[12月9日~15日]
▼12/15
●小西 宏
老いじみて厚き布団に明けを待つ★★
落ち葉積む里山深き小鳥影★★★
年忘れの友と別れて車の灯★★
●小川 和子
蓮掘られ肌色ひかる荷の届く★★★
掘りたての蓮根は、泥を水で流せば、蓮根の肌色が光る。いかにも新鮮な荷だ。(高橋正子)
鳴門手掘りという蓮根を天ぷらに★★★(信之添削)
蓮根掘る農園の写真添えられて★★★
●川名 麻澄
裸木と檻の向こうに雲なき空★★★★
檻も裸木も言ってみれば黒い線。無機的ながらもニュアンスの違う黒い線の間の青空が面白く、裸木も一種檻柵のように思える。(高橋正子)
青空に銀杏黄葉とフラミンゴ★★★
動物園の檻に絡まる落葉あり★★★
●多田 有花
木版画の淡き色合い冬の暮★★★★
もの暗い冬の暮に、木版画の淡い色彩が浮きたって、押し詰まった暗さに温かみと明るさを与えて和むものがある。(高橋正子)
冬の雨降る音を聞く夜明け前★★★
まだ少し新車に慣れず日短か★★★
●佃 康水
伐採の竹林冬の日矢とどく★★★
落葉掻く庭へ零るる群れ雀★★★
万両や奥まる庭へ真っ赤かな★★★
●迫田和代
楽しみね何時もの道に冬日射し★★★
来春の艶を残して桜散る★★
杵突きの音も懐かし年の暮れ★★★
●小口泰與
夕映えをたまわる雪の浅間かな★★★
大根引く赤城の裾野吹きさらし★★★
背を押され枯葉と駆けし風下へ★★★
▼12/14
●藤田裕子
湯気立てて私の時間愉しめり★★★★
「愉しめり」がいい。「私の時間」がいい。主婦の日常を詠んだ、作者のささやかだが、充実した生活が伝わってくる。この句を読めば、読者も「愉しめり」の境地になる。(高橋信之)
イルミネーション冬の夜空に夢描き★★★
冬の朝厳しさ迫る遠き山★★
●小西 宏
風寒く晴れいて空に広き道★★★★(正子添削)
下五の「広き道」の解釈が難しいが、良寛が子どもの凧に書いた「天上大風」を思い、天上の「広き道」と解した。地上の「広き道」との解釈も可能だが、凧が揚がり、飛行機が飛ぶ大空の「広き道」である。(高橋信之)
冬晴れに丹沢霞む西明かり★★★
冬の夜に割って歯に触るチョコレート★★
●佃 康水
焚火して段取り話す浜漁師★★★★
冬の漁師浜は、寒さこの上なく、流木などを集めて焚火をする。漁の段取りの話も焚火を囲めば、いろいろ出てくることだろう。(高橋正子)
陽を湛え紅さす梅の冬芽かな★★★
風尖る家路へマフラー深く巻く★★
●小口泰與
あけぼのの雨を弾きし青木の実★★★★
青木の実はやや楕円形で、つやつやと真っ赤に熟れる。あけぼのの冷たい雨を弾けば、艶も赤さも増して一層輝く。(高橋正子)
群雀群れて降りたる冬田かな★★★
寒菊の此処のみ日矢の射しにけり★★★
▼12/11
●迫田和代
初雪や原爆ドームの空に舞う★★★★
初雪はどこに降っても感動のあるものだが、とりわけ原爆ドームの空に舞うときは、さまざまなことが脳裏に浮かぶ。焼けたドームに透ける空に詩情がある。(高橋正子)
道端に咲ける野菊をただそれだけを★★★
一本の続く雪道に赤い傘★★★
コメント
お礼
信之先生、★印のご指導を頂きありがとうございます。
正子先生、「冬の暮」に大変うれしいコメントを頂戴し感謝申し上げます。
お礼
信之先生
正子先生
(初雪や)の句に★4つをいただき嬉しくただそれだけを見ていました。それだけでなく★3つ 2つもとても良い勉強になり喜んでおります。有り難うございました。
お礼
信之先生、正子先生
★のご指導有難うこざいます。
信之先生には「てんぷらに」の句に添削頂きありがとうございました。正子先生には「「荷の届く」の句に温かい評を頂きお礼申し上げます。