1月27日(木)

★レモンの香潮の香混じり牡蠣を食ぶ   正子
先生は広島のお生まれと伺っています。今が旬の牡蠣は広島の名産とのこと、レモンの香りや潮の香の中に故郷のことを懐かしく思い出していらしゃるのでしょう。(黒谷光子)

○今日の俳句
通過する故郷の駅も雪の中/黒谷光子
列車で通り過ぎる故郷の駅。故郷への思いと、雪の中の駅が重なり、抒情の深い句となった。(高橋正子)

1月26日(水)

★寒の陽のあたる橋なり渡りたし   正子
凍てつく様な厳しい寒い日中、散策して居るとそこに太陽の燦々と降り注ぐ橋が見えてきた。「寒の陽のあたる橋なり」の措辞には今しかない物に出会えた喜び。そしてほっと心癒されるその温かさに惹かれ「渡りたし」と一瞬のそのままの気持が強く現されて居る様に思います。 (佃 康水)

○今日の俳句
遠山の晴れて冠雪確とあり/佃 康水
よく晴れて、雪を冠った遠くの山々がくっきりと輝いている。確とある大きな自然に向かったときの晴れ晴れとした気持ちがよく出ている。(高橋正子)

1月25日(火)

★波立てば鴨の勇みて泳ぎけり   正子
池や川など穏やかな水面を、ゆっくりと浮きゆく鴨。けれど、風か獲物か、そこに波が起こる時には、鴨も勢い込んで泳ぐのですね。「勇みて泳ぎけり」の強さから、水と鴨が同時に動く、自然が一体となって力を発する瞬間が実感されます。(川名ますみ)

○今日の俳句
何もない寒空を昇ってゆく鳶/川名ますみ
何もない寒空は、雲さえも、音さえもないということ。澄みきった寒の青空に吸い込まれように昇る一羽の鳶が、静謐な寒青空を印象付けている。(高橋正子)

1月24日(月)

★北風吹ける湖を見ていて湖動く  正子
かなり強い北風に湖が白く波立っているのかもしれません。いつになく激しい水面の動き、それが湖が動くように見えた、その一瞬の感動を詠っておられます。 (多田有花)

○今日の俳句
北風去れば静かに青き空残る/多田有花
「北風」と書き、俳句では慣例的に「きた」とも読ませる。北風が塵を吹き払い、後に青空が残る。「静かに青き」は作者の心境でもあって、静謐な青がよい。(高橋正子)

1月23日(日)

★水仙の枯れし終わりを折りて捨つ  正子
清らかに咲き、楽しませてくれた水仙もやがて枯れる時がくる。その後は、また来年咲くのを待って、葉だけを残し花と花茎を折り取るのでしょう。「枯れし終わりを折りて捨つ」とあまりにもぶっきら棒に見えますが、却って愛惜の思いが強く残ります。その咲き終え衰えた花をそのまま残しておくのはあまりにも痛ましいから。(小西 宏)

○今日の俳句
空ありてガラスに透ける冬木立/小西 宏
窓ガラスに青い空が透けて見える。そこに冬木立ちがきりりと立つ様子が新鮮。(高橋正子)

1月22日(土)

★寒夕焼一日の色を鎮めきる  正子
少し高台からの眺めでしょうか。寒夕焼けが広がっていき、今日一日を締めくくる色合いとなってきて、暮れていったのでしょう。(祝恵子)

○今日の俳句
オーバーを脱ぎ捨て走る皆走る/祝恵子
原句は「オーバーは」の「は」は「を」とすべきところなので添削。下五の「皆走る」が効いた。これで、子どもたちが、元気いっぱいに群れて遊んでいる様子がわかる。河川敷などで見かける光景だろう。口語俳句のよい例。(高橋正子)

○20日は大寒ではあるが、近くの金蔵寺の梅が開いているか見に出かける。郵便局に用のある信之先生が先に出て、そのあと後れて金蔵寺へ向かう。金蔵寺には誰もいない。境内はよく日当たって、ことに水仙の花があちこちに咲いてすがすがしい。梅は小さな木に白梅と紅梅がよく咲いている。剪定されて、風情としては物足りない。いつのまにか、信之先生が現れる。私のあとを付いていたらしいが。境内を出て墓地の入り口の廃家に梅の大きな木があり、それを見にゆくが、蕾みは固い。

