今日の秀句/1月21日~31日


[1月31日]
白鳥へ無我の連写の入日かな/小口泰與
「入日」が効いている。写真に、白鳥の素晴らしい場面を残そうと連続でシャッターを押す。白鳥は一瞬の間に魅力ある動きを見せるから、狙って写しても間に合わない。「無我」となって撮るしかない。これは、多くのことに通じることだろうが。(高橋正子)

[1月30日]

★白鳥の雲より忽と飛来せり/小口泰與
曇り空か。雲の色よりやや白い白鳥が雲の中から忽然と飛来する。何かの精であるかのように。(高橋正子)

★梅つぼみ明日ひらく夜の紅薄き/川名ますみ
夜になって、ふと鉢植えの梅に目が行ったのであろう。今にも開きそうな梅の「紅薄き蕾」には、ときめくような春への期待が生まれる。(高橋正子)

[1月29日]

★馴染みたる杖の軽さよ日脚伸ぶ/小口泰與
使い慣れた杖も軽く感じる嬉しさ。日脚が伸び外光が明るくなるうれしさは、心身にも及ぶ。軽さがいい。(高橋正子)

[1月28日]

★寒中の梅が枝担ぎし男かな/多田有花
寒中の梅はまだ蕾も固いだろうが、それを男が担ぐ。「担ぐ」から推察できるのは、体躯頑丈な男。頑丈な男と寒中の梅は、風雅とは別のところで、通じ合うものがある気がする。「温かみ」だろうか。(高橋正子)

[1月27日]

★回り道気にかからずに日脚伸ぶ/河野啓一
寒い日であるにも拘わらず、日脚が伸びて外気は明るい。遠回りとなる道も意に解さず、日脚の伸びた明るさが嬉しくて楽しむ。(高橋正子)

[1月26日]

★冬嶺や毎朝磨く古机/小口泰與
毎朝、仕事の前にであろうが、長年使い古した机を磨く。机を置いた窓からは凛然とした冬の嶺が見える。このささやかなことが、生活の張にもけじめにもなる。(高橋正子)

[1月25日]

★寒林の凛と続けりバス通り/桑本栄太郎
いつものバス通りさえも凛と冬木の木立が続く。「凛と」となれば、寒も極まった木々だ。人も自然も寒さに凛と立ち向かう。(高橋正子)

[1月24日]

★麦の芽や犬と駆け来る都会の子/小口泰與
「麦の芽」に置かれた「都会の子」が新鮮。犬と駆け回れる自由さを得た「都会の子」にとっても麦の芽が揃い伸びる畑は新鮮であろう。(高橋正子)

 男子駅伝
★雪空へ跳び発つ走者胸光る/佃 康水
駅伝はそれを応援する市民にとっても走者との一体感が生まれるスポーツ。襷を受けて雪空へ跳ねるように走り出た走者の胸が光る。走者を送り出す応援の気持ちが輝いている。(高橋正子)

[1月23日]

★花菜摘む二人の昼餉に足りるほど/古田敬二
花菜は、いかにも春らしいもの。二人の昼餉はささやかであろうが、足るだけの菜花にささやかな華やぎも。(高橋正子)

[1月22日]

★一月や格調高き龍太読む/谷口博望(満天星)
一月は年の始めの月。心あたらに俳句に精進しようと思い立つ月でもあろう。そんな一月はやはり、飯田龍太の格調の高い句をしっかりと読んで姿勢を正す気持ちになる。「一月の川一月の谷の中/飯田龍太」を思い出す。(高橋正子)

[1月21日]

★軽鴨のつがい凍れる池の隅/多田有花
軽鴨のつがいの二羽が、薄氷の張った池の隅で凍りそうになって、寒さに耐えている。軽鴨の健気な姿が愛おしい。(高橋正子)


コメント

  1. 多田有花
    2016年1月22日 17:36

    お礼
    信之先生、正子先生、
    「軽鴨のつがい凍れる池の隅」を1月21日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    暖冬とばかり思っていたら、ここ数日の急激な寒さ。
    カルガモの動きがいつもより鈍く感じられました。

  2. 小口泰與
    2016年1月25日 13:08

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    1月24日の「麦の芽」の句を秀句にお選びいただき、その上正子先生には素晴らしい句評賜わり有難う御座いました。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。

  3. 佃 康水
    2016年1月25日 20:09

    御礼
    高橋信之先生 高橋正子先生
    1月24日の今日の秀句に「雪空へ跳び発つ走者胸光る」の句をお選び頂き、また正子先生には素晴らしい句評を賜り感謝申し上げます。今年の広島駅伝は極寒と言われる程寒くなり、特に応援に出た宮島口を通過する時刻には強い雪が降り始めて選手の頑張りに観客は大拍手でした胸の郷土の番号が光っていました。

  4. 桑本栄太郎
    2016年1月26日 19:20

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    1月25日の今日の秀句に「寒林の凜とつづけりバス通り」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う
    ございます。
    帳尻合わせのような寒波到来ですが、この厳しい寒さの中でも、今の時季ならではの詩情溢れる光景はあるものですね?
    少し遠回りとなるバス路線に乗って、桂駅まで出ました。途中に銀杏並木の暫くつづく通りがあり、絵葉書にでもしたいほどの美しさでした。

  5. 小口泰與
    2016年1月27日 13:13

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    1月26日の秀句に「冬嶺」の句をお取り上げいただき、その上正子先生には素晴らしい句評を賜わり厚く御礼申し上げます。
    今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。

  6. 河野啓一
    2016年1月28日 18:33

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    1/27日の今日の秀句に{日脚伸ぶ」の句をお取り下され、正子先生の嬉しいコメントも賜りまして誠に有り難うございました。日脚が長くなってきた近頃、少しくらいの寄り道はまったく気にならなくなってまいりました。
    今後ともご指導の程よろしくお願い申し上げます。

  7. 小口泰與
    2016年1月30日 10:21

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    1月29日の今日の秀句に「日脚伸ぶ」の句をお取り上げいただき、その上正子先生には素晴らしい句評をたまわり厚く御礼申し上げます。
    今後ともよろしくご指導の程お願い致します。

  8. 小口泰與
    2016年1月31日 12:45

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    1月30日の今日の秀句に「白鳥」の句をお選びいただき、その上、正子先生には素敵な句評を頂き有難う御座います。
    今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。

  9. 多田有花
    2016年1月31日 20:54

    お礼
    信之先生、正子先生、
    「寒中の梅が枝担ぎし男かな」を1月28日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    今年はいつになく梅が早く咲きだし、ぽつぽつと花のついた枝を担いでおられるのを見ました。
    男性と花というのはいいものだな、と思います。

  10. 小口泰與
    2016年2月1日 13:09

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    1月31日の「白鳥」の句を今日の秀句にお選びいただき、、その上、正子先生にはうれしい句評を賜わり厚く御礼申し上げます。
    今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。

  11. 川名ますみ
    2016年2月9日 20:26

    お礼
    信之先生、正子先生、いつも温かいご指導をありがとうございます。
    「梅つぼみ明日ひらく夜の紅薄き」の句に賜りました正子先生のご講評、大変嬉しく拝読しました。暖冬から急に寒さが戻ったおかげで、梅が一輪ずつ、ゆっくり咲いてゆきます。つぼみも花も長く楽しむことができ、春へのときめきも、いっそうです。