8月10日

★淀川の上に集まる初秋の雲  正子
川風に誘われきらきらと雲がながれる。水に映る秋の気配に安堵します。立秋を待っていたかのように、高知でも昨日から高く透明な雲が流れています。数日間「よさこい祭」で街は喧騒につつまれますが、今朝の雲間の青はひときわ澄んでいます。日本各地、台風の影響もなく爽やかな秋に向かえたらと念じています。 (宮地祐子)

○今日の俳句
★ピーマンの輝き詰めて朝市に/宮地祐子
ピーマンのぴんと張った緑色の輝きが、朝市でひときわ新鮮な輝きを放って、袋詰めのピーマンのイメージがクリアである。(高橋正子)

●俳句四季10月号の原稿「花冠創刊35周年」をメールで送る。写真を添付したが、サイズが小さすぎるというので、写真は写真スタジオから直接送ってもらった。写真スタジオからは、4MBあると聞いたが、実際メールで受けたのは576KB。よくわからない。

○葛の花

[葛の花/横浜・四季の森公園]

★葛の葉の吹きしづまりて葛の花 子規
★むづかしき禅門でれば葛の花 虚子
★葛の花が落ち出して土掻く箒持つ 碧梧桐
★山桑をきりきり纏きて葛咲けり 風生
★車窓ふと暗きは葛の花垂るる 風生
★葛の花見て深吉野もしのばゆれ 石鼎
★花葛の谿より走る筧かな 久女
★這ひかかる温泉けむり濃さや葛の花 久女
★葛の花こぼれて石にとどまれり 青邨
★奥つ瀬のこだまかよふや葛の花 秋櫻子
★朝霧浄土夕霧浄土葛咲ける 秋櫻子
★わが行けば露とびかかる葛の花 多佳子
★花葛の濃きむらさきも簾をへだつ 多佳子
★いちりんの花葛影を見失ふ 鷹女
★白露にないがしろなり葛の花 青畝
★葛の花流人時忠ただ哀れ 誓子
★今落ちしばかりの葛は赤きかな 立子
★細道は鬼より伝受葛の花 静塔
★葛咲や嬬恋村字いくつ 波郷
★葛咲や父母は見ずて征果てむ 波郷
  
   久万・三坂峠
★わさわさと葛の垂れいる峠越え/高橋正子

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月7日

★胡麻の花稲の花咲くその続き  正子
優しく淡い色合いの可憐な胡麻の花と、小さいながらも白く清楚な稲の花。夏から秋へ向かう田の、清々しい季節感あふれる情景です。いずれも収穫の期待を高めてくれる胡麻の花と稲の花に、やがて訪れる実りの秋の喜びを感じさせていただきました。(藤田洋子)

○今日の俳句
新刊の一書机上に秋初め/藤田洋子
秋が来たと思う爽やかさに、さっぱりと片付いた机上に一冊の新刊書が読まれんとして置いてある。生活が新鮮に詠まれている。(高橋正子)

●立秋の朝日がビルの斜めより/正子
朝顔の蕾ゆるみて青見ゆる/正子

○女郎花(おみなえし)

[女郎花/横浜・四季の森公園]       [女郎花/横浜・都筑中央公園]

★ひよろひよろと猶露けしや女郎花/松尾芭蕉
★とかくして一把になりぬをみなへし/与謝野蕪村
★女郎花あつけらこんと立てりけり/小林一茶
★裾山や小松が中の女郎花/正岡子規
★遣水の音たのもしや女郎花/夏目漱石
★女郎花の中に休らふ峠かな/高浜虚子
★山蟻の雨にもゐるや女郎花 蛇笏
★女郎花ぬらす雨ふり来りけり 万太郎
★馬育つ日高の国のをみなへし 青邨
★波立てて霧来る湖や女郎花 秋櫻子
★杖となるやがて麓のをみなへし 鷹女
★をみなへし信濃青嶺をまのあたり 林火
★村の岐路又行けば岐路女郎花/網野茂子
★女郎花そこより消えてゐる径/稲畑汀子
★女郎花二の丸跡に群るるあり/阿部ひろし
★とおくからとおくへゆくと女郎花/阿部完市
★夜に入りて瀬音たかまる女郎花/小澤克己

