2月28日(土)

★クロッカス塊り咲けば日が集う   正子
クロッカスは水捌けのよいやわらかな土に、低く咲くような印象を持っています。そのせいでしょうか、かたまって咲く姿に、周辺の地面もろ共、日の光が集中しているような温かさ感じます。そして先生の俳句からは、きっぱりと咲く早春の花の姿と明るさを間近に受け取ることができます。(小西 宏)

○今日の俳句
梅咲き初め空高らかにバグパイプ/小西 宏 
梅の咲きはじめの空気はまだ冷たいが、どこどなく春の気配に華やいだところがある。たからかにバグパイプの音が響くと、異国情緒があって、梅の花に新しさが加わった。(高橋正子)

○白梅紅梅

[白梅/横浜日吉本町]             [紅梅/横浜・四季の森公園] 

★梅や天没地没虚空没/永田耕衣
★白梅の散るを惜しみて偲ぶのみ/稲畑汀子
★白梅の満ちて声なき子となりぬ/頓所友枝
★梅の中に紅梅咲くや上根岸 子規
★紅梅や湯上りの香の厨ごと/岡本眸
★紅梅に空あをくなれ青くなれ/林翔

○梅
 梅 (うめ、学名:Prunus mume)は、薔薇(ばら)科。開花時期は、1月中旬頃から咲き出すもの、3月中旬頃から咲き出すものなど、さまざま。漢名でもある「梅」の字音の「め」が変化して「うめ」になった。中国原産。奈良時代の遣隋使(けんずいし)または遣唐使(けんとうし)が中国から持ち帰ったらしい。「万葉集」の頃は白梅が、平安時代になると紅梅がもてはやされた。万葉集では梅について百首以上が詠まれており、植物の中では「萩」に次いで多い。別名は「好文木」(こうぶんぼく)、「木の花」(このはな)、「春告草」(はるつげぐさ)、「風待草」(かぜまちぐさ)。1月1日、2月3日の誕生花。花言葉は「厳しい美しさ、あでやかさ」

○白梅
禅のことば~「雪中の白梅」の意味すること 「雪裡の梅花只一枝」~迷いの世界でさとりを得る
「雪裡の梅花只一枝」(せつりのばいかただいっし)~辺り一面の銀世界のなかで、梅の木が枝を伸ばしている。降りしきる雪が積もるその枝の先には一輪の梅の花が咲き、ほのかな香りを放っている…。
「雪裡の梅花只一枝」。何だか光景が目に浮かぶような、イメージするだけでも素敵な禅語ですが、ここでいう「梅の花」とは、「さとり」をあらわすもの。厳しい寒さ(困難)を乗り越えてこそ、美しい梅花(さとり)があらわれるのだ、というものです。私たちの日常に置き換えれば「悲しみや苦しみ、困難なことを乗り越えた時に、人生の素敵な花を咲かせることができるのだ」とも言えそうです。でも、この禅語の美しさの源にあるのは、雪の中にあっても梅が花を咲かせたということ。
 厳しい冬が過ぎた時に梅が花を咲かせたのではなく、雪の中において既に花を咲かせていることが、何とも言えない凛とした気配を与えていることだと思うのです。それは、「苦しみや困難を乗り越えた時に花が咲く」のではなく「苦しみや困難の中にあっても、確かな花を咲かせることができるのだ」と、私たちを励ましてくれているようにも読み取れます。日常生活から離れたところにさとりの世界があるのではない。この迷いの世界の中に生きていても、そこで真実を得ることができる。一枝の梅が咲く姿に、そんな思いを重ねずにはいられません。ちなみにここでいう「梅の花」は、紅梅でしょうか? 白梅でしょうか? コントラスト的には断然紅梅に軍配が上がりそうですが、正解は「白梅」。雪中の白梅。これもまた、「苦しみや迷い」と「さとり」の関係を考えると、とっても意味深ですね。(「nikkei BPnet)

