11月10日(3名)
小口泰與
遠山は翠微や庭の散紅葉★★★
薪小屋は満杯なりし神の留守★★★★
一生を駄菓子と歩む石蕗の花★★★
廣田洋一
紅葉散る川の流れに変わりなし★★★
川もをば錦に染めし散紅葉★★★
子ら帰り砂場の山に紅葉散る★★★★
桑本栄太郎
新調のガステーブルや冬構え★★★★
温かいものが恋しく有り難い冬。その冬に備えて、ガステーブルを新調した。ガスの炎もきれいに勢いよくあがり、うれしい。なんでも新しいものというのは、いいものだ。楽しい冬が迎えられそうだ。(高橋正子)
初冬の日差し眩しき車窓かな★★★
パレードの皇居前なり冬日燦★★★
11月9日(4名)
小口泰與
草紅葉岸辺にボート積まれける★★★
白樺へ降りくる霧の音したり★★★★
白樺へ降る霧に音がする。鋭敏な耳が捉えた音なのだが、逆を言えば、それほどに霧の降る音が激しいこととも言える。白樺と霧の取り合わせが写真のようで、美しい。(高橋正子)
沼風に枯木となりし白樺よ★★★
桑本栄太郎
スキップのボニーテールや冬ぬくし★★★
巣に掛かる落葉掃いぬ女郎蜘蛛★★★
新しきガステーブルや冬構え★★★★
廣田洋一
青空に白雲浮かび実南天★★★
冬の蝶急ぎ飛び去る梢かな★★★
木瓜の実の少し歪みて道草庵★★★★
道草庵は新宿の漱石公園にある。そこの木瓜の実。少しいびつな木瓜の実に、文人趣味の風雅な色と形がある。(高橋正子)
多田有花
<西本願寺三句>
本願寺陽ははや斜めに末の秋★★★
菊香る西本願寺境内に★★★★
丹精の末の大菊並びおり★★★
11月8日(4名)
小口泰與
雨の中杉の大樹に蔦紅葉★★★★
暁の山紫紺に染まり梅擬★★★
秋ばらが見事ですねと声かかる★★★
廣田洋一
冬来るきつぱりととは言ひ難し★★★
立冬の空青々と柚子光る★★★★
立冬や宅配便の酒届く★★★
桑本栄太郎
何気なく両手擦りぬ今朝の冬★★★
もくれんの冬芽控える葉陰かな★★★
足もとの冷えの早くも京の夜★★★★
多田有花
トラットリアへ細き階段秋うらら★★★
パスタランチ芋のスープのまろやかに★★★
飛行機雲秋天をゆく本願寺★★★★
本願寺の広大な境内があって、その上の広い秋天。飛行機雲も大きくのびやかに描かれる。飛行機と寺。異質なようで、有りうる景色。(高橋正子)
11月7日(4名)
小口泰與
山からの強き冷気や梅擬★★★★
山から冷気が下りてくる。山国に冬が間近。梅擬の実がつやつやと冷気に磨かれるように光っている。山からの冷気と梅擬の取り合わせ。その両方の引き合う力に冬の厳しさが予感される。(高橋正子)
山風に耐ふる石仏竹の春★★★
すすめられ生姜の湯をば飲みにけり★★★
廣田洋一
南国の旅から帰り秋惜しむ★★★
思ひ出の写真を見つつ秋惜しむ★★★
並木の枝切り払われて秋深し★★★★
桑本栄太郎
土手道の夕日透き居り草紅葉(原句)
土手道に夕日透き居り草黄葉★★★★(正子添削)
暮れなずむ今日の一日や秋惜しむ★★★
こもれ灯となりて厨に花八手★★★★
多田有花
<二条城三句>
金屏風立て秋深き二条城★★★
秋水を満たせる二条城の堀★★★★
澄む秋の門とお庭を巡りけり★★★
11月6日(4名)
小口泰與
磴道を風に煽らる銀杏の実★★★★
雨音のそれぞれの音柿紅葉★★★
霧襖認知機能の検査かな★★★
廣田洋一
山の端に薄化粧せる初紅葉★★★
街角の桜紅葉の進まざる★★★★
街角の日々通るところの桜紅葉。日ごと紅葉がすすむのを楽しみにするが、なかなか進まない。山間部のように昼夜の気温差もさほどなく、街中の暮らしも平穏さと相俟っている気もする。これも確かな事実。(高橋正子)
紅葉狩り旅の誘ひの重なれり★★★
多田有花
<京都御所三句>
快晴の御池庭より紅葉初む★★★★
