12月1日-6日

12月6日(7名)

●小口泰與
冬紅葉天竜川の川面かな★★★
迫り来る北アルプスの根雪かな★★★

晴るる日の新雪積し山の襞★★★★(正子添削)
もとの句は、「小春日」と「新雪」と季語重なり。晴れた日の山を見渡せば、新雪を冠って、山襞がひときわ際やかだ。真新しい雪、真新しい季節が清々しい。(高橋正子)

●河野啓一
枯れ葦の水辺漕ぎゆく小舟かな★★★
湯けむりを透かし人影雪の宿★★★★
友来る寄せ鍋の湯気温かき★★★

●桑本栄太郎
<故郷鳥取の冬の日本海>
海鳴りの遠くに聞こえ榎枯る★★★
風垣の海鳴り聞ききつ薪積む★★★★
白波の怒涛となりぬ波の花★★★

●多田有花
窓の霜溶かして今朝は出発す★★★
霜柱崩しつ頂への道を★★★★
冬の山遠くに光る播磨灘★★★

●福田ひろし
群れ飛びてどこか隙あり冬鴉★★★★
冬の月胸の澱みも照らしけり★★★
牡蠣焼きの幟ばたばた横一列★★★

●佃 康水
 白内障手術で入院(3日間)
病床に手術待つ間や虎落笛★★★★
手術を待つ前の緊張と不安が高まるなか、耳に虎落笛が聞こえ、不安が一層募る。しかし、そこは俳句を作る者。虎落笛を耳に聞き留めることで、手術への覚悟ができる。手術の成功をお祈りします。(高橋正子)
   
今朝窓に初冠雪の連嶺かな★★★ 
冬ざれの海に燃え立つ日の出かな★★★

●小西 宏
落葉抱き逃げる子を追う鬼ごっこ★★★★
沈む陽が東の雲を染め寒し★★★
街の灯を別つ森影月冴ゆる★★★

12月5日(8名)
●古田敬二
ゆらゆらと女人高野の冬黄蝶★★★★
女人高野の室生寺へ歩を進めると、寒さの中に生まれたばかりのように、ゆらゆらと飛ぶ黄蝶に出会った。
黄蝶の可憐な魂が思われる。(高橋正子)

雨にぬれ女人高野に式部の実★★★
ローカル線行けば万葉で見し駅名★★★

●小口泰與
遠州の庭と御霊屋寒鴉★★★
小春日や八坂の塔の高々と★★★★
時雨るるや産寧坂の人の波★★★

●多田有花
出かけんとすればあがりし冬の雨★★★
干し物を冬の朝日の差す中へ★★★★
枝離れ落葉ひととき空を舞う★★★

●桑本栄太郎
冴え冴えと空の蒼さの小窓かな★★★
足裏の爆ぜて歩むや落葉道★★★
部活子の走り去りけり落葉道★★★★

●福田ひろし
若きとき訪ねし町は雪という★★★
しぐるるやバス待つ人の息白し★★★
夕時雨飛行機の灯の美しさ★★★★

●小西 宏
肩丸め日差し楽しき枯れ薄★★★
木の葉散り空に染みゆく欅かな★★★★
木枯らしや烏の声も愛おしく★★★

●下地鉄
手に余る薬の袋歳暮れる★★★
店々に赤の装飾クリスマス★★★
波頭現れて散り飛ぶ冬の海★★★★

●高橋秀之
冬の夜に一斉点灯光の道★★★★
自販機に入らぬ硬貨かじかむ手★★★
北風が選挙の幟をはためかす★★★

12月4日(10名)
●小口泰與
かの坂の七味と京の時雨かな★★★
片時雨産寧坂と二寧坂★★★
砂文字と傘の景色や寒雀★★★

●祝恵子
磨がかれし楽器に映る冬紅葉★★★★
ブラスバンドの金管楽器だろう。演奏に持ち出され、冬紅葉の近くに置くと、あるいは、演奏中かもしれないが、冬紅葉がきれいに映っている。意外なところに見つけた冬紅葉。磨かれた楽器と冬紅葉と取り合わせがいい。(高橋正子)

水鳥の水面の紅葉揺らしゆく★★★
インク字の友の絵手紙冬だより★★★

●桑本栄太郎
<大阪高槻~大山崎界隈>
真直ぐなる列のみどりや冬田晴れ★★★★
青空に残る紅葉や天王山★★★
<サントリー大山崎工場>
冬日さす光り輝く蒸留所★★★

●多田有花
初霜を残る紅葉の上に置く★★★
珍しき料理いろいろ小春かな★★★★
薄暗き中へ起きだす日短か★★★

●河野啓一
冬の雨水の面に揺れる梢かな★★★
散り終えて黄葉小さき丘となり★★★★
老妻と二人で見やる時雨かな★★★

●小西 宏
舞い募る木の葉に空の青遠し★★★★
池澄んで底に木の葉の色浮かぶ★★★
曲り行く欅落葉の濡れた道★★★

●黒谷光子
偶さかの出会いの湖辺冬温し★★★
旧交をあたたむ窓辺冬の湖★★★

焼べ足さる薪ストーブや食事処★★★★
薪ストーブの燃える炎に温まりながら食事をするのは、心から豊かになれる至福の時。燃え尽きないよう、薪が焼べ足されて至福の時間は続く。(高橋正子)