 秋の七草のひとつに数えられる女郎花。萩、桔梗、葛、尾花、撫子、藤袴、女郎花とあげてくれば、どれも日本の文化と切り離すわけにはいかない草々だ。どれも風情がいいと思う。藤袴、女郎花については、名前にはよくなじんでいるものの、実物を見るようになったのは、20代を過ぎて、30代になってからと思う。藤袴、女郎花はどのあたりに生えているかも知らなかった。故郷の瀬戸内の低い山裾などでは見ることはなかった。女郎花は、生け花にも使われるが、粟粒状の澄んだ黄色い花が魅力だ。栽培しているものをよく見かけるようになったが、決してしなやかな花ではない。むしろ強靭な花の印象だ。葛だってそうだし。

★おみなえし雲を行かせたあと独り/高橋正子
★女郎花山の葛垂る庭先に/〃

 オミナエシ(女郎花 Patrinia scabiosifolia)は、合弁花類オミナエシ科オミナエシ属 の多年生植物。秋の七草の一つ。敗醤(はいしょう)ともいう。沖縄をのぞく日本全土および中国から東シベリアにかけて分布している。夏までは根出葉だけを伸ばし、その後花茎を立てる。葉はやや固くてしわがある。草の丈は60-100 cm程度で、8-10月に黄色い花を咲かせる。日当たりの良い草地に生える。手入れの行き届いたため池の土手などは好適な生育地であったが、現在では放棄された場所が多く、そのために自生地は非常に減少している。 日本では万葉の昔から愛されて、前栽、切花などに用いられてきた。漢方にも用いられる。全草を乾燥させて煎じたもの(敗醤)には、解熱・解毒作用があるとされる。また、花のみを集めたものを黄屈花(おうくつか)という。これらは生薬として単味で利用されることが多く、あまり漢方薬(漢方方剤)としては使われない(漢方薬としてはヨク苡仁、附子と共に調合したヨク苡附子敗醤散が知られる)。花言葉:約束を守る。名前の由来:異説有り。へしは(圧し)であり美女を圧倒するという説、へしは飯であり花が粟粒に見えるのが女の飯であるという説、など。

◇生活する花たち「桔梗・風船かずら・芹の花」(横浜都筑区ふじやとの道)

8月6日(月)

★大朝焼車一台ずつ染まる  正子
真夏の日の出は大変早く、まだ涼やかな空気の満ちた時間です。朝焼けの中、荘厳な太陽の光りが駐車場の車を一台づつ照らし、今日も良く晴れて暑い夏の一日の始まりです。 (桑本栄太郎)

○今日の俳句
献水の竹筒青き原爆忌/桑本栄太郎
「竹筒青き」でこの句が生きた。汲みたての清水を青竹を筒に入れて持参した参拝者。「水を!」と言って亡くなった多くに人がいたことを思えば、清水は鎮魂の意味が大きい。(高橋正子)

●広島原爆忌。73回。
朝日昇りきて今日原爆忌      正子
引き抜きしポーチュラカなお咲けり 正子

○鬼灯(ほおずき)

[鬼灯/横浜・四季の森公園]

★鬼灯の少し赤らむぞなつかしき/正岡子規
★鬼灯の実の大小はまだ見せず/稲畑汀子
★鬼灯を摘む袖口と襟元と/高橋将夫
★結ひ上げし髪に鬼灯さす乙女/水原春郎
★自画像に鬼灯赤く描き添へし/宮津昭彦
★ほおずきの玲瓏と熟れ原爆忌/高橋正子

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月5日(日)

★胸うちに今日の夏野を棲まわせる  正子

○今日の俳句
うす紅も編まれし母の夏帽子/川名ますみ
母にまだある若さと可愛さをほほえましく、ある意味母親的まなざしで思う娘である。明るいうす紅が涼しさを呼んでくれる。(高橋正子)

●台風13号が近づく。

○藻の花

[藻の花/鎌倉・宝戒寺]