京都御所が一般公開され、大勢の観光客をたのしませている。折も秋晴れの良い季節。平安時代を忍ばせる御所のなかの御御池庭から紅葉し始めたのも風雅。(高橋正子)
秋晴の御常御殿と御内庭★★★
瓦みな菊の御紋や秋うらら★★★
桑本栄太郎
錦木の葉裏透き居る照葉かな★★★★
たそがれの釣瓶落としや買物に★★★
光陰の斯くも短き秋入日★★★
11月5日(4名)
小口泰與
おちこちへ木の実時雨や鳥の声★★★★
渦巻きし利根の瀞場やななかまど★★★
どんぐりのぷちぷち踏まれ痛かろう★★★
廣田洋一
鳥の声遠ざかりゆく神渡★★★★
「神渡」は陰暦10月ごろの西風。神々を出雲へお連れする風で、船用語と言われる。神渡が吹いて、鳥たちを神々とともに遠くへ連れ去ったのであろう。鳥の声が遠ざかってゆく。見えない神々の姿を鳥たちの声のまにまに重ねて想像するのも、面白いかもしれない。(高橋正子)
天文台白く光れる神渡★★★
荒畑の草のひれ伏し神渡★★★
多田有花
<京都御所三句>
澄む秋の御苑の門をくぐりけり★★★
天高く朱塗りの門と紫宸殿★★★
清秋や青鷺来る御池庭★★★
桑本栄太郎
ベランダの日を占め干すや秋日向★★★
道草の小径に在りぬ木の実かな★★★
天空の青に沈めり昼の月★★★★
11月4日(3名)
小口泰與
残照の岸辺烏と柿紅葉★★★
浅間嶺へ日の退くや夕化粧★★★
新松子村へ隧道開通す★★★★
村へ隧道が通り、村の人たちは生活が便利になり、明るい気持ちになっている。新松子の緑が新鮮で、「隧道の開通を寿いでいるかのように、印象に残る。(高橋正子)
多田有花
<京都アクアリーナ>
花いっぱいリンクに現る冬隣★★★
<ホテルインターゲート京都>
湯あがりにぶぶ漬け食べる京の秋★★★
筒抜けの秋空戴く京都御所★★★★
桑本栄太郎
秋うららスキップ走りの少女かな★★★
木枯の一番来たる冬隣★★★
ひつそりと雲と見まごう昼の月★★★
11月3日(3名)
小口泰與
夕紅葉天を支える奇岩かな★★★
小犬はや厚き装い冬隣★★★
白玉の落ちる刹那や雨後の菊★★★
多田有花
<京都文化博物館・ミュシャ展>
秋深き京都やミュシャのリトグラフ★★★
<旧日本銀行京都支店>
秋夕日煉瓦造を照らしおり★★★
<京都アクアリーナ>
人波についていくなり秋の暮★★★
桑本栄太郎
姫と云うゑのころ草や金の穂に★★★
匂いよき京の香りや藤袴★★★
英語試験の延期と聞くや文化の日★★★
11月2日(3名)
小口泰與
トーストの匂いや里の柿の路地★★★★
秋風やゲートボールに一人来ず★★★
見晴るかすコキア紅葉の丘の道★★★
桑本栄太郎
仰ぎ見る空の青さや銀杏黄葉★★★★
溝川の水の流れや天高し★★★
穭田のひつじ穂垂るる稔りかな★★★
多田有花
身に入みて首里城焼失を聞けり★★★
秋深しレンジでアーモンドバター餅★★★
森ゆけば木の実落つ音またひとつ★★★★
秋の森は、しんとして、耳敏くなる。歩めば、木の実が落ちる音に会う。やがて、またひとつ。木の実の落ちる音と、森の静寂。秋の深まりに人も心深む気がする。(高橋正子)
11月1日(3名)
小口泰與
湖へ夕日染み入る照葉かな★★★
しめやかな雨に鶏頭燃ゆるかな★★★★
溶岩原の桑の楉や赤とんぼ★★★
廣田洋一
秋の海釣り糸垂らす浅瀬かな★★★★
椋鳥や餌を載せたる手に群れし★★★
ハロウィンや二匹踊れるゴジラかな★★★
桑本栄太郎
朝寒やメモリー深くトースター★★★★
朝の寒さを覚えるようになった。朝食のトーストを温かくして、こんがりとよく焼いて食べたい。焼き加減のメモリーを時間を長くした。温かいものがうれしい朝の寒さだ。気負わず詠んだのが、軽い朝食とぴったりとしている。(高橋正子)
”身の丈”と言うは辞任へ秋寒し★★★
何はともあれ駆けつけのぬくめ酒★★★
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