★新緑の翳るときあり水があり 正子
日にきらめく新緑も曇り空の下では翳る時もあり、雨のあとなどでは水を含んでいる時もあるが、却ってそれが煌めきを助長して見える、と解釈しました。表面的な理解かもしれませんが、軽やかで印象に残る御句です。(河野啓一)
○今日の俳句
伊予水軍夏潮分けしその昔/河野啓一
夏潮の流れるさまを見れば、その昔、この夏潮を分けて伊予水軍が活躍したことが偲ばれる。とうとうとした夏潮の流れである。(高橋正子)
●テレビは普段全く見ないが、広島のうまいものを見ていたら、夜9時過ぎから、ハリー王子のウィンザー城での結婚式の中継に変わった。イギリス旅行をしたとき、ウィンザー城見学か、キューガーデンを見学するかの選択があった。ウィンザー城はガイド付き。キューガーデンは自由。結局キューガーデンを選んだが、ウィンザー城はロンドンから、35キロメートルぐらいのところにある。バスの窓からよく見えた。女王がおられるときは王室旗が掲げらる。遠目に見たウィンザー城のラウンドタワーの壁の色が印象に残っている。中継で礼拝堂の内部が見れたが、白と黒のチェッカー模様は、イギリス的だと思えた。参列者の夫人の帽子やドレス。アスコット競馬でもそうだが、結構楽しめる。
結婚式での聖書のことばの誓い。はじめハリー王子、次、メーガン妃。イギリス英語とアメリカ英語の違いが明らかだった。これも興味深い。イギリス英語とアメリカ英語の違いは?と聞かれたら、これを聞いてくださいという示すのが速いのではないかとも思った。
○蜜柑の花

[蜜柑の花/横浜日吉本町]
★花蜜柑の匂い池への斜面を流れ/高橋信之
★人の住む町に蜜柑の花香る/高橋正子(2015.5.15)
蜜柑の花の匂う季節となった。蜜柑の匂いは、やはり蜜柑どころが圧巻。蜜柑生産量日本一を愛媛が誇っているかどうか知らないが、愛媛に住んだころは、蜜柑畑の蜜柑の花の匂いに一日中包まれて暮らした。買い物に通る道も、子どもたちの通学路も蜜柑の花の匂いが漂う。家に居ても窓を開けていれば、蜜柑の花の匂いが流れてくる。夜、眠るころになるとさらに高く匂う。その匂いを惜しんで窓を閉めた。
「みかんの花咲く丘」の歌詞は、私にはまるで瀬戸内海の風景として見えるが、実際は静岡県ということだ。
◇生活する花たち「ネーブルの花・八朔の花・すだちの花」(横浜日吉本町)

★豆飯の飯の白さに風抜ける 正子
豆ごはんの緑が鮮やかに仕上って、ごはんの白さがより際立ち美味しそうに炊き上がりました。ご飯の白さに一瞬初夏の風が抜ける様な爽やかさを感じ取られ「風抜ける」と表現されたのでしょう。少し塩味の聞いた初夏ならではの豆ごはんが食卓に上っています。(佃 康水)
○今日の俳句
船窓に見え来る全山島若葉/佃 康水
船窓から島の全山が見え始め、さらに近付くと島を覆い尽くす若葉の鮮やかさに、息をのむような感動を覚える。(高橋正子)
○木苺

