★天の日は初冠雪の嶺に照り 正子
初冠雪と聞くだけでも気持ちが高揚いたします。また、「天の日」という新鮮な表現に更に神々しく霊峰富士山、もしくはそれに匹敵する様な嶺を連想いたしました。天の日が初冠雪を照らし、眩しいほどに耀く嶺は凛として初冬の美しい景色です。(佃 康水)
○今日の俳句
浜風に確と結びし新松子/佃 康水
浜辺の松の枝にしっかりと青い松毬(まつかさ)がついた。古い松毬と違って充実している。それを「確と」が言い当てている。浜辺の青松毬のすがすがしさがよい。(高橋正子)
○冬薔薇(ふゆばら、ふゆそうび)

[冬薔薇/横浜いずみ野]
○冬薔薇(ふゆばら、ふゆそうび)
[冬薔薇/横浜いずみ野/カフェ・ド・ダラ]
★フランスの一輪ざしや冬の薔薇/正岡子規
★築地行けば垣根の薔薇や冬の花//正岡子規
★思はずもヒヨコ生れぬ冬薔薇/河東碧梧桐
★冬ばらの蕾の日数重ねをり/星野立子
★冬の薔薇すさまじきまで向うむき/加藤楸邨
★冬薔薇金環蝕ののち開く/黒田杏子
★冬薔薇や海に向け置く椅子二つ/舘岡沙緻
★冬薔薇やっぱり君は君のまま/SUNAO
★見るうちに薔薇たわたわと散り積る 虚子
★手の薔薇に蜂来れば我王の如し 草田男
★ばら薫るマーブルの碑に哀詩あり 久女
★愁ひつつ岡にのぼれば花いばら 蕪村
★花茨白花は楽の通ひ易く 草田男
★花いばら ここの土とならうよ 山頭火
★夕日の中の冬ばらの赤明らかに/高橋信之
冬薔薇といえば、たいていは、花屋から買ってくるものだ。花瓶に開きかけたものや蕾を挿して開くのを待つのだが、開きかけたものはまだしも、蕾は固く結んで、いよいよ色が濃くなって咲かないうちに枯れてしまう。何とか、蕾を咲かそうと苦心するのが常だ。たまにそよの庭に一、二輪咲いているのを見る。
昨年、十一月八日、横浜市いずみ野にある、千坪はあるというガーデンに出かけた。立冬を過ぎたばかりのこの日は、心地よい風が少しあって、空は晴れ渡っていた。ガーデンは、冬の初めとあって、咲き残る花、季節はずれなのにきれいに咲いている花。枯れたまま倒れた枝、茨の実などが入り混じっている。細くレンガを敷いた道以外は、何がどこにあるのか、野原よりももっと仕切りがつかない。その中に、ところどころ冬薔薇が咲いている。どれも、れっきとした名前があるのだろうが、それに構わずじっくりと見て歩くと、申し分なくきれいに花開いている。春に咲くアリッサムも元気いっぱいに十分に花を咲かせて、レタスなども瑞々しいところを見ると、土がいいのだろうと察しがつく。冬薔薇なのに瑞々しい。午後の日を浴びて一つの花にも日陰と日向がある。やはりこの寂しい陰りは冬薔薇なのだ。室内の喫茶室にも薔薇がグラスに挿してあったが、オールドローズなのか柔らかによく開いて、窓辺の小寒い夕方の陰りによく匂っていた。
★冬薔薇にいずみ野の空ひろびろと 正子
★冬そうび二輪の匂う板机 〃