★藻の花やこれも金銀瑠璃の水 重頼
★藻の花や金魚にかかる伊予簾 其角
★藻の花をはなれよ鷺は鷺の白 北枝
★渡りかけて藻の花のぞく流れかな 凡兆
★藻の花のとぎれとぎれや渦の上 桃隣
★藻の花や雲しののめの水やそら   蕪村
★川越えし女の脛に花藻かな 几董
★藻の花や引つかけて行く濡れ鐙 暁台
★引き汐やうき藻の花のさわぎ立つ 蝶夢
★藻の花の重なりあうて咲きにけり 正岡子規
★藻の花の揺れゐる風のつぶやきに/大橋敦子
★急流に凛と花藻の五弁かな/岸本久栄
★川底へ日矢突き抜けて花藻かな/中島玉五郎
★藻の花の咲くや寺苑の昼しんと/高橋信之
★藻の花の咲くや寺苑の昼しんと/高橋信之
★藻の花の白さ浮き立つ仏の前/高橋正子

 藻の花は、花藻とも言い、湖沼や小川などに生えるさまざまな藻類、金魚藻、フサ藻、柳藻、松藻などの花。一般に小さく、白や黄緑色で目立たないものが多い。また海藻が赤・黄・緑など原色の美しい色をして花のようであるために、この美称として用いられることもある。海草と海藻の違いは、前者は根・茎・葉などが区別できるが、後者は区別できない特徴がある。俳句歳時記では夏の季語。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

8月4日(土)

★野に出でて日傘の内を風が吹き  正子
夏の暑い日ざしをさえぎるために用いる日傘は開くと綺麗な色彩の草花などが描かれたり、優美な紫紺や黒などの無地な日傘等があり、その日傘を高原の強い日差しの中で差すと日傘の中を高原の涼しい風が吹きぬけ、とても爽快な気分になれます。清涼感たっぷりの素敵な句ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
枝ごとにあふるるほどの百日紅/小口泰與
百日紅は炎暑にも負けず盛んに花を咲かせる。枝先に「あふるるほど」の花だ。「あふるるほど」の花が百日紅の花の特徴を言いえている。(高橋正子)

●夕べ雨の音がした。
夜の秋窓打つ音は雨の音      正子
 夫
風邪少し昨日うなぎに今日の鮨   正子
八月や句会準備を朝のうち     正子

朝、30度になった時点で、クーラーを入れる。29度はまだいい。

◆◆◆

辻村麻乃句集『るん』を読んで。
高橋正子

 あとがきに、句集名の『るん』は、ルンという言葉の概念に依る。
とある。チベット仏教に関する言葉で風という意味ということだ。
「るん」という「音の響き」と「意味」が作者の思いと重なるのだ
ろう。

 鳩吹きて柞の森にるんの吹く

 「鳩吹く」・「柞」という古典的で柔らかい言葉の、その森に風
が吹く。「ルン」の概念をこの句から感じ取れるような気がする。
そして、あとがきに

 詩人である父、岡田隆彦、俳人の岡田史乃を両親に持つことで、
たまたま今までの師系の概念と少し離れたところにいる。
 もう、若くはないが、そんな私が新しい風をそっと吹いても良い
のではと思うようになった。

とある。著者は遠慮がちながら、自身が新しい風を吹こうとしてい
る。吹いている。表紙は、著者自身が纏った薄衣が浜辺の風に吹か
れて、ついに風になっている印象の写真的なものだ。「風」の足元
は裸足に違いないと、帯をめくれば、しっかりと靴が今の時に立っ
て踏ん張って履かれている。

 『るん』は、るん春、るん夏、るん秋、るん冬、るん新年から成
っている。『るん』の俳句は季語の使用が私の年齢からみても保守
的に感じられるものと、今50代の等身大の、あるいはもっと若い
感じの句が混じって、その振り幅がと大きい。その振幅は、著者の
奮闘の素直な姿かもしれない。保守的である句は、自身の俳句の勉
強の結果であろう。

 著者は東京港区の赤坂で生まれ育った。港区は赤坂氷川神社があ
ったり、江戸の粋の文化が残るところ。著者の生活圏に氷川神社が
あるのではと思うが、この神社の存在も著者に影響を与えていると
思う句が本句集には、かなりある。神社や祭り、あるいは(稲荷の)
狐などが多く詠まれている。

