11月10日(1句)
★小春日や銀杏梢のすでに散る/桑本栄太郎
小春日の陽ざしに映える銀杏もよく見れば、梢の黄葉は散って棒のような枝になっている。そんな梢も日に輝いて眩しいほどの景色。(髙橋正子)
11月9日(1句)
★立冬の快晴山野を輝かせ/多田有花
きっぱりとした立冬の景色がいい。立冬と言いながらも快晴で野山は日差しを受け生き生きとしている。(髙橋正子)
11月8日(1句)
★川波をきらきら光らせ冬に入る/多田有花
暦の上で立冬と聞けば、ものみな一斉に冬の気配に包まれる気がする。きらきらと光る川波の光の鋭さ。冬の明るい一景色がさりげなく詠まれている。(髙橋正子)
11月7日(1句)
★深秋の須磨寺に弾く一弦琴/多田有花
須磨寺は源平の戦にまつわるものが諸々ある寺。須磨寺の一弦琴は、須磨琴と呼ばれているようで、私はYou Tubeで初めてその音色を聞いた。曲は「三千世界」であったが、細い琴板に弦が一本張られ数人で演奏していた。素朴と言う音色でもなく、音数は限られ、独特のわびしさの残る音色に思えた。やはり、深秋が似合う音色と思えた。(髙橋正子)
11月6日(1句)
★秋惜しみいつもの道を一人行く/廣田洋一
なんでもないような読みぶりながら、人生の深さが淡々と詠まれていて、ひとり、しみじみとした気持ちになった。(髙橋正子)
11月5日(1句)
★日蔭とて光放てり石蕗の花/桑本栄太郎
石蕗の花の黄色は日蔭にあれば、「光を放つ」ほどの強烈な印象の黄色である。晩秋の小暗さに明るさを足してくれる石蕗の花の生命力自然体で詠まれている。(髙橋正子)
11月4日(1句)
★網棚に秋気残れり終着駅/弓削和人
終着駅で降りるときの特別な気持ち。網棚に置いた荷物を下すときに、物のあったところに残る気配。暗がりの網棚に残る秋気に終着駅の哀愁が感じられる。(髙橋正子)
11月3日(1句)
★紅葉や蒸気霧たつ沼に居り/小口泰與
蒸気霧は、水面の温度と空気との差が8度C以上あるときに発生するとされる。紅葉する沼に冷気が押し寄せたのだろう。沼からは霧が立ち上り、その中に居て、霧と一体となったような幻想的な世界を経験した。(髙橋正子)
11月2日(1句)
★秋の蝶小さき花壇を離れずに/廣田洋一
秋の蝶は花から花へ活発に飛び回るというより、ひとところの花をひらひらと光を撒くように飛んでいる姿をよく目にする。小さな花壇にやって来た蝶もそんな様子。秋の蝶の可憐な澄み切った姿がいい。(髙橋正子)
11月1日(2句)
〈奈良大菊人形展〉
★屋上の菊人形や山暮れて/弓削和人
菊人形は大勢に見られて華やかに輝いているが、屋上の菊人形は、日が陰れば陰り、山が暮れれば菊人形も暮れる。日暮れのわびしさが菊人形にも忍び寄る。(髙橋正子)
★屋上の菊人形や山暮れて/弓削和人
菊人形は大勢に見られて華やかに輝いているが、屋上の菊人形は、日が陰れば陰り、山が暮れれば菊人形も暮れる。日暮れのわびしさが菊人形にも忍び寄る。(髙橋正子)
★竜胆のふれれば傾ぐやわらかさ/川名ますみ
竜胆はいろいろな種類があって、背の高いものから、細い茎を草地に埋めて花を開くのもある。群生しない竜胆は日が差せば青い花を開く。ふれると傾くほどの青い花のやわらかさに寄り添いたい気持ち。(髙橋正子)
コメント
御礼
高橋信之先生
正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
11月2日の「秋の蝶小さき花壇を離れずに」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難うございます。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
御礼
高橋信之先生
正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
11月6日の「秋惜しみいつもの道を一人行く」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難うございます。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
お礼
信之先生、正子先生
「深秋の須磨寺に弾く一弦琴」を
11月7日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
先日、須磨寺を訪問する機会があり、源平の戦にまつわるいろいろなものに触れました。
一弦琴は須磨琴とも呼ばれ、保存伝承する会が須磨寺にあります。
繊細で幽玄な音色ですね。
御礼
高橋信之先生、正子先生
11月5日の今日の秀句に「日蔭とて光放てり石蕗の花」の句をお選び頂き、嬉しい過分なるご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
石蕗の花は色付きの花の少なくなる晩秋より初冬に掛けて咲き出し、日当たりの悪い場所でも明るい黄の光を放つように咲いています。
住まいのある団地の脇を抜けて、田園まで散策に出掛ける時によく見かけます。
お礼
信之先生、正子先生
「川波をきらきら光らせ冬に入る」を11月8日の
「立冬の快晴山野を輝かせ」を11月9日の
それぞれ秀句にお選びいただきありがとうございます。
立冬ころの姫路は毎年晴天が続きます。
紅葉が美しく一年で最も過ごしやすい時期のひとつです。
日は短くなってきましたが、それだけに昼間の光の輝きは印象深いです。
御礼
高橋信之先生、正子先生
11月10日の今日の秀句に「小春日や銀杏梢のすでに散る」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
小春日和の青空に余りにも映える銀杏を見上げましたら、梢は黄葉がすでに散り青空が透けて見えました。