バラ(薔薇)は、バラ科バラ属の種(しゅ)の総称。バラ属の植物は、灌木、低木、または木本性のつる植物で、葉や茎に棘があるものが多い。葉は1回奇数羽状複葉。花は5枚の花びらと多数の雄蘂を持つ(ただし、園芸種では大部分が八重咲きである)。北半球の温帯域に広く自生しているが、チベット周辺、中国の雲南省からミャンマーにかけてが主産地でここから中近東、ヨーロッパへ、また極東から北アメリカへと伝播した。南半球にはバラは自生していない。世界に約120種がある。「ばら」の名は和語で、「いばら」の転訛したもの。漢語「薔薇」の字をあてるのが通常だが、この語はまた音読みで「そうび」「しょうび」とも読む。漢語には「?瑰」(まいかい)の異称もある。 欧米ではラテン語: rosa に由来する名で呼ぶ言語が多く、また同じ語が別義として「ピンク色」の意味をもつことが多い。6月の誕生花である。季語は夏で、「冬薔薇」「ふゆそうび」となると冬の季語になる。なお、一般に「ばら」と呼ぶときは、園芸品種としてのそれを指すことが多い。
◇生活する花たち「山茶花・ユリオプスデージー・綿の実」(横浜日吉本町)
琵琶湖
★栴檀の実の散らばりに湖晴るる 正子
初冬の青空には栴檀の黄色い実が似合う。葉を落とし実と枝が広がる。栴檀の実の黄色、空の青、そして湖の濃い青、それぞれが自分の色を主張しているように見えるがお互いがよく似合っている。栴檀の実を初めて見たのは1999年に開かれた松山での水煙大会に出席した時である。今でも栴檀の実を見るとその時の松山の空を思い出す。(祝 恵子)
○今日の俳句
炬燵には兄妹と居る嬉しさよ/祝恵子
炬燵を囲み、暖かさにくつろいで兄妹といるうれしさ。いつまでも兄の下の妹でいる幸せがある。(高橋正子)
○さんしゅゆの実
[さんしゅゆの実(12月6日)/横浜・四季の森公園]_[さんしゅゆの花(3月22日)/横浜・四季の森公園]
★山茱萸にけぶるや雨も黄となんぬ/水原秋桜子
★山茱萸の黄や街古く人親し/大野林火
★さんしゅゆの花のこまかさ相ふれず/長谷川素逝
★赤といふ禁断の色山茱萸の実/桐一葉
★枝揺らし山茱萸の実の手から手に/芝滋
★山茱萸の小さき実数多青空へ/高橋信之
サンシュユ(山茱萸)は、朝鮮半島原産の小高木で、日本には江戸時代中期に薬用植物として渡来しました。早春に新葉に先立ち樹木一面に鮮かで黄色い小花を咲かせる姿も美しいですが、晩秋に鮮かに紅色に熟する実もまた愛らしくて美しいものです。楕円形をしたサクランボウのような感じがします。実は甘くておいしそうに見えますが、実は渋くて生食には向かないそうです。残念。サンシュユの果実は、滋養・強壮、止血、解熱作用の薬効があるといわれ漢方薬にもなっているそうですよ。サンシュユの春の情景を「春黄金花(ハルコガネバナ)」と呼び、秋の情景を「秋珊瑚(アキサンゴ)」と呼びますが、その別名がよく似合います。心も身体も癒してくれる、私たちにとって大事な植物なんですね。感謝(大阪市立長居植物園ブログより)
◇生活する花たち「茶の花・花八つ手・木瓜」(横浜下田町・松の川緑道)

