11月11日~20日

11月20日(4名)
小口泰與
雪浅間正面に見し今日小春★★★
利根川へ山風流す冬の松★★★
山風の里に住みけり神無月★★★
廣田洋一
バス停にざっと降りこむ時雨かな★★★
休耕の畑打ちたる時雨かな★★★
色紙を短冊にして目貼かな★★★
多田有花
月食を見る冬浅きベランダで★★★
月食の後の夜明けの冬満月
前日の夕方、月食で月の変容を見せてくれた満月は、夜明けを迎え、大事を為し終えたかのように、いっそう研ぎ澄まされた光を放っている。(高橋正子)
朝ごとに冬の紅葉の山仰ぐ★★★
桑本栄太郎
亀虫の張り付き逃げず冬めける★★★
少年の遠き想う龍の玉★★★
踏みしだく落葉通りやプラタナス★★★
11月19日(4名)
小口泰與
丹精の冬ばらに声かかりける★★★
山風に一糸纏わぬ枯木かな★★★
突堤に迫る波なみ冬鴎★★★
廣田洋一
返り咲く白き躑躅や紅ほのか★★★
薬局の庭に咲きたる返り花★★★
宅配便受け取る朝小春かな★★★
桑本栄太郎
綿虫の想い出淡く浮かびけり★★★
小春日や天のきらめきヘリコプター★★★
月食の東寺にかかる冬の月★★★★
きのうは夕方6時過ぎに部分月食が見られた。研ぎ澄まされた月の光が欠けて、東寺の空にかかっている。冬月の月食と東寺と取り合わされることで、
古典的、神秘的な夜空となってた。(髙橋正子)
多田有花
レンジ出る緑鮮やかブロッコリ★★★
見上げれば日差しを透かす冬紅葉★★★
開山堂冬の紅葉に取り巻かれ★★★
11月18日(4名)
廣田洋一
ラリー続くテニスコートの小春かな★★★
小春日や地元の野菜売られをり★★★
帰り花思はず声をかけにけり★★★
小口泰與
語部の宿の女将や囲炉裏端★★★
夕映えの石蕗の私語風の私語★★★
大根干す風瞭かに赤城より★★★★
たくあん漬けなどにするために、大根を振り分けにして竿に吊るしたり、縄で編んで吊るししんなりするまで風に当てるのが大根干し。大根を干すには、風が肝心。赤城山からの風が瞭らかに吹いてきている。赤城颪への恃みは先祖代々から。(髙橋正子)
多田有花
冬菜畑紋白蝶の集いおり★★★
鯖缶の水煮を加え煮大根★★★
枯れてこそ光を放つ尾花かな(原句)
「こそ」は、理屈が勝ってるように感じます。
枯れてより光放てる尾花かな★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
点滅の代わる信号冬紅葉★★★★
とんからり二段の音や木の実落つ★★★
綿虫や去年(こぞ)の記憶の戻りしか★★★
11月17日(4名)
小口泰與
山裾の蒼茫とあり冬の草★★★
麦蒔や長きすそ野に安らぎぬ★★★
冬立や神樹の影を砂利に踏む★★★
多田有花
どの家の南天の実も色づいて★★★
からすうり木守のごとく枝にあり★★★
裸木となりて古巣のあきらかに★★★★
桑本栄太郎
吹きさらす風に赤きや真弓の実★★★
誰も居ぬ池を巡るや蘆枯るる★★★
吹き溜まる木の実踏みつつ散歩かな(原句)
「散歩」に工夫がいります。
吹き溜まる木の実踏むなり歩く音★★★★(正子添削)
この季節、木の実がたくさん降っているのを私も目の当たりにしている。踏むと木の実が乾いているのか、歩くたび、踏むたびにパリッと音を立てる。それが、自分が歩くという行為の音。(髙橋正子)
11月16日(4名)
小口泰與
印伝の鼻緒の草履今日小春 ★★★
里住みの風の上州神無月★★★
おやみなき風や上州冬の山★★★
 廣田洋一
老いてなほ高みを目指す帰り花★★★
咲くほどにはかなげな色返り花★★★
小春日にもつれ合ひたる蝶二頭 ★★★
多田有花
初冬の山は日毎に色を変え ★★★
紅の山茶花一輪角曲がる ★★★
売物件の幟ありけり実南天 ★★★
桑本栄太郎
綿虫の今年も想い出持ちしかな ★★★
冬蜂のよるべ無き身を歩みけり (原句)
「身を歩み」の「を」が文法的に不自然です。
冬蜂のよるべ無き身の歩みけり★★★(正子添削)
村上鬼城の「冬蜂の死にどろこなく歩きけり」の句が先行してしまいますね。
山茶花の高き垣根や山の里★★★
11月15日(4名)
小口泰與
沼の上深き蒼空番鴛鴦★★★
山風によたよた舞うや冬の蝶★★★
枯菊や山風私語を奪ひける★★★
廣田洋一
小春日や土手に座りて暇つぶし(原句)
「暇つぶし」が、常套的な言葉なので、俳句の言葉としては、やや問題があります。
小春日や土手に座りて暇ありぬ★★★★(正子添削)
小春日に土手に座ってみる。普段忙しくしている身だからこそ、小春日の温かい日差しに「暇」を感じる。「暇」という表しにくいことをよく詠んでいる。(髙橋正子)
小春日や二人は無事に旅立ちぬ★★★
空き家にも返り咲きたるつつじかな★★★
多田有花
枯すすき後ろは遠き淡路島★★★
冬紅葉やさしき色もありにけり★★★
続々と開くよここの山茶花は★★★
桑本栄太郎
ベランダに紅の溢れや冬の薔薇(原句)
ベランダに紅の溢るや冬の薔薇★★★★(正子添削)
山茶花の白にうす紅混じりけり★★★
双葉菜の畝の筋目やどこまでも★★★
11月14日(4名)
廣田洋一
小春日和鉢から鉢へ蜆蝶★★★
風に乗り吾が庭染める落葉かな★★★
銀杏落葉キャンパスの道埋め尽くし★★★★
