利根川(とね)や日の中柳絮とぶ★★★★
水の玉紅梅映す梢かな★★★
喜寿過ぎて三春の桜まだ見ざる★★★

●谷口博望 (満天星)
柄長来てワンマンショーの桜かな★★★
はなももや串に差したる花団子★★★
毎年よ隣の家の姫辛夷★★★★

●廣田洋一
籾の芽の密に青めり苗代田★★★★
はやも苗代が作られ、籾が芽を出している。「密に青めり」に実感と新鮮な感動がある。(高橋正子)

飛ぶ鷺の脚光りける苗田かな★★★
苗代田引きたる水に鰌かな★★★

●河野啓一
春霞天草五橋の伸びゆきて★★★★
春望の天草五島や海の色★★★
春うらら天草乙女は海の風★★★

●桑本栄太郎
東雲のはるか生駒や遠霞★★★
芽吹く木を下に見て居り高架線★★★★
主を讃え歌う涙や復活祭★★★

●佃 康水
女生徒ら朗読し合う桜樹下★★★★
往年の女生徒をみるようだが、今も楚々とした女生徒たちがいることがうれしい。桜の花の咲く下で朗読の声が重なり合い、響きあう。映画の一コマのようだ。(高橋正子)

初蝶の黄の小刻みに丘を舞う★★★
本流をそれて寛ぐ春の鴨★★★

3月27日(3名)

●小口泰與
雨後の朝おのおの木々の芽の盛ん★★★★
春の雨が降ったあと驚くことは、木々の芽がどんどん伸びてきていること。「おのおの」が力強く、またよい観察だ。(高橋正子)

白梅や老来と言う我が時間★★★
芽柳や女歌舞伎の男振り★★★

●廣田洋一
付け出しの皿に盛られし桜花★★★★
桜咲くあちらは七分こちら三分★★★
夜桜や見上げる人の動かざる★★★

●桑本栄太郎
大根の花の愁いや曇り来る★★★★
馬酔木咲くうすき紅さすすだれかな★★★
よみがえる永久の命や復活祭★★★

3月26日(3名)

●小口泰與
山の風しだれこぼるる梅の花★★★★
さえずりや脱ぎし衣を腰に巻き★★★
喜寿すぎて亀の鳴き声まだ聞かず★★★

●桑本栄太郎
山茱萸の花に青空橋の上★★★
(原句)白壁の民家背にあり花菜晴れ
白壁の民家の背にあり花菜晴れ★★★★(正子添削)
ブロックの囲む花壇やチューリップ★★★

●谷口博望 (満天星)
紅白の玉が飛び交う枝垂梅★★★hosi
鶯やホーが出なくてケキョばかり★★★
花鶏来てベンチの下に見えかくれ★★★

3月25日(6名)

●小口泰與
揚ひばり和紙に染み入るインクの香★★★★
揚ひばり赤城山容靄の中★★★
忽然と襟を立てけり夜の梅★★★

●廣田洋一
花弁の道を覆へり桃の村★★★★
菜種梅雨はっきせぬは恋の路★★★
ぬるま湯にゆったり漬かる菜種梅雨★★★

●多田有花
辛夷咲く駐車場の真ん中に★★★★
山桜に谷より吹きあげし風★★★
風の中染井吉野の咲き初めし★★★

●桑本栄太郎
ハンギングポットにパンジー春日さす★★★
うららかや行きつもどりつつぼみ見る★★★
野を行けば風のさえぎり揚ひばり★★★★

●谷口博望(満天星)
山道を下りれば海へ犬ふぐり★★★★
海と犬ふぐり(オオイヌノフグリ)の取り合わせが効いている。山道を下ると海が開ける。犬ふぐりはそんなところに咲いている。海の色を映したような花の色に、心がより広く明るくなった。(高橋正子)

花辛夷子ら駆け回る夕間暮★★★
高きより何を言はむや四十雀★★★

●川名ますみ
医科大の卒業の日は白衣脱ぐ★★★
父親もめかし込んだる卒業式★★★
一輪が咲きて花見の始まりぬ★★★★

3月24日(5名)

●小口泰與
柳の芽岩を越ゆ来る流れかな
柳の芽岩を越え来る流れかな★★★(正子添削)

先行の釣師居らざる初わらび
先行の釣師居らざり初わらび★★★★(正子添削)

ばらの芽よ子犬の声のあえかなる★★★

●廣田洋一
桃の花咲きける庭に琴を弾く★★★
飽きもせず髪に飾れる桃の花★★★
桃の花一片浮かべ酒を酌む★★★★

●佃 康水
逆潮へ被爆柳の芽のみどり★★★★
被爆柳は、広島に原爆が投下されたときに、その付近たくさん植えられていた柳のなかで一本だけ焼け残った柳。あれから70年余たったが、今年も淡い緑の芽が芽吹いた。見守り続けるものには、感慨深いものがあろう。この句の逆潮は、川を遡る潮。「逆潮」が効いた。(高橋正子)

