［５月１０日］
★匂いたる蜜柑の花や母の歌/谷口博望(満天星)
窓を開け、風を入れて過ごしたくなる夏の初め。蜜柑の花がよく匂う。あたりに蜜柑が植えられていれば、
蜜柑の花は、匂いを漂わす。蜜柑の花について思い出すことは、「蜜柑の花が咲いている」に始まる唱歌だろう。母がよく歌っていた「母の歌」として、耳に記憶が蘇る。（高橋正子）
［５月９日］
★D五一の音を運びし南風かな/小口泰與
D五一（デゴイチ）の愛称で親しまれた機関車が、今も走っているとは、懐かしい。のどかな南風がデゴイチの走る音や汽笛を運んで昭和のよき時代が思い出される。（高橋正子）
［５月８日］
★草抜きて積み上ぐ匂い夏めきぬ/廣田洋一
丈長くなった草を抜き、積み上げると驚くほどの嵩になる。草の匂いが芬々として、「夏めきぬ」を実感した。「夏めきぬ」が、さっぱりとしてよい。（高橋正子）
［５月７日］
★蛇行する川は若葉に挟まれて/多田有花
いい写生句だ。作者の実感が読み手に伝わってくる。アウトドアにも、いい生活の実感があるのだ。（高橋信之）
［５月６日］
★眼に染みる窓の若葉や雨の前/桑本栄太郎
若葉が盛んなとき。雨の前の曇りのときほど、若葉の緑が目に染みるように思われる。雨の前の若葉、それから雨の若葉も想像できて、若葉の美しさの微妙な違いを感じる作者。（高橋正子）
［５月５日］
★入日まだ空の高きや菖蒲の湯/桑本栄太郎
今年の立夏は５月５日なので、この句は、立夏に作られた句。立夏であれば、「入日まだ空の高きや」ということになる。いい表現だ。 (高橋信之)
［５月４日］
★花冷やあくまで蒼き沼の水/小口泰與
花冷えに鎮まる沼。花の気品をもって、その静寂を象徴する、「あくまで蒼い水」。詩的な句になった。（高橋正子）
［５月３日］
★雛罌粟や日を照り返す赤き花/廣田洋一
雛罌粟の花弁は薄く、五月の日を受けてつやつやと輝く。意外にも強い五月の日差しに、しなやかな細い茎の先の赤さが印象的だ。（高橋正子）
［５月２日］
★昔日の大和三山今新緑/河野啓一
「昔日」の意味は、現実の作者の生活に照らせば解釈に少し幅が出る。この冬の眠る大和三山を思いだして、今は新緑が鮮やかに燃えている景色に目が覚める思いである。あるいは、往時の大和三山と比べていることもある。「大和三山」なればこそ、「昔日」が効いている。（高橋正子）
［５月１日］
★夏近き分水嶺を歩きけり/多田有花
山の嶺は、降った雨を異なる方向へ分けて流し、水系を作る。歩いた山稜から両方向を見れば、川の流れがそれぞれに見えるのかもしれない。夏近い山稜の空気を胸に歩くと、気持ちが広やかになり、さぞ爽快だろう。（高橋正子）
コメント
御礼
高橋信之先生、正子先生
5月2日の今日の秀句に「昔日の大和三山今新緑」の句をお取り下され、その上正子先生の有り難いご講評を賜りまして、厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
句意があいまいであったかと反省しておりますが、今後とも何分のご指導よろしくお願い申し上げます。
御礼
高橋信之先生、正子先生
５月4日の秀句に「花冷え」の句をお選び頂き、その上、正子先生には素敵な句評を賜わり、厚く御礼申し上げます。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
御礼
高橋信之先生、正子先生
５月３日の秀句に「雛罌粟」の句をお選び頂き、その上、正子先生には素敵な句評を頂き、誠に有難うございます。今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます
御礼
高橋信之先生、正子先生
5月5日の今日の秀句に「入日まだ空の高きや菖蒲の湯」
をお選び頂き、信之先生には過分なるご句評を賜り
大変有難うございます。
昨日のこどもの日は天気にも恵まれましたが、明るい内
から菖蒲湯に浸かりました。日毎に気温も上昇しつつあり
至福のひと時でした。
お礼
信之先生、正子先生
「夏近き分水嶺を歩」を5月1日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
兵庫県の分水嶺は低くて、全国一低い場所があります。
ここも600mほどの山でしたが、稜線が分水界に鳴っており、両側に広がる田に水が入るさまを見ながら歩きました。
御礼
高橋信之先生、正子先生
5月6日の今日の秀句に「眼に染みる窓の若葉や雨の前」の句をお選び頂き、嬉しい素敵なご句評も頂戴しまして大変有難うございます。3階にある自宅のパソコン室の窓から、いつも窓の若葉を眺めています。五月晴れでも、雨の前の曇りの日でも新緑の美しさが眼に染みるようです。
御礼
高橋信之先生、正子先生
５月８日の秀句に「草抜きて積み上ぐ匂い夏めきぬ」の句をお選び頂き、その上、正子先生には素敵な句評を頂き、誠に有難うございます。今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます
御礼
高橋信之先生、正子先生
５月９日の秀句に「南風」の句をお選び頂き、その上、正子先生には素晴らしい句評賜わり、厚く御礼申し上げます。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。有難う御座いました。
御礼
高橋信之先生、正子先生
５月１０日の秀句に「蜜柑の花」の句をお選びいただきありがとうございます。小学時代に母が「蜜柑の花咲く丘」を歌っていたのを思い出しました。「母の歌」とするのは少し照れくさかったのですが、秀句になるとは予想外でした。ありがとうございました。
お礼
信之先生、正子先生
「蛇行する川は若葉に挟まれて」を5月7日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
増位山の頂から見た市川の姿です。