曇り。裏道にきのうの雪が残る。
春の雪解けてレンガのあかあかと 正子
塵取りに春の雪解け水たまり 正子
春雪に花びら研げり金魚草 正子
花に雪積りては花を透明に 正子
幾たび窓を開けてもさつさつ春の雪 正子
大根の皮にビタミンCが豊富と知りつつ
Cを捨てつつ春大根の皮を剥く 正子
●句集『踝』(近澤有孝著・2020年3月31日刊・喜怒哀楽書房・800円)
が信之先生宛送ってこられる。踝は「くびす・きびす」と読むのか。三次市在住、篠同人。とある。詩を書いてこられたようだ。全然知らない方。
あとがきには経歴もないので、作品でのみ読むしかない。評伝的、伝統的な読みはできない。ただ読んでの印象。
三次の「鵜飼い」「鮎」、「里神楽」は、作者の心情が出ていると思う。詩を書く人と俳句を作る人の違いは、そのdetailの扱いだと思う。言葉とリズムにはソツがないが、それでかえって言葉が滑っているように思える。例えば「七草にひとつ足りない粥を焚き」。
題名は「鈴虫の鈴振りたるを踝できく」から採られている。
好きな句
ハモニカの錆びたブレスや金鳳花
踏青やいずれ故郷を忘れたる
熊蝉や橡の一樹を音叉とし
鵜飼してとりとけものの夢のあと
錆鮎をほぐせば骨はひとすじに
みづをまとひ落鮎まさに火中へと
雪。
●きのう、山間部は雪と予報が出たが今朝新聞を取りに出ると雪。シャリシャリと降っているが霙ではない。駐車場の車の屋根に雪が積もっている。牡丹雪というより、まさに春の雪。
●NHKラジオの「音楽の泉」を担当されている皆川達夫さんが、今日で担当を降りるとのことで、驚く。1988年から今朝まで、32年間担当。聞き逃すことも多いが、音楽の泉を聞くのは日曜の朝の楽しみだった。皆川さんが体調不安が原因で降板といわれたが、92歳まで本当に長く西洋音楽を紹介してこられたのだと思う。来週からは奥田佳道さんらしい。
●元からきのう「今日はスーパーに食品は普通にあったから、心配いらない。」とメールが来た。大人だけの暮らしならともかくも、小さい子供がいる家で食品が買えないなんて言語道断。句美子は、食品は東急スーパーにお惣菜や冷食などがあったので心配はいらないとメールがくる。戦争中でもないのに、人の心理だけでものが必要なとき、必要なものが買えないことになっている。
テレビで納豆がよいといえばたちまち納豆が店頭から消える。バナナがいいといえばバナナが消える。トイレットペーパーがないといえば、それが消える。顔を見ればみんなひきつっている。
晴れのち曇り。夕方から冷え込んでくる。山間部は雪の予報。
●歯の定期健診。
●新型コロナウィスルの感染者が東京都で特に拡大、院内感染が半数という。感染者が一日全国で100人を超えた。今週末首都圏の5県に外出自粛が出されている。スーパーから食品が消えている。例えば、生うどんを主婦一人が2箱(20個)買っている。食品業界は、食品は次々製造しているから大丈夫と言っているが、現に品物がないのを見ればますます買いたくなるのが人情ではなかろうか。
●「神奈川県現代俳句協会報」(N0.147令和2年3月25日発行)が届いている。その紙面に第37回神奈川県現代俳句協会俳句大会の講演「名句で読み解く表現史―ナラトロジーの視点から」(川名大 先生)があった。令和元年1月23日、かながわ県民センターにおける講演だ。
ナラトロジーによる文学分析が流行っているのではないかと思うが、俳句のような短いものでナラトロジーの分析に耐える句が普通できるだろうか。また逆にナラトロジーで俳句を分析して面白いだろうか。「テクスト論」って、西洋の理論じゃなかろうか。伝統俳句にこれをあてはめるとは、どういうことか。俳句がすでに伝統を離れているということにしかならない。
講演の文中に、川名氏は老教授と若手研究者の文学バトルの例を挙げている。
老教授「芥川龍之介は若くして母親が発狂して、さらに養子にだされた、そういうことが人生に暗い影を落とした。」
若手研究者「あなたのやっていることは、文学研究ではない。」「ナンセンス。」
昭和50年代、この若手研究者に私も出会った。研究のことではない、日常のことだが、まったく、体の髄から、こうなのだ。食事を出し、酒を出す主婦としては、弱ると言えば弱るが、
思い出す若手研究者と言えば、色白で指なんか華奢で、色つきカッターシャツの第一ボタンをはずし、細い縁の大きめの眼鏡をかけ、薄い唇でぺらぺらワインや料理のことをしゃべる。
ロラン・バルトだの、レビ・ストロースだの。構造論だの。「ナンセンス」が大いに流行ったものだ。