 初午の薄揚げに射す光かな

 そして著書自身の独特の感受性の強さから生まれた句がある。

 口開けし金魚の口の赤き闇
 鮭割りし中の赤さを鮭知らず

見てはいけないものを見たときの怖さか。「黄昏が怖い」以前の著
者はもう夕焼けが楽しめるようになっているが、「黄昏の怖さ」を
感じるのは本当に詩人の感性だろう。

 前書きが少ない句集なので、句を詠んだ場所を想像してのことだ
が、京都への旅や総持寺での冬安居の句など、禅への関心がうかが
える。禅への関心は、俳句に精進する人が通る道ではあるが。

 また、秩父の火祭や武甲山を詠んだ句は、筑紫磐井氏の序を読む
と、金子兜太氏への敬慕も手伝っているようだ。

家族を詠んだ句は、好感がもてる。

二人の子は、
アネモネや姉妹同時に物を言ふ

夫は、
農夫の手受け継ぐ夫と墓参かな

父は、 
おお麻乃という父探す冬の駅

母は、
雛のなき母の机にあられ菓子

子としての著者は、
母見舞う秋空へ漕ぐペダルかな

以下に私の好きな句を挙げる。


出会ふ度翳を濃くする桜かな
初午の薄揚げに射す光かな
雛のなき母の机にあられ菓子
電線の多きこの町蝶生まる

水分石流れも花も分かちをり
水分石(みまくりいし)は、日本庭園で石橋と組み合わされて配置
される。龍安寺で詠まれた句だろうか。水が分かれると、水に散り
浮かぶ花びらも水の通りに分かれる。美しくも、佇めば無常を感じ
させる光景である。


谷若葉詩(うた)の立つ瞬間(とき)?みけり
詩人には、詩が立つ瞬間、詩が生まれ出そうとする瞬間がある。そ
の瞬時を谷若葉の中で、自分で?んだのだ、その確信の句。

麦秋の撓ふ側から煌めけり
麦が熟れるころ、光は小麦色にきらきらと耀く。麦が撓えば、茎が
撓えば、そして撓うものは、その側面から輝くのだ。繊細な観察だ。

黒揚羽駿河の縹に嵌りたり
「駿河の縹」と言えば、駿河の海の色か、富士の色か。縹色に嵌っ
た黒揚羽は駿河の縹に化石のように取り込まれた。

深閑と海の岩屋に夏日さす
放射線状屋根全面に夏の雨


咲ききりて生姜の花の甘さかな
女性らしい感性の句。生姜の花、つまり、ジンジャーの花だ。つう
んと鼻腔から入る甘い匂い。「咲ききり」がきっぱりとしている。

「追ひ焚きをします」と声する夕月夜
風呂の追い焚きをしますよと言う声の優しさ。心遣いの優しさに、
湯の匂いがほのかに立つようだ。夕月夜が美しい。

金管の全て上向く秋の空
ブラスバンドの金管楽器が、秋空へ向けて音を吹く。秋晴れの空に
輝く金管楽器の溌剌とした音色が耳に聞こえ、爽やかだ。

農夫の手受け継ぐ夫と墓参かな
母見舞う秋空へ漕ぐペダルかな


落つるなら谷まで落ちよ冬紅葉
真っ赤に紅葉した冬紅葉。散り落ちるなら、途中にかかることなく、
谷まで落ちよ。落ちるならいっそ落ちよの心意気。

紙漉きて手の甲にある光かな
紙漉きの水は冷たい。白濁した水から、紙を平らに平らに幾度も掬
いあげる。窓辺からは、光が差し込む静かな紙漉き場。手の甲が光
そのもに見える。

我々が我になる時冬花火
おお麻乃という父探す冬の駅

新年
初鏡幼女うつとり髪梳きて
青空を貨物過行く三日かな

               辻村麻乃句集『るん』
               著者:辻村麻乃
               発行所:俳句アトラス(林誠司)
               平成30年7月31日発行

◆◆◆

○稲の花咲く

[稲の花咲く/横浜市緑区北八朔町(2013年7月31日)]

