10月11日~20日

10月20日(3名)
廣田洋一
青空に白く伸びたる十月桜★★★★
白躑躅はかなげに咲く暮の秋★★★
雨空にバス待つ人や暮の秋★★★
桑本栄太郎
青空の遥か彼方や野分吹く★★★
山茱萸の実の緋色なる葉蔭かな★★★
黄落のしきりに舞いぬ今朝の風★★★★
多田有花
英霊碑高し秋天はさらに★★★★
刈り残す田の半分にひつじの穂★★★
花しゅくしゃ朝日夕陽を受けて咲く★★★★
「花しゅくしゃ」は「花ジンジャー」とも呼ばれる。朝日と夕陽が差すところ、つまり、斜めの日を受けて咲く花が、朝はさわやかに、夕べは、しずかな佇まいとなるのがゆかしい。(髙橋正子)
10月19日(4名)
小口泰與
夕映えの一樹や椋鳥の姦しき★★★
山峡の没日早きや吾亦紅★★★
猪やスキール音の響きける★★★
廣田洋一
朝鵙の声筒抜けに露天風呂★★★★
鎌倉の寺を巡りて暮の秋★★★
四年振りの総選挙なり暮の秋★★★
多田有花
泡立草日々刻々と黄の変化★★★
たんぽぽの綿毛に秋の陽がきらきら★★★★
たんぽぽの丸い絮毛に秋の陽が集まってきらきらとしている。野原の真ん中にに、秋の陽の明るさが集まって童画のような世界を見せている。(髙橋正子)
道標の地蔵に菊の供えられ★★★
桑本栄太郎
紅葉初む並木通りやバスが行く★★★
西山の嶺のうねりや刈田晴れ★★★
野辺道を行けば果て居り秋の蜂(原句)
野辺道を行けば果てけり秋の峰★★★★(正子添削)
10月18日(4名)
小口泰與
と言いて鹿を射止めし猟師かな
鵙鳴くや浅間へ雲の翔りよる★★★
鳶高音二人のボート木陰へと★★★
廣田洋一
独り居の当てはお新香温め酒★★★
箪笥よりベストを出しぬ暮の秋★★★
マンションの窓の光りて鵙日和★★★★
桑本栄太郎
ベランダのコキア色づく朝かな★★★
整然と畝の並びて大根蒔く★★★★
大根を蒔く畑に畝が整然と作られて、畑の上に広がる冷涼な空気感がつたわってくる。(髙橋正子)
稜線のくつきりうねる刈田晴れ★★★
多田有花
今朝晴れて長き芙蓉の花期終わる★★★
朝日さす家並みの影ひつじ田に★★★★
晩秋や雨あがり風強くなる★★★
10月17日(4名)
小口泰與
忽然と怯ゆる犬や秋の鷹★★★
松虫や鉄瓶早も沸騰す★★★★
松虫の声にもわびしさが増すころ、鉄瓶で湯を沸かすと、意外にも早く湯が沸騰する。これは、最近私も経験したことだが、薬缶をガス火に掛けコーヒー用に湯を沸かそうとすると、意外にも早く沸く。これはなんなんだろうか。(髙橋正子)
蓑虫や風のあわいに鳴きにける★★★
廣田洋一
新築の木目鮮やか暮の秋★★★
プランターの隙間だらけや暮の秋★★★
足腰のストレッチ終へ温め酒★★★
多田有花
晩秋の畑に丸茄子の光る★★★★
続く秋晴れ山法師の実が熟れ★★★
一軒に一本柿のある集落★★★
桑本栄太郎
風音のガラス戸越しに秋寒し★★★
田道行く吾に微笑む野菊かな★★★★
葉の一葉落つや日暮れの柿紅葉★★★
10月16日(4名)
小口泰與
山はまだ黒雲の居り温め酒★★★
奔走な木通の揺れや山の径★★★
山を越え雲流れ行く信濃柿★★★
廣田洋一
新築の家に住人暮の秋★★★
ようやくに人出増えたり暮の秋★★★
朝風呂の眠気を覚ます鵙の声★★★
多田有花
秋の昼オートミールへ梅干しを★★★
刈り終えて清掃さるる稲刈機★★★
庭先に小さきコキアの紅葉あり★★★★
身近に紅葉を見つけたうれしさ。庭さきの小さいコキアが紅葉している。コキアは今は景観のために公園に広く植えらているが、昭和の時代には、帚木と言われて庭に数本あった記憶がある。(髙橋正子)
桑本栄太郎
老犬の哀れ散歩や秋の冷え★★★
鵙猛る村の外れや屋敷森★★★
白壁の甍きらめき柿熟るる★★★
10月15日(4名)
小口泰與
岩越ゆる泡沫の水露寒し★★★
迸る岩打つ水や冷まじき★★★
夕さりの刈田へ吾の影長き★★★
廣田洋一
朝日中高々通る鵙の声★★★★
鵙鳴きて姿は見えぬ栗林★★★
休耕の畑静まり暮の秋★★★
多田有花
ひつじ雲総べるは天の羊飼い★★★
朝寒の日向にしばし佇みぬ★★★
絆創膏ゆっくりはがす夜寒かな★★★
桑本栄太郎
穭田のひつじ穂確と稔りけり★★★★
稲を刈り取ったあと、刈り後の株から緑の葉が出て、稲穂をつけることがある。その稲穂がたしかに稔り、色づいている。稲の生命の力強さをひしと思わずにおれない。(髙橋正子)
朝日差す畦の明かりや泡立草★★★
草むらを色どり密に赤のまま★★★
10月14日(3名)
多田有花
少しずつ枯れを宿して芙蓉の実★★★
沈みゆく陽の色からすうりの色★★★★
ひいやりとジャズの調べの落ち着きぬ★★★
小口泰與
トラックに鰯雲積み峠道★★★★
秋風や猿は野畑に出没す★★★
紅葉や赤城小沼は空の色★★★
桑本栄太郎
公園のコキア色づく秋日かな★★★★
コキアは帚木のこと。秋が深まると紅葉してくる。公園にはたくさん植えられ、一面赤く染まる。秋の日をそのまま受けて紅葉したかのようだ。(髙橋正子)
稜線の黒きうねりや秋の宵★★★
身に入むや向かいの棟に赤子泣く★★★
10月13日(4名)
小口泰與
蒼空へ皿投げ祈願渡り鳥★★★★
秋風や峠のパンク如何にせむ★★★
老犬のかすかな息や秋の暮★★★
廣田洋一
食前の一風呂浴びて温め酒★★★
差しつ差されつ話の弾む温め酒★★★
ぐい吞みは友の手作り温め酒★★★
多田有花
主なき廃屋なれど柿たわわ★★★
鵯やぼさぼさ頭で木を巡る★★★★
荻原や畑に降りる道は消え★★★
桑本栄太郎
黄落や掃かれた後もつづき居り(原句)
黄落や掃かれし後もつづき居り★★★★(正子添削)
ここは境内であろうか。銀杏の黄葉を掃いたあと、きれいにさっぱりしたところに、また黄葉が降り落ちる。黄落の期間はまだまだ続く。(髙橋正子)
合歓の実や乾ぶる莢の白きこと★★★
山茱萸の実の紅ひそむ葉蔭かな★★★

