晴れのちくもり
●ようやく晴れて、午前中は気持ちよい風が吹いた。正午ごろから、また曇ってしまった。でも梅雨明けは近いらしい。
●俳壇8月号に掲載された正子5句について、花冠同人の皆さんから温かい応援と思えるようなコメントを頂いた。感謝につきる。
今回は「生活詠」のお題を俳壇からいただいた。8月号ということも考えて、「夏休み」の句を作った。思い出の句というよりも、作っていなかった句という手触り。昨日の出来事として事実がはっきりとしてきた感じだった。始めて作った句から一か月以上の間違う句になったり、表現がずいぶん変容して来て、最終的に今回の5句になった。詠みたいように詠めたことにほっとした。
「夏休み」 高橋正子
夏休み窓を横切る船の音
田溝のぞく子らに吾子いて夏休み
三つ編みも腕も日焼け宿題す
笊にあげ緑さしたる冷そうめん
遠花火草に座りて子供らと
好きな句と感想
〇小口泰與
私の好きな句は「遠花火草に座りて子供らと」です。
お子様たちがまだ小さい時の素敵な思い出が詠まれていて、とても素敵な句ですね。
夜空にまさに花と開く鮮やかさと、一瞬のうちに消えてしまう花火を川岸の草の上からご家族そろって見ているほほえましい光景が目に浮かびます。心が洗われる素敵な句ですね。有難う御座いました。
〇古田敬二
夏休み窓を横切る船の音
夏休みが始まって学校へ行く準備を急ぐこともなく子供たちの朝の騒がしさもなく静かである。そんな時、港から船の音が聞こえる。この音を合図に夏休みの朝が始まる。
〇高橋秀之
どの句も素敵な句ですが、普段の生活になじみが深いこの句を選ばせていただきます。
夏休み窓を横切る船の音
船の音はきっとエンジンのリズミカルな音なのでしょう。夏休みで在宅している窓の外をリズミカルな音が横切っていく風情がのどかです。
〇多田有花
俳壇プレミアシートに掲載された五句、いずれもお子様が小学生時代の夏休みの一コマを詠まれています。「良い俳句は良い生活から」の花冠のモットーが示された秀句と思います。
笊にあげ緑さしたる冷そうめん
夏休みのお昼に冷そうめんはぴったりです。そうめんだけでなく、窓から入る風、蝉の声、庇の作る影、戸外の日差しなど夏休みを形作るさまざまなものが目に浮かんできます。自分自身の小学生の頃の夏休みの日々も思い出されました。
〇桑本栄太郎
どの御句も誰にでもある自身の夏休みの想い出、あるいは子供が小さな頃の夏休みの想い出が凝縮され、懐かしくも微笑ましい御句ばかりです。その中でも特に下記の句に惹かれました。
田溝のぞく子らに吾子いて夏休み
夏休みともなれば、近所の子供たちはそれぞれ手網(たも)を持ち、近所の田の溝川へ小魚掬いです。その中に、吾子もいて夏休みを楽しんでいます。
笊にあげ緑さしたる冷そうめん
一瞬戸外の緑蔭のもとでの、そうめん流しを想起しました。流れて来る白いそうめんも緑に映えています。子供らも嬉々として楽しみ、良い夏休みの想い出です。
〇廣田洋一
どの句も、夏休みの楽しい思い出を呼び起こす素敵な句ですが、特に下記の句に惹かれました。
笊にあげ緑さしたる冷そうめん
夏は、よく昼食に冷そうめんを食べるが、「緑さしたる」とあるので、屋外で流しそうめんをしてると思いました。緑に囲まれた庭で、子供らが歓声を上げながらそうめんを掬ってる景色が見えてきて、夏休みらしい楽しい句だと思います。
〇藤田洋子
夏休みならではのお子様とのお暮らしから生まれた5句、どれもとても好きです。とりわけ
「遠花火草に座りて子供らと」
〝草に座りて〟に、夜空の花火との遠近感とともに、初秋の夜気の静けさを確かに感じとれます。お子様と寄り添いながら眺める遠花火の、叙情豊かなひとときです。
〇川名ますみ
誰もが想い出す景色を、誰にも思いつかない意外な視点で詠まれていて、はっといたしました。「音」が横切る窓、「子ら」の中の吾子、「三つ編み」の日焼け、優しくも鋭敏なまなざしを感じます。
遠花火草に座りて子供らと
高台の原っぱでしょうか。花火大会を見られる近所の穴場にいらした、ご家族が浮かびます。喧噪から距離を置き、夏草のエネルギーにふれながら、花火を楽しまれたのでしょう。遠くに望む打上花火と、草に座る感触、家族の笑み、遠近に渡る五官が優しくつながります。
〇吉田晃
素晴らしい五句、何度も読みかえしております。特に「遠花火」のくは大好きな一句でして、私もこのような句が詠めるようになりたいと思っているところです。正子先生の新しい作風をみたような気がしてうれしく思っております。
〇柳原美知子
家庭のあたたかさ、親子で自然と触れ合いながらゆったりと過ごす夏休みの豊かさが感じられる「夏休み」の5句です。懐かしい気持ちで読ませていただきました。
好きな句は「遠花火草に座りて子供らと」「三つ編みも腕も日焼け宿題す」です。
「遠花火」の句は闇の中に静かに開く遠花火を水の匂い、草の匂いに囲まれて、無言で見つめる親子の息が聞こえてきそうです。自然の中で、ゆったりとした気もちになって親子で過ごす至福のひとときですね。
「日焼け」の句は幼い頃の句美子さんの姿が彷彿とされます。元気に日焼けし、少し逞しくなった我が子の成長を見守る優しい母の視線が感じられます。
〇祝 恵子
高橋信之先生、正子先生、いつもお世話になりありがとうございます。20日俳壇8月号いただきました。正子先生の句の掲載、おめでとうございます。ハガキもありがとうございます。
両先生どうぞご自愛くださいませ。