★いくばくの人の油よ稲の花 一茶
★南無大師石手の寺よ稲の花 子規
★稲の花今出の海の光りけり 子規
★湯槽から四方を見るや稲の花 漱石
★雨に出しが行手の晴れて稲の花 碧梧桐
★軽き荷を酔うてかつぐや稲の花 虚子
★酒折の宮はかしこや稲の花 虚子
★八十路楽し稲の花ひろびろと見る/高橋信之
★稲の花見つつ電車の駅までを/高橋正子
★稲の花雲なく晴れし朝のこと/高橋正子

 イネ(稲、稻、禾)は、イネ科 イネ属の植物である。稲禾(とうか)や禾稲(かとう)ともいう。 収穫物は米と呼ばれ、世界三大穀物の1つとなっている。本来は多年生植物であるが、食用作物化の過程で、一年生植物となったものがある。また、多年型でも2年目以降は収穫量が激減するので、年を越えての栽培は行わないのが普通である。よって栽培上は一年生植物として扱う。属名 Oryza は古代ギリシア語由来のラテン語で「米」または「イネ」の意。種小名 sativa は「栽培されている」といった意味。用水量が少ない土壌で栽培可能なイネを陸稲(りくとう、おかぼ)と呼ぶ。日本国内に稲の祖先型野生種が存在した形跡はなく、海外において栽培作物として確立してから、栽培技術や食文化、信仰などと共に伝播したものと考えられている。稲を異常なまでに神聖視してきたという歴史的な自覚から、しばしば稲作の伝播経路に日本民族の出自が重ねられ、重要な関心事となってきた。一般に日本列島への伝播は、概ね3つの経路によると考えられている。南方の照葉樹林文化圏から黒潮にのってやってきた「海上の道」、朝鮮半島経由の道、長江流域から直接の道である。3つの経路はそれぞれ日本文化形成に重層的に寄与していると考えられている。現在日本で栽培されるイネは、ほぼ全てが温帯ジャポニカに属する品種であるが、過去には熱帯ジャポニカ(ジャバニカ)も伝播し栽培されていた形跡がある。

 多くの節をもつ管状の稈を多数分岐させ、節ごとに1枚の細長い肉薄の葉をもつ。稈は、生殖成長期になると徒長して穂を1つつける。他殖性の風媒花であるが、栽培稲では98%程度が自家受粉する。開花時間は午前中から昼ごろまでの2-3時間と短い。花は、頴花(えいか)と呼ばれ、開花前後の外観は緑色をした籾(もみ)そのものである。籾の先端には、しなやかな芒(ぼう)が発達する。芒は元々は種子を拡散するための器官であるが、栽培上不要なため近代品種では退化している。農業上、種子として使われる籾は、生物学上の果実である玄米を穎(=籾殻:もみがら)が包んでいるもの。白米は、玄米から糠(ぬか)層、胚など取り除いた、胚乳の一部である。生態型によるジャポニカ種 (日本型、島嶼型)とインディカ種 (インド型、大陸型)という分類が広く知られている。

 稲の食用部分の主 成分であるでんぷんは、分子構造の違いからアミロースとアミロペクチンに別けられる。お米の食感は、両者の含有配分によって大きく異なる。すなわちアミロース含量が少ないお米は加熱時にやわらかくモチモチした食感になり、アミロース含量が多いとパサパサした食感になる。日本人の食文化では、低アミロースのお米を「美味しい」と感じる。この好みは、世界的には少数派となっている。通常の米は20%程度のアミロースを含んでいるが、遺伝的欠損によりアミロース含量が0%の品種もあり、これがモチ性品種で、モチ性品種が栽培されている地域は東南アジア山岳部の照葉樹林帯に限定されている。その特異性から、その地域を「モチ食文化圏」と呼称されることがある。日本列島自体が西半分を「モチ食文化圏」と同じ照葉樹林に覆われており、またハレの日にもち米を食べる習慣がある(オコワ、赤飯、お餅)ことから、日本文化のルーツの一つとして注目された。

◇生活する花たち「蓮の花・のうぜんかずら・ブラックベリー」(横浜市港北区箕輪町)