10月12日(4名)
小口泰與
そよ風やわけても菊の夕景色★★★
単線を襲う狼藉蔦かずら★★★
わだかまる桑を括るや風の道★★★
廣田洋一
添水鳴る音の間合ひや茶を啜る★★★
柿の実や順番待ちの鳥の群★★★
柿の実の照り返したる朝日かな★★★★
朝日に照り映える「柿の実」よりも、柿の実に照り返す「朝日」に焦点が当てられた句。きらきらと眩しい朝日は、秋の日を凝縮し、象徴している。(髙橋正子)
多田有花
陽を透かす高き小枝の蔦紅葉★★★
コスモスに朝の光のあたり初め★★★★
柿の実と同じ色なり柿紅葉★★★
桑本栄太郎
<孫の幼稚園の運動会参観>
園児らの綱を曳き居り運動会★★★
法被着る園児ら踊るソーラン節★★★
公園のコキヤ色づく秋日かな★★★
10月11日(4名)
小口泰與
庭の辺や鴉と競う葡萄棚★★★
日の匂う秋茄子貰うひと日かな★★★
風の無き稲の滴に朝日かな★★★★
廣田洋一
朝食は甘き金色林檎剥く★★★
仏壇に供へし林檎「世界一」★★★
津軽富士近くに望み林檎捥ぐ★★★★
桑本栄太郎
<新幹線の秋の旅>
六甲の稜線眩し秋の峰★★★
秋日さすビルの遥かに姫路城★★★
岡山の桃太郎線とや秋の旅★★★
多田有花
廃屋に背高泡立草の高し★★★
鵙猛る全身に朝の光浴び★★★★
鵙の鳴き声は鋭い。空気を切るように猛り鳴く鵙が朝の光を全身に浴びて、鋭さも増す。鵙には光が似合う。(髙橋正子)
晩秋やグリーンカレーを夕食に★★★

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