★夜は軒陰に白菜星をほしいまま 正子
白菜を干すと白菜の甘味を引き出し、またしんなりさせて漬けやすくするために、夜は霜の当たらない軒陰に干し、初冬の冴え渡った星空の冷気を浴びていっそう美味しくなりますね。(小口泰與)
○今日の俳句
紅葉の鍋割山(なべわり)も雨貯えし/小口泰與
鍋割山は、神奈川の丹沢山系や群馬県など、日本にいくつかあるようだ。鍋を割って伏せたような山か。その名前に昔話の雰囲気がある。雨が降るたびに季節が進み、紅葉の山となり、落ち葉の重なる沢道を歩けば、水が滲んでくる。「雨貯えし」が句を膨らませた。(高橋正子)
○茶の花

[茶の花/横浜市港北区松の川緑道] [茶の花/東京白金台・自然教育園]
★茶の花や白にも黄にもおぼつかな 蕪村
★茶の花に隠れんぼする雀かな 一茶
★茶の花や利休の像を床の上 子規
★茶の花や洛陽見ゆる寺の門 碧梧桐
★茶の花に暖き日のしまひかな 虚子
★散るは柿の葉咲くは茶の花ざかり 山頭火
★古茶の木ちるさかりとてあらざりき 蛇笏
★茶の花に富士かくれなき端山かな 秋櫻子
チャノキ(茶の木、学名:Camellia sinensis)は、ツバキ科ツバキ属の常緑樹である。チャの木、あるいは茶樹とも記される。単にチャ(茶)と呼ぶこともある。原産地は中国南部とされているが確かなことはわかっていない。中国や日本で栽培される1m前後の常緑低木(学名 : Camellia sinensis)。インド・スリランカなどで栽培される変種のアッサムチャ(学名 : C. sinensis var. assamica)は8 – 15mにも達する高木になる。栽培では普通は1m以下に刈り込まれるが、野生状態では2mに達する例もある。幹はその株からもよく分枝して、枝が混み合うが、古くなるとさらにその基部からも芽を出す。樹皮は滑らかで幹の内部は堅い。若い枝では樹皮は褐色だが、古くなると灰色になる。葉は枝に互生する。葉には短い葉柄があり、葉身は長さ5-7cm、長楕円状被針形、先端は鈍いかわずかに尖り、縁には細かくて背の低い鋸歯が並ぶ。葉質は薄い革質、ややばりばりと硬くなる。表面は濃緑色でややつやがある。その表面は独特で、葉脈に沿ってくぼむ一方、その間の面は上面に丸く盛り上がり、全体にはっきり波打つ。花は10-11月頃に咲く。花は枝の途中の葉柄基部から1つずつつき、短い柄でぶら下がるように下を向く。花冠は白く、径2-2.5cm、ツバキの花に似るが、花弁が抱え込むように丸っこく開く。果実は花と同じくらいの大きさにふくらむ。普通は2-3室を含み、それぞれに1個ずつの種子を含む。果実の形はこれらの種子の数だけ外側にふくらみを持っている。日本の地図記号で茶畑を表す記号はこの果実を図案化したものである
日本では、栽培される以外に、山林で見かけることも多い。古くから栽培されているため、逸出している例が多く、山里の人家周辺では、自然林にも多少は入り込んでいる例がある。また、人家が見られないのにチャノキがあった場合、かつてそこに集落があった可能性がある。
◇生活する花たち「秋ばら・山茶花・楓紅葉」(東京調布・神代植物園)

琵琶湖
★平らかな湖水に向きて冬はじめ 正子
心地よく晴れた一日、初冬の日差しに照り輝く湖面が美しいかぎりです。大きな自然を眼前に、穏やかに悠々たる思いを抱かせてくれる冬のはじまりです。(藤田洋子)
○今日の俳句
しんとある鵜船の河畔冬初め/藤田洋子
「しんと」の擬態語がこの句のよさ。鵜飼の季節を終えた鵜舟が置かれている河畔の風景に、初冬に対する作者の気持ちが良く出ている。(高橋正子)
○立冬(冬立つ・冬に入る・冬来る/ふゆきたる・今朝の冬)
★百姓に花瓶売りけり今朝の冬 蕪村
★菊の香や月夜ながらに冬に入る 子規
★蜂の巣のこはれて落ちぬ今朝の冬 鬼城
★立冬やとも枯れしたる藪からし 亞浪
★冬来たる眼みひらきて思ふこと 鷹女
★妻子居て味噌汁うまし今朝の冬/高橋信之
★立冬の洗濯機なりよく回る/高橋正子
○山茶花(さざんか)

[山茶花/横浜日吉本町]
★山茶花のここを書斎と定めたり 子規
★山茶花や日南に氷る手水桶 碧梧桐
★霜を掃き山茶花を掃くばかりかな 虚子
★山茶花や生れて十日の仔牛立つ 秋櫻子
★山茶花の樹々が真黄に母葬る 多佳子
山茶花が咲き始めると、もう、冬が近いんだぞと思う。冬物の服を早めに出したり、炬燵は、ストーブは、と冬支度が始まる。焚火の煙がうすうすと上って匂ってきたりすると、暖かいところが恋しくなる。椿と山茶花の違いはとよく効かれるが、山茶花は花弁が一枚一枚分かれて、咲き終わると散る。赤や白だけでなく、ほんのりピンクがかったものから、また八重のものまでいろんな花があるようだ。椿ほど改まってなくて、親しみやすい花だ。山茶花の垣根からいい匂いがこぼれると、そこを通るのがうれしい。
★山茶花の一期一会の花と吾/高橋信之
★山茶花にこぼるる目白の声ばかり/高橋正子
サザンカ(山茶花、学名:Camellia sasanqua)は、ツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹で、秋の終わりから、冬にかけての寒い時期に、花を咲かせる。野生の個体の花の色は部分的に淡い桃色を交えた白であるのに対し、植栽される園芸品種の花の色は赤や、白や、ピンクなど様々である。童謡「たきび」(作詞:巽聖歌、作曲:渡辺茂)の歌詞に登場することでもよく知られる。漢字表記の山茶花は中国語でツバキ類一般を指す山茶に由来し、サザンカの名は山茶花の本来の読みである「サンサカ」が訛ったものといわれる。
日本では山口県、四国南部から九州中南部、南西諸島(屋久島から西表島)等に、日本国外では台湾、中国、インドネシアなどに分布する。なお、ツバキ科の植物は熱帯から亜熱帯に自生しており、ツバキ、サザンカ、チャは温帯に適応した珍しい種であり、日本は自生地としては北限である。サザンカには多くの栽培品種(園芸品種)があり、花の時期や花形などで3つの群に分けるのが一般的である。サザンカ群以外はツバキとの交雑である。
◇生活する花たち「山茶花(さざんか)」(東京調布・神代植物園)