8月3日(金)

★夏蒲団糊の匂いて身に添えり  正子
寝苦しい夏の夜ですが、ほどよく糊のきいたシーツに包まれた夏蒲団に横たわれば、ほんのりと漂ってくる糊の匂いとともに、さっぱりとした肌触りが伝わり、静かに眠りを誘ってくれます。「身に添えり」に安らぎが感じられます。(小西 宏)

○今日の俳句
金蚊の仰向いて脚生きんとす/小西 宏
金蚊が何かにぶち当たってひっくり返った。起き上がろうとしてか、必死に脚を動かしている。作者はその様子を「生きんとす」と捉えた。金蚊の命を直視しているのがよい。(高橋正子)

○ささげの花

[ささげ花/横浜市緑区北八朔町]

★アフリカの太古の色やささげ咲く/照れまん
★紫にささげの花や土用東風/憧里夢
★高架駅下りればすぐに花ささげ/高橋正子
★大畑を区切って三筋の花ささげ/高橋正子

 ササゲ(?豆、大角豆、学名 Vigna unguiculata)はマメ科の一年草。つる性の種類とつるなしの種類とがある。アフリカ原産。主に旧世界の温暖な地方で栽培される。南米では繁栄と幸運を呼ぶ食物と考えられ、正月に食べる風習がある。樹木の形状は低木であり、直立ないし匍匐する。枝を張ったり、からみついたりと、成育の特性は多彩。語源は、莢が上を向いてつき物をささげる手つきに似ているからという説[1]、莢を牙に見立てて「細々牙」と言ったという説、豆の端が少々角張っていることからついたという説など諸説ある。藤色、紫、ピンクなど様々な色の花をつける。花の形は蝶形花である。穀物用種は、さやが10-30cmで固く、豆は1cm程度の腎臓形で、白・黒・赤褐色・紫色など様々な色の斑紋をもつ。白い豆には一部に色素が集中して黒い目のような姿になるため、ブラック・アイ・ピー(黒いあざのある目を持つ豆)と呼ばれる。つる性種は草丈が2mから4mになるのにたいし、つるなし種の草丈は30cmから40cm。ナガササゲと呼ばれる品種は100cmに達する。耐寒性は低いが、反面暑さには非常に強い。日本では、平安時代に「大角豆」として記録が残されている。江戸時代の『農業全書』には「?豆」という名前で多くの品種や栽培法の記述がある。また、アズキは煮ると皮が破れやすい(腹が切れる=切腹に通じる)のに対し、ササゲは煮ても皮が破れないことから、江戸(東京)の武士の間では赤飯にアズキの代わりに使われるようになった。

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月2日(木)

★這いはじめし子に展げ敷く花茣蓙  正子
子が成長していくのは親の喜びです。這い這いしはじめの子へ花茣蓙を敷き見守られている姿が、喜びが、伝わってまいります。(祝恵子)

○今日の俳句
家裏に立てかけられてゴムプール/祝恵子
カラフルなゴムプールが、ひっそりとした家裏に立てかけられて、目に楽しく映る。家裏が涼しそうである。(高橋正子)

●トップの写真は、7月31日21時40分ごろに撮影した火星。(デジカメ)。

表参道の伊藤病院に甲状腺がんの定期健診に。超音波と血液検査。少し貧血気味の検査結果だが、問題なし。私の前の患者さん3人続けて複雑な事情のようで3人で45分ぐらいかかった。待ち時間は4時間ぐらい。受付番号は午前の872番。872番目ということ。

待ち時間中にお店をあちこち。山陽堂書店によるつもりが、暑くて忘れた。帰り、表参道の新潟物産館で氷梅というのを買った。凍らせてシャーベット状になったら梅ごと砕いて食べる。美味しかったけど、袋を切るとき砂糖水が手についてしまう。袋に余裕を。それと牛めしのわっぱ弁当一人前を土産に。ボリュームたっぷりで、二人で分けてちょうどよい。

夏夕べ昼間の街のはや懐かし  正子
夏木立合間に病舎のビルの壁   正子
夏木立ファッション街に水流し  正子

○落花生の花

[落花生の花/横浜市緑区北八朔町]