[木苺/横浜日吉本町]
★木苺に滝なす瀬あり峡の奥/水原秋桜子
★裾重く聖尼ばかりの木苺摘み/草間時彦
木苺(キイチゴ・学名:Rubus palmatus・バラ科キイチゴ属)は、原産地が西アジア、アフリカ、欧州、アメリカで、ラズベリーやブラックベリー、デューベリー等、木になるイチゴ(苺)の総称。 春に、苺の花に似た5弁の白花を咲かせる半落葉低木で、葉はヤツデのような掌に似た形(深裂)をしている。初夏に橙色の小さな粒々が多数集まり、食用となる球状の果実を付ける。果実は、果汁が多く、爽やかな酸味と仄かな甘味がある。木苺の葉は、秋に綺麗に紅葉するので、別名をモミジイチゴ(紅葉苺)とも呼ばれる。
5月白い花が咲き、青い実を結ぶ。野生でよく見るのは、オレンジがかった黄色に熟れるものだ。山道を車で通るときにもところどころに見つかる。里山を歩いても道沿いに見つかる。たくさん摘んだことはなく、一粒二粒熟れているのを採って食べた程度だ。わが家の近くでは、日吉本町の鯛ケ崎公園と、駒林神社の下手あたりで見つけている。なんでもそうだが、熟れる時期をはずすと、せっかく木苺摘みにでかけても蔕だけになっていることがあって、すごく残念な思いをする。
★木苺を摘みにそこまでブラウス着て/高橋正子
★木苺の実が消えたりしころの山/高橋正子(2015.5.10)
◇生活する花たち「クサイチゴ・イキシャ・山あじさい」(横浜日吉本町)

横浜動物園
★真鶴に夏来し水辺用意され 正子
動物園と前書きにありますので、冬鳥である真鶴に暑さに気を使い、新しい水辺を用意された園の優しさが、また詠者の優しさも伺えます。(祝恵子)
○今日の俳句
水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
水槽の水を替えられたメダカは元気よく泳ぐ。差しこむ日光にメダカの影ができるが、その影が新鮮に思える。いきいきとして、透明感のある句だ。(高橋正子)
○山吹草
[山吹草/東京白金台・自然教育園/左:2012年5月10日・右:2013年4月10日撮影]
★昏れかぬる箱根うら道山吹草/金子波龍
★林間へ野生の犬や山吹草/大介
山吹草(やまぶきそう、学名:Chelidonium japonicum)は、罌粟(芥子:けし)科の多年草。半日陰になる林縁や疎林内に生育する。「ヤマブキ」の名はあるが、バラ科のヤマブキとは全く別種である。草丈30~40cmほどので、茎を立てて上部の葉腋に1~2個の花をつける。花は春に咲き、径4~5cmほどの比較的大きな鮮黄色の4弁花をつける。花弁は卵型。葉は、長さ10~15cmほどの羽状複葉で、小葉は5~7個。小葉は大きさに変異が大きく、長さ2~5cm、幅2cm前後の広卵型で、葉先は三角形状である。葉の縁には浅い欠刻と鋸歯(ギザギザ)があう。
本州以西から中国大陸に分布している。多摩丘陵では、一部に保護植栽されている場所を除き、1980年頃以降では自生は確認できておらず、地域絶滅が危惧される。
花の様子や鮮黄色の花色が、バラ科のヤマブキに似ているという命名です。ただし、ヤマブキは5弁花であるのに対してヤマブキソウは4弁花です。
ケシ科の植物はほとんどそうだが、全草にアルカロイド系の有毒成分を含み、誤って食べると嘔吐や麻痺などを惹き起す。仲間(同属)のクサノオウは薬用に利用されるが、ヤマブキソウは利用されない。この仲間(クサノオウ属)を代表するクサノオウ(瘡の王)では、花は似ているが、葉はヤマブキソウのような羽状複葉ではなく、羽状の切れ込みがある単葉で裂片の先は円形状である。 別名「草山吹(くさやまぶき)」。
◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)