小口泰與
火の匂う焼芋割るや屏風岩★★★★
屏風岩は切り立った岩で、風よけにもなるような場所であろうか。「火の匂う」焼き芋があつあつで美味しそう。「火の匂う」が何よりもリアルなのがいい。(高橋正子)
滔滔の利根の川原や三十三才★★★
寒月と一番星と見合いせり★★★
多田有花
午後の陽が海はや光らせ日短か★★★★
小春空横切っていくヘリコプター★★★
青空になお赤々と冬紅葉★★★
桑本栄太郎
生垣の香りつづくや金木犀★★★
落葉松の大木凛と黄葉せる★★★★
あおぞらを見上げ銀杏の黄葉かな★★★
11月13日(4名)
小口泰與
おやみなき枯葉の音や夕明かり★★★★
遥かなる歳月過ぎし石蕗の花★★★
とも綱へとまりし鳥や散黄葉★★★
廣田洋一
冬構へ終えたる庭に客招く★★★
藁筵日に乾かして冬囲い★★★
薪積みて消火器備へ冬構★★★★
薪を積むだけでなく、消化器を備えて冬への準備が整った。用意周到の冬構えに、災害と隣り合わせの現代の生活の有り様を考えさせられる。(髙橋正子)
桑本栄太郎
小春日や土塀崩るる山の里★★★
嶺上の雲の茜や冬の宵★★★
山里の早も灯点り冬めける★★★★
多田有花
冬の蝶日差しに翅を広げおり★★★
庭石の出自はいずこ石蕗の花★★★
石蕗咲いて日向へ差し出す黄色かな★★★★
11月12日(4名)
小口泰與
炉明りに眉雪集いし大広間★★★
山風に鳶の輪二つ花八手★★★
白鳥を待つ大沼の静けさよ★★★★
多田有花
遠く見ゆ嘴広鴨と思いけり★★★
白壁が囲みし庭や石蕗の花★★★★
大鷺の群れて立つなり冬の川★★★
桑本栄太郎
冬ざれや赤き実集うピラカンサ★★★
穭穂の刈り取る頃となりぬべし★★★
水禽の水脈きらめくや今着水★★★★
廣田洋一
並木道見通し良きや冬構★★★★
並木道がまっすぐ通っている。見通しのよさに、さっぱりとした冬構の様子が知れる。気持ちの良い句だ。(髙橋正子)
破れたる障子直せし風の夜★★★
幸運を掻き寄せたきや酉の市★★★
11月11日(4名)
廣田洋一
冬構へ縄を垂らして寺の庭★★★
町中を電飾照らし冬構★★★
納屋の前薪積み上げて冬構★★★
多田有花
木枯しや沖の島まで吹いてゆく★★★
夕陽鮮やか木枯しの去りし後(原句)
句の趣向はいいです。5-7-5にまとめると、下のようになります。これをもとに、力強さやリズム感を工夫なさってください。
木枯らしの去りて夕陽の鮮やかに★★★★(正子添削)
(髙橋正子)
冬の菊群れ咲くところ日差しあり★★★
小口泰與
山巓の冬綺羅星や文机(原句)
句の趣向は★4つですが、文机が取って付けたことなって、句意が通らないのが残念です。(髙橋正子)
山巓の冬綺羅星を文机(ふづくえ)に★★★★(正子添削)
「山巓の冬綺羅星を文机にひき寄せて見る。」の句意にしました。
夕暮の眉雪集まる囲炉裏かな★★★
天窓へ朝日集めし冬の梅★★★
桑本栄太郎
二連とてベランダ明りや柿すだれ(原句)
「とて」が理屈です。ズバリ言うのがいいので、無い方が良いと思います。(髙橋正子)
ベランダの明かりや二連の柿すだれ★★★★(正子添削)
ベランダに干柿が二連吊るしてある。二連だけれど、たくさんの柿すだれ同様、ベランダが明るくなった。市民の簡素な生活が明るく詠まれている。(髙橋正子)
吹きさらす天の息吹や木の葉舞う★★★
木々の枝の色濃くなりぬ冬もみじ★★★

コメント

  1. 廣田洋一
    2021年11月17日 9:38

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    11月15日の「小春日や土手に座りて暇つぶし」を「小春日や土手に座りて暇ありぬ」と添削して頂き、大変有難う御座います。お陰様で、格調高くなりました。今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  2. 小口泰與
    2021年11月17日 10:19

    御礼
    高橋正子先生
    11月11日の投句「冬綺羅星」の句を添削して頂き、句意かはっきり致しました。有難う御座います。
    今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。

  3. 小口泰與
    2021年11月17日 10:23

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    11月14日の投句「焼芋」の句を今日の秀句にお取り上げ頂き、そのうえ、正子先生には素晴らしい句評をいただき有難うございました。
    今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。

  4. 多田有花
    2021年11月19日 19:12

    お礼
    正子先生
    「枯れてこそ光を放つ尾花かな」を
    「枯れてより光放てる尾花かな」に添削いただきありがとうございます。
    理屈が勝っているというお言葉、こうして添削いただくと、確かに、と感じました。
    俳句は詩ということがあらためてよくわかりました。