1月31日(6名)
●多田有花
<千苅ダム放水>
寒の水ごうごうと我が眼前に★★★
<大岩岳登山二句>
春近き北摂の頂に立つ★★★
春隣る頂に茶をたてにけり★★★★
●谷口博望(満天星)
繊月に寄り添う星や冬夕焼★★★★
冬天や消失したる樗の実★★★
凍雲や干潟へ上る番鴨★★★
●小口泰與
有明のおとろう星や鶏つるむ★★★
句会済み外に出づるや日脚伸ぶ★★★★
夕暮のおとろう利根川(とね)や枯尾花★★★
●廣田洋一
鬼やらいやられっぷりの練習す★★★★
鬼やらいの鬼役は、役者とも言えて、やられっぷりが見せ所。練習の甲斐あって、楽しい鬼やらいとなること間違いなし。(高橋正子)
春を待ちきれず咲きたる花の有り★★★
明日もまた入試を受けて春を待つ★★★
●桑本栄太郎
雨雲の追いかけ行くや冬の虹★★★
雲途切れあおぞら覗く春隣り★★★
山すその田面のけぶる野焼かな★★★★
1月30日(6名)
●谷口博望(満天星)
万両の日向に立ちてビデオかな★★★
万両やゆるゆる泳ぐ池の鯉★★★
万両や道案内の尉鶲★★★★
●小口泰與
一筋の入日差しけり小白鳥★★★★
入日差す河やスワンの翔りける★★★
白鳥の羽霧り翔ける落暉かな★★★
●多田有花
新しきピークに座り春を待つ★★★
ぱっぱっと日ごと春待つ梅開く★★★★
梅が開くのを「ぱっぱっと」とは、歯切れよく、梅の清潔感につながる。日ごとに梅が白い花を全開にする。春は「日ごと」近づくのだ。(高橋正子)
春近し川波きらきらと光る★★★
●河野啓一
うす暗き狭庭の奥の水仙花★★★
隣屋の白うつくしき雪の庭★★★★
雪の色白く輝きとなり屋に★★★
●廣田洋一
春隣桜便りの届きけり★★★★
冬日和梅に椿に桜とは★★★
春節の踊り華やか春隣★★★
●桑本栄太郎
寒暁の仄と茜やビルの壁★★★★
部活子の雄叫び上ぐる春隣り★★★
寒晴の峰の白きや鞍馬山★★★
1月29日(5名)
●谷口博望(満天星)
浮島や春を待つなり鷺と亀★★★★
ひつそりと厠のそばの寒文目★★★
囲はれて遊女の二人冬牡丹★★★
●多田有花
大霜のなかをゆっくり車の列★★★
紅梅に寒青空のまぶしさよ★★★
掌のひまわりの種に来る寒禽★★★★
手のひらに小鳥が来て、驚くような嬉しさ。警戒心を解いた寒禽が可愛いい。もちろん、作者も。(高橋正子)
●廣田洋一
二股に割れし大根掘り出しぬ★★★
パック詰め鰤大根の売られけり★★★
日を浴びて紅梅開く植木鉢★★★★
●小口泰與
群の中エヘン顔なる大白鳥★★★
パン屑を競う白鳥入日かな★★★★
遅れたる白鳥一羽こうと啼く★★★
●桑本栄太郎
冬萌の稲株白き田面かな★★★
もくれんの雨に潤う冬芽どち★★★
枝先の赤き滲みや寒の雨★★★★
1月28日(6名)
●多田有花
マルビルの向こうに寒の朝日さす★★★★
真っ暗な空から雪の降ってくる★★★
コートにもベンチにも小さな霰★★★
●小口泰與
震動におづる小犬や雪起し★★★
寒鯉や白極まりし浅間山★★★★
初七日の友の遺影や花八つ手★★★
●廣田洋一
春節の旅人迎へ春間近★★★★
いそいそと旅支度する春近し★★★
用水路水量増えて春近し★★★
●満天星
うろうろとカメラ片手に梅見人★★★
探梅や鶲出てきてポーズとり★★★
白梅の蜜きらきらと蕊の奥★★★★
●桑本栄太郎
橡の芽のぬめり輝く冬芽かな★★★
ぽつこりと父を背中に掘火燵★★★
十能の燠を掻き混ぜ堀火燵★★★★
懐かしい風景だ。昔はどこの家庭にも「堀火燵」があって、そこが家庭団欒の場であった。(高橋信之)
●上島祥子
寒の朝雀の声の澄み渡る★★★
飼い猫の定位置となるファンヒータ★★★
カラフルなウィンドブレーカー持久走★★★★
「持久走」は70%ぐらいの力で5~30分間走ることであるが、学校現場では全力で走り競争を伴う
