3月11日~20日

3月20日(5名)
古田敬二
豌豆の花に白蝶同化する★★★
全身に陽を受け伸びる楤若芽★★★★
棒のような楤の木に若い芽が出ていて、その芽を掻いて食用にするが、そのの若芽は、山畑で全身に陽を受けて伸びている。全身に陽を受けて伸びる健やかさがいい。(高橋正子)
そら豆の風に揺られて実を育て★★★

小口泰與

黄水仙の群川風に哄笑す★★★
残雪の渓流遡上魚の影★★★
葦の芽や源流の水きららなり★★★★

廣田洋一
ぽつぽつと白く光れる桜かな★★★★
木蓮や散りし花弁白々と★★★
残雪の高く積まれし北の宿★★★

桑本栄太郎
菜の花や甍きらめく山の里★★★
百幹の竹の奏づる彼岸西風★★★
黒き目のまなこ見栄え切る豆の花★★★★

多田有花
<平等院三句>
木瓜の花ここより宇治の平等院★★★
宇治抹茶ソフトを舐める春の昼★★★
池に影映す彼岸の鳳凰堂★★★★

3月19日(4名)

小口泰與
蕗味噌を当てに独りの宴かな★★★
かたかごや遺跡の丘へなだれ咲き★★★
水草生ふ水の惑星太古より★★★★

廣田洋一
青空にひらひら舞へる辛夷かな★★★★
枝垂桜見上げる花の一二輪★★★
山裾の光を染めし桜の芽★★★★

多田有花
<大谷本廟三句>
円通橋ハクモクレンに迎えられ★★★
花で描く和顔愛語や彼岸寺★★★
彼岸会の読経聞くなり無量寿堂★★★

桑本栄太郎
山と言う名前あれども初桜★★★
 春潮のはるか遠くに隠岐の島★★★★

この句は、春潮と隠岐の島が醸す情緒がかなめ。隠岐の島は、島根県の北80kmにある。古く遠流の島として、また自然がそのま残る島として眺めれば、どんな思いになるだろう。「はるか遠くに」に作者の思いがある。(高橋正子)

父母の墓遠くに想う彼岸かな★★★

3月18日(4名)

小口泰與
薇の三和土に干され婆の顔★★★
かたかごや万葉集の三毳山★★★
 春蘭や源流の水光りける★★★★

渓流をさかのぼり、源流に至ると、そこに春蘭が咲いている。源流の水も春の光にかがやき、春蘭の花もはじけるように咲いている。確かな春だ。(高橋正子)

廣田洋一
芽を出せと声掛け蒔きぬ種袋★★★
誕生日の記念にかざす種袋★★★★
金星に座布団舞はぬ春場所かな★★★

桑本栄太郎
目まといの早やも出でたる川辺かな★★★
春泥の轍のままに乾きけり★★★★
歩数伸ぶ春の日差しや万歩計★★★

多田有花
犬と子を連れて梅見の夫婦かな★★★
 梅散るや風吹くたびに鈴が鳴る★★★


 初つばめ朝日に翼きらめかせ★★★★
初つばめが見られた。朝日に翼をきらめかせ、さっそうと飛ぶ姿に、なつかしささえ覚える。ずいぶん暖かくなった。(高橋正子)

3月17日(4名)

小口泰與
草の芽や運動靴の高く跳ね★★★
ばらの芽の朱き衣をほぐしけり★★★
 てんからの釣り人遡上初わらび★★★★

釣人に対して遡上というのかどうかわからないが、釣り竿をもって渓流をのぼってゆくとわらびがある。今年初めてわらびは、釣果もさることながら、春のうれしさだ。(高橋正子)

廣田洋一
彼岸来る行くのは未だと呟けり★★★
 姪甥と会うのも久し彼岸かな★★★★

彼岸の句に波郷の「兄妹の相睦みけり彼岸過」がある。彼岸は、身内のものたちの心がおだやかに通うときでもあるように思う。(高橋正子)

すぼめたる口を開きし木蓮かな★★★

多田有花
初花やこの地に何が起これども★★★
青空に憧れて咲くはくれんは★★★★
料峭の頂に立ち沖を見る★★★

桑本栄太郎
枝先の赤く色めき木の芽吹く★★★★
青空に紅の矜持や梅古木★★★
山茱萸の垣根明るく日差しけり★★★

3月16日(4名)

小口泰與
春宵や源氏の君の立ち居にて★★★
声を出し椅子から立つや老いの春★★★
還らざる人次次や草青む★★★★
 
廣田洋一
暖かや口を開けたる鯉二匹★★★
春の風邪癒えたる友よ暖かし★★★
 園児らのままごとの声暖かし★★★★

園児らがままごとをしているかわいらしい声を耳にした。日差しもあたたかく、ほっこりと和む気持ちに。(高橋正子)

桑本栄太郎
うかつにもこんな時間や朝寝人★★★
日照雨降る買物途次や冴え返る★★★
冴え返る嶺の入日や風の声★★★★

古田敬二
花屋から春の色と香溢れ来る★★★
 忙しげ風に揺られて初黄蝶★★★★

黄色を初めて目にしたものの、まだ冷たい風が吹いて、黄蝶はなぶられがち。小さきものの愛おしさ。(高橋正子)
風に揺れ話し合うよに犬ふぐり★★★

3月15日(4名)