★茄子胡瓜つゆけく漬かり飯は白 正子
茄子も胡瓜もしっとりと色鮮やかに漬かり上がり、純白のご飯の艶まで想像できて食欲を誘う。夏の食卓の彩が涼しげに詠われて明るく清々しい。(小西 宏)
○今日の俳句
水に立つ緑明るし黄の菖蒲/小西 宏
黄菖蒲は花菖蒲とはまた別のもので、水から抜け出て立つ葉は、一段と明るい緑だ。そこに単純に黄色の花が咲く。涼しい感じの句だ。(高橋正子)
●晴れ。四十雀がよく鳴く。
○山吹
[山吹/東京白金台/自然教育園]
★雨脚の舞ってゐるなり山吹に/清崎敏郎
★西側の垣の山吹黄が明るし/高橋信之
★降りかかる雨の山吹窓越しに/高橋正子
山吹の花が咲くころは、降るともなく、降らぬともなく、雨が細い雨脚を見せて降ることが多い。山吹の花の記憶はいつも雨とある。一重ではなく、記憶の山吹は八重だ。「七重八重・・」の大田道灌の古歌も今では言う人もいないだろうが、雨降りの記憶とともに脳裏にある。
白山吹という白い花を咲かせる山吹もあって、これは一重で黒い実を結ぶ。我が家では、白山吹は、高い曇り空の下に咲いて表の庭にあった。日吉には、見事に垣根をなして白い花咲かせている家があって、しゃれているので、山吹とも思えない感じだ。
山吹は、低山の明るい林の木陰などに群生する。樹木ではあるが、茎は細く、柔らかい。背丈は1mから、せいぜい2m、立ち上がるが、先端はやや傾き、往々にして山腹では麓側に垂れる。地下に茎を横に伸ばし、群生する。葉は鋸歯がはっきりしていて、薄い。晩春に明るい黄色の花を多数つける。多数の雄蕊と5~8個の離生心皮がある。心皮は熟して分果になる。北海道から九州まで分布し、国外では中国に産する。古くから親しまれた花で、庭に栽培される。花は一重のものと八重のものがあり、特に八重咲き品種(K. japonica f. plena)が好まれ、よく栽培される。一重のものは花弁は5枚。白山吹もあるが別属である。日本では岡山県にのみ自生しているが、花木として庭で栽培される事が珍しくない。こちらは花弁は4枚。
◇生活する花たち「かきつばた・さぎごけ・やまつつじ」(東京白金台・自然教育園)

★竹皮を脱ぐ孟宗の節短し 正子
○今日の俳句
釣竿を持つ少年の夏近し/多田有花
釣竿を持っている少年を見ると、夏が来たことを実感させられる。少年の釣りは水遊びの気持ちがある。(高橋正子)
●晴れ。文學の森の創立15周年記念の祝賀会が京王プラザホテルであって、出席の予定だったが、やむを得ず、欠席。いい天気で盛会のことだったでしょう。
外出の途中、武蔵小杉駅で下車。駅ビル傍の東急ビル5Fに川崎市立図書館があるのに気づいた。入口だけざっと見学。絵本コーナーには大人用の絵本があった。韓国語、中国語、英語など。三井ビルのモンベルに寄ろうとしたのだが、入り口を間違えてしまった。ま、怪我の功名。我が家の近くの図書館は、慶大図書館しかないので、困っていたのだが、ここならこれそう。
○卯の花

[卯の花/横浜日吉本町]
★押しあうて又卯の花の咲きこぼれ/正岡子規
★卯の花の夕べの道の谷へ落つ/臼田亜浪
★卯の花や流るるものに花明り/松本たかし
★卯の花曇り定年へあと四年/能村研三
★卯の花のつぼみもありぬつぼみも白/高橋信之
★卯の花の盛りや雷雨呼びそうに/高橋正子
卯の花は、空木(ウツギ)といい、バラ目アジサイ科ウツギ属の落葉低木で、樹高は2-4mになり、よく分枝する。樹皮は灰褐色で、新しい枝は赤褐色を帯び、星状毛が生える。葉の形は変化が多く、卵形、楕円形、卵状被針形になり、葉柄をもって対生する。花期は5-7月。枝先に円錐花序をつけ、多くの白い花を咲かせる。普通、花弁は5枚で細長いが、八重咲きなどもある。茎が中空のため空木(うつぎ)と呼ばれる。「卯の花」の名は空木の花の意、または卯月(旧暦4月)に咲く花の意ともいう。北海道南部、本州、四国、九州に広く分布し、山野の路傍、崖地など日当たりの良い場所にふつうに生育するほか、畑の生け垣にしたり観賞用に植えたりする。
★卯の花の白きを門に置きし家/河野啓一
卯の花の白さを門に配しているのがいい感覚だ。「置きし」は、画を描いているような、絵具を置くような、詠み方で、光景を絵画的にしている。(高橋正子)
◇生活する花たち「芍薬の花蕾・薔薇・卯の花」(横浜日吉本町)