落花生がさやに入ったマメであることは、ご存じですよね。
マメなら、枝かに実っているかと思っている方がいるかと思いますが、実はちがうのです。
では、どこにできるかというと、土の中にできるのです

1.落花生の花は、早朝に咲いて、昼にはしぼんでしまいます。
受粉は、自分の花粉がめしべについて自家受粉をおこないます。
2.受粉したあと、花のもとにある子房で受精します。
3.受精して一週間もすると子房の元が伸び出して、根のように下を向きます。
この伸びた部分を子房柄(しぼうへい)といます。
4.子房柄は、土に向かってどんどん伸び、やがて土にささります。
5.土の中3~5センチのところにささった子房柄の先が水平にな
ってふくらみ、さやができはじめます。そのさやの中でマメが育つ
のです。
6. ”花が落ちたところにさやが生まれる”だから、”落花生”
といいます。

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月1日(水)

★撒き水の虹を生みつつ樫ぬらす  正子
散水の水しぶきが小さな虹を生んでいるのでしょう。そしてその水が樫をぬらしていく。何気ない日常ながら、ほっとするひと時をそこに感じます。(高橋秀之)

○今日の俳句
子らに買うバナナを袋いっぱいに/高橋秀之
袋の詰められたバナナの黄色に元気がある。子供たちへの格好の土産となったバナナであるが、夏にあって楽しい。(高橋正子)

●今日から8月。晴れ。朝から暑い。
トップの写真はNASAが提供している火星の写真。

○紫式部の花

[ムラサキシキブ/横浜・四季の森公園]   [コムラサキ/東京・新宿御苑園]

★慈雨来る紫式部の花にかな/山内八千代
★紫式部添木に添わぬ花あまた/神部 翠
★光悦垣色あはあはと花式部/高瀬亭子
★紫式部咳くやうに咲き初めし/河野?子
★夢辿る紫式部の花の香に/石地まゆみ
★花式部見つけたり日の輝きに/高橋信之
★登り来てふと見し花は花式部/高橋正子

 ムラサキシキブ(紫式部、Callicarpa japonica)はクマツヅラ科の落葉低木で、日本各地の林などに自生し、また果実が紫色で美しいので観賞用に栽培される。高さ3m程度に成長する。小枝はやや水平に伸び、葉を対生する。葉は長楕円形、鋭尖頭(先端が少し突き出すこと)、長さ6-13cm。細かい鋸歯がある。葉は黄緑で洋紙質、薄くて表面につやはない。初めは表側に細かい毛があることもある。花は淡紫色の小花が散房花序をつくり葉腋から対になって出て、6月頃咲く。秋に果実が熟すと紫色になる。果実は直径3mmで球形。栽培品種には白実のものもある。名前の由来は平安時代の女性作家「紫式部」だが、この植物にこの名が付けられたのはもともと「ムラサキシキミ」と呼ばれていたためと思われる。「シキミ」とは重る実=実がたくさんなるという意味。スウェーデンの植物学者のカール・ツンベルクが学名を命名した。北海道から九州、琉球列島まで広く見られ、国外では朝鮮半島と台湾に分布する。低山の森林にごく普通に見られ、特に崩壊地などにはよく育っている。ムラサキシキブ(コムラサキ、シロシキブ)の名所として、京都・嵯峨野の正覚寺が有名である。
 コムラサキ(C. dichotoma)も、全体に小型だが果実の数が多くて美しいのでよく栽培される。別名コシキブ。ムラサキシキブとは別種であるが混同されやすく、コムラサキをムラサキシキブといって栽培していることが大半である。全体によく似ているが、コムラサキの方がこじんまりとしている。個々の特徴では、葉はコムラサキは葉の先端半分にだけ鋸歯があるが、ムラサキシキブは葉全体に鋸歯があることで区別できる。また、花序ではムラサキシキブのそれが腋生であるのに対して、コムラサキは腋上生で、葉の付け根から数mm離れた上につく。岩手県で絶滅、その他多数の都道府県でレッドリストの絶滅寸前・絶滅危惧種・危急種・準絶滅危惧の種に指定されている。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)