12月21日~31日


12月31日(4名)

●谷口博望(満天星)
雪雲や久々に見し日本海★★★★
瀬戸内に住む作者にとって、日本海はまた別の感慨の湧く海であろう。温暖な瀬戸内では雪雲さえもたまにしかみない。久々に見た雪雲の下の日本海に、気持ちが昂ったことだろう。(高橋正子)

冬麗や綿雲流る浜田道★★★
遠山に薄雪被る浜田道★★★

●小口泰與
眼間の大晦日の榛名富士★★★★
仰ぎ見る浅間は雪を輝かせ★★★
大晦日小犬は膝を離れざる★★★

●桑本栄太郎
降りそうでふらぬ日射しや布団干す★★★★
大歳のどの家(や)も料る匂いかな★★★
信号に尾灯のつづく年暮るる★★★

●高橋秀之
温かき年越し蕎麦は5人前★★★
年越しのチャンネル権は子らのもの★★★
大晦日の夜に出かけるお参りに★★★★

12月30日(5名)

●小口泰與
水洟や歯ブラシを持つ朝まだき★★★
蕎麦刈や白き浅間は日を支う★★★★
噴煙の流るる先や年の暮★★★

●河野啓一
一年の煩悩拭う晦日の青空★★★★
一年の煩悩を払うのは、除夜の鐘だけではない。晦日のすっきりと晴れた青空を見れば、心が洗われる。煩悩も払われ、すがすがしく新年が迎えられそうな青空がうれしい。(高橋正子)

グーチョキパーと明日は大晦日★★★
大納言小豆の餡餅さてどうか★★★

●桑本栄太郎
拭き残る玻璃戸のくもり年の煤★★★
救急車近くに来たり年の暮★★★★
小春日のテラスに座り豆を選る★★★

●多田有花
蟹汁と海鮮丼で年惜しむ★★★
部屋ごとの暦かけかえ小晦日★★★
年の暮墓前に松を立てにけり★★★★

●川名ますみ
吸物にひとかけ借りて柚子風呂へ★★★★
冬至の柚子風呂に入れる前に、ひとかけ吸物用にいただいて、それから柚子風呂へ入れる。吸物も柚子風呂もどちらも楽しめてこの日は特に貴重な柚子に。(高橋正子)

枯山に雪なきことの貧しさよ★★★
年用意シチューの鍋をかけながら★★★

12月29日(3名)

●小口泰與
官庁街静かや年の歩みける★★★
待ちくるる人居て小屋の寒卵★★★
横向きの顔のみ通る社会鍋★★★★

●桑本栄太郎
白々と風の中洲や尾花枯る★★★★
小さき水脈曳いて番や鴨の陣★★★
蓮枯れて水面さざ波笑むなかり★★★

●多田有花
数え日の頂に午後の虹を見る★★★
裏白を採りつつ山を下りけり★★★★
山を登り下りしたのは、作者の日常生活にとっての、大した関わりはないのだが、それが「裏白を採りつつ」とあれば、作者の年末の生活が鮮明に浮かぶ。正月を迎えるという生活であり、作者の生活の場である居室のいい風景が浮かぶ。(高橋信之)

12月28日(2名)

●小口泰與

白波の斑の海や枯尾花★★★
正面に海迫り来る冬かもめ★★★
山あいへ雲固まるや冬紅葉★★★★

●桑本栄太郎
浮寝鳥風の波紋に揺らぎけり★★★★
降りそうで降らぬ時雨や青空も★★★
煤払い古希の吾身の煤落ちず★★★

12月27日(4名)

●小口泰與
押鮎を頭(ず)よりぱくっと孫も真似★★★
寒晴や男が捌く鯉料理★★★★
百千の大根干しけり雑木山★★★

●多田有花
クリスマスイブの頂光満つ★★★
万両や水琴窟に耳を澄ます★★★
門松を積むトラックの後走る★★★★

●桑本栄太郎
坂道の枯葉まろびて踊りけり★★★
冬日さすこのまま芽吹く季(とき)なるや★★★★
さんしゅゆの実の乾び居り冬の空★★★

●高橋秀之
大掃除終えてこれから賀状書く★★★
白菜にザクッと包丁真っ二つ★★★★
白菜の一玉に包丁を入れると、ザクッと小気味よい音がして真っ二つに割れる。割れると幾層にも緑色の変化する色が目に入る。白菜の清冽さを目に見せた。(高橋正子)

玄関に小さな葉牡丹二つ置く★★★

12月26日(3名)

●小口泰與
沼暮れて真中へ急ぐ小白鳥★★★★
掌(て)に持つとじわっと痛む氷柱かな★★★
上州は嬶天下や虎落笛★★★

●迫田和代
懐手何もできない散歩道★★★
嫌なことすべてを忘れる日向浴★★★

光るものどっさり飲み込む冬の川★★★★
今の季節光るものといえば、夜なら街の明かり様々、昼ならば太陽の光など。特に歳晩の夜はイルミネーション鮮やかでたっぷり。どっさりとも言える。冬の川は流れるままであるが、光るものは、たっぷりと注ぎ込んで来る。冬の川の魅力。(高橋正子)

●桑本栄太郎
赤き実をかざす枯木に日差しかな★★★
学校の冬の紅葉やプラタナス★★★
赤き実の垂るるにまかせ冬の庭★★★★

12月25日(3名)

