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7月20日(2句)
★酒蔵に桔梗咲き初め夏深む/多田有花
酒蔵に桔梗の取り合わせが涼しげ。桔梗は秋の七草に数えられ、秋の季語である。花は、おもに八月から九月にかけて咲く。この句は季語(季題)から発想してつくられた句ではないので、このような捉え方になる。「夏深む」なかにも秋の気配があるということ。(髙橋正子)★蝉時雨大樹が続く朝の径/上島祥子
この句の蝉時雨は、「大樹が続く」「朝の径」に降り注ぐ蝉の声を詠んでいる。大樹の並木は木陰をつくり、朝の径は涼しい。蝉時雨がすずやかに聞こえる。(髙橋正子) - 7月19日(1句)
- <西国二十六番・法華山一乗寺>
★千年の塔億年の山盛夏/多田有花 - 千年の塔と、億年の山は誇張ではなく、実際に近い表現でスケールが大きな句。それぞれが夏真盛りの季節に風格を増している。(髙橋正子)
- 7月18日(2句)
- ★手も足も透ける泉へ鳥の声/小口泰與
- 「足も透ける」とあるので、泉に手を浸しただけでなく、入ってみたのだろう。そこへ鳥の声が聞こえて、泉の冷たさに心洗われたことだろう。(髙橋正子)
- ★川風に浮かび群れ居り夏あかね/桑本栄太郎
- 「川風」が、風のすずしさ、水の匂いや水音なども思い起させて一句を涼やかに仕立てている。川風に浮かんで群れ飛んでいる夏あかねの動きが見えるが、「居り」は、工夫の余地がある。(髙橋正子)
7月17日(1句)
★松落葉ふわりと踏みし石畳/廣田洋一
石畳の敷かれている庭。松の落葉が降り積もって踏むとふわりとした感触がある。季語「松落葉」の品を活きている好句。(髙橋正子)
7月16日(1句)
★向日葵の日の出の向きに咲き揃う/上島祥子
透明感のあるきらきらした句。日の出の方へ向日葵が一せいにさいているのだ。向日葵は当然、上ったばかりの日を受けている。朝も早い時間がいい。(髙橋正子)
7月15日(1句)
★大笹を傾けて置く星祭/川名ますみ
星祭の笹が、まっすぐ立てられるのではなく、大笹ゆえか、傾けて置かれている。さらさらと鳴る笹の葉に、短冊も色とりどりに下げられるだろう。七夕の景色がいい。(髙橋正子)
7月14日(1句)
★玄関に転がされている甜瓜/多田有花
玄関に転がされているのは、畑からも出で来た胡瓜であろう。とりあえず玄関に転がしてある。形も不揃いだろうが、そこに俳味がある。(髙橋正子)
7月13日(1句)
★明日開く蕾隣に蓮開く/多田有花
あすは開きそうな蕾の隣に今日の蓮が開いている。大きな蓮の葉の台(うてな)に蓮の花が次々に咲く季節が巧みに詠まれている。(髙橋正子)
7月12日(1句)
★釘を打つ音の続けり夏真昼/多田有花(正子添削)
夏の真昼というのに、釘を打つ音が止むことなく続いている。どこか家が建つのだろうか。夏の真昼が静謐に受け止められる句だ。(髙橋正子)
7月11日(1句)
★昇り来る強き夏月上つ枝(ほつえ)越ゆ/小口泰與
「強き夏月」は赤々と輝いている夏の月。その月が飛び出ている枝などを越え昇っているのだ。涼しげな景色がいい。(髙橋正子)
コメント
お礼
正子先生
「釘を打つ作業の続く夏真昼」を
「釘を打つ音の続けり夏真昼」に添削のうえ7月12日の
「明日開く蕾隣に蓮開く」を7月13日の
「玄関に転がされている甜瓜」を7月14日の
それぞれ秀句にお選びいただきありがとうございます。
自宅の周りは20世紀の間はほぼ水田地帯でしたが
21世紀に入ってからどんどん宅地開発が進められ田畑はわずかになっています。
最近もすぐ近所の畑が埋め立てられ家が建設されています。
真夏の日中でも釘を打つ音が聞こえ、大変だなあとおもうばかりです。
「作業の続く」では散文のようですね。ありがとうございました。
Unknown
お礼
正子先生
7/16秀句に「向日葵の日の出の向きに咲き揃う」をお選びくださり丁寧な句評を有難うございました。朝の散歩で向日葵が東向きに咲いていました。朝日の中の向日葵は美しく明るい気分になりました。
御礼
高橋正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
7月17日の「松落葉ふわりと踏みし石畳」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難うございます。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
御礼
高橋正子先生
7月18日の今日の秀句に「川風に浮かび群れ居り夏あかね」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴島して大変有難う御座います!!。橋の上に川風に浮きながら舞い飛ぶ夏あかねの群れを見掛けました。秋あかねより少し色がうすいものの、その他は全く同じであり秋もまもなくを想わせ、涼やかでありうれしくなりました。
お礼
正子先生
「千年の塔億年の山盛夏」を7月19日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
一乗寺の国宝三重塔の建立は承安元年(1174)で、平清盛の全盛期です。
歴史的建造物はその美しさと同時に、その上を流れて行った時間の長さを偲ばせてくれるところが魅力です。
そして周りの山を見渡せば、人類誕生以前からあるのだなと改めて思います。
御礼
高橋正子先生
7月11日の投句(夏月ょの句と7月18日の投句(泉へ鳥の声)の句を秀句にお取り上げ頂き、正子先生には素晴らしい句評を賜わり厚く御礼申し上げます。こんごともよろしくご指導の程お願い申し上げます。
お礼
正子先生
「夏深む酒蔵に桔梗咲き初めし」の句を
「酒蔵に桔梗咲き初め夏深む」と添削いただき
7月20日の秀句にお選びいただきありがとうございました。
言葉の前後が入れ替わり、情景がくっきり見えてきました。
酒蔵を改造したレストランに行ったところ、店の前で桔梗が咲いていました。
今年、関西の梅雨明けは6月中と早く、すでに「盛夏」を十分堪能しています。
夏が深まり秋が近づいていることを感じた桔梗の花の姿でした。
Unknown
お礼
正子先生
7/20秀句に「蝉時雨大樹が続く朝の径」をお選びくださり丁寧な句評を有難うございました。蝉時雨の季節ですが高い木の上から聞こえてきます。