http://blog.goo.ne.jp/kakan003
★紺碧の天と対いて刈田あり 正子
秋のある日には、突然全く雲の無い紺碧の空が拡がる事があります。全て刈田となった野面にはひつじ稲のみどりが見え、荒涼とした広さが余計に拡がりを見せてくれます。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
バス待つ間も金木犀の充ち来る香/桑本栄太郎
バスを待っている間にも、待てば待つほど金木犀の香りが濃厚になってくる。香りが溜まってくる。それが「充ち来る」であろうが、そういった感じ方に新しさがある。(高橋正子)
●今年最後となるだろう、夕顔が蕾をつけた。明日が立冬というのに、健気にも咲いてくれる。今夜開きそうな気配だ。夕方、句美子がアロマを持って立ち寄ったので、夕顔の蕾のついた小さな鉢を持って帰らせた。今夜咲いただろうか。
今日は元の家族をお墓に案内した。案内している途中で、3歳の孫の元希が、お墓に花を咲かせたいと言うので、墓地入口のお寺の事務所へ引き返し花を買った。花立に花を入れ満足げ。お墓にはだれも入っていないんだけれど。墓地は日当たりがよく、山からの水が泉が湧いているので、面白がる。
秋芝の輝る南面の墓地丘陵 正子
泉の水汲んで菊の仏華立て 正子
おんぶせしを連結汽車だと秋日和 正子
○桂黄葉(かつらもみじ)

[桂黄葉/横浜・四季の森公園]
★桂黄葉の下をくぐって森の公園/高橋信之
★黄葉して桂の一樹しかと立つ/高橋正子
カツラ(桂、学名:Cercidiphyllum japonicum)は、カツラ科カツラ属の落葉高木。日本各地のほか、朝鮮半島、中国にも分布する。街路樹や公園樹に利用され、アメリカなどでも植栽されている。日本で自生するものはブナ林域などの冷温帯の渓流などに多く見られる。高さは30mほど、樹木の直径は2mほどにもなる。葉はハート型に似た円形が特徴的で、秋には黄色く紅葉する。落葉は甘い香り(醤油の良いにおいに似ている)を呈する。成長すると主幹が折れ、株立ちするものが多い。日本においては山形県最上郡最上町にある「権現山の大カツラ」が最も太く、地上から約1.3mの位置での幹周が20m近くにまで成長している。中国の伝説では、「桂」は「月の中にあるという高い理想」を表す木であり、「カツラ(桂)を折る」とも用いられる。しかし中国で言う「桂」はモクセイ(木犀)のことであって、日本と韓国では古くからカツラと混同されている(万葉集でも月にいる「かつらをとこ(桂男)」を歌ったものがある)。用途として、街路樹として植えられるほか、材は香りがよく耐久性があるので、建築、家具、鉛筆などの材料に使われる。また、碁盤、将棋盤にも使われるが、近年は市場への供給が減っており、貴重な木材となりつつある。桂皮(シナモン)は、同じ桂の字を使うがクスノキ科の異種の樹皮である。
◇生活する花たち「茶の花・柚香菊・実蔓(さねかずら)」(東京白金台・国立自然教育園)