○紅梅
紅梅は白梅よりも晴れた空が似合う。50年以上前のある風景について鮮明に記憶がよみがえる。生家の隣に分家があって、そこに立派な紅梅が咲く。その季節は、分家(分家には慶応3年生まれ、漱石や子規と同い年の百歳のおばあさんが健在であった)の法事があり、遠い親戚の黒衣の人たちまでもがうららかな日差しに出入りする。そいうときの紅梅は、ひときわあでやかに見えた。まだ私は小学校低学年で非常に人見知りであっから、遠くから紅梅を眺めていた。故人の忌日は変わりなく、紅梅の咲く日も変わらない。
★紅梅は高くて黒衣まぶしかり/高橋正子
★紅梅咲く隣家に黒衣の人出入り/高橋正子

四季の森公園へ行った帰り道、辛夷が無数に蕾を付ける街路樹のある歩道を脇に入ったところ。紅梅の匂いがした。紅梅のあることを知らなかった場所にこれも無数の蕾を付けた紅梅の木が立っている。二本。ふくよかな匂いがする。かすかに薔薇のような匂いがする。まじまじと見れば童女のようにあどけない。

★おしばなの紅梅円形にて匂う/高橋正子
日記帳にひそかに挟み、忘れたころに見つかる。押し花になってもいい匂いがする。自分の、誰に見せるわけでもない小さな宝物である。

◇生活する花たち「菜の花・白梅・紅梅」(横浜日吉本町)

2月27日(金)

★天城越ゆ春の夕日の杉間より   正子
修善寺から下田を結ぶ天城峠を超えると春の柔らかな日差しが沢山の杉の木の間から射し込み、のんびりと穏やかな気持ちになりますね。とっても春らしい素敵な句だと思います。(小口泰與)

○今日の俳句
ほつほつと梅のふふむや水ゆたか/小口泰與
雪解け水や雨で水嵩の増えた川。ちょうどその季節梅の蕾がほころび始める。「水ゆたか」に季節をよく詠わせている。(高橋正子)

○白梅

[白梅/横浜・大倉山公園梅林]

○俳句

★梅白しきのふや鶴をぬすまれし 芭蕉
修善寺梅林
★紅梅がかすみ白梅がかすみ/高橋正子

○大倉山公園梅林/横浜市港北区大倉山二丁目(東急東横線の大倉山駅北)

 梅林の最盛期は昭和12年頃であるらしく、当時は白梅を中心に14種1,000本を越える規模であったという。第二次大戦中には燃料用のたきぎとして伐採され、また食料不足のためにイモ畑に転用されるなどしたらしいが、戦後昭和25年頃から昭和40年頃には、再び盛大に梅祭りが行われるなどして賑わったという。その後、施設の老朽化などが目立ってきた梅林を横浜市が東京急行電鉄から昭和62年に買収、施設の整備や梅の木の増植などを行って現在に至っている。現在は面積1.1ヘクタールの敷地に紅梅白梅合わせて約20種150本が植えられているということだ。
 東急東横線の大倉山駅を北に出て、線路沿いの坂道を綱島方面へと登り、大倉山記念館の傍らを抜けてゆくと、ひとやま越えるような感じで梅林に辿り着く。大倉山公園は丘陵に位置しているが、梅林はその中の窪地にあって周囲を閉ざされており、それが山里のような印象を伴っていてなかなか良い風情がある。梅林に降りて行き、散策路沿いに梅を楽しむのももちろん良いものだが、周囲の高みから見下ろす梅林の風情も素晴らしい。
 梅の木にはそれぞれ品種の名を示すプレートが付けられており、特に品種などに興味がなくともついその名を確かめてしまう。なかなかの老木らしき梅も少なくなく、地を這うように幹を伸ばした梅や、端正な立ち姿で気品すら漂うような梅の木など、それぞれに見応えのある梅が立ち並んでいる。ゆっくりのんびりと一本一本を鑑賞しつつ歩きたい梅林だ。
 梅の名所としてよく知られているだけあって観梅客も多い。お昼時にはお弁当を広げる人も少なくなく、大きなシートを広げて宴会を催すグループの姿もある。園内には池や四阿などもあり、トイレも設置してあるので、早春の一日をのんびりと過ごすのに良い場所だろう。梅林のすぐ北側には龍松院という小机の雲松院の末寺にあたる寺もあり、興味のある人は立ち寄るのも良いかもしれない。梅の花の盛りとなる2月下旬にはさまざまなイベントも開催されるようなので、お祭り的に楽しみたい人はそれらの開催予定を調べて、それに合わせて訪れるのも良いだろう。