小口泰與
坂東を横切る春の太郎川★★★
明るさは榛名の空や春の朝★★★★
春昼やラクビーボール飛び跳ねて★★★

廣田洋一
窓を打つ雨音消えて春の雪★★★★
雨空に淡き紅色江戸彼岸★★★
満開の彼岸桜に春の雪★★★

多田有花
春雨に午後のコーヒーの香り★★★
春の雨書類仕事を片付ける★★★
炒り卵茹でし分葱と味噌和えに★★★

桑本栄太郎
うつうつと夢のつづきや朝寝人★★★
歩みゆく程に雨雲春ならひ★★★
自転車の集結したり春休み★★★★
「集結したり」が青春らしく面白い。春休みになり、自転車をもって集まった生徒たち。これから大勢で出かけようというのだ。青春真っただ中のさわやかさがいい。(高橋正子)

3月14日(5名)

小口泰與
榛名湖の霞より出づ小舟かな★★★
浅間燃え襞黒黒と雪解かな★★★★
今なおA級活火山として噴煙をあげる浅間山は、燃える山と言えよう。雪解けに山の地熱が関係するかどうか知らないが、この句からは、山の熱が雪解けを促している印象だ。「襞黒黒」が実感。(高橋正子)

あえかなる朱きばらの芽ほどきける★★★

廣田洋一
白き枝ぱつと差し出す雪柳★★★
雪柳やはき風にも雪崩れけり★★★★
白皙の友思ひ出す雪柳★★★

桑本栄太郎
朝寝人二度寝の夢の果てしなく★★★
子供等の遊び見えざる菜種梅雨★★★
休園の塀に添いたりチューリップ★★★★

多田有花
春山路遠くで光る播磨灘★★★
春の谷囲む稜線を歩く★★★
下り来て八重紅梅に迎えられ★★★

古田敬二
じゃが芋の芽を温めて畝静か★★★★
じゃが芋を地中深く植えて、そのあとは、芽が地上に出るのを待つばかり。今は土が芽を静かに温めている時。静かな畝は生きている。(高橋正子)

春耕す分葱がこぼす土黒し★★★
引き寄せて故郷の梅の香かすかなり★★★

3月13日(4名)

古田敬二
四阿へ青きを踏んで十五段★★★★
四阿から見下ろす池に残り鴨★★★
道のべに木蓮光る昼餉時★★★

廣田洋一
白き花天を突きたる木蓮かな★★★
木蓮の反り返りたる花弁かな★★★
老舗にて馴染みし味や鶯餅★★★

小口泰與
駄菓子屋の子らの顔かおつくしんぼ★★★
遠き日の餓鬼大将や父子草★★★

茎立ちや独り暮らしの峡の家★★★★
山峡の集落。独り暮らしの家もあって食べ余した畑の菜は茎立っている。薹が立ったり花をつけたりして峡の村に春が確かに来ている。(高橋正子)

桑本栄太郎
溝川の早瀬となりぬ春の丘★★★
山里の崩れ土塀や桃の花★★★★
春なれやけぶり棚引く山の里★★★

3月12日(5名)

小口泰與
群雀翔つや裏庭諸葛菜★★★
さびき釣りに掛かる魚や華鬘草★★★

春の湖画布いっぱいの色使い★★★★
春の湖の色あいを見れば、絵心が誘われるというもの。春の湖を思い切り描いている人がいるのだろう。画布いっぱいの色使いに、春の色を見た。(高橋正子)

廣田洋一
春満月の浩々と照る曙かな★★★
手をかけて年を越したるシクラメン★★★
シクラメンワインレッドのあふれをり★★★★

古田敬二
蒲公英の丈をたがえて風に揺れ★★★★
蒲公英の丈は短くて皆同じように思えるのもあるが、野原をよく見れば、高低いろいろある。風が吹きすぎて蒲公英を揺らす。春の歌のような句。(高橋正子)

ぺんぺんと鳴らずナズナの風に揺れ★★★
夕暮れの池中央に残り鴨★★★

桑本栄太郎
追悼の祈りに合はせ春の虹★★★
白れんの今日は飛び翔つ日差しかな★★★★
白れんがほぼ満開となり、日差しを受けると花びらが開き空へ飛び翔つような姿勢になる。
「飛び翔つ日差し」に実感があって、上手。(高橋正子)

春風のあゆみ来たれば”南茶屋”★★★

多田有花
いっぱいにミモザ咲かせしカフェに入る★★★
春昼や壁一面の大時計★★★★
アーモンドトーストかりっと春の昼★★★

3月11日(4名)

廣田洋一
線路沿ひ街灯潤む町朧★★★
待ち人のなかなか見えぬ朧かな★★★★
女川の街思ひ出す朧月★★★

小口泰與
楓の芽ほぐるる刹那光りける★★★★
枸杞の芽や支流も利根も激つける★★★
楤の芽や渓流釣りの竹の魚籠★★★

多田有花
春の夕仏舎利塔より城眺む★★★
麗かや傾く陽を浴び仏舎利塔★★★
永き日の仏舎利塔に猫二匹★★★★
「永き日」がよく効いている。永き日だからこそ、二匹の猫も釈迦のほとりにいたがる。極楽にも似た雰囲気がある。(高橋正子)

桑本栄太郎
歩みゆく丘の田道や春帽子★★★★
なんでもないような句だが、「春帽子」に味わいがあっていい。春帽子をかぶるのは少々年取った男性がいい。風に寒さはあるもののあたたかい丘の田道が快い。(高橋正子)

さざ波の田面となりぬ春驟雨★★★
鳴き声の薮を占めたる初音かな★★★


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