★豆の花宙に雀が鳴いており 正子
晩春から初夏にかけて咲く豆の花は、少しづつ莢を太らせながら、次々に花を咲かせます。菜園に咲く豆科、果菜類の花は大変美しく、花の後の収穫の期待がふくらみます。空には雀が鳴き、穏やかで長閑な日常が想われ和みます。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
朴の花見上げ葉影に憩いけり/桑本栄太郎
朴の花は高いところに咲くので、下からは見上げるだけ。しかし、その大いなる葉影で憩うときの心静かに涼しいこと。(高橋正子)
●5月月例ネット句会12名参加。夜中12時前、入賞発表。ドライアイで目が疲れてしょうがないがこぎつけて入賞発表。
お昼1時ごろから雨。かなり本降り。
横浜から東京へかけて、白雲木がよく見られる。四国では見たことがなかったが、今、ちょうど蕾に白い色が見え始めている。スモークツリーを初めて見た。紫がかったうすい赤。曖昧な色。遠くから花を見て煙みたいと思い近づくと、名札に「スモークツリー」。なんだか、笑い出しそうになった。
○郁子(むべ)の花

[郁子の花/東京白金台/自然教育園(左:2012年5月10日・右:2014年5月3日)]
★現なく日輪しろき郁子咲けり/角川原義
★井の上の雑木にからみ郁子の花/須和田潮光
★郁子咲くを森の高きに写し撮る/高橋信之
ムベ(郁子、野木瓜、学名:Stauntonia hexaphylla)は、アケビ科ムベ属の常緑つる性木本植物。別名、トキワアケビ(常葉通草)。方言名はグベ(長崎県諫早地方)、フユビ(島根県隠岐郡)、イノチナガ、コッコなど。日本の本州関東以西、台湾、中国に生える。柄のある3~7枚の小葉からなる掌状複葉。小葉の葉身は厚い革質で、深緑で艶があり、裏側はやや色が薄い。裏面には、特徴的な網状の葉脈を見ることが出来る。花期は5月。花には雌雄があり、芳香を発し、花冠は薄い黄色で細長く、剥いたバナナの皮のようでアケビの花とは趣が異なる。10月に5~7cmの果実が赤紫に熟す。この果実は同じ科のアケビに似ているが、果皮はアケビに比べると薄く柔らかく、心皮の縫合線に沿って裂けることはない。果皮の内側には、乳白色の非常に固い層がある。その内側に、胎座に由来する半透明の果肉をまとった小さな黒い種子が多数あり、その間には甘い果汁が満たされている。果肉も甘いが種にしっかり着いており、種子をより分けて食べるのは難しい。自然状態ではニホンザルが好んで食べ、種子散布に寄与しているようである。主に盆栽や日陰棚にしたてる。食用となる。日本では伝統的に果樹として重んじられ、宮中に献上する習慣もあった。 しかしアケビ等に比較して果実が小さく、果肉も甘いが食べにくいので、商業的価値はほとんどない。
「むべ」で思い出すのは、「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐というらむ/文屋康秀」の百人一首にある「むべ」。もちろん、この歌の「むべ(宜)」は、「なるほど」の意味だが、この歌に、いつも、「むべの実」を想像してしまう。
★郁子の花引けば絡みし木がざわと/高橋正子
◇生活する花たち「かきつばた・さぎごけ・やまつつじ」(東京白金台・自然教育園)