★山茶花にこぼるる目白の声ばかり 正子
とても嬉しい光景です。目白が山茶花に群がっていて鳴いています。こぼるる声って、新鮮な句です。(祝恵子)
○今日の俳句
大根の白さを今日もまな板に/祝恵子
冬の間の食材として欠かせない大根の白が、目にみずみずしい。また今日の新しい白となって刻まれる。日々の新しさがさわやか。(高橋正子)
●今日は、亜浪忌でした。そのことを、今年は夜も更けて思い出しました。これまで、亜浪忌を忘れることはなかったと思うけれど。
亜浪の50年忌の法要に出席した日のことを思い出しました。もう、15、6年前になるだろうか。長男の元が大学生で、初めて車の免許をとって、喜んで中野の宝仙寺の法要に車で送ってくれた。法要の後、また車で迎えに来てくれてそのまま箱根までドライブ。箱根に着いたのは渋滞で夜になり、箱根の山に大きな満月がが昇っていた。後にも先にもあんなに大きな素晴らしい満月は見たことがない。帰りは、仙石原の薄の中を走ったのだが、薄を観賞するどろこではなく、スピードが出て怖かったこと。運転にひやひやしながらも、無事、湘南台の間借りしているマンションに着いたときはほっとした。長男も今や一児の父。相変わらずの車好きだが。
○木賊

[木賊/横浜日吉本町]
★ものいはぬ男なりけり木賊刈り/大島蓼太
★笠一ッ動いて行くや木賊刈/正岡子規
★子を負ふて木賊刈る里の女哉/正岡子規
★木の国は義仲育て木賊刈る/坂内康花
★深淵は空にありけり木賊刈る/八田木枯
★悪声の鳥来る木賊刈り頃に/三浦照子
★木賊刈るや雪のにほひの絶縁状/塚本邦雄
★こもれびを受けて木賊の青眩し/大津留公彦
木賊を見るときは、いつも、世の中には、面白い植物もあるものだなと思う。そして、いつも「けんけんぱ」の遊びを思い出す。庭の踏み石の端などに木賊が生えている。その踏み石の配置が、子供には、「けんけんぱ」の遊びに都合よいように思えた。正式の遊びは、地面にロウセキで丸を描いて遊ぶ。時には、薬缶に水を汲んできて、土に水で丸く輪を描いた。水が乾けば、また描きなおすのだ。
★木賊生う秋の日差しは斜めから/高橋正子
トクサ(砥草、木賊、学名:Equisetum hyemale L.)とは、シダ植物門のトクサ科トクサ属の植物。本州中部から北海道にかけての山間の湿地に自生するが、観賞用などの目的で栽培されることも多い。表皮細胞の細胞壁にケイ酸が蓄積して硬化し、砥石に似て茎でものを研ぐことができることから、砥草の名がある。地下茎があって横に伸び、地上茎を直立させる。茎は直立していて同じトクサ科のスギナやイヌドクサ、ミズドクサの様に枝分かれせず、中空で節がある。茎は触るとザラついた感じがし、引っ張ると節で抜ける。節の部分にはギザギザのはかま状のものがあって、それより上の節の茎がソケットのように収まっているが、このはかま状のぎざぎざが葉に当たる。茎の先端にツクシの頭部のような胞子葉群をつけ、ここに胞子ができる。その姿のおもしろさから、庭で栽培されることもある。
茎は煮て乾燥させたものを紙ヤスリのようにして研磨の用途に使う。また紙ヤスリが一般的な現代でも高級なつげぐしの歯や漆器の木地加工、木製品の作業工程などの磨き仕上げる工程に使用されていることや、音楽家の滝廉太郎は、身だしなみに気を遣ったため、常々トクサで爪を磨いていたことがよく知られている。クラリネットなどのリード楽器の竹製リードを磨いて調整するのにもトクサが用いられる。干した茎は木賊(もくぞく)と呼ばれる生薬で、その煎液を飲用すると目の充血や涙目に効果があるといわれている。小話に、明治時代の郵便夫が、わらじがあまりにすり減るのを嘆き、すり減らなさそうな材料としてトクサを使う話がある。その結果、足先からすり減って頭だけになった郵便夫は、頭を鞄に片づけて帰ったという落ちである。
「木賊刈る」は秋の季語。
◇生活する花たち「茶の花・柚香菊・実蔓(さねかずら)」(東京白金台・国立自然教育園)

★ポプラ黄葉雲寄り雲のまた流る 正子
街路樹や牧場などに植えられている菱形の葉を持つポプラは高く伸び、特に樹形が美しく黄葉したポプラは秋の青空に映え、そのポプラの上を真っ白な雲がゆっくりと流れ、また、近寄っては流れていく素晴らしい景ですね。(小口泰與)
○今日の俳句
ままごとのお椀かろしや赤のまま/小口泰與
「お椀かろし」がいい。作者はたわむれにままごとのお客になったとも思えるが、赤のままをいれたお椀があまりにも軽いこと、そこに感銘がある。(高橋正子)
○黒鉄黐(クロガネモチ)

