「いには」2月号「現代俳句散歩」に「角川俳句12月号ー「冬の星」より」の髙橋句美子さんの句を鑑賞頂きました。
(「いには」は印旛の古語ということです。)
「現代俳句散歩」
ひめみや多美
毬栗の青々として実がずっしり 髙橋句美子
美しい黄緑色の毬栗を同じ色の葉に重ねて実らせた栗の木は、
明るい未来を確信したような輝きに満ちている。実の重さに
よって少し撓んだ枝はどうだといわんばかりに両手を広げた
姿のようだ。本格的な秋の訪れがますます楽しみになる。
色鳥をそっと爪先立ちて見る 髙橋句美子
美しい羽色の鳥を見つけた。落ち葉や枝を踏む音に驚いて飛ん
でいってしまわぬように、そっと爪先立ちをして見つめる。し
かしその美しさに思わず感嘆の声がもれそうになり、そっと口
元を押さえた。感動の時間が静かに流れる。自然への優しい視
点を持つ作者の姿が浮かぶ。
花冠No.372(2025年1月号)から以下の3名の句が紹介されました。
おめでとうございます。
ご味読ください。
蟋蟀の声のどこから列車待つ/高橋秀之
リツトウの響きの通り冬来る/川名ますみ
出迎えの薄羽きとんぼ市営墓地/上島祥子
投稿者
①多田有花
愛媛新聞に掲載されたみなさま、おめでとうございます。
蟋蟀の声のどこから列車待つ/高橋秀之
・鉄道旅行がご趣味でしたね。まだ昼間は厳しい残暑が続く頃、それでも夕暮れ時は確実に早くなり日が暮れるとどこからかコオロギの声が聞こえてくるようになりました。秋の訪れを肌で、耳で感じるひとときです。
リツトウの響きの通り冬来る/川名ますみ
・立冬、りっとう、リットウと日本語の文字をいろいろに変えて綴ってみると雰囲気の違いがわかります。リットウという固い響きにはカタカナがもっともふさわしいでしょう。
出迎えの薄羽きとんぼ市営墓地/上島祥子
・ウスバキトンボはお盆の頃に成虫が多く見られます。そのため「精霊とんぼ」などとも呼ばれます。お墓参りに行かれたのでしょう。ご先祖様が「待ってたよ~」と精霊とんぼに身を変えて出迎えてくださったようですね。
感想やコメントをありがとうございます。読ませていただいています。
総合俳誌「俳壇」2月号(2025年1月14日発売)に弓削和人さんの新作6句が掲載されました。和人さんおめでとうございます。下のコメント欄にコメントをいただければ幸いです。
2025年1月10日
花冠代表/髙橋正子
「窓枠の星」
弓削和人
露草の小径はどこも憩うとこ
窓枠に星の散りゆく夜さむかな
本棚のぬくみの色の木の実かな
雪あられあうんに日差しさしにけり
光沢を沈めるグラス雪の夜
踏切の明滅残す枯野かな
《コメント》
最新⑥多田有花
弓削和人さま、俳壇2月号への掲載、おめでとうございます。
露草の小径はどこも憩うとこ
・ツユクサの青色の深い色は残暑のなかでほっとした空気を感じさせてくれます。憩う所であるなあ、と共感いたします。
窓枠に星の散りゆく夜さむかな
・北国であれば秋の終わりともなれば来る雪の季節に思いを馳せられることでしょう。星の輝きが冴え始めれば晩秋です。
本棚のぬくみの色の木の実かな
・木の実の色を「本棚のぬくみ」と表現されたのがユニークです。書に親しみ書を友として日々を送りつつ、自然もまた愛でておられる様が伝わってきます。
雪あられあうんに日差しさしにけり
・雪あられが舞い、その合間に弱い日差しが差してくる、北国ならではの光景ですね。
光沢を沈めるグラス雪の夜
・ブランデーグラスを想像しました。高級ウイスキーの入ったカットグラスかも。ひとり静かにグラスを傾けつつ思索に吹けられている窓の外はしんしんと降る雪です。
踏切の明滅残す枯野かな
・枯野を貫く一本の線路、列車が来てやがて去っていきました。それでもまだ列車の音、遮断機の音、点滅する信号の光などが心の中に長く残っています。
最新⑤廣田洋一
弓削和人さん
俳壇2月号への掲載大変おめでとう御座います!
露草の小径はどこも憩うとこ
青い小さな露草には気分が癒される。露草は良く小径に並び咲いており、一つ一つに癒される。この感じをどこも憩うとことしたのが上手い。
①吉田 晃
弓削和人さん「俳壇」への掲載おめでとうございます。どの句からも落ち着いた日常生活が感じられ、読み手の気持ちも落ち着きます。
★露草の小径はどこも憩うとこ
露草はふる里を想い起こさせてくれる懐かしい花。散歩の道に咲いた露草を見るにつけ、故郷が思い起こされるのでしょう。
★窓枠に星の散りゆく夜さむかな
窓に映る冬星が光りながら夜の寒さに散ってゆく。作者はその窓から「冬の星座」を眺めておられるのでしょう。唱歌の世界を懐かしく思い起こさせてくれます。
②柳原美知子
★窓枠に星の散りゆく夜さむかな
★光沢を沈めるグラス雪の夜
二句ともに詩的で、冬の夜、雪の夜の清冽さと静けさの中のきらめきが感じられ、心惹かれます。
★踏切の明滅残す枯野かな
踏切の明滅と列車の通過する音が目に耳に残り、枯野の寂寞が一層感じられます。
③高橋秀之
★露草の小径はどこも憩うとこ
露草の小径は自然を感じて、まさに憩う気持ちにさせてくれます。最近、都会では見かけることも少なくなりましたが、だからこそこういう雰囲気を大切にしたいです。
★窓枠に星の散りゆく夜さむかな
窓枠に星の散りゆくという表現が素敵に感じます。きっと夜さむの冬ならではの澄み切った夜空の星なんでしょう。
④桑本栄太郎
弓削和人さん、俳壇2月号への掲載大変おめでとう御座います!!
★窓枠に星の散りゆく夜さむかな
晩秋の夜さむの日に、窓枠を通して星空を眺めて居ります。時折星が流れれば、如何にも寒さを覚える作者が見えます。
★光沢を沈めるグラス雪の夜
光沢のあるカットグラスにお酒を入れ、しみじみ飲んでいる光景が想われます。「光沢を沈める」との措辞と「雪の夜」との季語が効き、寒く手も一時寛ぐ心情が良いですね!!
★踏切の明滅残す枯野かな
お家の中より、遠くに見える枯野の中の踏切のようですね?時折り列車が通りその度に明滅が見えます。哀愁のある枯野の中の踏切が良いです。