★ビルの窓全てで五月の空なせり 正子
五月は新緑の快い季節で、風も南風で、水の上、緑の上を渡って匂うような爽やかさで、高層ビルの窓という窓も初夏の気持ちのよい風を受けて喜んでいます。 (小口泰與)
○今日の俳句
麦秋や暮れても青き赤城山/小口泰與
暮れても戸外が心地よい麦秋の季節。暮れのこる青い赤城山を見つつ、麦秋の心地よさを心身に感じる作者がいる。(高橋正子)
●午後2時ごろ、鯛ヶ崎公園から日吉台西中学校の前の貸し農園を見学して、下田町あたりまで、信之先生と吟行兼散歩。信之先生の携帯電話の歩数計では、5269歩。歩幅48センチで設定したので、計算すると約2.5km。歩幅がもっと少なければ、2キロぐらい。少し疲れた感じだが、ちょうどいい疲労感。帰り、2年前にできた豆遊房というコーヒー豆専門店によってコロンビアの中炒りをペーパードリップ用に引いてもらって買う。店の名前を何と読むんだろう。2時に家を出たのはちょっとまずかった。これからは午前中にしよう。日差しがきつくなってきている。
伽羅蕗を作る。皮が意外と柔らかくて、拍子抜け。美味しくはできた。この前、ぜんまい、細竹、蕗を炊き合わせたが、少し飽きた。
○踊子草

[踊子草/東京白金台/自然教育園]
★み吉野の踊子草の白がちに/稲畑汀子
★淡きあはき紅粧ふも踊子草/大橋敦子
★夜すがらに奔る水音踊子草/田千鶴子
★踊子草ときをり風は囃子方/豊田都峰
★雨垂れのまた揺らしたる踊子草/川合万里子
オドリコソウ(踊子草、学名:Lamium album L. var. barbatum (Siebold et Zucc.) Franch. et Sav.[1][2])は、シソ科オドリコソウ属の多年草 。北海道、本州、四国、九州(及び韓半島、中国)に分布し、野山や野原、半日陰になるような道路法面に群生する。
高さは30~50cmくらいになる。葉は対生し、その形は卵状3角形から広卵形で上部の葉は卵形で先がとがり、縁は粗い鋸歯状になり、基部は浅心形で葉柄がある。花期は4~6月で、唇形の白色またはピンク色の花を、数個輪生状態になって茎の上部の葉腋に数段につける。花のつき方が、笠をかぶった踊り子達が並んだ姿に似る。花の基部に蜜があり、観察実験の材料ともなる。
近縁種:ヒメオドリコソウ(姫踊子草、学名:Lamium purpureum L.)、ホトケノザ(仏の座、学名:Lamium amplexicaule L.)。
◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)

★薔薇垣と薔薇のアーチに人の住む 正子
丹精込めて手入れされた薔薇垣と薔薇のアーチなのでしょう。薔薇をこよなく愛する住人はどのような方でしょう。お住まいの方はもちろんのこと、通りすがりの人々にも、季節の豊かな彩りと喜びを分け与えてくれる薔薇の美しさ、芳しさを思います。(藤田洋子)
○今日の俳句
若葉風自転車きらり輪が廻る/藤田洋子
若葉風に吹かれ、自転車の銀輪がきらりと輝いて廻る。初夏の解放感と若々しさの溢れた句。(高橋正子)
●句美子から母の日のプレゼントにマーガレットが届く。白い色にいろんな色が混じっている。
はしかが流行る。町田市で感染者が出たので、自分は罹ったのかどうかと、息子が聞いてきた。母子手帳を出して調べると、2歳の時に一度予防接種をしている。大丈夫だと言っておいたが、今は2回予防接種をするらしい。効き目はどうなんだろう。
私はと言えば、はしかにかかった時のことをよく覚えている。昭和28年の小学1年生の5月、ちょうど家庭訪問の時期に私ははしかにかかった。たまたま家庭訪問の日と重なり、寝ているところまで先生がお見舞いに来てくれた。顔が発疹ではれたようになり、熱でぽっとしていた。白いネルの寝間着を着ていて起きて座った。先生が話しかけてくれたが、ただちょっと頷いて、ひん型のガラスの瓶の赤いニッキ水を飲んでいた。寝間着の襟に赤いニッキ水が少しこぼれた。このニッキ水、だれが買ってくれたのだろうと思う。
はしかと言えば二ッキ水。麦秋がくればニッキ水を今でも思い出す。
○2014年5月11日
句美子と大船フラワーセンターへ吟行に行った。日吉駅で10時半に待ち合わせ。句美子はフラワーセンターは初めてなので、私が案内。園内は薔薇としゃくやくが咲き誇り、馥郁たる香り。この二つに加え、睡蓮、黄菖蒲がよく咲いていた。ルピナス、矢車草、おだまきなど百花繚乱。アカシヤの花、石楠花、藤がすでに終わっていた。句美子が温室を見たいというので温室に入った。思いがけず、睡蓮の花がとりどり咲いて、ロンドンのキューガーデンを句美子と見学したことを思い出した。睡蓮が咲いていたこと、オーストラリアやその他熱帯の植物があったことなど。赤バナナが成熟中であった。キューガーデンとは、もちろん、規模が全然違うのだけれど、フラワーセンターの意気込みも感じられた。 昼食は持参の助六すしと柏餅などで済ませた。帰りは、大船駅のドトールでアイスティーとミルフィーユで小憩。句美子は翌日、28句作ってメールで送ってくれた。
○睡蓮