[黒鉄黐/横浜・四季の森公園]
★赤がうれし黒鉄黐に朝が来て/高橋正子
クロガネモチ(黒鉄黐、学名 Ilex rotunda)は、モチノキ科モチノキ属の常緑高木。高木に分類されるものの、自然状態での成長は普通10m程度にとどまり、あまり高くならない。明るいところを好む。葉は革質で楕円形やや波打つことが多く、深緑色。表面につやがある。若い茎には陵があり、紫っぽく色づくことが多い。春4月に新芽を吹き、葉が交替する。雌雄異株で、花は淡紫色、5月から6月に咲く。たくさんの果実を秋につける。果実は真っ赤な球形で、直径6mmほど。本州(茨城・福井以西)・四国・九州・琉球列島に産し、国外では台湾・中国・インドシナまで分布する。低地の森林に多く、しばしば海岸林にも顔を出す。しばしば庭木として用いられ、比較的都市環境にも耐えることから、公園樹、あるいは街路樹として植えられる。「クロガネモチ」が「金持ち」に通じるから縁起木として庭木として好まれる地域もある。西日本では野鳥が種を運び、庭等に野生えすることがある。材木は農機具の柄としても用いられる。
◇生活する花たち「秋の野芥子・銀木犀・金木犀」(横浜日吉本町)

★霧に育ち大根くゆりと葉を反らす 正子
霧の出る大地に育つ大根であろうか。だんだんと大きくなった葉も反らし始めた。くゆりと、何となく面白味があります。(祝 恵子)
○今日の俳句
芒日を透かしておりぬ寺静か/祝 恵子
日当たりのよい寺はだれも居ぬようだ。芒が日を透かし、これ以上ないような静けさと、穏やかな明るさが思われる。(高橋正子)
●クロッカスの芽が出る。カサブランカの芽が土よりのぞく。
○ナガボノシロワレモコウ

[ナガボノシロワレモコウ/東京白金台・自然教育園]_[吾亦紅(ワレモコウ)/横浜市港北区松の川緑道]
東京白金台・自然教育園
★吾亦紅の白花を垂れ池近し/高橋信之
百花園
★吾亦紅スカイツリーのある空に/高橋正子
松山
★吾亦紅コーヒー店のくらがりに/高橋正子
吾亦紅をこれでもか、というほど見た。四季の森公園、近所の庭。しかし、白い吾亦紅があるのは、思いもしなかった。ナガボノシロワレモコウというのがあると、自然教育園の写真を見せてくれた。穂が長いので、一見ワレモコウには見えない。
★まぼろしのごとくナガボノワレモコウ/高橋正子
ナガボノシロワレモコウ(Sanguisorba tenuifolia)は、バラ科ワレモコウ属の多年草で、湿原や湿性の草原に生育する。北海道・関東地方以北の本州、樺太に分布するが、中国地方などにも隔離分布している。湿原に生育する植物は、氷河時代に分布したものが生き残っていることがあり、ナガボノシロワレモコウもその例の1つである。地下に太い根茎があり、8月から10月にかけ、高さ1mほどの茎を出して花を付ける。茎の上部は枝分かれして長さ2~5cm程の花穂を出し、長いものは垂れ下がる。花は先端から咲き始め、花弁はない。萼片は4枚で白色であり、これが花の色となっている。雄しべは4本で長く、黒い葯が目立つ。葉は11~15の小葉からなり、小葉の幅は狭いく、三角形の鋸歯がある。
ワレモコウ(吾亦紅、吾木香)は、バラ科・ワレモコウ属。日本列島、朝鮮半島、中国大陸、シベリアなどに分布しており、アラスカでは帰化植物として自生している。草地に生える多年生草本。地下茎は太くて短い。根出葉は長い柄があり、羽状複葉、小葉は細長い楕円形、細かい鋸歯がある。秋に茎を伸ばし、その先に穂状の可憐な花をつける。穂は短く楕円形につまり、暗紅色に色づく。「ワレモコウ」の漢字表記には吾亦紅の他に我吾紅、吾木香、我毛紅などがある。このようになったのは諸説があるが、一説によると、「われもこうありたい」とはかない思いをこめて名づけられたという。また、命名するときに、赤黒いこの花はなに色だろうか、と論議があり、その時みなそれぞれに茶色、こげ茶、紫などと言い張った。そのとき、選者に、どこからか「いや、私は断じて紅ですよ」と言うのが聞こえた。選者は「花が自分で言っているのだから間違いない、われも紅とする」で「我亦紅」となったという説もある。
◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

