2月11日~20日


2月20日(6名)

●小口泰與
たらの芽や淵に佇むてんから師★★★
釣人の魚籠あふれけり蕗の薹★★★★
安曇野の畦の雪間に蕗の薹★★★

●小川和子
日当たれば幹温かき欅かな★★★★
日の少し差し込む藪の紅椿★★★
長閑さに莟ほのぼの枝だれ梅★★★

●多田有花
小綬鶏に呼ばれて窓を開けにけり★★★★
春眠をたっぷりとって風邪癒す★★★
春の雨更地となりし河川敷★★★

●古田敬二
ランナーの足音梅の咲き初むる★★★
豊かなり地にイヌフグリ枝に梅花★★★
蜜を吸うメジロとしばし遊びけり★★★★

●佃 康水
河原鶸零れて葦に啼きたつる★★★
ほっこりと野の香の立ちて蓬餅★★★★
「ほっこりと」に、なごまされる。蓬餅の蓬の香りは、春の野の香りといってよい。蓬餅もまるまるとして、手作りの良さが見えておいしそう。(高橋正子)

車窓より火事丸見へに冴え返る★★★

●上島祥子
梅枝の二心無く青空へ★★★
雪残る天満宮への路静か★★★
御嶽に向き合い座る春テラス★★★★

2月19日(4名)

●小口泰與
耕やダックスフント駆け抜けし★★★
犬ふぐりプラネタリウム出づる吾子★★★
鳥交る芝にあまねく日の差しぬ★★★★

●祝恵子
薄氷やバケツのヒシャク持てば割れ★★★
沈みゆく日を見送りて春の橋★★★★
「沈みゆく日」には人はどこか感傷的な気持ちを持つが、この句はもっと自然体で、沈む日を心に収めつつ見送っているのがいい。日が永くなった春の橋は、沈む日の始終をよく見せてくれる。(高橋正子)

春の鳥尾をひくひくと切り株に★★★

●古田敬二
春野行く故郷の夢見し朝★★★
春風の音せぬほどに梢揺れ★★★★
春の海三角波に風遊ぶ★★★

●川名ますみ
さまざまの花芽蕾に春の朝★★★★(正子添削)
さまざまな花芽が気づくと蕾になって、膨らんでいる。朝なので、「一夜にして蕾になった」ような気持もするのだろう。うれしいことだ。(高橋正子)

川縁の小さき梅苑白満つる★★★
しだれ梅萼の裏にも蕾あり★★★

2月18日(2名)

●小口泰與
川風のいまだ硬しや牡丹の芽★★★★
産土の砂利懐かしき蜆汁★★★
噴煙の先の細きや冴返る★★★

●多田有花
快晴の明石海峡春早し★★★
春の野を朝日に向かい新幹線★★★
春朝日白鷺城を薔薇色に★★★★

2月17日(4名)

●河野啓一
日脚伸ぶ鳥は枯木の懐に★★★★
枯木には日が暖かそうに差し込んで、その中に鳥が遊んでいるのがよく見える。枯木のふところに居て、鳥は自由だ。(高橋正子)

春昼の枯れ木に遊ぶ鳥の影★★★
梅が香や南部(みなべ)紀の国海青し★★★

●小口泰與
産土の鍋割山(なべわり)雪消鳥の声★★★
畑打や猫の足跡点点と★★★
下萌や里は寒風なお残り★★★★

●多田有花
廃屋の取り壊されて春寒し★★★★
春あられ年金引き出す人の列★★★
春の風邪鼻炎カプセル服用す★★★

●谷口博望 (満天星)
肩に触れ被爆柳や千羽鶴
肩に触る被爆の柳千羽鶴★★★★(正子添削)
ピーヒャラと鳶舞いたる日永かな★★★
手をつけば鯉の旋回水温む★★★

2月16日(4名)

●小口泰與
噴煙の見ゆる溶岩道すみれ咲く★★★★(正子添削)
朝晩の御勤めの如蜆汁★★★
摘草や子のスカートの揺れかすか★★★

●河野啓一
飛び発ちて何処へ消えし春の鳥★★★★
枝移りする春の鳥を眺めていたら、飛び発ってしまった。何処へ消えてしまったのだろう。春の鳥へ慈しみ。(高橋正子)

冴えかえる朝の生駒のあざやかに★★★
チューリップ伸び来る若葉やわらかに★★★

●桑本栄太郎
春眠の目覚め夢追い又ゆめに★★★
雲奔り雲影走る春の嶺★★★
目刺焼きひとり夕餉や妻の留守★★★★

●古田敬二
ごつごつと触れ合う船や春の潮★★★★
ゆったりと流れる春の潮もあるけれど、春一番などの風が吹くと潮が荒れる。繋いである船が船体と船体をぶつけて「ごつごつ」という音を立てる。それがリアルに詠まれている。(高橋正子)

立春や過る小鳥の羽透ける★★★
枝渡る鳥影多し春立つ日★★★

2月15日(3名)

●小口泰與
青麦や光り弾くる鳩の胸★★★★
鳩の胸は丸く出っ張って、光りを虹色に弾いていることがある。麦はあおあおと光りを反射させ、風は寒くとも、光りは強く春本番へと近づいている。(高橋正子)

