2月20日(5名)
小口泰與
湖の面へ夕日差しける日永かな★★★★
暖かや芝に座りて醜草を★★★
放たるる犬の躍動春兆す★★★
暖かや芝に座りて醜草を★★★
放たるる犬の躍動春兆す★★★
廣田洋一
ものの芽のつんつん伸びて光りけり★★★
ものの芽や乳呑児あやす母の声★★★★
ものの芽の一つ大きくほぐれけり★★★
ものの芽や乳呑児あやす母の声★★★★
ものの芽の一つ大きくほぐれけり★★★
川名ますみ
春浅しレースのカーテン越しの空★★★
春きざす窓に風音空の青★★★★
春きざす窓に風音空の青★★★★
窓辺に聞こえる風の音、窓から見える空の青にたしかに「春のきざし」を感じた。形としてとらえられない音や色にまず季節の変化が現れると言っていいだろう。(高橋正子)
拾いきし梅一輪の香を卓に★★★★
桑本栄太郎
すすぎもの干すや霾る峰を背に★★★
乙訓の丘を歩めば風光る★★★
あぢさいの芽の艶やかに風生忌★★★★
乙訓の丘を歩めば風光る★★★
あぢさいの芽の艶やかに風生忌★★★★
古田敬二
夕暮れに畑に一人冴え返る(原句)
「夕暮れに」の「に」が説明的に思えます。
夕暮れの畑(はた)に一人や冴え返る★★★★(正子添削)
俳句誌を開きたるまま春の宵★★★★
春の宵。それまで読んでいた俳句雑誌を開けたまま宵の時が過ぎる。明るく艶めいた浪漫的な感傷の漂う俳句がありそうな俳誌なのか。(高橋正子)
春の雪縦横無尽に吹かれけり(原句)
主語「春の雪」と述部「吹かれけり」の不一致が気になります。
春雪に縦横無尽に吹かれけり★★★★(正子添削①)
春の雪縦横無尽に吹きにけり(正子添削②)
2月19日(4名)
小口泰與
さくさくと土踏む音や冴返る★★★
沛然と利根川の雨春寒し★★★★
笛太鼓控ふ雛を飾りけり★★★
沛然と利根川の雨春寒し★★★★
笛太鼓控ふ雛を飾りけり★★★
廣田洋一
春の川鯉の動きのおほらかに★★★★
水切りの石の伸び行く春の川★★★
丹沢の山青くして春の川★★★
水切りの石の伸び行く春の川★★★
丹沢の山青くして春の川★★★
桑本栄太郎
春きざす園児らはしゃぐ庭一杯★★★★
庭一杯に広がってはしゃぐ園児がかわいらしく、にぎやかで、春のきざしの確かさがある。(高橋正子)
鳴き声の背ナをくすぐる猫の恋★★★
いよいよと日差し向き居り桜芽木★★★
いよいよと日差し向き居り桜芽木★★★
古田敬二
春灯をともし俳句誌三月号★★★★
落日にその影くっきり春の雪★★★
落日に行きつ戻りつ春の雪★★★
落日にその影くっきり春の雪★★★
落日に行きつ戻りつ春の雪★★★
2月18日(4名)
小口泰與
あらあらと窓を刷きたる春の雪★★★
くねくねの径を歩みて蓬かな★★★
家長我父の年忌や春暖炉★★★
くねくねの径を歩みて蓬かな★★★
家長我父の年忌や春暖炉★★★
廣田洋一
逝きし子の雛人形を飾りけり★★★★
紙雛を共に飾りて賑やかに★★★★
紙雛を共に飾りて賑やかに★★★★
雛飾りは、女子のすこやかな成長を願い、また季節の美しさを愛でて飾られる。桜や橘の木木、菱餅や白酒を供え、桃の花を飾って、華やかな節句である。段飾りの雛の周りに紙雛も飾って、にぎやかにする。さびしくないようにの親心であろう。心のこもった雛飾り。(高橋正子)
雛あられ買ふ気もなしに見やりたる★★★
桑本栄太郎
目覚むればすでに明るき春障子★★★★
すずめ等のふくらみ群るる凍返る★★★
愛ありて愛人同居のかの子の忌★★★
すずめ等のふくらみ群るる凍返る★★★
愛ありて愛人同居のかの子の忌★★★
古田敬二
薄氷に風の風紋残りけり★★★
春泥の靴に重たく残りけり★★★★
春泥の靴に重たく残りけり★★★★
