小西昭夫の(続)愛誦百句 17
雪山を見渡してから滑りだす 髙橋句美子
スキーの句なのだろうが、いかにも気持ちのいい句である。リフトでゲレンデの上にのぼり、さあ、滑るぞという喜びがあふれんばかりに伝わってくる。すぐに滑るのではない。まず、雪山を見渡すのだ。そこで大きく深呼吸をし、気持ちを整えてから滑りだすのである。休日の一コマなのだろうが、若々しさが眩しい。
句美子の句を母で「花冠」の主宰である髙橋正子は「句美子さんの俳句は、写生を重視するが、写生というよりも写実の句で、それが平明で、軽やかである。口語を多く使って、やや散文的であることに特徴がある。生活と俳句が不即不離の関係にあって、俳句が日常の生活から浮いていないのがいい。」と評している。『手袋の色』所収。
髙橋句美子は1983年(昭和58)年愛媛県松山市生まれ。父は愛媛大学名誉教授だった髙橋信之。ドイツ語の教授だったが、旧制松山高校俳句会の伝統を受け継ぐ愛媛大学俳句会の指導者だった。母の正子も愛媛大学俳句会の出身である。句美子が誕生したのは父信之が主宰誌「水煙」を発行した二日後の九月三日であった。こんな環境なので句美子第一句集『手袋の色』には四歳からの句が記録されている。慶應大学俳句会にも参加し、現在は「花冠」編集長。水煙(現花冠)新人賞受賞。神奈川県横浜市在住。
「100年俳句計画」No.314 1月号 より
コメント
御礼
高橋句美子様の御句を拝読させていただきました。
大変勉強になり感謝申し上げます。
有難う御座いました。
泰與さんへ
句美子さんの句、コメントを読んでいただき、ありがとうございます。書いてくれた小西昭夫さんは、信之先生の俳句の教え子です。松山で、子規新報を出して活躍しています。