1月1日~10日(2018年)


1月10日(4名)

廣田洋一
暮れ初める丹沢の山冴返る★★★★
湘南からは丹沢の山が見えるであろうが、暮れ初めた山が冴え返り、向き合うと、その厳しさが励ましにもなってくれる。(高橋正子)

お湯割りの焼酎二杯冴える夜★★★
新しき土を盛りたる空地冴ゆ★★★

小口泰與
冬の日の居間に差しけり猫の聲★★★
底冷えの仏壇の花かえにけり★★★
弐階より冷たき手すり伝いけり★★★

古田敬二
命秘めまっすぐに立つタラ枯れ木★★★
枝先は命の緑タラ枯れ木★★★
冬耕す長靴の泥重くして★★★★
冬の野の耕しは、汗をかきながらも寒く、冷たい。長靴に付く泥も水気を含んで重い。それが現実だが、現実が力強い。
(高橋正子)

桑本栄太郎
外つ人の初撮りなるや冬の京★★★
水匂う花見小路や冬の雨★★★
店先に酢茎の樽の置かれけり★★★

1月9日(3名)

小口泰與
三山はなべて紺色日短★★★★
泰與さんにとって、三山とは上毛三山。日の短さを思う日々だが、仰ぎ見る山々は美しい紺色だ。(高橋正子)

爛爛と朝日を浴びし雪浅間★★★
薄紅の朝の浅間や冬雲雀★★★

廣田洋一
寒晴やバス待つ人の少なかり★★★
朝稽古終えたる街の寒日和★★★
冬芽立つ囁くごとき梢かな★★★★
冬芽がまるで囁くように揃って立っている。小さなものの命の愛おしさを思わせる句だ。(高橋正子)

桑本栄太郎
葉牡丹の淡々巻いて日差しけり★★★
太陽のにぶき日差しや寒四郎★★★
ふるさとの海鳴り遠くしまき風★★★

1月8日(4名)

小口泰與
琅玕や水面にぎわす寒落暉★★★
枯葎こむらの痛みますばかり★★
酒を飲みしめは羊かん寒の内★★

多田有花
快晴の新春の山歩きけり★★★★
柚子入れて野菜ジュースを搾りおり★★★
正月のからだほぐしている八日★★

廣田洋一
成人式見送る母の小さき背★★★
成人日髪黒々と染め上げし★★★
成人式帰宅の駅の献血車★★★

桑本栄太郎
竹林の節の白さよ寒の雨★★★★
工場の蒸気噴き居り雪しぐれ★★★★
待ち合わす改札口や成人日★★★

1月7日(4名)

小口泰與
松取りて山風のみの巷かな★★★
冬萌や資材置場の朝の声(原句)
冬萌や資材置場に朝の声★★★★(正子添削)
資材置き場でよく見かけるのは空き地を利用したもので、舗装などしていない。そこに冬草が萌え出て、仕事をする人が、寒い朝にも拘わらす、挨拶をしたり、仕事の段取りを話したりしている。寒い朝の声に、聞いてるものは元気をもらう。添削は、作者のいる場所をはっきりとさせた。(高橋正子)

冬ざれの銀杏大樹の走り根ぞ★★★

多田有花
はつ春の光を浴びて耕しぬ★★★
人日の日差しいっぱい頂に★★★
干支の絵馬いただき戻る七日かな★★★

桑本栄太郎
冬萌や土手の斜面の南面す(原句)
南面の土手の斜面や冬萌ゆる★★★★(正子添削)
生駒嶺の冬の霞に沈みけり★★★
黒雲の去りて顕はや嶺の雪★★★

廣田洋一
初句会特選記念の手帳かな★★★
寝入り端古き友より初電話★★★
新年会背の伸びし子伸びぬ子も★★★

1月6日(4名)

小口泰與
出初式火消しは纏空へ振り★★★
火の山へ従う山や冬菫★★★★
薄紅の空に映ゆるや雪浅間★★★

多田有花
かの人よりいただく小さきお年玉★★★
小寒や雨音のなき雨の降る★★★
静かな雨降りてあがりぬ寒の入★★★★

廣田洋一
寒の入りかねて用意のコート着る★★★
寒の入り地震警報寒々し★★★
良く笑う友とつつけり河豚の鍋★★★

桑本栄太郎
改札を出でて陸橋冬木の芽★★★
ちょんちょんと跳んで悲鳴や冬の鵯★★
目薬の口に入りたり寒に入る★★

1月5日(5名)