春泥は、おのずから柔らかく、てらてらと光る感じがする。雪解けや凍てが緩み雨が降ると泥濘はあちこちに生じる。靴につくと粘って靴から離れず重い。それは、春泥特有の重さだ。(高橋正子)
潮干狩りかがむ姿の二三人★★★
2月17日(4名)
小口泰與
火の山の匂いや春の佐久の鯉★★★
春寒や選挙カーの次つぎと★★★
春寒や選挙カーの次つぎと★★★
渓流の音を頼りや蕗の薹(原句)
「頼り」のところを「写生する」といいと思います。
渓流の音の方へと蕗の薹★★★★(正子添削)
渓流は、雪解け水に嵩を増して岸辺を濡らしながら流れている。蕗の薹は湿ったところを好むのか、水ぎわへと芽生えている。渓流のそばの蕗の薹が清冽な印象で詠まれている。(髙橋正子)
廣田洋一
露店湯の湯気を浴びたり蕗の薹★★★★
道路工事終へたる土手に蕗の薹★★★★
蕗の薹焼くか揚げるか決めかねて★★★
蕗の薹焼くか揚げるか決めかねて★★★
多田有花
あたたかや久々にするストレッチ★★★
虹置いて春のしぐれの去りにけり★★★★
春疾風ショパンの英雄ポロネーズ★★★
虹置いて春のしぐれの去りにけり★★★★
春疾風ショパンの英雄ポロネーズ★★★
桑本栄太郎
冴返る想い出ばかりの夢見かな★★★
登校の児童の列に春の雪★★★★
群青の高嶺となりぬ春の宵★★★
登校の児童の列に春の雪★★★★
群青の高嶺となりぬ春の宵★★★
2月16日(5名)
小口泰與
フロントのガラスに斜め春驟雨★★★
鳶舞いて湖華やぐや春シール
鳶舞いて湖華やぐや春シール
「春シール」は春ショールでしょうか。
麦踏や夕べの赤城茜色★★★
廣田洋一
けきょけきょと練習中の鶯かな★★★
川べりに潜む鶯高き声★★★★
古き家の庭に紅白梅の花★★★
川べりに潜む鶯高き声★★★★
古き家の庭に紅白梅の花★★★
桑本栄太郎
春寒料峭マルチはためく畑かな★★★
カタカタと校旗はためく春の風★★★
料峭のさざ波走るにはたづみ★★★
カタカタと校旗はためく春の風★★★
料峭のさざ波走るにはたづみ★★★
多田有花
余寒あり蕪とろとろに煮えて★★★★
余寒の寒さは身にしみて、温かいものが食べたくなる。ポトフなどに煮込んだ蕪がとろとろに甘く煮えて、一口食べれば、身も心も温まる。蕪がとろとろに煮えたイメージが余寒の空気感によくマッチしている。(高橋正子)
地に開く星の瞬きいぬふぐり★★★
咲き初めてやさしき香りフリージア★★★
咲き初めてやさしき香りフリージア★★★
2月15日(4名)
小口泰與
公魚のはつかに光り遡上せる★★★
山風に紛るる初音はつはつに★★★
山風に紛るる初音はつはつに★★★
「はつはつに」は意味としてはよいのですが、古語ですので、句が浮いて、実感がなく無くなっているので惜しいです。(高橋正子)
橋桁の朽ちし抜け道川鴉★★★
廣田洋一
青空に剪定の音弾みけり★★★
せせらぎの音涼やかに山笑ふ★★★★
せせらぎの音涼やかに山笑ふ★★★★
「山笑ふ」を遠くから眺めたのではなく、近くで実感した意義が大きい。山川のせせらぎの音が涼やかに音を立てて、木々の芽も吹くらんできている。日差しが明るく、にこやかな光景。(高橋正子)
盛土せし道路開通山笑ふ★★★
盛土せし道路開通山笑ふ★★★
桑本栄太郎
雨脚の上がり滴や春日さす★★★
揚ひばり遥か彼方にヘリコプター★★★★
言い訳のこの頃増えし冴え返る★★★
揚ひばり遥か彼方にヘリコプター★★★★
言い訳のこの頃増えし冴え返る★★★
多田有花
春眠から覚めてこの世に戻りけり★★★
赤ペンで卒業試験を採点す★★★
頂のうえに出ている春の雲★★★
赤ペンで卒業試験を採点す★★★
頂のうえに出ている春の雲★★★
2月14日(3名)
小口泰與
榛名富士朝日賜り雪解かな★★★★
雨後の庭朝日に恥じず牡丹の芽★★★