★朴落葉空より吹かれ来て臥しぬ 正子
朴の木は高木で森や山路に見る事が出来ますが、恥ずかしながら朴落葉を今年初めて見ました。他の落葉の枯れ色に紛れず、その大きさが目立ちます。「空より吹かれて来て臥す」は高い木であること、また臥す(横たわる)と言えるほどに大きな葉で有る事が想像出来て朴落葉の詩情ある初冬の風景です。(佃 康水)
○今日の俳句
霜降の日松の菰巻き
菰巻きや縄目きりりと立ち揃い/佃 康水
新しい菰で幹を蒔かれ、縄をきりりと結んだ木は、風格が一段と増して見える。冬越しの準備が整い、気持ちが引き締まる思いだ。(高橋正子)
●文化の日は、晴れが多い。それにたがわず今日も晴れ。
○山鳥兜(ヤマトリカブト、鳥兜・鳥頭・かぶと花)

[ヤマトリカブト/横浜・四季の森公園] [オクトリカブト/尾瀬ヶ原]
★今生は病む生なりき鳥頭(トリカブト)/石田波郷
★かぶと花手折りて何を恋ひゆくや/石原君代
★鳥兜毒持つことは静かなり/東金夢明
★オキシドール泡立ちており鳥兜/河村まさあき
★国境へ鳥兜の原広がりぬ/久保田慶子
横浜・四季の森公園
★鳥兜のむらさき優しこの森は/高橋信之
★鳥兜斜めがちにて色淡し/高橋正子
ヤマトリカブト(山鳥兜、学名:Aconitum japonicum)は、 キンポウゲ科トリカブト属の多年草。トリカブト属の中には、オクトリカブト、ミヤマトリカブト、ハコネトリカブトなどがあり、ヤマトリカブトは、オクトリカブトの変種で、中国原産。花の形が、舞楽のときにかぶる、鳳凰(ほうおう)の頭をかたどった兜に似ていることから「鳥兜」。また、山地に生える鳥兜なので「山~」となった。ふつう、「鳥兜」と呼ぶ場合は、この「山鳥兜」を指すようで、単なる「鳥兜」という名前の花はない。英名の”monkshood”は「僧侶のフード(かぶりもの)」の意。
トリカブト(鳥兜)の仲間は日本には約30種自生している。沢筋などの比較的湿気の多い場所を好む。花時には草丈90~130cmほどになる。茎は斜上することが多く、稀に直立する。 秋に、花茎の上部にいくつかの青紫色の長さ4cmほどの兜(かぶと)型の花をつける。花の色は紫色の他、白、黄色、ピンク色など。葉は大きさはいろいろあり、径7~12cmほどの偏円形ですが、3~5深裂(葉の基部近くまで裂けている)し、裂片はさらに細かく中~深裂(欠刻状の鋸歯)しているのが特徴で、見た目では全体に細かく裂けているように見える。
塊根を乾燥させたものは漢方薬や毒として用いられ、烏頭(うず)または附子(生薬名は「ぶし」、毒に使うときは「ぶす」)と呼ばれる。本来「附子」は、球根の周り着いている「子ども」のぶぶん、中央部の「親」の部分は「烏頭(うず)」、子球のないものを「天雄(てんゆう)」と呼んでいたが、現在は附子以外のことばはほとんど用いられていない。ドクウツギ、ドクゼリと並んで日本三大有毒植物の一つとされる。ヨーロッパでは、魔術の女神ヘカテーを司る花とされ、庭に埋めてはならないとされる。ギリシア神話では、地獄の番犬といわれるケルベロスのよだれから生まれたともされている。狼男伝説とも関連づけられている。富士山の名の由来には複数の説があり、山麓に多く自生しているトリカブト(附子)からとする説もある。また俗に不美人のことを「ブス」と言うが、これはトリカブトの中毒で神経に障害が起き、顔の表情がおかしくなったのを指すという説もある。10月13日の誕生花(鳥兜)、花言葉は「騎士道、栄光」(鳥兜)。
◇生活する花たち「犬蓼・金木犀・白曼珠沙華」(横浜四季の森公園)