長距離走と混同されていることが多い。長い距離を走ることは文科省の学習指導要領(小学校)
では長距離走ではなく持久走として扱うこととしている。日本の小・中・高等学校ではしばしば
持久走大会(もしくはマラソン大会)が行われる。私は、小・中・高を通じて、最も得意な競技
は、持久走(マラソン)であった。(高橋信之)
1月27日(6名)
●多田有花
鴨浮かぶ斑鳩の里の池の朝★★★★
敬礼し車掌交代寒の朝★★★
六甲の山を煙らせ朝時雨★★★
●小口泰與
群雀枯野を囃し忽と翔つ★★★★
蕭条とした枯野が雀の群れに一頻りにぎやかに囃されていた。と、思うと、雀らは忽然と飛び立って、枯野はもとの寂しい枯野に。稲雀とはまた違う雰囲気だ。(高橋正子)
蒼天の銀杏並木や冬の禽★★★
心友の遺景の瞳冬菫★★★
●満天星
蠟梅や今年も主見ぬままに★★★★
曲り角蠟梅ほのと香りけり★★★
蠟梅や匂ひを放つ金の鈴★★★
●桑本栄太郎
探梅や日射しに近き丘の上★★★★
丘は太陽の日射しに近い。見晴らしもよく、暖かいところとなり、梅の花もまずこんなところから開く。
探梅のころの日射しの明るさが嬉しい。
「日射しに近い」の表現に一瞬、戸惑ったが、「日射しに近い頭から帽子を冠り日射病を防ぐ」という例にあたった。(高橋正子)
寒禽の小枝に潜む日射しかな★★★
白きもの峡にありけり寒の晴★★★
●廣田洋一
初句会折句を詠めど気付かれず★★★
初句会病持つ人多かりき★★★★
二次会はカラオケとなる初句会★★★
上島祥子
雪嶺の厳しさ吸い込む県境★★★
剥き出しの枝の先には冬の空★★★★
悴んだ手に靴紐のもどかしさ★★★
1月26日(5名)
●谷口博望(満天星)
雪景色行商の母まなうらに★★★★
いい句だ。風景がいいのだ。生活感がいいのだ。(高橋信之)
風花や観音様は母の顔★★★
風花や青桐の莢ざわめける★★★
●多田有花
山路ゆくあまたしずりを受けながら★★★★
駐車場に溶け残りたる雪だるま★★★
寒中の残雪踏んで山の道★★★
●小口泰與
長く伸ぶ飛行機雲の四温かな★★★
白鳥の毛衣に嘴をつつみける★★★
葉牡丹や富士山(ふじ)を見つけし園児達★★★★
季題の「葉牡丹」がいい。いい発見だ。大きな風景を引き締めている。(高橋信之)
●廣田洋一
週末は鋤焼き鍋の独り酒★★★
煮凝りや独り暮らしの残り物★★★★
鍋焼きの湯気に落ち着く昼の席★★★
●桑本栄太郎
冬ざれの農場跡の盛土かな★★★
冬の野や盛土を急ぐブルドーザー★★★
延々とコンテナ貨車や大枯野★★★★
私の好きな句だ。下五の季題「大枯野」がいい。その実感が読み手に伝わってくる。(高橋信之)
1月25日(5名)
●多田有花
<松尾山登山三句>
松尾寺厄除け願い寒詣★★★
春日山若草山も寒しぐれ★★★★
生駒山しぐれの雲に隠れたり★★★
●小口泰與
ほぐるるや紅をふふめる冬桜★★★
登校の始業のベルや霜柱★★★★
寒鯉の当りかすかや禽の声★★★
●廣田洋一
早梅や一輪咲きて勇みおり★★★
寒梅や二輪並びて人迎え★★★
寒梅を見に行く先に産土神★★★★
●谷口博望(満天星)
橋の名は雲霓(うんげい)橋や風花す★★★
イブ像へ風花一つ溶けにけり★★★★
麗しき観音様へ風花す★★★
●桑本栄太郎
寒晴の日射し眩しきバスの窓★★★★
特に珍しい風景ではないが、作者の実感が読み手に伝わってくる。私の好きな、いい句だ。(高橋信之)
送電線少し垂れいて山眠る★★★
冬ざるる農場跡の盛土かな★★★
1月24日(5名)
●多田有花
<法隆寺から松尾山登山三句>
法隆寺伽藍を抜けて寒の山★★★
振り向けば五重塔の春を待つ★★★★
軒先にしぐれを避けし松尾寺★★★
●小口泰與
瞬刻の東の空や冬の暁★★★
