1月1日~10日(令和2年)


1月10日(4名)

小口泰與
入相の太き日矢さし小白鳥★★★
恐ろしきまで一山の雪月夜★★★★
これほどの雪月夜をまだ見たことがなく、想像するばかりだが、山国のすざましいほどの雪月夜を思い圧倒された。(髙橋正子)

遠き日の一言を悔い寒牡丹★★★

廣田洋一
明星の光ひと粒寒茜★★★★
寒茜の中に、宵の明星の金星が一粒光っている。一番星のその一粒が愛おしい。(高橋正子)

寒茜細き枯枝際立たせ★★★
富士の影黒く浮かべて寒茜★★★★

多田有花
アップライトピアノ旅立つ松の内★★★
寒晴れへ吊り上げられしピアノかな★★★★
ピアノ去れば広々として冬座敷★★★★

桑本栄太郎
道野辺の烏ついばむ日脚伸ぶ★★★
目覚めたる妻の厨へ日脚伸ぶ★★★
冬晴れのままに暮れ居り茜空★★★★

1月9日(4名)

小口泰與
明けの雪寺の柱の黒光り★★★★
明けてみれば寺に雪が積もり、寺の柱はお堂のなかで、黒光りしている。白と黒の寺の光景が写真のように浮かび上がる。(高橋正子)

残照の沼にひろがり大白鳥★★★
寒月を乗せて湖の面音もなく★★★

廣田洋一
窓の外ぱっと明るく冬日かな★★★
昼過ぎて出でし冬日を仰ぎたる★★★
冬日受け葉をそよがせし並木かな★★★

多田有花
立ちこぎのセーラー服や日脚伸ぶ★★★★
日脚がすこしずつ伸びているkのごろ、自転車を立こぎするセーラー服の女学生を見た。元気いっぱいの、まだあどけなさ残る女学生が往時の自分を見るようで、ちょっと眩しい。(高橋正子)

松の内髪切りたいと母が言う★★★
駆けてゆく子らの歓声寒四郎★★★

桑本栄太郎
ざんばらと土堤に傾げり枯尾花★★★
初釣の湾処(わんど)に背ナや桂川★★★
冬銀河あまた瞬き明日は晴れ★★★★

1月8日(3名)

小口泰與
燗熱くせよ知事賞の報届く★★★★
「燗熱くせよ」の勢いがただただ晴らしい。知事賞おめでとうございます。(高橋正子)

醜草の湯レイルたり冬の鷺★★★
山風を背負い冬耕はじめたり★★★

廣田洋一
紅白の漬物添へて七種粥★★★★
正月気分のまだ残る七日、七草粥に添えられた紅白の漬物がみずみずしい。地味ながら華やぎがあ句。(高橋正子)

朱塗椀に早緑匂ふ七種粥★★★
山盛りの七種セットや一つ買ふ★★★★

桑本栄太郎
燦々と冬日差したり風の午後★★★
蝋梅の日射し透きをり膨らみぬ★★★★
初釣の背ナに日当たる湾処かな★★★

1月7日(4名)

小口泰與
霜柱踏めば星屑こぼれけり★★★
おちこちに声谺して寒紅梅★★★★
寒紅梅は山間の谷に咲いているのだろう。梅見の人たちの声があちこちから谺して聞こえてくる。谷に散らばって梅見をする人たちの様子が見て取れる。(高橋正子)

雲走り電車待つ間の冬の虹★★★

廣田洋一
検診と句会を記す初暦★★★
初暦机に一つ飾りけり★★★
初暦着物姿の美しき★★★

多田有花
パソコンを出先で開く仕事始★★★
小寒や粗大ごみ230kg★★★
暖かきままに過ぎゆき七日かな★★★★

桑本栄太郎
山茶花の紅を散り敷く朝かな(原句)
山茶花の紅の散り敷く朝かな★★★★(正子添削)
もとの句は、「朝が、山茶花の紅を散り敷く」となっていて、意味が取りにくいです。

寒林の銀杏並木やバス通り★★★
ワイパーの滲み擦りぬ寒の雨★★★

1月6日(4名)

