[11月30日]
★沸騰す薬缶の影よ冬はじめ/祝恵子
寒くなりかけたばかりのときは、湯気が恋しい。ストーブに薬缶を乗せ、その熱で湯を沸かしている光景を思い出すが、この句もそうだろうか。庶民生活の楽しさが詠まれている。(高橋正子)
[11月29日]
★黄落の山路辿れば杉木立/河野啓一
木々が黄葉している山路に心遊ばせながら辿る。ずっと黄葉の道が続くかと思うと、急に現れる青々と聳える杉木立。杉は寒さで赤みがかかっているものの、すっくと立つ姿に、黄葉した木々とは対照的な姿形。気持ちもきりっと引き締まったことだろう。(高橋正子)
[11月28日]
★蓮根と泥手を洗う小川かな/迫田和代
掘りあげた蓮根と、蓮田の泥に汚れた手を洗うのが、近くを流れる小川。わが家で食べるだけの蓮根か。リアルな光景が詠まれていよいよ歳晩となったことを実感させられる。(高橋正子)
[11月27日]
★夕茜栴檀の実が金色に/満天星(谷口望博)
栴檀の実に夕日があたり、金色になっている。作者の住む瀬戸内の夕茜は栴檀の実が熟れるころも明るい。「金色」と「夕茜」に詩情がある。(高橋正子)
[11月26日]
★抜き取りし下仁田葱のまるまると/小口泰與
上州の空っ風が吹く中に育つ下仁田葱は、丈が低く、直径3センチ以上はあろうかと思う太さが特徴。煮れば甘味がありやわらかい。抜き取って「まるまる」している出来栄えに、今夜の馳走が楽しみだ。(高橋正子)
★港から見ゆる冬月明るくて/高橋秀之
邪魔をする建物などない港は、波音が聞こえ広々している。港に見える冬月は、思う存分光を放ってことに明るい。冬のいい月の夜。(高橋正子)
[11月25日]
★見上ぐれば栴檀の実のくつきりと/満天星(谷口望博)
栴檀の実は、秋には金色に熟れる。葉を落とした枝に、花火が開いたような形に実をつけ、青空を背すれば、「くっきりと」その色や形が見れる。この句は、それを捉え、「くっきりと」の一語で情景を鮮明に表すのに成功した。(高橋正子)
[11月24日]
★白椿あおき蕾のそこここに/川名ますみ
白椿の木と知ってのこと。山茶花はそろそろ花を開きかけているが、椿はまだ。あおく固い蕾がそこここにある。寒い中にあおい蕾がいきいきとしているのをいると、精神が前向きになる。(高橋正子)
[11月23日]
★冬菜畑芽出しのみどり頼もしき/河野啓一
芽が出たばかりの菜のみどりが、元気であるのは、見ていて頼もしいものだ。特に寒い季節、冬なの芽が、稚いないながらも、みずみずしい「みどり」であるのは、頼もしいものだ。(高橋正子)
[11月22日]
★重そうな榠樝の実が宙に浮く/満天星(谷口望博)
榠樝の実は、葉が大方落ちころに黄色く熟れる。秋空の青の中に、形も色も目立つ。独特な形は、文人好みの風情があって、宙にあれば、目に見ただけでいかにも重そうだ。それを素直に詠んだのがすっきりとしていい。(高橋正子)
[11月21日]
★ビル街に新海苔の香老舗から/迫田和代
新海苔は十月ごろから採れるが、店にあらわられるのは十一月、十二月から。街はクリスマスやお歳暮商戦で賑わう。そのビル街の老舗から海苔のいい香りがしてくる。老舗の品がそのまま新海苔の品のある香りとなっている。(高橋正子)
★葉を落し桜冬芽の尖りけり/桑本栄太郎
桜が葉をすっかり落とすと、枝の姿があきらかになる。枝には、冬芽がしっかりと付き、芽の切っ先は尖って寒気をまとっている。これから冬を越そうというものの力強さ。(高橋正子)
コメント
御礼
信之先生
正子先生
11/21の★新海苔の句を 今日の秀句 にお選びいただき有難うございました。それに加えて正子先生のお優しいコメント嬉しいです。これからもよろしくお願いします。先生のご指導のお蔭でやる気充分です。重ねて御礼言わせてくださいませ。
御礼
高橋信之先生、正子先生
11月21日の今日の秀句に「葉を落し桜冬芽の尖りけり」
の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変
有難うございます。他の紅葉に先駆けて散る桜の木は
落葉して裸木になりつつあります。
その桜の木には既に来年へと桜の冬芽を育みつつあります。
これから寒さに向う時季に、桜冬芽は来たるべき春を
信じてしっかり耐える覚悟のようです。
御礼
高橋信之先生、正子先生
11/23の秀句に「冬菜畑」をおとりくだされ、正子先生のうれしいご句評も賜り,誠にありがとうございました。まだプランターで芽生えたばかりですが、青くぎっしりと詰まっており、励ましてやりたいようなような気がいたしました。
お礼
信之先生、正子先生、いつもあたたかいご指導をありがとうございます。
「白椿あおき蕾のそこここに」の句へ賜りました正子先生のコメントを、嬉しく拝読しました。近所の白椿の生け垣を、通るたび、楽しみに眺めております。蕾がいっぱいついた時、一つ二つ咲き始めた時。もうじき、それらがひらいて落ちる様を見られるのでしょう。何気なく詠んだ句でしたが、ご講評の「寒い中にあおい蕾がいきいきとしている」のお言葉に、その景の貴さを、深く感じることができました。
御礼
高橋信之先生、正子先生
11月26日の秀句に「下仁田葱」の句をお選びいただき、その上、正子先生には素晴らしい句評を賜わり、誠に有難う御座いました。
今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。
お礼
高橋信之先生、高橋正子先生
11月26日の秀句に港から見ゆる冬月明るくてをお選びいただきありがとうございました。
この日は特に月が明るくてきれいでした。
御礼
高橋信之先生、正子先生
11月29日の今日の秀句に「黄落の山路辿れば杉木立」をお選び下され、正子先生の有り難いご句評もお添ええくださいまして、厚く御礼申し上げます。今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。
御礼
信之先生
正子先生
11/28の小川の句を 今日の秀句 にお選びいただき有難うございました。昔のことです。正子先生のお優しいコメント嬉しいです。この間の 新海苔の句 正子先生の添削のおかげで歩き出した気がします。これからもよろしくご指導をお願い致します。
お礼
お礼
信之先生、正子先生、11月30日の秀句に「冬はじめ」をお選びいただきましてありがとうございました。ありがたい句評そのもので、湯気にさえ温かさを求めたい頃となりました。