▼公園探訪/横浜線沿線散歩:
http://www.natsuzora.com/may/park/okurayama_ume.html

◇生活する花たち「節分草・蒲の穂絮・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

2月26日(木)

★さきがけて咲く菜の花が風のまま   正子
梅や水仙にさきがけて菜の花が咲いています。早春の風の中で揺れている趣のあるさまが目に浮かびます。(河野啓一)

○今日の俳句
雪消えて餌箱架ける昼下がり/河野啓一
雪の積むあいだ、小鳥たちは餌をどうしていたのか。小鳥たちを思いやって、雪が消えるのを待ってさっそく餌箱を取り付けた。 慈しみのある句。(高橋正子)

○クロッカス

[クロッカス/横浜日吉本町]

★日が射してもうクロッカス咲く時分/高野素十
★クロッカス天円くして微風みつ/柴田白葉女
★クロッカスときめきに似し脈数ふ/石田波郷
★髭に似ておどけ細葉のクロッカス/上村占魚
★クロッカス咲かせ山住みの老夫婦/見学玄
★クロッカス光を貯めて咲けりけり/草間時彦
★忘れゐし地より湧く花クロッカス/手島靖一
★クロッカス苑に咲き満つ朝の弥撒/羽田岳水
★朝礼の列はみ出す子クロッカス/指澤紀子
★膝に乗せ遊ぶ子が慾しクロッカス/安藤三保子
★忽然と地から湧き出すクロッカス/安井やすお
★クロッカスはや咲き初めぬパリの窓/桜井道子

クロッカス (Crocus) は、アヤメ科クロッカス属の総称、または、クロッカス属の内で花を楽しむ園芸植物の流通名。耐寒性秋植え球根植物。原産地は地中海沿岸から小アジアである。晩秋に咲き、花を薬用やスパイスとして用いるサフランに対し、クロッカスは早春に咲き、観賞用のみに栽培されるため、春サフラン、花サフランなどと呼ばれる。球根は直径4cmくらいの球茎で、根生葉は革質のさやに覆われているが、細長く、花の終わった後によく伸びる。花はほとんど地上すれすれのところに咲き、黄色・白・薄紫・紅紫色・白に藤色の絞りなどがある。植物学上は、クリサントゥスCrocus chrysanthusを原種とする黄色種と、ヴェルヌスC. vernusを原種とする白・紫系の品種とは別種だが、園芸では同一種として扱われ、花壇・鉢植え・水栽培に利用されている。

◇生活する花たち「雪割草・さんしゅゆの花蕾・土筆」(横浜・四季の森公園)

2月25日(水)

★青空の果てしなきこと二月なる   正子
季節の替り目、二月は晩冬から早春にかけて風も強く空は哀しいまでに真っ青です。その青さは秋のそれよりも青いかもしれません。そして、凛とした青空は厳しい寒さの中にも、暖かい春の近い事を予感させてくれます。 (桑本栄太郎)

○今日の俳句
故郷回想
海苔掻や潮目沖へと流れおり/桑本栄太郎
沖へと流れる潮目を見ながらの海苔掻きに、春の磯の伸びやかな風景が見えて、素晴らしい。(高橋正子)

○三椏の花

[三椏の花/伊豆修善寺(2011年2月22日)]_[三椏の花蕾/横浜四季の森公園(2012年1月26日)]

★三椏や皆首垂れて花盛り/前田普羅
★三椏の咲くや古雪に又降りつむ/水原秋櫻子
★三椏のはなやぎ咲けるうららかな/芝不器男
★三椏の花に暈見て衰ふ眼/宮津昭彦
★三椏や石橋くぐる水の音/渡邉孝彦
★三椏の花紅の雫せり/檀原さち子