[睡蓮/神奈川県立大船植物園] [睡蓮/横浜都筑・ふじやとのみち]
★睡蓮の花沈み今日のこと終へず/臼田亜浪
★睡蓮に日影とて見ぬ尼一人/飯田蛇笏
★睡蓮や鬢に手をあてて水鏡/杉田久女
★睡蓮の明暗たつきのピアノ打つ/中村草田男
★睡蓮に雨意あり胸の釦嵌む/中村草田男
★睡蓮の汀に睫長き子よ/星野立子
★睡蓮やまづ暮のいろ石にあり/加藤楸邨
★睡蓮のひかりを絵の具盛り描く/宮津昭彦
睡蓮(学名:Nymphaea)は、スイレン目スイレン属の植物の一つで、水生多年草。単にスイレン(睡蓮)と呼ぶことが多い。日本にはヒツジグサ(未草)の1種類のみ自生する。日本全国の池や沼に広く分布している。白い花を午後、未の刻ごろに咲かせる事からその名が付いたと言われる。水位が安定している池などに生息し、地下茎から長い茎を伸ばし、水面に葉や花を浮かべる。葉は円形から広楕円形で円の中心付近に葉柄が着き、その部分に深い切れ込みが入る。葉の表面に強い撥水性はない。多くの植物では気孔は葉の裏側にあるが、スイレンでは葉の表側に分布する。根茎から直接伸びる花柄の先端に直径5-10cmほどの花をつける。産地で大まかに分けると、熱帯産と温帯産に分けられる。温帯産は水面のすぐ上に花を付けるが、熱帯産は水面から高く突き出た茎の先端に花をつけるので、区別は容易である。また、熱帯産には夜や早朝にしか花を咲かせない種もある。
○生活する花たち「西洋おだまき・卯の花・錦木の花」(東京深川・芭蕉記念館とその近辺)

★初夏の夜の電車傾きつつ曲がる 正子
○今日の俳句
蒲公英の種ふと浮び空の詩/河野啓一
野原の蒲公英の絮が、風が来て、ふっと空に浮かんだ。これから広い空を飛んでゆく、蒲公英の種子の旅がはじまる。その心は、「詩」と言える。蒲公英の種子の飛行は、「空の詩」であり、「空の歌」なのだ。(高橋正子)
●小雨。雷。肌寒い。炬燵でパソコン。
根津美術館で13日まで光琳の燕子花の屏風が展示されている。これに行くかどうか。
燕子花はあやめと同じごろ咲くのだけれど、菖蒲のころと勘違いして、燕子花を見逃してしまう。今年は気を付けていたので、里山ガーデンで見れた。
○杜若(かきつばた)
[かきつばた/東京白金台・自然教育園(左:2013年5月2日・右:2012年5月10日)]
★宵々の雨に音なし杜若/与謝蕪村
★杜若けふふる雨に莟見ゆ/山口青屯
★森に池あり杜若濃き青に/高橋信之
カキツバタ(燕子花、杜若、Iris laevigata)はアヤメ科アヤメ属の植物で、湿地に群生し、5月から6月にかけて紫色の花を付ける。内花被片が細く直立し,外花被片(前面に垂れ下がった花びら)の中央部に白ないし淡黄色の斑紋があることなどを特徴とする。愛知県の県花でもあり、三河国八橋(現在の知立市八橋)が『伊勢物語』で在原業平がカキツバタの歌を詠った場所とされることに由来している。在原業平が詠んだ歌は「から衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来ぬる たびをしぞ思ふ」江戸時代の前半にはすでに多くの品種が成立しており、古典園芸植物の一つでもあるが、江戸時代後半には花菖蒲が非常に発展して、杜若はあまり注目されなかった。現代では再び品種改良が進められている。日本三大カキツバタ自生地は、愛知県刈谷市井ヶ谷町にある「小堤西池」、京都府京都市北区にある「大田の沢」、鳥取県岩美町唐川にある「唐川湿原」で、カキツバタの自生地として有名である。なお、「いずれがアヤメかカキツバタ」という慣用句がある。どれも素晴らしく優劣は付け難いという意味であるが、見分けがつきがたいという意味にも用いられる。
◇生活する花たち「芍薬・しゃが・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)