丹精の薔薇一斉に芽吹きける(原句)
雨後の庭朝日に恥じず牡丹の芽★★★
丹精の薔薇一斉に芽吹きける(原句)
「丹精」は省略しましょう。説明になっています。
一斉に芽吹きぬ薔薇の赤き芽よ★★★★(添削例)
廣田洋一
散歩道横にそれたり犬ふぐり(原句)
散歩道横にそれれば犬ふぐり★★★★(正子添削)
春耕や畝の溝をば切り込みぬ★★★★
春耕を終へし畑に佇みぬ★★★
春耕を終へし畑に佇みぬ★★★
桑本栄太郎
さざ波の立ちて薄氷流れけり★★★★
さざ波が立っていると川を覗けば、薄氷が溶けながら流れている。小さな波とうすうすとした氷の、儚いものの世界に作者の好みが読める。(高橋正子)
溝川の細き流れや犬ふぐり★★★
芽柳の土手に日差しや川の風★★★
芽柳の土手に日差しや川の風★★★
2月13日(3名)
小口泰與
父の忌や同胞集ひ蕨餅★★★
初めての山や鳥鳴き木の芽晴★★★
校庭に大樹はだかり残る雪★★★
初めての山や鳥鳴き木の芽晴★★★
校庭に大樹はだかり残る雪★★★
廣田洋一
日溜りに空を映して犬ふぐり★★★★
畦道に枝をさしかけ梅の花★★★
紅白の枝を交わせり梅の花★★★
畦道に枝をさしかけ梅の花★★★
紅白の枝を交わせり梅の花★★★
桑本栄太郎
春暑し煙まつすぐ野に立ちぬ★★★
畦道に茎の伸びたり仏の座★★★
畦道に茎の伸びたり仏の座★★★
春きざす我を追い抜きトラクター★★★★
春が来ると畑仕事が忙しくなる。出会ったトラクターも人が歩くを追い越して勢いをつけて農道を走っている。こんなところにも春のきざしが見えてうれしいものだ。(高橋正子)
2月12日(3名)
小口泰與
佐保姫と一献組みし夜半の夢★★★
諸子魚釣る子らよ榛名へ雲一朶★★★★
山祇や谷川岳の雪崩れ★★★
諸子魚釣る子らよ榛名へ雲一朶★★★★
山祇や谷川岳の雪崩れ★★★
廣田洋一
下萌えや風柔らかき街の川★★★★
春霜や日を返したる駐車場★★★
鎮まりしままの畑や春の霜★★★
春霜や日を返したる駐車場★★★
鎮まりしままの畑や春の霜★★★
桑本栄太郎
淀川の下流かすみぬ菜の花忌★★★★
菜の花忌は、2月12日の司馬遼太郎の命日。今、有名な忌日の一つとなったかもしれない。イメージの親しみやすさ、明るさや優しさがあるせいだろう。この日、淀川の上流から遠く下流をながめれば、かすんでいる。かすんでいるあたりに故人の姿がありそうである。(高橋正子)
ものの芽や川べり歩み日差し居り★★★
春宵や嶺の端ほのと赤くあり★★★
春宵や嶺の端ほのと赤くあり★★★
2月11日(4名)
小口泰與
春の日や河原の子らの声高き★★★★
蕗の芽やゲートボールの打球音★★★
春光に包まれて居る二人かな★★★
春の日や河原の子らの声高き★★★★
蕗の芽やゲートボールの打球音★★★
春光に包まれて居る二人かな★★★
多田有花
春の霜駆けぬけてゆく女子高生★★★
建国記念日真昼の風のやわらかし★★★
河川敷春の芝生に球追う人★★★
廣田洋一
吾が帰宅待ちたる如し犬ふぐり★★★
通り道少しよけたる犬ふぐり★★★
通り道少しよけたる犬ふぐり★★★
畔青む農婦の足の軽やかに★★★★
農婦へのまなざしが温かい。田の畔の草が青く萌えだすと、それまでの寒さから幾分開放されて、農婦の足取りも軽やかに。(高橋正子)
桑本栄太郎
来てみれば密とは知らず梅見かな★★★
遅き日やひと眠り後の窓明かり★★★
海苔掻やの潮のたゆとう岩の間に★★★★
遅き日やひと眠り後の窓明かり★★★
海苔掻やの潮のたゆとう岩の間に★★★★
コメント
訂正願います。
正子先生
大変ご迷惑をおかけしています。
「春シール」は「春ショール」の打ち間違いです。
よろしくお願い申し上げます。