小口泰與
友病むか年賀のメールいまだ来ず★★★
冬林檎輪切りにきりて食卓へ★★★
枝枝の奇数偶数寒雀★★★

廣田洋一
朝の風さすが冷たし寒の入★★★
電線に雀のをらぬ寒の入★★★
仕事始故郷の菓子を頂きぬ★★★★
仕事初めの会社。帰省した人たちのふるさと土産の菓子を頂いた。ほっこりとするひととき。(高橋正子)

桑本栄太郎
カーテンを開けて結露や寒に入る★★★
医科大の芙蓉枯れ居り中庭に★★★
会計の挨拶し合う医務はじめ★★★

1月5日(4名)

小口泰與
室咲や短き祝辞甘露なる★★★★
冬ばらの開かんとして力尽き★★★
名物の風を賜る冬牡丹★★★

廣田洋一
鯉二匹さかのぼり行く冬の川★★★★
橙飾る古き屋敷の四世代★★★
読初や今年も虚子の一日一句★★★

多田有花
法被着て初商の社員かな★★★
あのころの写真を整理初昔★★★

母に来し年賀状を持ちゆけり★★★★
娘のところに来た母宛の年賀状。差出人は、母は正月を娘のところで過ごしているんだろうかとの思いかもしれない。母のところへ年賀状をもって行くことは、母に会いに行くことでもある。お互いの思いやりの心が忍ばれる句。(高橋正子)

桑本栄太郎
同郷の小豆雑煮の二人かな★★★
雑煮は地方地方によって、驚くほどさまざまある。郷土性の豊かな祝い椀である。丸餅、伸餅、餡餅か、紅白餅も。仕立ては白みそ,澄まし、焼くか煮るか。同郷のご夫婦二人は、小豆雑煮。幼い時からの郷土の雑煮を頂く幸せ。小豆雑煮の品の良さが効いている。(高橋正子)

枯草の明かりとなりぬ朝の雨★★★
返り花とはもう云えず菜種咲く★★★

1月4日(5名)

小口泰與
干芋へ赤城颪を賜りぬ★★★
産土に手足伸ばすや冬の梅★★★
樫の木の秀つ枝下枝に寒雀★★★★

廣田洋一
初暦予定書き込み恙なし★★★
筋トレも心新たに四日かな★★★
大皿をみな仕舞ひたる四日かな★★★★

多田有花
初掃除すいすい進むコードレス★★★
居酒屋に集う三日の誕生日★★★
正月の京都に向かう人を載せ★★★★
みやびさ漂う正月の京都へ家族か知人を車に乗せたのだろうか。乗るときから着物も匂い華やぎ立っている。また電車に乗っている京都へ向かう人たちを眺めたとも読める。車や電車が正月の華やかさでいっぱいなのだ。(高橋正子)

桑本栄太郎
マスク子の不安顔なり待合室★★★★
病院の待合室。マスクをかけた子が熱でもあるのだろう。不安げな顔でおとなしくしている。子供は風の子、元気な子であるはずなのに。おとなしく不安げであれば、不憫である。(高橋正子)

四日早や内科医院の込みいたる★★★
漫才も聴いて白ける四日かな★★★

川名ますみ
初富士の雲の晴れゆき夕映に★★★★
雲掃かれ初富士現れし夕べ★★★
目覚むればあっという間の初笑★★★

1月3日(4名)

小口泰與
大利根へ朝日差したる御慶かな★★★
吾子の手に受けたる破魔矢鈴さわぐ★★★
朝日差す蔵の錠前仏の座★★★★

多田有花
宅配の荷物が届く二日はや★★★
わらわらと飛び降り飛び立つ初雀★★★★
初電話うれしき報せもたらしぬ★★★

廣田洋一
淑気満つ令和の朝の晴上り★★★
雪折の音に目覚めし幼き日★★★★
雪国で幼き日を過ごされたのだろうか。私は、瀬戸内で過ごしたが、たまに大雪が降ることがあって、裏の竹藪の雪がどさっと大きい音を立て落ちるのに驚いたことがある。雪折れの枝がバシッと折れる音は、幼きものを目覚めさせる。今はその音と、音に被る幼き日が思い出される。(高橋正子)