 三椏は、蕾の期間が長いようだ。初詣に行けば神社の境内に蕾の三椏を見つけることがある。私は長い間、この蕾を花と思い違っていた。去年修善寺の梅林を訪ねたときに、それは二月下旬だったが、梅林の入口のバス停の近くに三椏の花が咲いていた。蕾がはじけて山吹色が内側に見えて、毬のように咲いていた。大変可憐な花である。横浜の四季の森公園のせせらぎ沿いに植えられているのが、いま最も身近にある三椏である。
 三椏の花でもっとも印象に残っているのは、四国八十八か所のお寺出石寺の山門の脇に咲いていたものである。ふもとからバスで山道をうねうねと登ると雲海の上に寺がある。雲海が寄せてくるところの三椏の花は、それが和紙の原料であるということも考えれば、生活の花として別の意味合いやイメージが湧いてくる。事実ふもとの大洲市は和紙の産地である。
 ミツマタ(三椏、学名:Edgeworthia chrysantha)は、ジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉低木。中国中南部、ヒマラヤ地方原産。皮は和紙の原料として用いられる。ミツマタは、その枝が必ず三叉、すなわち三つに分岐する特徴があるため、この名があり、三枝、三又とも書く。中国語では「結香」(ジエシアン)と称している。春の訪れを、待ちかねたように咲く花の一つがミツマタである。春を告げるように一足先に、淡い黄色の花を一斉に開くので、サキサクと万葉歌人はよんだ(またはサキクサ:三枝[さいぐさ、さえぐさ]という姓の語源とされる)。
 「赤花三叉(あかばなみつまた)」は、戦後、愛媛県の栽培地で発見され、今では黄色花とともによく栽培されている。

◇生活する花たち「修善寺梅林・河津川花菜・河津桜」(静岡県伊豆半島)

2月24日(火)

★梅の香を息に吸い込みあるきけり   正子
梅の花の咲くころは胸に吸い込む空気もまだやや冷たい。思わず呼吸を意識してしまう。そこに漂い来る梅の花の香り。梅園を歩く清澄さが快く伝わってきます。(小西 宏)

○今日の俳句
万作の咲く青空の冷たさよ/小西 宏
「青空の冷たさ」が、万作の咲く季節をよく物語っている。空は青く晴れやかであるが、しんとして冷たい。そこに黄色い万作が咲いて春の訪れが確かとなる。(高橋正子)

○黄水仙

[黄水仙/横浜・四季の森公園]

★突風や算を乱して黄水仙/中村汀女
★横濱の方にある日や黄水仙/三橋敏雄

黄水仙(きずいせん、学名:Narcissus jonquilla L.)は、ユリ科 スイセン属で新エングラー体系ではヒガンバナ科の多年草。南ヨーロッパ原産。石灰岩地の丘陵や草地などに生え、高さは10~30センチになる。葉は深緑色で細い。春に花茎を立てて、香りのよい黄色の花を横向きにつける。江戸時代に渡来して観賞植物として栽培される。学名からジョンキル水仙とよぶ場合もある。

白い水仙は冬の季語、黄水仙は春の季語。おなじ水仙と呼ばれても咲く季節が違う。有名なワーズワースの詩の「ラッファディル」は、ラッパ水仙。春が来ると一面に群れ咲くラッパズイセンを子どものころは、異国への憧れとしてよく想像したものだ。父が若かったころ、私たが子どもであったころ、庭にラッパ水仙が咲いた。戦後のことであるが、このラッパ水仙が咲くのが非常に嬉しかった。今になって思えば、父は花が好きであったようだ。ペチュニアを「つくばね朝顔」と言っていたころ、ほどんど誰もそれを植えていないころペチュニアが咲いていた。糸水仙というのもあった。青葡萄の棚もあったし、種なし葡萄のデラウエアも門先のポールに昇らせていた。そういう思い出と共に蘇る生家のラッパ水仙である。

◇生活する花たち「満作・椿・蝋梅」(神奈川・大船植物園)

2月23日(月)

★賽銭を放りて拝む梅の寺   正子
梅の花がほつほつと咲き始めた境内には仄かな香りが漂っています。何とも言えない心の豊かさにお参りして行こう!とお賽銭をぽんと放ります。合掌し様々な思いを込めて祈念をなさったことでしょう。梅の寺での温かい気持ちが伝わって参ります。(佃 康水)

○今日の俳句
牛鳴いてサイロの丘に草萌ゆる/佃 康水
サイロのある丘に草が萌え、牛の鳴き声ものどかに聞こえる。あかるい風景がのびやかに詠まれている。(高橋正子)

○河津桜

[河津桜・朝/伊豆河津(2011/02/23)]    [河津桜・夜/伊豆河津(2011/02/22)]

○伊豆河津6句/高橋正子
夜桜は紅かんざしのごと灯る   
夜桜にオリオン星雲浮いてあり
重なりて透けることあり朝桜
菜の花に蛇行の川の青かりし
春浅き湯に聞くばかり波の音
春朝日海にのぼりて海くらし

2011年2月23日(水)
 河津の桜まつりは朝九時から屋台が揃う。ホテルのマイクロバスで、二人だったが、河津駅まで運んでもらう。きのう来るときに桜は見たのでもうよいような気がしたが、朝の川岸の桜と菜の花がすがすがしい。河津川の水のきれいなこと。鮎が釣れるようだ。川の鴨が泳ぐ水かきまでもがよく見える。鶺鴒がいくらでもいる。桜や菜の花を見ながら歩く。途中のさくら足湯というところで、足湯をたのしむ。修善寺の独鈷の湯よりもぬるい。桜まんじゅう、さくらえびせんべい、栗ぽん、おやき、桜の苗木、吊るし雛などを売る屋台が続く。黒眼がねをかけ、黄色い服のイタリア人夫婦の屋台もある。つぶあんのよもぎのおやきをほおばる。桜海老せんべいを買う。川岸を上流へ、人がまばらになるところまでずいぶん歩いた。河津桜の絵を描いて売る人もいる。買う人もいる。「踊り子温泉会館」まで来た。近くに峰温泉という温泉がある。三十メートルほど温泉が噴きあがるのが売りもの。次の噴き上げは十二時三十分だという。三十分ほど待つ間、篭に卵を入れて、温に浸けて温泉玉子を作る。待ってる間も少し寒いので足湯をする。東洋一という温泉の噴き上げを見てそこを出る。バス停近くの店でケーキとコーヒー。来たバスに乗って、河津駅まで。見事な桜の原木がバスの窓から見えた。二十分ほど乗ったろうか、河津駅に着くとさすがにお腹が空いている。これから電車で帰途に着くわけだが、残っている駅弁は、この時間では、さざえ弁当だけ。わっぱ風の折に入って、さざえとひじきが載せてある。それを持って普通電車に乗る。三時間あれば帰れるので、踊り子号にも、スーパービューにも乗らないで、鈍行で帰る。二時四十六分発の熱海行。熱海からは、JRの快速アクティ東京行で横浜まで。相模湾が見える方、つまり行き手右側に席をとった。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

2月22日(日)

  伊豆
★わさび田の田毎に春水こぼれ落つ   正子
わさび田の、傾斜による田ごとに流れ落ちる水が、春の光を受けわさび葉の中に透明な水が落ちてゆく静かな風景です。(祝恵子)

○今日の俳句
蒲公英の数本は吾が影へあり/祝 恵子
なんとやさしい句だろう。自分の座っている影のなかに蒲公英の数本が入っている。日向にある蒲公英に比べて、自分の影の中の蒲公英は日陰っている。この明暗の差にある違いに作者の思いがある。(高橋正子)

○梅林

[梅/伊豆修善寺梅林(2011/02/22)]

○修善寺梅林10句/高橋正子
野に飛べる春鶺鴒や修善寺へ
修善寺の街のこぞって雛飾る
蕎麦に摺る山葵のみどり春浅し
春浅し川に突き出す足湯なり
紅梅がかすみ白梅がかすみ
梅林の丘をのぼりて伊豆連山
鮎を焼く炉火に手を寄せ暖をとり
梢より富士の雪嶺に風光る
わさび田の田毎に春水こぼれ落つ
天城越ゆ春の夕日の杉間より

2011年2月22日(火)
 修善寺駅に到着してから、修善寺梅林へすぐ向かう。修善寺駅から東海バスの「もみじ林行」に乗る。この終点となっているもみじ林に梅林がある。梅見に行く老婦人たちが乗っているが、途中、梅林ではないところで、なんども降りようとする。運転手は、観光案内も兼ねて、そのたび、ここは違う、終点で降りると案内する。立てば、よろけないように注意する。もみじ林で下車。入り口の蕎麦屋と、四十八ヶ所の札所の小さい菩薩の石碑を一つを過ぎて山道を梅林へ。三ヘクタールあるという梅林。歩くと落葉樹が葉を落として、日がよく降り注いでいる。もみじ林の名の由来がわかる。若楓のころは、美しいことだろうと思いながら歩く。ほどなく、右手に西梅林の入り口がある。数歩入れば、漂う梅の花の香り。ここの梅の木はどれも古木。幹はウメノキゴケが覆っている。百年の古木もある。樹のかたちも写真家が喜びそうな形が多くある。梅林の中の竹林は竹の秋。紅白の梅の花の後ろの竹の秋は色がつやつやとしている。梅林は丘となったりしている。丘に登れば、何か見えそうだ。登って見る。伊豆の高い山々が見える。
 丘を降りて谷を下ると東梅林へ。こちらは、修善寺温泉へ通じる道らしい。文人の句碑もある。石の鳥居を潜ってさらに下り、温泉への分かれ道のところから、また登る。すると、戸外に太い薪を組んで、大きな炉をつくり、鮎を串刺しにして焼いている。一匹が六百円。一本ずつ食べる。腸までがおいしく食べれる。寒いので炉のほとりに近寄りたいが、火の粉が散って服に穴が開くのでいけないという。食べ終われば、ポリタンクのお湯で手が洗える。鮎を食べて、また梅林を。今度は、雪どけのあと、ますます葉の色が青くなった水仙の小道がある。ここを辿り、もとの西梅林へ。だれか少し上から不意に現れ驚くが、写真を撮っていたらしい。気づくと富士山の山頂が見えている。ちょうどその人がいた場所が富士見には一番良いところだ。写真はもっぱら句美子が撮っているが、富士を収めて来た道をバス停まで下る。バスが来るまで二十分ほど。山すそにパンジーや菜の花の花壇があって、三椏の花が咲いている。咲いているものは、黄色い花簪のようで、かわいらしい。

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・猫柳」(東大・小石川植物園)

2月21日(土)

 横浜港
★港湾の動きに満ちて春浅し   正子
見下ろす横浜の港は春の陽にきらめいている。行き交う船の動きも増え、港に活気が満ちてき始めた。まだまだ本格的な春ではないが、それに向かって自然も人間界も動き始めたことがはっきりと感じられる。春への期待が港の動きで表わされている。(古田敬二)

○今日の俳句
春耕す我が濃き影を野に映し/古田敬二
春なのだ。日差し次第に強くなり、耕している自分の影が濃く映る。耕す我に、我と同じに動く影という友がいる。(高橋正子)

○雲間草

[雲間草/横浜・四季の森公園]      [雲間草/横浜日吉本町]

★春浅き庭の一角雲間草/杉竹
★夏の暁け目覚め早きや雲間草/百茶庵
★駅前の花屋に雲間草を買う/高橋信之

本種の雲間草(くもまぐさ、学名:Saxifraga merkii var. idsuroei)は、ユキノシタ科ユキノシタ属の日本原産の多年草で、北アルプスと御嶽山に自生する珍しい高山植物。標高3000m付近の雲の切れ間に咲くため「雲の合間の花」からクモマグサ(雲間草)と名づけられたと言われている。生花店などで栽培に販売されている品種は、ヨーロッパ、北欧を原産とするクモマグサの原種を品種改良した、ピンク色の花などの園芸品種で、西洋雲間草(せいようくもまぐさ、学名:Saxifraga rosacea)、または洋種雲間草(ようしゅくもまぐさ)と呼ばれる。日本種と比べ花の色や形状、開花時期などが異なる。開花時期は、雲間草が 7月~8月、西洋雲間草(洋種雲間草)が3月~5月。2月27日、3月22日の誕生花で、花言葉は活力、自信、愛らしい告白。  

◇生活する花たち「さんしゅゆの花蕾・沈丁花の蕾・木瓜」(横浜日吉本町)

2月20日(金)

★二月はや雛の鼓笛を持たさるる   正子
雛人形を飾られるお宅では、二月も半ばとなれば雛人形が箱から出され、雛壇に並ぶのでしょう。五人ばやしの人形もそれぞれの楽器を持って、ひな祭りが近づくのを教えてくれます。(多田有花)

○今日の俳句
青空に斑雪の山の光りあう/多田有花
「光りあう」が、早春をよく表現している。少しずつ強くなってゆく日差しに、青空も斑雪の山も輝いている。(高橋正子)

○犬ふぐり

[犬ふぐり/横浜・四季の森公園]

★陽は一つだに数へあまさず犬ふぐり/中村草田男
★下船してさ揺らぐ足や犬ふぐり/能村研三
★犬ふぐり牛を繋ぎし綱ゆるむ/皆川盤水
★犬ふぐり野川に水が鳴り始め/高橋正子
★犬ふぐり黄砂来ぬ日はすずやかに/高橋正子  

オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢、学名 Veronica persica)とはオオバコ科クワガタソウ属の越年草。別名、瑠璃唐草・天人唐草・星の瞳。路傍や畑の畦道などに見られる雑草。ヨーロッパ原産。アジア(日本を含む)、北アメリカ、南アメリカ、オセアニア、アフリカに外来種(帰化植物)として定着している。日本では全国に広がっており、最初に定着が確認されたのは1887年の東京である。早春にコバルトブルーの花をつける。まれに白い花をつけることがある。花弁は4枚。ただしそれぞれ大きさが少し異なるので花は左右対称である。花の寿命は1日。葉は1–2cmの卵円形で鋸歯がある。草丈10–20cm。名前のフグリとは陰嚢の事で、実の形が雄犬のそれに似ている事からこの名前が付いた。ただし、これは近縁のイヌノフグリに対してつけられたもので、この種の果実はそれほど似ていない。したがって正しくはイヌノフグリに似た大型の植物の意である。

◇生活する花たち「さんしゅゆの花蕾・雪割草・満作」(横浜・四季の森公園)

2月19日(木)/旧元日

★ヒヤシンスの香り水より立つごとし/高橋正子
水栽培で育つヒヤシンス。直立する花茎に、無数に開く可憐な小花のみずみずしさを思います。春を呼び覚ますような爽やかな芳しさのヒヤシンスです。(藤田洋子)

○今日の俳句
春光につつまれし身のときめきよ/藤田洋子
この句を読むと、もの静かで明るい若い母親の姿が浮かぶ。うす紫の丸いヨークのセーターが、春光の中で、肩までの黒髪に映えていた。(高橋正子)

○孫橋元希二歳の誕生日
元希は2013年2月19日生まれ。

○猫柳

[猫柳/東大・小石川植物園(2013年2月14日]_[猫柳/横浜・四季の森公園(2012年3月22日)]

★ぎんねずに朱ケのさばしるねこやなぎ/飯田蛇笏
★ひもすがら日は枯草に猫柳/松村蒼石
★猫柳奈良も果てなる築地越し/加藤楸邨
★猫柳高嶺は雪をあらたにす/山口誓子
★そばへ寄れば急に大きく猫柳/加倉井秋を
★ときをりの水のささやき猫柳/中村汀女
★二月はや天に影してねこやなぎ/百合山羽公
★猫柳四五歩離れて暮れてをり/高野素十
★猫柳大利根ゆるぎなく流れ/渡辺潔
★猫柳今日水音の高きこと/稲畑汀子
★谿風の鳴る日鳴らぬ日猫柳/山田弘子
★猫柳水を鏡に呆け初む/皆川盤水
★子を肩に猫柳しかない空ぞ/加藤かな文
★水音は川幅を出ず猫柳/鷹羽狩行

★猫柳さざ波向こうから寄せて/高橋正子

ネコヤナギ(猫柳、学名:Salix gracilistyla)は、ヤナギ科ヤナギ属の落葉低木。山間部の渓流から町中の小川まで、広く川辺に自生する、ヤナギの1種である。北海道〜九州までの河川の水辺で見られ、早春に川辺で穂の出る姿は美しいものである。他のヤナギ類の開花よりも一足早く花を咲かせることから、春の訪れを告げる植物とみなされる。他のヤナギ類よりも水際に生育し、株元は水に浸かるところに育つ。根本からも枝を出し、水に浸ったところからは根を下ろして株が増える。葉は細い楕円形でつやがない。初夏には綿毛につつまれた種子を飛ばす。花期は3〜4月。雌雄異株で、雄株と雌株がそれぞれ雄花と雌花を咲かす。高さは3mほど。銀白色の毛で目立つ花穂が特徴的であり、「ネコヤナギ」の和名はこれをネコの尾に見立てたことによる。花穂は生け花にもよく用いられる。ネコヤナギの樹液はカブトムシやクワガタムシ、カナブン、スズメバチの好物である。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)