紅枝垂昼の鐘鳴る大聖堂★★★
やや寒むの庭園訪えば初桜★★★

●桑本栄太郎
地に朽ちて傷み哀しき白木蓮★★★
たんぽぽの絮の旅立つ野面かな★★★★
龍天に登る気色(けしき)や日矢立てる★★★

●谷口博望(満天星)
日常の外へ誘う辛夷かな★★★★
透かし見る月に萌黄の柳かな★★★
意外にも開花宣言東から★★★

3月23日(5名)

●谷口博望む満天星)
亀鳴くや漱石100年今もなお★★★
風信子100年超えて「夢十夜」★★★★
「こころ」てふ100年越しの春愁★★★

●小口泰與
田楽や洗い晒しの割烹着★★★
山風の尖りし朝よ牡丹の芽★★★★
山を分け坂東太郎初つばめ★★★

●桑本栄太郎
朝に見て夕に綻ぶ桜咲く★★★
むらさきの捲れ寺内や紫木蓮★★★
せせらぎの連翹伸びし高瀬川★★★★

●多田有花
喇叭水仙手にして男坂下る★★★
昇るほど朧のとれし月となる★★★★
坂上るときより開き山桜★★★

●古田敬二
(原句)藪を行く春の筍ごツと踏む
藪を行き春の筍ごつと踏む★★★★(正子添削)
下五の「ごつと踏む」がいい。表現がリアルで、句が生きいきとしている。力強いのである。(高橋信之)

二回目ははっきり鶯藪に啼★★★
満開の白きまぶさ辛夷咲く★★★

3月22日(5名)

●谷口博望(満天星)
なじみなき寒緋桜の咲き初むる★★★
しなやかに蕾を解いて辛夷咲く★★★★
辛夷咲くスワン大路を舞う如く★★★

●廣田洋一
捨て畑の草の伸び行く菜種梅雨★★★
(原句)菜種梅雨柳青める水辺かな
降る雨に柳青める水辺かな★★★★(正子添削)
元の句は、季重なりです。

菜種梅雨シートの覆うブルドーザー★★★

●小口泰與
百千の梅の開花や鳥の声★★★
さかんなる鳥の採餌よ暮遅し★★★★
あけぼののあらぶる赤城冴返る★★★

●多田有花
角を曲がれば一面の菜の花★★★
山桜の下を流れる川みどり★★★★
飛行機三機さくらの空を並び飛ぶ★★★

●桑本栄太郎
鷹鳩と化すや朴歯の修行僧★★★
黄明りの車窓飛び過ぐミモザかな★★★

たんぽぽの絮やみどり児ひと月に★★★★
ひと月のみどり児は、まるでたんぽぽの絮のよう。まんまるく、やわらかく、羽のような。そのように誰もが接する。(高橋正子)

3月21日(4名)

●小口泰與
衣脱ぎ腰に巻きたる彼岸かな★★★★
ライターをぽぽぽと点す彼岸かな★★★
眼の届く山河よ春の我が時間★★★

●谷口博望(満天星)
今日も来て鴨のまだゐる彼岸かな★★★
揺れながら辛夷綻ぶ大通り★★★★
朧月メタセコイヤを透き通る★★★

●廣田洋一
紙風船千代紙貼りて補修せり★★★
風船や花の種下げ旅立ちぬ★★★★
「花の種下げ」には、「旅立ち」の確かな目的がある。広く、そして遠くに「花の種を蒔き」子孫繁栄を願う。それは、子孫繁栄という生命の「根源の働き」である。(高橋信之)

椿の花上を向きて落ちてをり★★★

●桑本栄太郎
はるかなる摂津山並み春霞★★★
淀川の土堤草青む日差しかな★★★★
大阪の春の入日やビルの壁★★★


コメント

  1. 満天星
    2016年3月22日 14:04

    お礼
    高橋信之 先生
    「辛夷咲き見知らぬ人と会話かな」秀句に選んでいただきありがとうございます。
    単なる写生で終わっていないとお褒めの言葉をいただき嬉しくなりました。
    景色をどういう姿勢で見たかを表現するようにしていますが、これを励みに精進するつもりです。

  2. 小口泰與
    2016年3月25日 9:52

    御礼
    高橋正子先生
    「柳の芽」の句と「初わらび」の句を添削して頂き有難うございました。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。

  3. 川名ますみ
    2016年4月1日 20:20

    お礼
    信之先生、正子先生、いつも温かいご指導を賜りまして、感謝いたします。
    「髪切って初めの風は花の風」の句へ、今日の秀句の選と正子先生のご講評を頂き、
    嬉しゅうございます。髪を切った後に桜並木で風を受け、ふと浮かんだままの言葉を、投句いたしました。素直な心を掴まえることの大切さを、あらためて知りました。ありがとうございます。