★新緑の翳るときあり水があり 正子
今当に新緑の季節を迎えています。公園や広場の木々は初夏の艶やかな葉を茂らせ段々と緑も増し、その木々が重なり合って心地よい翳りを作ってくれています。辺りには噴水、池 水飲み場などが有り、目にしたもの全てが清々しく、そんな中で寛ぎの一時を過ごしていらっしゃる様子が見えて参ります。(佃 康水)
○今日の俳句
筍を茹でつつ糠を噴き零す/佃 康水
筍を茹でるとき油断すると灰汁を抜き、柔らかくするために加えた糠が吹きこぼれる。鍋や釜の縁に吹きこぼれた糠がこびりつくこともある。しかし、こういう事に季節の暮らしがある。(高橋正子)
●3月の気温となる。ストーブをまた、使う。雨。雷。
○芍薬

[芍薬/横浜日吉本町]
★芍薬を画く牡丹に似も似ずも/正岡子規
★蕾日に焦げんとしては芍薬咲く/中村草田男
★芍薬の一ト夜のつぼみほぐれけり/久保田万太郎
★嫁ぎゆき芍薬の花咲きつづく/和知喜八
★そろひ咲く白芍薬よ朝の庭/阿部ひろし
★芍薬のピンクが白に近い色/高橋信之
★芍薬の白はふっくら日の溶けし/高橋正子
(2012年の日記より)今日、5月28日は信之先生の81歳の誕生日。家族の都合で、昨日の日曜日に誕生祝いをした。四角な大きなケーキを句美子が作り、わたしは、たけのこ寿司を作った。ただそれだけの簡素なお祝い。芍薬の花を昼過ぎに買って花瓶に生けておいたら、夜には、蕾まで開きはじめて、開いていた花は、これ以上咲けないというほど開いた。花もちをよくする薬を入れたせいと、水切りがうまくいったのかもしれない。誕生日にふさわしく豪華に咲いた。砥部の庭には、臥風先生のお宅から移した芍薬があった。来年は、芍薬の根っこを買って鉢で育てようという話になった。
花冠同人で今日の俳句に挙げた黒谷光子さんも、facebookで拝見すると、28日がお誕生日とのこと。光子さん、おめでとうございます。
芍薬は牡丹が終わったころに咲く。牡丹ほど気取っていないので、砥部の庭にもあって、咲けば切って花瓶に挿して楽しんだ。小学生のころから芍薬は変わらずある。今はどうか知らないが、教室には教卓の近くに花瓶があって花が活けてあった。家に咲いた花を切って子どもたちが持ってきていたが、芍薬の咲く時期には、花瓶に挿しきれないほど芍薬が集まる。すると先生がバケツを用意してバケツに入れてくれる。このころは、芍薬だけでなく、あやめやいちはつなども次々に誰かがもって来ていた。
◇生活する花たち「黄菖蒲・睡蓮・芹の花」」(横浜都筑・ふじやとのみち)