白雲の千切れし里の枯木立★★★★
大器開けて待ちけり大白鳥★★★
●谷口博望 (満天星)
探梅のリュックサックに電子辞書★★★★
冬桜ボルゾイ犬の細面★★★
残生のはらから遠き雪景色★★★
●廣田洋一
外つ国のお客もてなす敷松葉★★★★
寒肥や庭の枯葉を鋤き込めり★★★
白き粒溝に撒きける寒肥かな★★★
●桑本栄太郎
厳寒の早やも剪らるる幹の枝★★★
寒梅や少年野球の河川敷★★★★
「寒梅」に「少年野球」。いい風景だ。「寒」であれば、なお、いい風景だ。季語の「寒」が「季題」となった。(高橋信之)
兵隊の麦踏み征ける葦平忌★★★
1月23日(7名)
●多田有花
淡路島今日は近くに寒の晴れ★★★★
春を待つ川は蛇行して海へ★★★
寒の陽を背に浴び洗濯物を干す★★★
●小口泰與
一瞬の暁の攻防冬日かな★★★
寒暁の空や桃色桃源郷★★★★
ことさらに細きジーパン日脚伸ぶ★★★
●満天星
着ぶくれて上目づかいにイブの像★★★
冬空へ厳然として大銀杏★★★★
探梅や緋毛氈敷く野の茶店★★★
●廣田洋一
襷受け追いかく走者息白し★★★
寒稽古気合い鋭く三段突き★★★★
寒稽古終われば甘き汁粉かな★★★
●川名ますみ
二輪目は夕日へ向かい梅ひらく★★★★
一輪目が開いたうれしさ。そして二輪目の梅の花を見たのは、夕日の中。夕日に花を向けて、夕日にあたたかく染まっている。二輪目の愛おしさ。(高橋正子)
三つ目も四つ目も梅の開花云う★★★
梅ひらき残る莟の多さかな★★★
●桑本栄太郎
硝子戸の夜空美はし寒雷忌★★★★
寒雷忌は、大須賀乙字の忌日で、1月20日。この日は大寒となった日であったから、厳寒の空気に夜空は美しく澄んでいた。(高橋正子)
大阪府三島郡とや冬の原★★★
寒の雨天駆け走る天王山★★★
●上島祥子
花弁の鉢より溢れるビオラかな(原句)
花弁(はなびら)の鉢を溢れるビオラかな★★★★(正子添削)
倒れても色をとどめて水仙は★★★
桜草一段高きに鉢を置き★★★
1月22日(4名)
●上島祥子
冬雲のやがて無くなり掃き掃除★★★
雪嶺の静もり天と地の間★★★
探梅の里にもういいかいの声響く★★★★
探梅に出かけた里。思いかげず、子供の「もういいかいの声」。「もういいかい」に昭和の遊びがまだ残っているなつかしさ。探梅の里の昭和にタイムスリップしたような長閑さ。(高橋正子)
●小口泰與
昇り来る無辜の光や雪浅間★★★
冬菊の同じ方へと傾きぬ★★★
朝晩の赤城は美し囲炉裏端(原句)
朝晩の赤城美し囲炉裏端★★★★(正子添削)
●谷口博望 (満天星)
大寒の安芸路を駆ける襷がけ★★★
広島を走るアンカー風花す★★★★
手袋を外しボルゾイ犬を撫でにけり★★★
●桑本栄太郎
水禽の浅瀬に集う番かな★★★
四条よりはるか鞍馬や雪化粧★★★
木蓮の冬芽ときめく日差しかな★★★★
1月21日(2名)
●多田有花
大寒の頂に立つ影法師★★★★
季題を「大寒」とした、いい句だ。季節感がいい。(高橋信之)
大寒の梅に日差しのやわらかし★★★
大寒にはや啄木鳥のドラミング★★★
●小口泰與
笹鳴や里の社へ朝日差す★★★★
「朝日の笹鳴」だ。「笹鳴」は冬の季語だが、「笹子鳴く」ともいい、春を想う、いい季語だ。(高橋信之)
発条のブリキ玩具や寒卵★★★
毛糸編む妻は時おば違えおり★★★
コメント
お礼
信之先生
「大寒の頂に立つ影法師」にご句評を賜りありがとうございます。
大寒、東南に面した頂の日差しは春の近さを感じさせます。
御礼
高橋正子先生
「囲炉裏端」の句を添削して頂き有難う御座います。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
お礼
信之先生 正子先生
「探梅」の句に丁寧な句評を賜り有り難うございました。