 金蔵寺五句
白梅の花びらほどに身の軽し   正子
すっきりと根元より立ち水仙花  正子
蕾固き野梅これから咲くたのしみ 正子
水仙と梅のほかなき寺の庭    正子
寺の戸のぴしと閉められ水仙花  正子 

○夜夜月を見ているが、氷る月とはよく言ったもので、氷のような光と色の月が大寒の20日は、満月となる。
月氷るヨーロッパもかくあるか 正子
月氷る森よりはるか上に出て  正子
氷る月見るわが貌の青からむ  正子

○松山の印刷所の花冠担当の浅井さんが、俳句を三句作ってメールで送ってくれる。正子の添削教室に書き込みコメントをする。浅井さんは、二十代。子どものときに俳句は作ったことがあるそうだ。松山では、夏休みの宿題などで俳句が課されるので、俳句を作ることに抵抗はないらしい。「子ども俳句」に長年関わっているが、もともと子どもはリズムのある言葉が好きであるから、子どものときに俳句を作らせておくことも「抵抗感」を少なくする上で役立っている。何でも、少し経験していることが、のちのちの攻めに効くようだ。

○21日に花冠3月号を校了。校正を早めに済ますことができたので、3月号が出来上がるのは、2月早々であろうか。毎月の編集作業が滞ることなく、予定通りに捗る。

○俳句雑誌「花冠」連載記事「俳句の風景」
http://kakan.info/km/genko/fukei.pdf

○俳句雑誌「花冠」3月号/電子書籍
http://kakan.info/km/k1103/
○俳句雑誌「花冠」3月号/ブログ版
http://blog.goo.ne.jp/kakan12/
○俳句雑誌「花冠」バックナンバー/電子書籍
http://kakan.info/km/ekakan.htm

1月21日(金)

★寒厨卵も餅も白ほのと  正子

○今日の俳句
枯野にもほのかに朱かきもののあり/小口泰與
枯野となっても、枯一色ではなく、薄にしろ、ほかの草にしろ、ほのかに朱をもっている。「もののあり」と、多くを述べないので、却って句に膨らみと深みがでている。(高橋正子)

1月20日(木)

★寒林を行けばしんしん胸が充つ  正子
広々とした冬の林を通られたのでしょう。身を切るような寒さの中にも落葉を踏み裸木を見上げて歩けば、来る春の様子も想像され自然の摂理にあたたかい気持ちになられたのだと思います。また厳しい寒さを歩かれ却って満ち足りた気持ちになられたとも想像します。(黒谷光子)

○今日の俳句
冬満月湖も山野も包み込み/黒谷光子
満月が湖を照らし、なおかつ山も野も照らすのをふところうちに入れて「包み込み」と詠んで、句が大きい。冬満月の煌々と照る光が美しい。(高橋正子)

1月19日(水)

★日は燦と冬芽の辛夷生かしめて  正子
麗かな冬の日、辛夷の芽が萌え出ているのを見つけました。燦々ときらめく冬陽が辛夷の冬芽に降りそそぎ、その萌え出づる力をより一層強くしているように見えました。(藤田裕子)

○今日の俳句
白菜のみどりを重ね強く巻く/藤田裕子
白菜の緑は淡い緑から、次第にいろを濃くしているが、幾層もの緑を重ねて、しっかりと玉を結ぶ清冽さがいい。(高橋正子)

1月18日(火)

★枝打ちの銀杏冬芽が地に弾み  正子
冬の枝打ちの銀杏の木にも冬芽があります。自然の生命力の強さを感じさせてくれます。 (高橋秀之)

○今日の俳句
冬草に海の青さが押し寄せる/高橋秀之
海の岸辺近くの冬草。日にかがやく海の青が強くて、冬草にまでその光が及んでいる景。テーマは「冬草」で、添削はテーマをはっきりとさせた。(高橋正子)