今日の秀句/7月1日~7月10日

7月10日(1句)

★那智の滝注連縄揺らし落ちにけり/廣田洋一
滝は夏の季語。滝の冷気は特別である。那智の滝は、滝自体がご神体なので、その前に注連縄が張られている。落差133mの滝が落ちると、水飛沫や冷気の動きで風が起こる。(髙橋正子)

7月9日(1句)

★孫ら来る祇園祭のあといくつ/桑本栄太郎
遠く離れて住む孫が祇園祭にやってくる。あといくつ寝たら会えるのか、と素直な気持ちが詠まれているのがいい。孫たちも京都行を楽しみにしていることだろう。(髙橋正子)

7月8日(1句)

★冷麦の赤を取り合ひ昭和の日/廣田洋一
白い冷麦に赤や緑、黄色の色がついたのが、少し交じっていて、昭和の子供は色のついたのを当たりくじのように欲しがった。やっぱり赤が人気だったか。大勢で暮らした昭和が懐かしく思い出される。(髙橋正子)

7月7日(1句)

★青空へ紐を結びぬ竹簾/川名ますみ
竹簾を吊るすときに、実際は、窓枠の出っ張りなどに紐を結んで吊るすが、青空を見ながら吊るすと、「青空へ」紐を結んでいるかのように見える。夏の青空と簾が絵のように思える。(髙橋正子)

7月6日(1句)

★のっぱらやさやかに揺らぐ花菖蒲/弓削和人
「のっぱら」に切字「や」がついて、アンバランスな感じがしないでもないが、野原に花菖蒲が揺れているのが、目にさやかに映る。これは、箱根の仙石原にあるようなノハナショウブなのか。(髙橋正子)
7月5日(1句)

★あき缶の口に滲み入る岩清水/弓削和人
飲み干したあき缶に、岩清水を入れて飲もうというのだ。あき缶の小さい飲み口から滲みいる清水のつめたさは感激もの。岩清水のあたりの涼気が想像できる。(髙橋正子)
7月4日(1句)

★あおぞらの視界ぐるりと梅雨の晴れ/桑本栄太郎
ぐるりと見まわす視界のかぎり、青空が広がる。梅雨の晴れ間の力強く、涼し気な空の青。元気がでる。(髙橋正子)

7月3日(1句)

★終電の駅に降り立ち夏の星/廣田洋一
「夏の星」は、すずしそうな輝きが特徴である。終電まで乗り、疲れ気味に駅に降り立つと、空には涼しそうな星が輝いている。涼しそうな星の美しさに心が洗われる思いだ。(髙橋正子)
7月2日(1句)

★雨に似て水輪のひとつ糸蜻蛉/弓削和人
糸蜻蛉はあまりに姿がかすかなので、水面に生まれている水輪は、小さい雨の作る水輪と思ったが、よく見ると雨ではなく糸蜻蛉がいて出来た水輪だったということ。率直な見方に詩情がある。(髙橋正子)
7月1日(3句)

★一時の風の中なる油蝉/小口泰與
いかにも暑そうに鳴く「油蝉」と「風」の取り合わせがよく、一服の清涼剤のような風が吹き抜け、心まで涼しくなる句。(髙橋正子)

★丹沢の雲の晴れたり梅雨夕焼/廣田洋一

丹沢の山々にかかる雲が晴れて夕焼けが広がる。晴れ晴れとした梅雨夕焼に、新しい世界が目の前に広がるようだ。(髙橋正子)

★七月や早やも祇園を想う朝/桑本栄太郎
葵祭から祇園祭へと京都の夏は祭で賑わう。七月になれば、コンチキチが耳に聞こえ、やきらびやかな鉾や山車の姿が目に浮かぶということだろう。「祇園を想う」に祇園の街の華やぎや祭を心待ちにする京都人の思いをみる(髙橋正子)


コメント

  1. 廣田洋一
    2023年7月2日 15:47

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    7月1日の「丹沢の雲の晴れたり梅雨夕焼」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難う御座います。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  2. 桑本栄太郎
    2023年7月2日 16:32

    御礼
    高橋正子先生
    7月1日の今日の秀句に「七月や早やも祇園を想う朝」の句をお選び頂き、嬉しいご句評を頂戴しまして大変有難う御座います!!。
    7月に入れば、京都の町とそこに住まいします京都人は、祇園祭に一斉に心が入ります。今年は又孫達が来京しそうです。

  3. 小口泰與
    2023年7月2日 19:22

    御礼
    高橋正子先生
    7月1日の投句「油蝉」の句を秀句にお取り上げ頂き、素晴らしい句評をたまわり厚く御礼申し上げます。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。有難う御座います。

  4. 桑本栄太郎
    2023年7月5日 17:37

    御礼
    高橋正子先生
    7月4日の今日の秀句に「あおぞらの視界ぐるりと梅雨の晴れ」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
    昨日4日は朝より嘘のように晴れ上がった「梅雨の晴れ」でした。
    カーテンを開け空を見れば視界ぐるりと青空でした。本当に天のおこぼれのような晴れ間に、その後この日は朝食を終え、布団干しと洗濯も2回も行いました。

  5. 廣田洋一
    2023年7月6日 7:56

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    7月3日の「終電の駅に降り立ち夏の星」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難う御座います。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  6. 廣田洋一
    2023年7月11日 17:32

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    7月8日の「冷麦の赤を取り合ひ昭和の日」及び7月10日の「那智の滝注連縄揺らし落ちにけり」を夫々の日の秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難う御座います。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  7. 桑本栄太郎
    2023年7月11日 18:29

    御礼
    高橋正子先生
    7月9日の今日の秀句に「孫ら来る祇園祭のあといくつ」の句をお選び頂き、句意をお汲み取り頂きました嬉しい語句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
    今年の祇園祭は7月15日(土)~17日(月)の三連休と重なり、山口に居ります孫達が一家で急に遊びに来ることになりました。
    嬉しいやら準備に忙しいやらで嬉しい悲鳴であります。