廣田洋一
喰積や何をするにも独りかな★★★
喰積や酒も仏に供へけり★★★★
喰積の玉子焼きよりはけて行き★★★

小口泰與
湯薬の匂い流るる寒の入★★★★
枯れきって逆光すいと薄かな★★★
棚探し毛の三山の馳走にて★★★

多田有花
新玉の夜の静けさに歩みだす★★★
着膨れて列車を待てり人の群★★★
正月の海の夜明けを見る電車★★★★
正月の海、そしてその夜明けは、どれほどすばらしいものであるか。それを見るように運行される初電車。わずかな乗車距離も旅の心になれるよさ。(高橋正子)

桑本栄太郎
黒猫の目玉茂みに冬日燦★★★
キャッチボールの服もまばらや初練習★★★
ぷかぷかと波のとりこや鴨の陣★★★★

川名ますみ
初暦力一杯表紙切る★★★
水仙のかたまって咲く医科の裏★★★★
弾き初めに母の好みしモーツァルト★★★

1月4日(5名)

多田有花
筆始描く大和の雪景色★★★
正月の凧が河原に二つ三つ★★★
タップして開くスマホの初暦★★★

古田敬二
声変わりせし孫も来て新年会★★★
背伸びして枇杷の花嗅ぐ森独り★★★
故郷にもありし香りよ枇杷の花★★★★

小口泰與
娘らを駅に送りて初やいと★★★
蝋梅や古き机の傷の跡★★★★
冬萌や羽音激しき群雀★★★

廣田 洋一
我家にも福もたらすかふくら雀★★★
寒雀連なる先に富士の山★★★
日溜りを行きつ戻りつ寒雀★★★★

桑本栄太郎
麦の芽やうねり大きく黒き土★★★★
「うねり」に躍動感が読み取れる。麦の芽の緑と、黒い色の土は、大地のゆたかさの象徴のようだる。(高橋正子)

冬耕の土くろぐろと返さるる★★★
冬萌や畦の囲みて濃く淡く★★★

1月3日(5名)

小口泰與
天窓へ朝日差し込む御慶かな★★★
隠れ沼の葦枯れており雲と鳥★★★
新幹線はや満席の三日かな★★★

古田敬二
初日の出拝む我らに平和あれ★★★
冬オリオンを夜間飛行機明日へ行く★★★
初詣へ窓の下行く下駄の音★★★

多田有花
去年今年沁み透りゆく鐘の音★★★★
晴着の子吊り上げてゆく初詣★★★★
小さな子に晴着を着せて初詣。晴着の裾が汚れるのか吊り上げて参らせる。ほほえましい光景だ。(高橋正子)
母の手をひいて年始の客となる★★★

(桑本栄太郎
御降やガラス越しなる嶺の白★★★
平成の御代慕はしき参賀かな★★★
三日はやパンの恋しくなりにけり★★★

廣田洋一
ハラハラ散りカサカサ鳴ける木の葉かな★★★
破魔矢の鈴の音軽く響きけり★★★★
破魔矢の鈴がちりちりと軽く響くのが正月らしい晴れやかさで快い。(高橋真亜子)

老夫婦杖を頼りに初詣★★★

1月2日(4名)

小口泰與
初景色平成の世も終わりける★★★
眼間の人に御慶の足湯かな★★★
一月の土瓶で煮込む薬かな★★★

廣田洋一
初詣靴音高き老婦人★★★
初手水ハンカチ持てる母隣り★★★★
初御空観音像の白きかな★★★

多田有花
静けさや霜の大地に初明り★★★
元朝や日の出を待って外に出る★★★
寄せ来るは光の波や初景色★★★

桑本栄太郎
娶らざる吾子戻り来て寝正月★★★
平成の一般参賀や御代の春★★★
二日はや満艦飾や濯ぎもの★★★

1月1日(3名)

小口泰與
噴煙の垂直に伸び初日かな★★★
初景色白き浅間へ朝日差す★★★
噴煙を紅に染めたる初日の出★★★

廣田洋一
元旦やゆるり瞬く大犬座★★★★
大犬座の瞬きがゆるやか。元旦の時がゆるやかなのだ。(高橋正子)
初日の出光の帯水面を走る★★★
赤き球黄色き光初日かな★★★

桑本栄太郎
東雲の今朝の茜や初明り★★★
延々と銀杏冬芽やバス通り★★★★
散りつくした銀杏に冬芽がしっかりとついている。延々と続く銀杏並木のバス通り。「延々と続くこと」の明るさ。(高橋正子)

教会に昨日につづく初礼拝★★★


コメント

  1. 小口泰與
    2018年1月8日 9:38

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    1月7日の投句「冬萌」の句を添削していただき有難う御座いました。
    今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。