★秋海は青より銀に由比ヶ浜 正子
○今日の俳句
秋天に伸びゆくものの数多あり/多田有花
秋の天に高く伸びてゆくものを読み手はいろいろ想像する。鉄塔であったり、高層ビルであったり、聳える木であったり。秋天にある飛行機雲も。秋麗の日差し、空気、まさに「秋」がよく表現されている。(高橋正子)
●「世紀末ウィ-ンの知の光景」(西村雅樹著/広大名誉教授・京大名誉教授・2017年10月31日鳥影社刊)が 信之先生と私宛に送られてくる。鳥影社はドイツ文学と純文学の出版社。諏訪市に本社がある。
今は21世紀となっているが、「世紀末」とは1800年代の終わり。20世紀への転換期をさしている。非常に精緻な研究に驚嘆する。 京都大学の大学院を出て愛媛大学に就職されたころ、砥部のわが家にも来ておられた。40数年前のことであるが。
本阿弥書店から依頼の手紙。定期購読者を増やすことに力をいれているので、同人を定期購読者に推薦して欲しいとのこと。
○がまずみ

[がまずみの実/東京白金台・自然教育園]_[がまずみの花/東京白金台・自然教育園]
★がまずみや蓑虫切に糸縮め/殿村菟絲子
★がまずみの実を噛み捨てて語を継がず/瀬知和子
★がまずみを含みて道の遠きかな/斎藤玲子
★がまずみの白き花冴ゆ梅雨の入り/那須亀洞
★そぞのみの思い出多し山学校/大柳雄彦(宮城環境保全研究所)
11月に入っても、まだ十分に秋の気配が残り、過ごし易い日が続いている。そんなある日、近くにある国見峠の道ばたで、赤く熟したガマズミの実を啄ばむジョウビタキの姿が見られた。
遠い昔を思い起こし、その場で綴った駄作である。私が小学校に通っていたのは、昭和10年代の後半、つまり、太平洋戦争の真っ只中のこと。今とは違って塾などあるはずはなく、学校からの宿題もほとんどなかった時代である。当然ながら下校後の山学校は日課になっていて、気の合った者同志で色んな場所に出かけていった。とりわけ、晴天の日が続く晩秋の山学校は楽しく、かなり奥地の山林まで足を延ばし、クリを拾い、アケビやサルナシをもぎ取り、ガマズミやナツハゼの実をしゃぶるなどして、夢中になって過ごしたものである。しかし、つるべ落としのこの時期は、日の暮れるのが滅法早く、あわてて家路につくのは毎度のことで、時には、山の中にランドセルを忘れてきた苦い思い出もある。
「そぞのみ」は、本県で使われているガマズミの方言で、「よっずみ」と呼ぶ地方もある。里山地帯の至るところに生えている潅木で、紅葉も美しい。初夏に赤い実を枝一杯につけ、はじめは酸っぱいが、徐々に甘みを増していく。山林内での、賦存量はかなり多く、しかも手の届く高さで採取できるので、農村部の子供たちにとっては人気のある野生の食品である。(宮城環境保全研究所/仙台市青葉区八幡のホームページより)
ガマズミ(莢?、学名:Viburnum dilatatum)は、山地や丘陵地の明るい林や草原に生える落葉低木。樹高2-3m程度となる。若い枝は星状毛や腺点があってざらざらで、灰緑色。古くなると、灰黒色になる。葉は対生し、細かい鋸歯がある卵型から広卵形で10cm程度。表面には羽状の葉脈がわずかに出っ張り、凹凸がある。表面は脈上にだけ毛があるが、裏面では腺点や星状毛などが多い。花期は5-6月。白い小さい花の花序を作る。晩夏から秋にかけて3-5mm程度の果実をつけ、食用となる。果実は赤く熟し、最終的に晩秋の頃に表面に白っぽい粉をふき、この時期がもっとも美味になる。焼酎に漬けて果実酒にも利用する。また、丈夫でよく分枝するため、庭木として観賞用に植樹されることもある。
★がまずみの実赤し鳥の眼に吾に/高橋信之
がまずみの赤い実が楽しい。初夏に咲く白い花を、秋になっての青い実を思えばなお楽しい。(高橋信之)
◇生活する花たち「茶の花・柚香菊・実蔓(さねかずら)」(東京白金台・国立自然教育園)