雪折れの枝を切りたる朝もあり★★★★

桑本栄太郎
三日早やジャムトーストの朝餉かな★★★
食うて寝て又食い寝たる三が日★★★

をけら火や四条通りの縄明かり★★★★
をけら火は、京都八坂神社の大晦日から元旦にかけて行われる神事。朮火に縄をかざして火をもらい、その火を持ち帰り雑煮を煮る。縄は1メートルぐらいのものを手に数回手繰って、縄先に火を付ける。晴れ着姿の女性も大勢見受けられる。四条通は、火のついた縄の明かりがゆらいでいる。奥ゆかしい日本の行事である。(高橋正子)

1月2日(4名)

小口泰與
三山の朝の淑気を賜りし★★★
初春や湯けむりの立つ磴の街★★★
山風の産土なるや初景色★★★★

多田有花
一瞬の沈黙の後初泣きす★★★
年玉を泣き顔の子に渡しけり★★★★
新春の空につぎつぎ飛行機雲★★★

廣田洋一
初氷車の窓を覆ひけり★★★
鳩の餌横取りしたる寒雀★★★
日溜まりにまた一羽来る寒雀★★★★
日溜まりは誰にもうれしいところ。日溜まりに寒すずめが餌をついばんでいる。チョンチョン飛ぶものもいる。すると、そこへまた一羽が寄って来た。仲間に入って餌をついばむ。見ていてたのしく、心和む光景だ。(高橋正子)

桑本栄太郎
ふるさとの海鳴り想う波の花★★★★
波の花は海水が風で泡立ち花のようになる現象。海鳴りの音に加わり波の花が飛ぶ。特徴的な故郷の景色は、いつまでも目裏に、耳底にある。(高橋正子)

海鳴りの怒涛や冬の日本海★★★
空き缶のまろぶ音あり寒波来る★★★★

1月1日(4名)

小口泰與
噴煙の垂直に伸び初浅間★★★★
新年、浅間山から噴煙がまっすぐにどこまでも、というふうに、上がっている。新年早々の伸びやかな景色に、今年の幸先のよさを思わずにはおれない。(高橋正子)

朝日差す榛名九嶺お元日★★★
菩提寺の僧都に礼や年新た★★★

廣田洋一
年改まり富士の嶺白く改まる★★★
神輿蔵開け放たれて初詣★★★★
普段は閉められている神輿を収めている蔵が、新年には開け放たれ、どっしりと座り、きらびやか姿を見せている。初詣に遭遇するものはいろいろあるなかの、開け放たれた神輿蔵。(高橋正子)

綴じ紐は目出度き赤や初暦★★★

桑本栄太郎
竹林の白き節見せ淑気満つ★★★★
京都の竹林の美しさは言うまでもないが、竹の節が白く粉を吹いたようである。年改まる中、りんとして、淑気に満ちている。(高橋正子)
三川の集う中州や大枯野★★★
もくれんの冬芽かくかくしかじかと★★★

多田有花
何気なく出て全身に初日浴ぶ★★★★
「何気なく出て」が面白い。何気なく出たら、全身を初日が照らしてくれた。日を浴びるのは初日だけにうれしい。(高橋正子)

初暦まだ見ぬ月日重なりぬ★★★
元日や早も出会いし救急車★★★


コメント

  1. 廣田洋一
    2020年1月6日 16:18

    御礼
    高橋信之先生
       正子先生
    いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
    1月1日の「神輿蔵開け放たれて初詣」、1月2日の「日溜まりにまた一羽来る寒雀」及び1月3日の「雪折の音に目覚めし幼き日」を夫々の日の秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、誠に有難う御座います。小学校5年生の終わりまで津軽の弘前で育ちました。
    今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます。

  2. 廣田洋一
    2020年1月7日 15:12

    御礼
    高橋信之先生
       正子先生
    いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
    1月6日の「仕事始故郷の菓子を頂きぬ」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、誠に有難う御座います。
    今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます。