今日の秀句/3月1日~10日


3月10日(1句)

★兄弟の競いて春の丘登る/多田有花
まだ幼い兄弟であろうか。二人で競争して草萌える丘を登る。競い合う遊びが春の丘を通して読むものに明るい輝きをくれる。(高橋正子)

3月9日(1句)

★フェンスには鴎の形風光る/多田有花
白く塗られたフェンスに鴎の形を切り抜いた板などを風見鶏のように取り付けられているのをよく目にする。それを思い浮かべた。光る風に、鴎は羽をひろげ、いきいきと飛んでいるように思える。おしゃれな風景。(高橋正子)

3月8日(2句)

★ごうごうと谿の流れや花辛夷/小口泰與
谿に咲く辛夷。雪解水を集めてごうごうと音を立てる谿川のほとりの辛夷は自然の花。花びらを振るわせていることだろう。(高橋正子)

★流木の薪を焚きたる磯開き/廣田洋一
磯開きは、一般的には、遠く潮の引いた磯辺で一日を過ごす行楽の風習で、陰暦3月3日(今年は3月26日)がそれにあたる。また翌日の4日を雛祭りの後祭りとして山や磯に遊ぶ地方もある。
まだ浜辺は寒いので、流木を拾い焚火をして暖をとったりする。みんなが囲む焚火に心を癒される。たのしい磯開きである。(高橋正子)

3月7日(2句)

★一斉に鳥の飛び來る初桜/小口泰與
桜が咲いた。蜜を求めて、鳥たちが一斉にやって来た。絵になる光景だ。(高橋正子)

★いま一度春の海へと浮きを投げ/多田有花
釣りが楽しめるのどかな春の海。釣り糸を垂らしている間も釣り人はたのしいのだが、釣れなくて、もう一度挑戦で浮きを投げた。その浮きの行方を目で追うのも面白い。臨場感が楽しめる句だ。

3月6日(1句)

★白梅や潮騒届く庭に咲く/多田有花
白梅と潮騒の取り合わせが新鮮だ。実際、潮騒の届く家々の庭にも白梅が植えられ楽しまれているが、それが、俳句に取り上げられているのは、めったに見ない。明るく、爽快な句だ。(高橋正子)

3月5日(1句)

★人形と共に仕舞へる紙雛(かみひひな)/廣田洋一
雛人形を仕舞うときに、紙の雛も一緒に仕舞った。紙雛とは言え、雛は形代。思いも大切にしまわれたのだ。(高橋正子)

3月4日(1句)

★北風の金具音立て校旗かな/桑本栄太郎
寒い春の北風が吹く空へ掲げられた校旗。風の寒さに校旗の金具がポールに当たって鳴る音が
卒業期と重なる料峭の感覚をよく伝えている。(高橋正子)

3月3日(1句)

★立子忌の夕のおさいは花菜和え/桑本栄太郎
立子の親しまれている句に、「まゝ事の飯もおさいも土筆かな」があって、それを踏まえた句。今日のおさいは花菜和え。花菜も土筆も春の香りいっぱいのもの。立子の句を追体験するようなしのぶ句となった。(高橋正子)

3月2日(1句)

★踏んで行く春の夕日の伸ばす影/古田敬二
日が永くなり、夕日に映る影も、どこか、のどかに見える。伸びた影を踏んで行く心愉しさが読み取れる。(高橋正子)

3月1日(2句)

★風光る禁漁解ける里の朝/小口泰與
釣りの好きな人には待ちどおしい春の漁解禁。「里の朝」とあるので、その里にも渓流があり、雪代山女なども釣れるのだろう。風光るにあかるい気持ちが見える。(高橋正子)

★こぼこぼと小流れ聞こゆ春の丘/桑本栄太郎
春の丘には、目に萌え出た草の緑、おおいぬのふぐりの青と目を楽しませてくれるものも多いが、耳にも春を感じさせてくれる音がある。ごぼごぼと小さい流れも水が走っている。楽しい春の丘だ。(高橋正子)


コメント

  1. 桑本栄太郎
    2020年3月2日 18:32

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    3月1日の今日の秀句に「こぼこぼと小流れ聞こゆ春の丘」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。昨日の当地は久し振りに暖かい陽気となり、山裾の村まで散策の足を伸ばしてみました。

  2. 廣田洋一
    2020年3月6日 14:13

    御礼
    高橋信之先生
       正子先生
    いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
    3月5日の「人形と共に仕舞へる紙雛(かみひひな)」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、誠に有難う御座います。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  3. 桑本栄太郎
    2020年3月6日 18:35

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    3月3日の今日の秀句に「立子忌の夕のおさいは花菜和え」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。花菜和えのほろ苦さは大人の味覚です。又3月5日の秀句に「春北風の金具音立て校旗かな」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
    尚、僭越ながらこの句の表記は「北風」ではなく「春北風(はるきた)」であります。宜しくお願い申し上げます。

  4. 廣田洋一
    2020年3月9日 16:38

    自由な投句箱
    高橋信之先生
       正子先生
    いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
    3月8日の「流木の薪を焚きたる磯開き」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、誠に有難う御座います。
    今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます。

  5. 多田有花
    2020年3月10日 12:45

    お礼
    信之先生、正子先生
    「白梅や潮騒届く庭に咲く」を3月6日の
    「いま一度春の海へと浮きを投げ」を添削のうえ3月7日の
    それぞれ秀句にお選びいただきありがとうございます。
    最近、続けて姫路市の海沿いに行く機会がありました。
    姫路市の南部は播磨灘に面しており、今では家島諸島も姫路市ですが、
    海からは少し離れたところに住んでいるので海岸に行くことはあまりありませんでした。
    晴天の春の海は穏やかで目にする景色のいろいろがのんびりした気持ちにさせてくれます。

  6. 多田有花
    2020年3月11日 10:49

    お礼
    信之先生、正子先生
    「フェンスには鴎の形風光る」を3月9日の
    「兄弟の競いて春の丘登る」を3月10日の
    それぞれ秀句にお選びいただきありがとうございます。
    先日、姫路市の西部の海岸沿いにある網干なぎさ公園に行きました。
    人工の丘が作られており、その斜面を何度も小学生くらいの兄弟が競争で登っていました。
    麓からお母さんらしい人が見上げていました。
    人工の丘はいくつかあり、そのうちのひとつには中央に蘇鉄が植えられ、テラスの周囲の
    フェンスにはカモメと波があしらわれていました。
    暖かくて気持ちのいい海辺のひとときでした。