神奈川県現代俳句協会にも若手俳人のなかに「ナンセンス」と似たようなことを叫ぶ人たちがまだいると聞く。
晴れ。
●松山の吉田晃さんから「書籍在中」の封書が届く。ご両親の介護などの事情もあって、14、5年ほど音信がなかった。中学校校長を退職後12年になるという。3年前には、前日まで何事もなかったご次男が33歳で急逝されたとのこと。今は愛媛県の教員の句会の選者をしているとのこと。「文教月報」の俳句選者と、松教俳句交換会の指導と選をされているとのこと。松教俳句交換会の作品集2冊(平成26年/27年・平成28年/29)が入っていた。これらの冊子に花冠にも投句されていた池田多津子さん、松本豊香さんのお名前もあった。
作品集の2冊以外に『子規と考える言葉・人・ふるさとー中学校版』の活用の手引き(教師用参考資料、提言集/松山市教育会編)が同封されていた。それにも吉田晃さんの文章がある。
作品集の名は『ふるさと』。第1巻の巻頭言に髙橋信之著『芭蕉とネットの時代』からの引用がある。第2巻には、私(吉田晃)の詩系についてが巻頭言。臼田亜浪、川本臥風、髙橋信之、篠原梵、中村草田男の俳句の紹介がある。
また、生徒への俳句添削指導の実例があってこれが、なかなか骨太な教育感だ指導されている。
つまり、信之先生の教えを受けて繋いで不安がありながらも指導しているということ。
伝統的で、手堅い俳句指導だと思う。松山の著名女性俳人が学校に出入りして俳句を教えているが、それとは比べ物にならない「まこと」に徹した教育だと思う。
ざっと読んだあと、住所録があったので、信之先生が電話をする。変わりない声に昔を思い出した。
花冠のネット句会に参加するように連絡しようと思う。
曇り。小雨がぱらつく。
●『昆虫の迷路』が面白かったからまた本を送ってくださいと元希から葉書が来る。学校が休みでたいくつだろうからと送った本。無くならないうちにと本屋へ出かけ、『水の国の迷路』『動物の迷路』を買ってくる。ネットでこれらの本のレビューを見ると、大人もはまる面白い本とある。『時の迷路』というのがシリーズ第1冊目だという。迷路だけにとどまらなく、精密で知的好奇心を誘う本と思う。4歳から小学高学年用。
晴れ。
日を溜めて彼岸のガラス戸静かすぎ 正子
●彼岸ということもあって、新聞に葬儀社のパンフレットが入る。死がそう遠くないのは、私と主人。
墓地はすでに町田市の桜の里にある。最近知ったのだが、いずみ浄苑内の桜の里の墓地の設計者は、墓地設計で有名な関野らんさんということ。
墓地はいいとして、問題は葬儀社。パンフレットも集めたり、悩みの種だったが、ほぼ決心がついた。子供たちに相談する段取りがついた。
●朝日新聞の書評欄に『私の芭蕉』(加賀乙彦著)が紹介されていた。この本の書評紹介に会うのはこれで4度目。NHKラジオ、『俳壇』。 『俳句』、朝日新聞。エッセイ風の日本語が美しいらしい。
晴れ。
傾く日ビルに隠るや土筆摘む 正子
新聞紙に土筆の茎の縦横に 正子
摘まれたる土筆の茎のほの紅し 正子
ふさふさと緑そよがせ杉菜生う 正子
坂道の果てに春空どんと落ち 正子
一畝の豆の花にて足りており 正子
●春分。
●ねんりんピック岐阜2020の俳句交流大会のパンフレットを花冠会員に送る。会場は奥の細道の結びの地の大垣市。
自治体などのイベントで俳句大会を開くところは多い。日ごろ俳句の活動はしていなくてもイベントに興業的に、俳句大会を、というのが多いなか、岐阜はそうではない。選者も今はやりの有名人を選んでいるわけではない。出費や時間をかけても協力しようという気になる。
晴れ。四月上旬の気温らしい。21度。
葉騒より鴬よろと鳴き初め 正子
裏山に鳴く鶯のひとつ声 正子
日の中へ差し伸ぶ枝に初桜 正子
霞たり富士の遠嶺の形もなし 正子
恃むには遠きアルプス春雪嶺 正子
●四月上旬の気温。遠くは霞に包まれる。鴬が鳴くが、鳴きはじめがおそるおそるの感じ。よろよろ、ひょろひょろと鳴きだす。
●辛夷はすっかり散って、桜が咲きはじめた。菜の花も色褪せた。
●あすは彼岸の中日。5丁目の丘の墓地に線香の煙もないのに、線香の匂い。そばで鴬が鳴く。
曇り。夜は、冷え込む。
黄水仙誰がためなりぬ墓の花 正子
巻きずしに三葉芹こそかぐわしき 正子
勿忘草売られておりぬ卒業期 正子
●「俳壇年鑑2020年版」の花冠広告の校正。訂正なしでFAX。3月発売予定。
●活けた薔薇の一本がしおれている。うん?と思い花瓶を見ると水が減っている。しおれたのは水につかってなかった。吸い上げる水の量に驚く。