前向ける尾長の嘴や春の土★★★
春の日や会釈なき子へ手を振りぬ★★★

●河野啓一
青年の合格を喜びて
大和なる明日香の里の初音かな★★★★
薄日さす二月はもはや半ば過ぎ★★★
冴えかえる池の氷の鈍き色★★★

●桑本栄太郎
姦しき田面の天(そら)や揚ひばり★★★★
屈みこみ一頻り愛づ犬ふぐり★★★
止まりて春の楽聞く小川かな★★★

2月14日(5名)

●古田敬二
反芻の黒牛の背に春陽濃し★★★
青き踏み放牧牛ののしのしと★★★
木蓮の蕾の向こうの空広し★★★★

●小口泰與
梢より落ち来るものよ牡丹雪★★★★
春の暮採餌に尾長来りける★★★
噴煙の先や真鳥の春の山★★★

●多田有花
神護寺へ長き石段春淡し★★★★
「神護寺」に私は参ったことはないが、その奥の方には栂尾「高山寺」があって、一度は行ってみたい寺である。京都高雄山の中腹にある紅葉の名所と知られ、日本寺院の中でもの重要な寺とされる。長い石段に覆いかぶさるような紅葉の写真からみると、古びた長い石段を上りつつ「春淡し」が身に感じられてくる。(高橋正子)

春の空錦雲渓の底に光る★★★
バレンタインデー終日風の音高し★★★

●桑本栄太郎
山裾の里のけぶりて揚ひばり★★★★
あるが儘咲いて競える野梅かな★★★
バレンタインデー愛は誤解と知りつつも★★★

●谷口博望(満天星)
梅見茶屋水琴窟の音を聴き★★★
梅咲いて久々に聞く孫の声★★★★
春一番からす毅然と橋の上★★★

2月13日(4名)

●小口泰與
春の鳥句会仲間と居るごとし★★★★
眠ぶさたの昼や畦道揚ひばり★★★
のったりと横たわりたる春の昼★★★

●迫田和代
広い野に膨らみかけた蕗の薹★★★★
蕗の薹は山水のしみ出るところ、庭の片隅、野原にも蕗の薹がある。広い野に膨らみかけた蕗の薹は、空に憧れて花を咲かせようとしている風にも見える。心が広々となる句。(高橋正子)

雨の中負けるものかと鶯や★★★
梅の花香りしらじら花も白★★★

●河野啓一
春泥をき踏み散らし来る孫二人★★★★
男のお孫さんの、中学生か、高校生を想像する。二人が元気よく、春泥も厭わず、春泥を踏み散らしてやってくる。飾り気がなくて、溌剌とした行動が頼もしい。(高橋正子)

春衣着せてマネキン若くなり★★★
春昼やどら焼きを手に舟を漕ぐ★★★

●桑本栄太郎
さみどりも赤きもありぬ新芽立つ★★★
野梅咲き遠きふるさと想い見る★★★★
野に立つや高き天なる揚ひばり★★★

2月12日(5名)

●河野啓一
テレビには雪山窓に梅蕾★★★★(正子添削)
テレビには凛とした雪山が映し出され春は遠いと見えるが、私の傍近くの窓には、梅の蕾が膨らんで、咲きそうである。日本列島、こうも季節が違うものか。(高橋正子)

杯を挙ぐ建国日なり青山河★★★
樹の洞に小鳥連れ立ち水を飲む★★★

●谷口博望 (満天星)
下萌や落ちて朽ちたる金鈴子★★★
春の風朽ちて破れし朴落葉★★★★
朽ちつつも二月の空の茨の実★★★

●小口泰與
払いてもとび来る虻ぞ浮子沈む★★★
小座布団ならぶ茶店や梅の花★★★
紅梅やほっと茶柱立ちにける★★★★

●多田有花
早春の人影まばらな高山寺★★★
お抹茶をいただく余寒の高山寺★★★
トレイルを歩き二月の池に出る★★★★

●桑本栄太郎
芽柳の青き枝垂れや小畑川★★★★
まんさくの青き空へと見上げ居り★★★
うらうらと歩む街道菜の花忌★★★

2月11日(5名)

●小口泰與
境内の一隅照らす梅の花★★★
隠れ沼へ一目散の雉子かな★★★
亀鳴くや非通知電話かかり来る★★★

●谷口博望(満天星)
春きざす猿の手温め確かなり★★★
春淡しさざ波光る被爆川★★★
川面照り顔ぶれ変る今日の鴨★★★★

●河野啓一
春温し縄文土偶のほほえみて★★★★
杯を挙げて談笑春の午後★★★
せせらぎは春を流れて水車へと★★★

●祝恵子
広き空求めて凧は高くあり★★★★
婆の木という椿の札に苦笑する★★★
降雪機子らにそそぎて春広場★★★

●桑本栄太郎
茎立や菜園それぞれ仕切らるる★★★★
菜園のに蕪やあぶら菜の薹が立って、あちこちにすっくと茎が伸びている。その茎立った様子を見れば、一目瞭然菜園が仕切られているのが分かる。早春の景色。(橋正子)

春禽の見えざる枝を探しけり★★★
紅梅のいつも青空丘の梅★★★


コメント

  1. 小口泰與
    2016年2月17日 13:08

    御礼
    高橋正子先生
    「噴煙の先の溶岩道」の句を「噴煙の見ゆる溶岩道」に添削して頂き、句が見違えるようになり有難う御座いました。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。