●高橋秀之
通り風が体にしみる冬の朝★★★
大空は冬色木の葉は風に舞う★★★★
冬の雨に濡れた靴下まず脱いで★★★

●古田敬二
小春日の香具山畝傍山旅にいる★★★★
かすかなる瀬音やもみじの谷深し★★★
停車ごと桜紅葉のローカル線★★★

●川名ますみ
紅葉散る小径の下に竹林★★★
手袋の手で鹿を描く幼子ら★★★★
動物園で鹿の絵を描いているのだろう。手が冷たいので、手袋をはめたまま絵を描く光景はほほえましい。幼い絵にも愛らしさが加わったことであろう。(高橋正子)

落葉はなやか篦鹿の去にし舎に★★★

12月3日(5名)

●小口泰與
御朱印の筆の走りや花八手★★★★
仏像の柔和なひとみ冬桜★★★
侘助やさざ波たてし池の鯉★★★

●古田敬二
鮮やかに紀伊の夕日に柿紅葉★★★
頂上へ霧昇り行く紅葉山★★★★
紅葉山を霧が覆うように、頂上へと昇ってゆく。ダイナミックな霧の動きだ。(高橋正子)

紀の川に鴨の陣見て旅を行く★★★

●河野啓一
四季移り早や霜月となりにけり★★★
青空に映えてくっきり冬紅葉★★★
冬帽子出して被って確かめる★★★★

●桑本栄太郎
朝日射す待降節の讃美かな★★★
綿虫の拠りどころなく浮かびけり★★★★
綿虫はふわふわと浮かんでいるが、その浮かぶ様子が、「拠りどころなく」なのだ。綿虫の虫とは思えないような実態をうまく表現している。季節の空気の感触が感じられる。(高橋正子)

門辺なる信楽たぬきや花八手★★★

●小西 宏
空青し池も明るし散紅葉★★★
北風に一人遊びの滑り台★★★
爺ちゃんのねんねこ退けて大きな目★★★★

12月2日(7名)

●小口泰與
寒雷や宝物殿の仏達★★★★
侘助や三千院の夕間暮れ★★★
あけぼのの秀つ枝に揺るる寒鴉★★★

●河野啓一
人の世はかくも早やきや十二月★★★
冬紅葉燃えて通りの名所かな★★★
球根を植えつけほっと師走来る★★★★

●多田有花
一夜にて銀杏黄葉の散り尽くし★★★
頂に立てば輝く冬の海★★★★
窓に差す午後の陽深く十二月★★★

●桑本栄太郎
冬紅葉直通電車の嵐山線★★★
ドア開きステップに銀杏落葉かな★★★
雨降れば室内(へや)の切干甘き香を★★★★

●下地鉄
負けて喫う紫煙に暮れる秋の空★★★
干し綱の揺れの寂しき秋の暮れ★★★

振り向けば枇榔葉騒ぐ里の秋★★★★
ざわざわ騒ぐ音に振り向けば、枇榔の葉が秋風に吹かれている。枇榔が風に吹かれる音に沖縄の里の秋が感じられる。(高橋正子)

●小西 宏
走る子も木の葉の音も初時雨★★★★
吹く風に落葉と遊ぶ保育園★★★
街飾る桜落葉の裏表★★★

●高橋秀之
冬空に太陽の光はおぼろげに★★★
遠くに見ゆ初冠雪の金剛山★★★★
1日は今年一番の寒波がやってきて、近畿地方で親しまれている。金剛山も初冠雪の姿が遠くから眺められた。以外にも早い初冠雪に、寒い日が思われる。(高橋正子)

目覚ましは北風が雨戸を叩く音★★★

12月1日(8名)

●小口泰與
白雲の淡海に定か冬の虹★★★
冬虹や景色ととのう鳰の海★★★★
辛崎を一閃せるや冬の虹★★★

●河野啓一
冬の滝流れて木の葉運びゆく★★★★
水仙のぐんと伸び出す庭の隅★★★
大小の落葉積むかな草多少★★★

●多田有花
冬紅葉里を包んで燃え立ちぬ★★★
山下りて炭火でいただく牡丹鍋★★★
木枯しに靴ひも結び歩き出す★★★★

●桑本栄太郎
哀しみの色となりけり冬紅葉★★★
枯芒ほほけ中洲の真白なる★★★★
早やばやと十一月の果てにけり★★★

●佃 康水
 広島市久保アグリファーム(牛牧場)
時雨るるや牧より仔山羊連れもどし★★★★
牧場も時雨れると寒々としてくる。濡れないよう、寒さにあわせないよう、仔山羊が連れ戻される。仔山羊は、牛に交じって飼われているものであろうが、飼い主の心優しさが伝わる。(高橋正子)

牧に積む飼葉豊かや冬半ば★★★
時雨来て牛の餌を食む鴉かな★★★

●高橋秀之
鉄塔を大きく跨ぎ冬の虹★★★★
冬の夜イルミネーションが煌々と★★★
葉が落ちて大きな幹が聳え立つ★★★

●福田ひろし
雨上がり桜落葉の赤きこと★★★
天国へ誘う如き冬日かな★★★

冬日さす迷える我の影薄し★★★★
「迷い」をテーマにした句で、難しい内容を実感を大切によく表現している。(高橋正子)

●小西 宏
落葉積む丘にビル街遥か見ゆ★★★
時雨来てリュックに小犬入れ帰る★★★
青空の美しきこと初しぐれ★★★★
晴れていると思うと急にはらはらと雨が降る。時雨はそんな雨だ。「初しぐれ」なればこそ、青空から降ってくる。こういった美しさは日本独特と思える。(高橋正子)


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