●小口泰與
サーファーの数多や伊豆は冬ざるる★★★
ワイパーに枯葉飛ばさる峠かな★★★
冬霧の忽と袈裟斬り里の山★★★★

●上島祥子
クリスマス子に起こされて夜の明ける★★★
不揃いの柚子を浮かべて冬至の湯★★★

寒風に鼻突き出して柴犬は★★★★
道を歩いていると犬に出会うことはしばしばだが、犬は、寒風に向かって、あるいは寒さに向かって、前へ前へひたすら歩いている。柴犬だけでなく、野良犬でもこういった光景をよく見る。ひたすらさは本性か。(高橋正子)

●桑本栄太郎
”アメージンググレース”聴いて涙の聖夜かな★★★
想い出の次から次へ賀状書く★★★★
ぬぐつても拭いても吾身年の煤★★★

12月24日(4名)

●小口泰與
鈍色の宙へ投げ釣り息白し★★★★
枯尾花小舟ささふるささら波★★★
夕映えと電飾競うクリスマス★★★

●谷口博望(満天星)
賀状書く七福神の猿が居て★★★
霧流る山陽道や三原まで★★★★
いただきし野菜の恵み冬の鍋★★★

●多田有花
頂や背中いっぱい冬至の陽★★★★
冬至の山頂というのは、格別の場所になっているのではと思う。空から降り注ぐ冬至の太陽を存分に、それも面積の広い背中に受けて暖かい。私一人が太陽の暖かさを独り占めしている感じか。(高橋正子)

光りつつ光る海へと冬の川★★★
ざっくりと南瓜を割って今日冬至★★★

●桑本栄太郎
藁打ちの父は納屋なり頬被り★★★★
パティシエのケーキ届くやイブの夜★★★
馬小屋に星くず流る聖夜かな★★★

12月23日(4名)

●小口泰與
冬の芽の光り節節群雀★★★★
三山をつなぎし風や枯尾花★★★
霜畳息弾ませし小犬かな★★★

●祝 恵子
ブロッコリー葉より抜けだす房の見え★★★
裸木や青空につん枝延す★★★

頂きし柚子の数個は湯船中
頂きし柚子の数個は湯船に浮き★★★★(正子添削)
沢山柚子をいただいた。料理にも使い、湯船にも浮かして柚子風呂に。冬至のころの日の短さは、慌ただしさを募らせる。そんなころ、沢山の柚子の黄色は、辺りを明るくしてくれる。(高橋正子)

●桑本栄太郎
はたらけぬ亭主すてよか煤払い★★★
何もかも棄てて明るき枯尾花★★★★
せせらぎの空に冬芽や高瀬川★★★

●谷口博望(満天星)
待ちわびて退院の日や帰り花★★★★
万両や時空を超えて十王像★★★
若者に短歌のブーム十二月★★★

12月22日(6名)

●谷口望博(満天星)
愛すべきマフラーを編む妻の居て★★★★
シクラメン遠目に手挙ぐ妻の顏★★★
シクラメンわがままはすぐ聞きませう★★★

●小口泰與
熱燗や暖簾潜りて雨払う★★★
長火鉢雪駄の音の聞こゆかな★★★★
シーズ犬椅子にちょこんと日向ぼこ★★★

●河野啓一
歳末や妻いそいそと買い物に★★★
陽のぬくし冬至の朝は南から★★★★
水鳥の行く手を追えば枯れ葎★★★

●桑本栄太郎
散り惜しむ冬の紅葉や風の音★★★
ごつごつと胸に背に受く柚子湯かな
胸に背に柚子ごつごつと柚子湯かな★★★★(正子添削)
元の句の「受く」では、情況説明が不足。柚子湯には、たくさんの柚子が浮かんで、胸にも背にもごつごつ当たる。柚子の形が目に見えるようで、柚子湯も男性的。(高橋正子)

冬至湯やにきびの友のいま何処★★★

●高橋秀之
ほっこりと浸かる長風呂柚子香る★★★
風呂の湯にひとつの柚子が浮き沈み★★★
煌々とイルミネーション今日冬至★★★★

●福田ひろし
セーターの似合う女の首細し
セーターの似合う女の細き首★★★★(正子添削)
世間から今日は降りたしマスクする★★★
無頼なる暮らし憧れ冬至かな★★★

12月21日(4名)

●小川和子
黄昏て冬木いつしか影絵めき★★★
洒脱なる味もその名もラ・フランス★★★
捥ぎたての柚子ほっこりと冬至湯に★★★★
捥ぎたての柚子がいきいきとして、湯のあたたかさ、湯の透明さが想像できる。「ほっこりと」は、柚子がほっこり湯に浮いている感じでもあり、ほっこりと温かい湯の感じでもある。いい冬至湯だ。(高橋正子)

●小口泰與
枯草に鶏のうぶ毛や青き空★★★
冬帽を湖に奪われ仁王立★★★★
踏切や風にうたるる懐手★★★

●桑本栄太郎
冬菊の赤き小ぶりや石鼎忌★★★
冬入日うすき茜と水色に★★★
特急の追い越し行けり大枯野★★★★

●河野啓一
冬至雨厳しき朝の送迎車★★★★
デイの昼冬至南瓜の煮付けかな★★★
冬至湯に足りずこの柚子鍋に入れ★★★


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